やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 肥満症治療の基本は食事,運動,行動療法による減量であるが,長期的な有効性は証明されていない.そのような中,わが国でも2014年の腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険収載を皮切りに,2024年にはスリーブバイパス術も保険適応となり,少しずつ減量・代謝改善手術が普及しつつある.加えて,2024年にはわが国で30年ぶりの肥満症治療薬セマグルチドが発売された.それぞれ30%,10〜20%の減量効果が期待され,肥満症は治療可能な疾患になりつつある.
 そこで食事療法が不要になるかというとそうではない.外科治療と薬物治療では食事内容の変化にともない,骨格筋減少をはじめとした栄養面の新たな問題が生じうる.また,患者は心理社会的な問題を有していることが多いため,精神科/心療内科などの専門職のみならず,管理栄養士を筆頭としたチームメンバーも患者をよく理解して対応する必要がある.
 本特集では,「外科治療・薬物治療の時代に求められる 肥満症の栄養管理」と題し,チーム医療やたんぱく質摂取の重要性を栗原美香先生と竹林克士先生に,減量・代謝改善手術の最新のトピックを大城崇司先生と宇野耕平先生,矢野文章先生に,外科治療時の栄養上の注意点を吉川絵梨先生に,肥満症治療薬の特徴と注意点について内科医の立場で庄嶋伸浩先生と山内敏正先生に,管理栄養士の立場で金居理恵子先生に,サルコペニア肥満について加藤久詞先生と浅原哲子先生に,オベシティスティグマや心理社会面の注意点を端 こず恵先生と林 果林先生に,最新の知見をわかりやすくご執筆いただいた.肥満症が治療できる時代になると,管理栄養士の仕事はよい意味で増えることが予測される.肥満症治療にかかわる管理栄養士はぜひ一読されたい.
 東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝センター
 齋木厚人
特集 外科・薬物治療の時代に求められる 肥満症の栄養管理
 特集にあたって(齋木厚人)
 【総論】肥満症の栄養管理(栗原美香・竹林克士)
 高度肥満症に対する減量・代謝改善手術の現在(大城崇司 ほか)
 減量・代謝改善手術前後の栄養管理─スリーブバイパスにおける注意点を中心に(吉川絵梨)
 管理栄養士が知っておくべき肥満症治療薬の特徴と注意点(庄嶋伸浩・山内敏正)
 GLP-1受容体作動薬の骨格筋量に対する影響と栄養管理(金居理恵子・齋木厚人)
 日本におけるサルコペニア肥満の定義と診断基準(加藤久詞・浅原哲子)
 オベシティスティグマについて(端 こず恵・林 果林)

Competition
 第12回「嚥下食メニューコンテスト」

スポット
 栄養食事療法における低エネルギー甘味料の利用意義を考える(大河内友美 ほか)
 高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024の概要(小川純人)

病棟のプロフェッショナルたち
 川崎病院 地域包括医療病棟(井指歩花)

ズームアップ
 地域における外部医療機関での栄養食事指導(外来栄養食事指導料2)の経験から得られた制度活用のための課題(松田幸子 ほか)

Break
ストレス軽減! 管理栄養士のアンガーマネジメント講座(4)
 経験豊富な栄養士からみたフレッシュな栄養士とのかかわり(成瀬由紀子)

ちょこっとヨガでリフレッシュ(4)
 YOGA de筋活―疲れにくいカラダへ基礎体力アップ(鈴木純子)

連載
EBN実践につなげる! 栄養疫学研究最新トピックス(3)
 フードリテラシーと食事の質(村上健太郎)

みんなで学ぶ 栄養管理のための臨床推論ケーススタディ(4)
 意図しない体重増加がみられた在宅療養中の症例(ア美幸)

谷口先生と基礎から学び直す 体液・代謝管理(10)
 カリウムイオンの異常を読み解く―低カリウム血症,高カリウム血症に対して,適切な対応が取れるように(谷口英喜)

これだけは知っておこう 臨床栄養学ビギナー道場(11)
 経腸栄養投与スケジュールと投与経路についても知っておくべき(井上善文)

こんだてじまん
 じまんの一品ばら寿司(松風会 江藤病院/井上奈緒美 ほか)

News and Information
 日本栄養士会医療職域
 自治体病院
 精神科病院
 厚生労働省・消費者庁
 おしらせ
 REMARKS
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