特集にあたって
令和4年10月に健康保険組合連合会が発表した「健康保険組合の令和3年度決算見込みと今後の財政見通しについて」によれば,令和3年度決算見込みで,経常収支は825憶円の赤字となり,その内訳は保険料収入8兆2,652億円に対して,保健給付費4兆2,469億円,高齢者等拠出金3兆6,513億円であり,高齢者医療介護の負担が大きいことがわかる.今後の財政見通しとしては令和5年度には75歳に到達する団塊世代の増加により高齢者等拠出金が急激に増加し,収支は1,700億円の赤字となり,さらなる財政悪化が見込まれると警鐘を鳴らしている.一方,令和5年3月28日にリクルートワークス研究所から発行された「未来予測2040」によると,2040年には企業等で働く担い手の不足が全国で1,100万人に上り,生活維持サービス職種では,介護サービス職種の労働需要に対する不足率が25.3%と最も高く,保険医療専門職の不足率は17.5%と予測されている.
このような,極めて悲観的なわが国の医療・介護の将来への対策として,政府は,令和2年12月に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」に,「令和4年には団塊の世代が75歳以上の高齢者となり始める中で,現役世代の負担上昇を抑えることは待ったなしの課題である.そのためにも,少しでも多くの方に『支える側』として活躍していただき,能力に応じた負担をいただくことが必要である」として,少子化対策とともに,(1)医療提供体制の改革,(2)後期高齢者の自己負担割合の在り方,(3)大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大という3つの医療対策を掲げている.本方針の骨子は,「給付は高齢者中心,負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し,切れ目なくすべての世代を対象とするとともに,すべての世代が公平に支えあう」考え方が,今後の社会保障改革の基本であるべきという,社会保障のパラダイムシフトともいえる内容であるが,そのためには高齢者も生活機能を維持し地域社会で自立した生活を送ることが大前提であり,ここにリハビリテーションが極めて大きな役割を果たすことは明白である.
慢性期医療とは救命救急,急性期医療に続く医療であり,回復期医療,退院後の生活の場で継続される医療,介護,終末期ケアまで含まれる.このすべてのステージでリハビリテーションが必要であるという信念をもって,長年にわたり現場で努力されてきた先達に今後の慢性期医療におけるリハビリテーションのあるべき姿を示していただきたいという願いから今回の特集を企画した.
リハビリテーション医療専門職だけでなく,多くのさまざまな担い手による広義のリハビリテーションのかかわりによって医療・介護・福祉の切れ目のないサービス提供と,障害をもつ,あるいは障害をもつと思われる地域生活者の生活機能の維持と障害予防を目指す慢性期医療が展開される近未来を想像していただきたい.
わが国の慢性期医療分野で重鎮の方々に執筆を依頼したところ快くお引き受けいただき,年度末の多忙な時期にもかかわらず玉稿を賜り,読み応えのある特集となりました.筆者の方々に心より御礼申し上げます.
(編集委員会 企画担当:水落和也)
令和4年10月に健康保険組合連合会が発表した「健康保険組合の令和3年度決算見込みと今後の財政見通しについて」によれば,令和3年度決算見込みで,経常収支は825憶円の赤字となり,その内訳は保険料収入8兆2,652億円に対して,保健給付費4兆2,469億円,高齢者等拠出金3兆6,513億円であり,高齢者医療介護の負担が大きいことがわかる.今後の財政見通しとしては令和5年度には75歳に到達する団塊世代の増加により高齢者等拠出金が急激に増加し,収支は1,700億円の赤字となり,さらなる財政悪化が見込まれると警鐘を鳴らしている.一方,令和5年3月28日にリクルートワークス研究所から発行された「未来予測2040」によると,2040年には企業等で働く担い手の不足が全国で1,100万人に上り,生活維持サービス職種では,介護サービス職種の労働需要に対する不足率が25.3%と最も高く,保険医療専門職の不足率は17.5%と予測されている.
このような,極めて悲観的なわが国の医療・介護の将来への対策として,政府は,令和2年12月に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」に,「令和4年には団塊の世代が75歳以上の高齢者となり始める中で,現役世代の負担上昇を抑えることは待ったなしの課題である.そのためにも,少しでも多くの方に『支える側』として活躍していただき,能力に応じた負担をいただくことが必要である」として,少子化対策とともに,(1)医療提供体制の改革,(2)後期高齢者の自己負担割合の在り方,(3)大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大という3つの医療対策を掲げている.本方針の骨子は,「給付は高齢者中心,負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し,切れ目なくすべての世代を対象とするとともに,すべての世代が公平に支えあう」考え方が,今後の社会保障改革の基本であるべきという,社会保障のパラダイムシフトともいえる内容であるが,そのためには高齢者も生活機能を維持し地域社会で自立した生活を送ることが大前提であり,ここにリハビリテーションが極めて大きな役割を果たすことは明白である.
慢性期医療とは救命救急,急性期医療に続く医療であり,回復期医療,退院後の生活の場で継続される医療,介護,終末期ケアまで含まれる.このすべてのステージでリハビリテーションが必要であるという信念をもって,長年にわたり現場で努力されてきた先達に今後の慢性期医療におけるリハビリテーションのあるべき姿を示していただきたいという願いから今回の特集を企画した.
リハビリテーション医療専門職だけでなく,多くのさまざまな担い手による広義のリハビリテーションのかかわりによって医療・介護・福祉の切れ目のないサービス提供と,障害をもつ,あるいは障害をもつと思われる地域生活者の生活機能の維持と障害予防を目指す慢性期医療が展開される近未来を想像していただきたい.
わが国の慢性期医療分野で重鎮の方々に執筆を依頼したところ快くお引き受けいただき,年度末の多忙な時期にもかかわらず玉稿を賜り,読み応えのある特集となりました.筆者の方々に心より御礼申し上げます.
(編集委員会 企画担当:水落和也)
特集 待ったなし! 慢性期医療対策とリハビリテーション
特集にあたって
わが国の慢性期医療の動向(小山秀夫)
慢性期医療とリハビリテーション(武久洋三)
リハビリテーション病院への影響(木戸保秀)
今こそ鍵となる包摂社会を目指す地域リハビリテーションの展開(栗原正紀)
介護,地域包括ケアへの影響(橋本康子)
新連載
デザインが拓くリハビリテーションの未来
1.人工関節─知性と感性の視点からみたリハビリテーション(富田直秀)
リハビリテーション診療におけるEvidence-Based Practice
1.Evidence-Based Practiceの実践方法(百崎 良)
連載
ニューカマー リハ科専門医
(杉本崇行)
知っておきたい神経科学のキィワード
15.運動錯覚と運動主体感(米田将基)
リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
I.急性期病院における安全管理:2.急性期病院における窒息対策(高橋恵里 五十嵐 豊)
リハビリテーション治療中のリスクに備える医療機器管理
4.排尿管理にかかわる機器管理(尿道バルーンカテーテル,膀胱瘻,CIC)(仙石 淳 乃美昌司・他)
リハ科医・専門職に薦めたい! とっておきの学会・研究会ガイド
3.多職種がかかわる国内の学会(松嶋康之)
リハビリテーションと薬剤
23.リハビリテーションのセッティング別の薬剤管理:(1)急性期病院(宮越浩一)
オンライン診療とリハ
5.過疎地における遠隔リハビリテーション(金田 賢 半田 裕)
リハビリテーション医学・医療の歴史秘話“あの時なにが?”
5.日本言語聴覚士協会(深浦順一)
臨床経験
脳室内出血を伴う左尾状核出血のため高次脳機能障害を生じた一例(辻 桐子 森山利幸・他)
開催案内
バックナンバー
投稿規定
特集にあたって
わが国の慢性期医療の動向(小山秀夫)
慢性期医療とリハビリテーション(武久洋三)
リハビリテーション病院への影響(木戸保秀)
今こそ鍵となる包摂社会を目指す地域リハビリテーションの展開(栗原正紀)
介護,地域包括ケアへの影響(橋本康子)
新連載
デザインが拓くリハビリテーションの未来
1.人工関節─知性と感性の視点からみたリハビリテーション(富田直秀)
リハビリテーション診療におけるEvidence-Based Practice
1.Evidence-Based Practiceの実践方法(百崎 良)
連載
ニューカマー リハ科専門医
(杉本崇行)
知っておきたい神経科学のキィワード
15.運動錯覚と運動主体感(米田将基)
リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
I.急性期病院における安全管理:2.急性期病院における窒息対策(高橋恵里 五十嵐 豊)
リハビリテーション治療中のリスクに備える医療機器管理
4.排尿管理にかかわる機器管理(尿道バルーンカテーテル,膀胱瘻,CIC)(仙石 淳 乃美昌司・他)
リハ科医・専門職に薦めたい! とっておきの学会・研究会ガイド
3.多職種がかかわる国内の学会(松嶋康之)
リハビリテーションと薬剤
23.リハビリテーションのセッティング別の薬剤管理:(1)急性期病院(宮越浩一)
オンライン診療とリハ
5.過疎地における遠隔リハビリテーション(金田 賢 半田 裕)
リハビリテーション医学・医療の歴史秘話“あの時なにが?”
5.日本言語聴覚士協会(深浦順一)
臨床経験
脳室内出血を伴う左尾状核出血のため高次脳機能障害を生じた一例(辻 桐子 森山利幸・他)
開催案内
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投稿規定














