やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 近年,わが国では少子化が顕著であり,2024年の出生数は70万人割れの公算が大きくなっている.また,高齢出産の増加などの背景により,超・極低出生体重児や早産児が増加している.そのため,児をいかにすくすくと成人期まで成長させ,元気に過ごさせるかということが重要となる.その大切な出発点として,UNICEFやWHOが「人生最初の1000日」というキーワードで,この期間の適切な栄養が将来の健康維持に有用であると提言している.この「人生最初の1000日」は着床から誕生までの270日と,2歳になるまでの700日を合わせた約1000日のことをさしており,その期間の栄養の重要性は,developmental origins of health and disease(DOHaD)やエピジェネティクスという言葉で表現され,注目されている.また,食物アレルギー予防の観点からも出生前後の栄養管理が見直されつつあり,さらに,生活習慣病の予防の観点からも小児期の栄養の重要性が指摘されている.
 このように,出生後の小児の栄養管理のみならず,妊娠前や胎児期の栄養状態の改善も重要であることから,わが国では「妊産婦のための食生活指針」が「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」として2021年に改定され,妊娠前から授乳期にかけた適切な栄養摂取の重要性が提言されている.
 本特集により,母体と児の栄養管理の最近の潮流を理解し,その重要性を認識していただければと考えている.
 日本大学医学部附属板橋病院 小児外科
 上原秀一郎
特集 「人生最初の1000日」の栄養を考える
 特集にあたって(上原秀一郎)
 押さえておきたいDOHaD学説の基本(中野有也 ほか)
 妊娠中のたんぱく質栄養と子の高血圧および食塩感受性―たんぱく質栄養によるエピジェネティック制御の例として(加藤久典)
 妊娠期・授乳期の栄養と小児の腸内細菌叢(橋本泰子・永田 智)
 わが国における妊婦の栄養管理の歴史─2021年新たな妊婦の体重増加指導の目安策定への変遷(伊東宏晃)
 「人生最初の1000日」のための母体妊娠中の栄養─「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」の活用(黒谷佳代・瀧本秀美)
 「人生最初の1000日」の栄養の視点からみた補完食・離乳食の実際(上田玲子)

明日から役立つ食事介助のコツ〈後編〉
 「食事介助スキルスコア」の概要と活用のポイント(永野彩乃)

スポット
 牛乳および乳製品の血糖上昇抑制効果―アイスクリームによる検討(中田恵理子 ほか)
 パターンをさがせ!―データサイエンス的アプローチからみえてきた高血圧になりにくい食事(稲田 仁・永富良一)

病棟のプロフェッショナルたち
 神奈川県立こども医療センター 小児分野(田中紀子)

Break
ストレス軽減! 管理栄養士のアンガーマネジメント講座(3)
 調理師・調理員とのかかわり(成瀬由紀子)

ちょこっとヨガでリフレッシュ(3)
 YOGA de温活―腸温活サポート(鈴木純子)

連載
EBN実践につなげる! 栄養疫学研究最新トピックス(2)
 妊娠前からの母親の食事の質と子どものぜん息症状(ぜん鳴)(大久保公美)

みんなで学ぶ 栄養管理のための臨床推論ケーススタディ(3)
 著しい食事摂取量の低下を呈した高齢独居女性の低栄養症例(宇野千晴)

臨床栄養をめぐるアルファベットストーリー(2)
 B's Story〜 Basedow's disease―名前にまつわる時空の攻防(雨海照祥)

谷口先生と基礎から学び直す 体液・代謝管理(9)
 ナトリウムイオンの異常を読み解く―低ナトリウム血症,高ナトリウム血症に対して,適切な対応が取れるように(谷口英喜)

これだけは知っておこう 臨床栄養学ビギナー道場(10)
 経腸栄養剤の分類:専門家らしく,徹底的に勉強しよう(3)(井上善文)

こんだてじまん
 じまんの一品 抹茶とベリーのモンスターゼリー(関田会 ときわ病院/松尾真里)

報告
 離乳期の子をもつ親への食育の重要性―管理栄養士,調理師が運営する「離乳食教室」の経験から(夏井唯美子 ほか)

News and Information
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 自治体病院
 精神科病院
 厚生労働省・消費者庁
 おしらせ
 REMARKS
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