やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 補綴治療の原則は,「審美」「機能」「生物学的恒常性」「構造力学的安定」を図ることが基本となる.これらの各要素が満たされていない補綴治療では,長期的な安定を得ることはできない.
 この中でも,特に対応が難しいのが「機能」へのアプローチである.生体は一人ひとり個体差があり,また反応も患者によって異なる.咬合に不具合があった場合に,歯周組織に問題が生じる患者もいれば,歯が破折する・はじめに磨り減る,顎関節に問題が生じる,といったように問題が発生する箇所も患者によって異なるのである(図1) 1).そのため,われわれはプロビジョナルレストレーションを通して生体の反応を見極め,必要に応じて調整を行い,最終補綴物へ移行する.
 残存歯が多く,顎機能に問題がない患者であれば,既存の顎位を維持したまま補綴治療が可能であるが,歯の摩耗(wear)が著しい患者や,多数歯にわたる欠損がある患者などでは,既存の顎位の診断を行い,歯列を三次元的に再構築する必要がある.
 その際に重要となるのが,咬合高径(Occlusal height),咬合平面(Occlusal plane),咬合彎曲(Occlusalcurve)である.この三要素のバランスがとれていないと,咬頭嵌合位の安定性や前・側方運動時のガイドなど適正な咬合の付与が困難になり,なんらかの部位に為害作用が及ぶことになる.
 本稿では,この三要素の中から咬合高径に焦点を当て,その診断方法や臨床での対処方法について整理したい.

 1)土屋賢司:包括的治療戦略 Vol.2 for Functional Management.医歯薬出版,2019.
Special Article
特集 咬合高径決定のガイドラインに基づく包括的治療戦略
 ―Harvold-McNamara triangleによる咬合高径の検討
 (土屋賢司)

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速報 令和6年6月1日実施の歯科診療報酬改定について
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