特集にあたって
高齢化が進む先進国では,嚥下機能の低下した者も増加している.嚥下機能が低下した場合,病院や高齢者福祉施設では,その機能に合わせた食形態の食事が日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類に沿って提供されることが多い.
嚥下調整食は,普通食に比べ軟らかく仕上げるため,単位重量当たりの栄養価が低下する.一例として,日本食品標準成分表(八訂)の数値では,ご飯(精白米)100gはエネルギー113kcal,たんぱく質1.8g を有するのに対し,全粥(精白米)100g は65kcal,たんぱく質1.1g と,ご飯の約半分の栄養価しか含有していない.この原因は水分量の違いによる.ご飯の水分量は71%なので固形分が29%であるが,全粥の水分量は83%もあり固形分が17%しかない.つまり,軟らかい食事は水分を多く含ませることで対応するため,摂取量を十分に確保しないと栄養状態が低下する.現実では,嚥下調整食だけで摂取量を十分に確保することが困難な場合が多い.
今回の特集では,まず嚥下調整食と低栄養の関係について,前田圭介先生,清水昭雄先生,西岡心大先生にご解説をお願いした.その対策としては,栄養補助食品の利用や料理法の工夫などが考えられる.これらの点について,嶋津さゆり先生,塩濱奈保子先生,伊藤美穂子先生にご解説をいただいた.また,病院や施設で利用できる介護食品については高橋貴輝先生にご解説いただいている.さらに,退院後は在宅で嚥下調整食を摂取することになるが,病院や高齢者福祉施設とは違い,本人や家族は調理技術が十分でない場合も多い.そこで,コンビニやスーパーで販売されている栄養が強化された食品の利用と加工の工夫について,栢下淳子先生にご解説いただいた.
本特集は,嚥下機能の低下した方の栄養管理に大いに役立つことを企図している.熟読していただき,臨床現場で活かしていただければ幸甚である.
県立広島大学地域創生学部 地域創生学科
栢下 淳
高齢化が進む先進国では,嚥下機能の低下した者も増加している.嚥下機能が低下した場合,病院や高齢者福祉施設では,その機能に合わせた食形態の食事が日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類に沿って提供されることが多い.
嚥下調整食は,普通食に比べ軟らかく仕上げるため,単位重量当たりの栄養価が低下する.一例として,日本食品標準成分表(八訂)の数値では,ご飯(精白米)100gはエネルギー113kcal,たんぱく質1.8g を有するのに対し,全粥(精白米)100g は65kcal,たんぱく質1.1g と,ご飯の約半分の栄養価しか含有していない.この原因は水分量の違いによる.ご飯の水分量は71%なので固形分が29%であるが,全粥の水分量は83%もあり固形分が17%しかない.つまり,軟らかい食事は水分を多く含ませることで対応するため,摂取量を十分に確保しないと栄養状態が低下する.現実では,嚥下調整食だけで摂取量を十分に確保することが困難な場合が多い.
今回の特集では,まず嚥下調整食と低栄養の関係について,前田圭介先生,清水昭雄先生,西岡心大先生にご解説をお願いした.その対策としては,栄養補助食品の利用や料理法の工夫などが考えられる.これらの点について,嶋津さゆり先生,塩濱奈保子先生,伊藤美穂子先生にご解説をいただいた.また,病院や施設で利用できる介護食品については高橋貴輝先生にご解説いただいている.さらに,退院後は在宅で嚥下調整食を摂取することになるが,病院や高齢者福祉施設とは違い,本人や家族は調理技術が十分でない場合も多い.そこで,コンビニやスーパーで販売されている栄養が強化された食品の利用と加工の工夫について,栢下淳子先生にご解説いただいた.
本特集は,嚥下機能の低下した方の栄養管理に大いに役立つことを企図している.熟読していただき,臨床現場で活かしていただければ幸甚である.
県立広島大学地域創生学部 地域創生学科
栢下 淳
特集 低栄養を防ぐ! 嚥下調整食の工夫と活用
特集にあたって(栢下 淳)
摂食嚥下障害患者における低栄養対策(前田圭介)
嚥下調整食摂取による低栄養およびサルコペニアのリスク(清水昭雄)
回復期リハビリテーション病棟における低栄養への対策(西岡心大)
【摂食嚥下障害における低栄養予防のための実践】
MCT(中鎖脂肪)食品とプロテインの活用(嶋津さゆり)
加水ゼロ式調理法(塩濱奈保子)
在宅での調理における工夫(伊藤美穂子)
市販介護用食品の活用(高橋貴輝・栢下 淳)
市販食品の嚥下調整食への応用―スーパー,コンビニ商品の活用と工夫(栢下淳子)
Competition
第10回「嚥下食メニューコンテスト」
活動レポート 栄養ケア・ステーション
機能強化型認定栄養ケア・ステーション
在宅栄養もぐもぐ大阪(水島美保)
ぷろらぼ 研究室で学んでみませんか
地域コミュニティで活躍できる「実践力」を鍛える!
大妻女子大学家政学部 食物学科/大学院人間文化研究科
(川口美喜子研究室)
スポット
肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイントについて(西影星二・他)
クレアチニン,シスタチンCによる腎機能評価の特性を応用した骨格筋量評価の試み(吉田貞夫)
連載
リハ栄養診断推論を究める! 誌上ケースカンファレンス
vol.4 脳梗塞後遺症のため右半身麻痺のある超高齢者で,転倒骨折を契機に体重減少がみられた症例(浦田ちひろ・小蔵要司・若林秀隆)
Case Reportに学ぶ 摂食嚥下障害の栄養アセスメントと介入のコツ(7)
脳梗塞後遺症による高度摂食嚥下障害患者への対応
―患者の意向に寄り添ったチームアプローチが有効であった一例(松本英子)
宮島流! 病棟栄養士のためのケースカンファレンス活用術
CASE 16 重症貧血(宮島 功)
Medical Nutritionist養成講座(64)
静脈栄養剤の種類と選択:微量栄養素にも注目すべき(井上善文)
『日本食品標準成分表』の活用でもっと深まる 食品と調理のキソ知識(48)
調理済み流通食品類3(渡邊智子)
ORIGAMI ART―食に活かすおりがみ/食の教養
ゼンマイ(西田良子・上田浩史)
こんだてじまん
じまんの一品料理 彩りいなり
医療法人真鶴会 小倉第一病院(池淵雅士美)
国家試験
第37回管理栄養士国家試験 問題
News & Information
日本栄養士会医療職域 2022年度政策事業「全国病院栄養部門実態調査」結果報告(須永将広)
自治体病院 茨城県立こども病院の最近の取り組み(加藤かな江)
精神科病院 新年度にあたり(西宮弘之)
厚生労働省・消費者庁 糖尿病対策に係る中間とりまとめ・他
おしらせ 第109回日本消化器病学会総会・他
REMARKS―編集委員のひとこと
JCNパズル
特集にあたって(栢下 淳)
摂食嚥下障害患者における低栄養対策(前田圭介)
嚥下調整食摂取による低栄養およびサルコペニアのリスク(清水昭雄)
回復期リハビリテーション病棟における低栄養への対策(西岡心大)
【摂食嚥下障害における低栄養予防のための実践】
MCT(中鎖脂肪)食品とプロテインの活用(嶋津さゆり)
加水ゼロ式調理法(塩濱奈保子)
在宅での調理における工夫(伊藤美穂子)
市販介護用食品の活用(高橋貴輝・栢下 淳)
市販食品の嚥下調整食への応用―スーパー,コンビニ商品の活用と工夫(栢下淳子)
Competition
第10回「嚥下食メニューコンテスト」
活動レポート 栄養ケア・ステーション
機能強化型認定栄養ケア・ステーション
在宅栄養もぐもぐ大阪(水島美保)
ぷろらぼ 研究室で学んでみませんか
地域コミュニティで活躍できる「実践力」を鍛える!
大妻女子大学家政学部 食物学科/大学院人間文化研究科
(川口美喜子研究室)
スポット
肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイントについて(西影星二・他)
クレアチニン,シスタチンCによる腎機能評価の特性を応用した骨格筋量評価の試み(吉田貞夫)
連載
リハ栄養診断推論を究める! 誌上ケースカンファレンス
vol.4 脳梗塞後遺症のため右半身麻痺のある超高齢者で,転倒骨折を契機に体重減少がみられた症例(浦田ちひろ・小蔵要司・若林秀隆)
Case Reportに学ぶ 摂食嚥下障害の栄養アセスメントと介入のコツ(7)
脳梗塞後遺症による高度摂食嚥下障害患者への対応
―患者の意向に寄り添ったチームアプローチが有効であった一例(松本英子)
宮島流! 病棟栄養士のためのケースカンファレンス活用術
CASE 16 重症貧血(宮島 功)
Medical Nutritionist養成講座(64)
静脈栄養剤の種類と選択:微量栄養素にも注目すべき(井上善文)
『日本食品標準成分表』の活用でもっと深まる 食品と調理のキソ知識(48)
調理済み流通食品類3(渡邊智子)
ORIGAMI ART―食に活かすおりがみ/食の教養
ゼンマイ(西田良子・上田浩史)
こんだてじまん
じまんの一品料理 彩りいなり
医療法人真鶴会 小倉第一病院(池淵雅士美)
国家試験
第37回管理栄養士国家試験 問題
News & Information
日本栄養士会医療職域 2022年度政策事業「全国病院栄養部門実態調査」結果報告(須永将広)
自治体病院 茨城県立こども病院の最近の取り組み(加藤かな江)
精神科病院 新年度にあたり(西宮弘之)
厚生労働省・消費者庁 糖尿病対策に係る中間とりまとめ・他
おしらせ 第109回日本消化器病学会総会・他
REMARKS―編集委員のひとこと
JCNパズル