やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 小児を含む発達障害(神経発達症)は2004年に制定された発達障害者支援法を契機に社会的にも広く認知されるようになり,最近では,各地の小児のリハビリテーション医療・療育機関を受診・利用する児のかなりの程度を占める状況になっている.子どもを取り巻く育児・保育・教育の領域では,「気になる子」が多く見出されるようになっており,早期発見・早期対応につながっているところであるが,必ずしも十分であるとは言い難い現状がある.発達障害(神経発達症)は,協調運動,感覚受容,コミュニケーション,対人関係等,小児の発達全体にかかわり,多領域・多職種での対応が求められている.
 リハビリテーション診療の領域では,運動の不器用さや日常生活動作スキルの獲得遅延等,運動発達面からのサポートを求めての受診が多いと考えられる.また肢体不自由を主病像とする疾患においても,発達障害の要素が認められる例も少なくない.
 しかし,現場では,「発達障害(神経発達症)はわかりにくい」という声もしばしば聞かれるところである.また,養育者が発達障害(神経発達症)のある子どもへの対応に困難さを自覚し,極端な場合には疲弊していることもあり,リハビリテーション診療を進めるうえでの課題となっている場合もある.
 発達障害(神経発達症)のある子どもを成人後はどのようにフォローしていくのか,移行期医療の問題も今後重要視されていくものと思われる.
 本特集では,発達障害の中でも特に運動機能に着目して,専門的に診療研究されている執筆者の方々に,それぞれのご専門・ご経験を踏まえて多面的な視点から解説をお願いした.すなわち,小枝達也先生には発達障害全体の概要について,橋本圭司先生には早期発見の手がかりとなるツールを中心に,小池純子先生には総合療育施設における発達障害児へのリハビリテーション診療の基本的な考え方について,岩永竜一郎先生には発達性協調運動障害に焦点を当てた具体的な介入方法の詳細を,井上雅彦先生には養育者へのサポートともなり得るペアレントトレーニングの紹介とリハビリテーション実地診療における応用の考え方を,丹治和世先生には成人と小児における発達障害診療の比較と小児から成人へのトランジションにかかる問題についてそれぞれご執筆いただいた.
 本特集が読者各位の,発達障害児への多職種・多施設連携の下でのリハビリテーション診療を進めて行くうえで一助となれば幸いである.
 (編集委員会)
特集 小児発達障害のリハビリテーション−運動機能発達に着目して
 特集にあたって
 発達障害(神経発達症)とは何か 小枝達也
 神経発達症のサインと判定法 橋本圭司
 運動発達障害のリハビリテーション治療−地域療育センターの実践 小池純子
 発達性協調運動症とそのリハビリテーション 岩永竜一郎
 ペアレントトレーニングの技法のリハビリテーションへの取り入れ 井上雅彦
 成人発達障害診療からみた発達障害 丹治和世

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連載
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 9.高齢者の誤嚥性肺炎に対する舌背挙上訓練のコツ 保田祥代 小口和代・他

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 14.魅せるスライド:4.聴衆を惹きつけるプレゼンテーションのテクニック 前田圭介

知っておきたい神経科学のキィワード
 5.身体運動における誤差学習と強化学習 野崎大地

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リハビリテーション医学・医療と私
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臨床研究
 初期臨床研修におけるリハビリテーション科研修の意義と今後の課題−学内アンケート調査結果の分析を通じて− 廣畑俊和 大M倫太郎・他

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