特集にあたって
肥満,メタボリックシンドローム,生活習慣病,糖尿病,心血管疾患など,現代の健康問題は必ずしも思うように改善していない.食事がもっとも大きな要因であることはよく知られており,エネルギー産生栄養素である,脂質,糖質の栄養が重要だと考えられている.これまで主に脂質の栄養が注目されてきたが,最近になり,糖質,とくに後から加えられるアデッドシュガー(添加糖類)の健康への影響に注目が集まっている.2012年にNature 誌に“The toxic truth about sugar”という論説が掲載され,改めてアデッドシュガーの問題がクローズアップされるようになってきた.2015年にはWHOがフリーシュガー(遊離糖類)の摂取を抑えるようこれまでよりも強い勧告を出した.さらに,WHOは加糖飲料に税金をかけるよう各国に要請するようになった.すでに多くの国で砂糖税が導入され,アデッドシュガーに関係する公衆衛生上の政策に大きなパラダイムシフトが起きている.
一方,アデッドシュガーの健康へのマイナス面だけではなく,これまであまり注目されてこなかった,新規の糖質の研究が進み,生活習慣病に対して有益な影響を与えることもわかってきた.アデッドシュガーの健康への主要な影響は,フルクトースの問題であることがわかっている.生化学の教科書においても,その代謝経路が詳しく記述されており,脂質代謝異常のメカニズムも書かれている.ところが,これらの記述のほとんどは半世紀前の結果を基にしており,いくつかの問題点が指摘されてきた.最近になり,フルクトースの代謝が主に肝臓で起こるのではなく,小腸が主要な臓器であることがわかり,さらに腸内細菌叢が重要であることもわかってきた.いま,生化学における,フルクトース代謝の大きなパラダイムシフトが起きている.また,糖の食欲を制御する腸-脳相関系による機構なども新たに明らかになってきた.
このような現状を踏まえ,アデッドシュガーと健康との関連や世界的な社会政策の動向,また機能性糖質や希少糖の特徴,さらに日本料理からみた砂糖などの観点から最新情報をご提供いただいた.アデッドシュガーと健康のかかわりを改めて考える機会となり,肥満やメタボリックシンドロームをはじめ,さまざまな疾患の予防につながるような食生活を考える機会になればと考えている.
名古屋大学大学院生命農学研究科 栄養生化学研究室
小田裕昭
肥満,メタボリックシンドローム,生活習慣病,糖尿病,心血管疾患など,現代の健康問題は必ずしも思うように改善していない.食事がもっとも大きな要因であることはよく知られており,エネルギー産生栄養素である,脂質,糖質の栄養が重要だと考えられている.これまで主に脂質の栄養が注目されてきたが,最近になり,糖質,とくに後から加えられるアデッドシュガー(添加糖類)の健康への影響に注目が集まっている.2012年にNature 誌に“The toxic truth about sugar”という論説が掲載され,改めてアデッドシュガーの問題がクローズアップされるようになってきた.2015年にはWHOがフリーシュガー(遊離糖類)の摂取を抑えるようこれまでよりも強い勧告を出した.さらに,WHOは加糖飲料に税金をかけるよう各国に要請するようになった.すでに多くの国で砂糖税が導入され,アデッドシュガーに関係する公衆衛生上の政策に大きなパラダイムシフトが起きている.
一方,アデッドシュガーの健康へのマイナス面だけではなく,これまであまり注目されてこなかった,新規の糖質の研究が進み,生活習慣病に対して有益な影響を与えることもわかってきた.アデッドシュガーの健康への主要な影響は,フルクトースの問題であることがわかっている.生化学の教科書においても,その代謝経路が詳しく記述されており,脂質代謝異常のメカニズムも書かれている.ところが,これらの記述のほとんどは半世紀前の結果を基にしており,いくつかの問題点が指摘されてきた.最近になり,フルクトースの代謝が主に肝臓で起こるのではなく,小腸が主要な臓器であることがわかり,さらに腸内細菌叢が重要であることもわかってきた.いま,生化学における,フルクトース代謝の大きなパラダイムシフトが起きている.また,糖の食欲を制御する腸-脳相関系による機構なども新たに明らかになってきた.
このような現状を踏まえ,アデッドシュガーと健康との関連や世界的な社会政策の動向,また機能性糖質や希少糖の特徴,さらに日本料理からみた砂糖などの観点から最新情報をご提供いただいた.アデッドシュガーと健康のかかわりを改めて考える機会となり,肥満やメタボリックシンドロームをはじめ,さまざまな疾患の予防につながるような食生活を考える機会になればと考えている.
名古屋大学大学院生命農学研究科 栄養生化学研究室
小田裕昭
特集 最新知見に学ぶ! フリーシュガー/アデッドシュガーと健康のかかわり
特集にあたって 小田裕昭
フリーシュガー・アデッドシュガーと健康を取り巻く現状 小田裕昭
スクロース・フルクトース代謝の新パラダイム 小田裕昭・孫 淑敏
糖の摂取を調節するメカニズム 松居 翔・他
遊離糖類・添加糖類と疾患との関連 飯塚勝美
フラクトオリゴ糖と健康 倉重(岩崎)恵子・他
希少糖が健康に与える影響 小林俊博・村尾孝児
砂糖と日本料理 橋拓児
諸外国における砂糖をめぐる健康政策−砂糖税を中心に 櫻井宏明
管理栄養士の未来を彩る! 「食&色」コーディネート(2)
食卓の色彩 吉田美代子
活動レポート 栄養ケア・ステーション
特別編 京都府で活動する認定栄養ケア・ステーション
スポット
矯正施設給食についての概説〈後編〉 黒蛹j子
肥満と気管支喘息 党 雅子
連載
宮島流! 病棟栄養士のためのケースカンファレンス活用術
CASE 6 肝硬変 宮島 功
ビタミン栄養学UPDATE−新たな臨床的意義の確立に向けて(6)
乳幼児・小児とビタミン 瀧谷公隆
Medical Nutritionist養成講座(54)
胃瘻の適応について考える 井上善文
『日本食品標準成分表』の活用でもっと深まる 食品と調理のキソ知識(38)
魚介類5 渡邊智子
ORIGAMI ART−食に活かすおりがみ/食の教養
ズッキーニ 西田良子・上田浩史
こんだてじまん
じまんの一品料理 和風おろしハンバーグ
公益財団法人東京都保健医療公社 豊島病院 細井みどり・他
研究・調査
急性期脳卒中症例における経鼻経管栄養から経口栄養への移行に関連する因子の検討 立原文代・他
国家試験
第36回管理栄養士国家試験 解答・解説(2)
News & Information
日本栄養士会医療職域 令和4年度診療報酬改定にともなうQ&A 須永将広
自治体病院 コロナ禍における職場内感染予防対策と食事提供業務継続計画(BCP)作成の取り組み 久田和子
精神科病院 一般社団法人全国精神科栄養士協会 第16回NNPセミナーin横浜 報告 和田明子
厚生労働省・消費者庁 小児の原因不明の急性肝炎について・他
おしらせ 公益信託 タニタ健康体重基金 2022年度応募受付開始・他
REMARKS−編集委員のひとこと
JCNパズル
特集にあたって 小田裕昭
フリーシュガー・アデッドシュガーと健康を取り巻く現状 小田裕昭
スクロース・フルクトース代謝の新パラダイム 小田裕昭・孫 淑敏
糖の摂取を調節するメカニズム 松居 翔・他
遊離糖類・添加糖類と疾患との関連 飯塚勝美
フラクトオリゴ糖と健康 倉重(岩崎)恵子・他
希少糖が健康に与える影響 小林俊博・村尾孝児
砂糖と日本料理 橋拓児
諸外国における砂糖をめぐる健康政策−砂糖税を中心に 櫻井宏明
管理栄養士の未来を彩る! 「食&色」コーディネート(2)
食卓の色彩 吉田美代子
活動レポート 栄養ケア・ステーション
特別編 京都府で活動する認定栄養ケア・ステーション
スポット
矯正施設給食についての概説〈後編〉 黒蛹j子
肥満と気管支喘息 党 雅子
連載
宮島流! 病棟栄養士のためのケースカンファレンス活用術
CASE 6 肝硬変 宮島 功
ビタミン栄養学UPDATE−新たな臨床的意義の確立に向けて(6)
乳幼児・小児とビタミン 瀧谷公隆
Medical Nutritionist養成講座(54)
胃瘻の適応について考える 井上善文
『日本食品標準成分表』の活用でもっと深まる 食品と調理のキソ知識(38)
魚介類5 渡邊智子
ORIGAMI ART−食に活かすおりがみ/食の教養
ズッキーニ 西田良子・上田浩史
こんだてじまん
じまんの一品料理 和風おろしハンバーグ
公益財団法人東京都保健医療公社 豊島病院 細井みどり・他
研究・調査
急性期脳卒中症例における経鼻経管栄養から経口栄養への移行に関連する因子の検討 立原文代・他
国家試験
第36回管理栄養士国家試験 解答・解説(2)
News & Information
日本栄養士会医療職域 令和4年度診療報酬改定にともなうQ&A 須永将広
自治体病院 コロナ禍における職場内感染予防対策と食事提供業務継続計画(BCP)作成の取り組み 久田和子
精神科病院 一般社団法人全国精神科栄養士協会 第16回NNPセミナーin横浜 報告 和田明子
厚生労働省・消費者庁 小児の原因不明の急性肝炎について・他
おしらせ 公益信託 タニタ健康体重基金 2022年度応募受付開始・他
REMARKS−編集委員のひとこと
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