やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 近年の歯科用修復材料の発展は目覚ましく,われわれ歯科医師にはさまざまなマテリアルが提供されるようになり日常臨床は大きく変革を遂げた.歯冠修復材料の歴史は,1950年代にPFM(porcelain-fused-to-metal)が歯科臨床に導入され,世界的にも普及し日本においても長年使用されてきた.PFMは審美性に優れたポーセレンを金属に焼き付けることにより強度と耐久性を兼ね備えているが,歯頸部のシャドウを含む審美性の限界,および金属アレルギーの回避の観点からメタルフリーを実現すべく高強度なコア材料の開発が待望された.歯科用CAD/CAMシステムの発展もあいまってジルコニアが歯科材料として臨床応用され,日本においては2005年にCerconが承認されたが,当初はコア材料(フレーム)として用いられてきた 1),2).このため,高強度・高靱性の従来型TZP(Tetragonal Zirconia Polycrystal:正方晶多結晶体)が用いられ,透過性が低いため長石系陶材で前装されてきた.最近では,強度は低くなるが透過性の高いジルコニアも要望され,陶材を前装しないモノリシック冠が主流となってきており 3),さらには高強度・高靱性の従来型TZPをロングスパンのブリッジのフレーム,インプラント補綴のアバットメント・上部構造に用いるようになり,われわれの日常臨床において幅広く使用できるマテリアルとなっている.
 さまざまな症例で使用できるようになったジルコニアは日常臨床を一変させ,天然歯における補綴治療はもちろんのこと,特にインプラント治療においては目を見張る発展を遂げている.マテリアルの変遷が補綴治療そのものを大きく変化させ,患者・歯科医師・歯科技工士に大きな恩恵を与えている.今回,2005年に初診で来院された患者に対しフルマウスの治療を行ったが,数年後に補綴装置にトラブルが発生して再治療が必要になった症例を経験した.初診時,最も適切であると考えて選択したマテリアルであったが,再治療時には異なるマテリアルを選択することになり,また,その製作方法も大きく異なることになった.マテリアルおよびその製作方法の違いが治療に大きく影響を与え,全く異なる治療結果をもたらした症例を報告する.

 1)伴 清治:高強度セラミックスの歯科修復物への応用.金属,72(2):135-140,2002.
 2)伴 清治:メタルフリーを実現するためのジルコニアの材料特性.歯産学誌,20(2):22-27,2006.
 3)伴 清治:歯科用ジルコニア材料科学入門 第12回この2年で何が変わったのか?.補綴臨床,48(3):316-333,2015.
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