やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに―本特集にあたって
 さて,読者の皆さんは日々の検査データについて,どのように評価していますか?
 臨床化学検査は自動化が進んでいる分野です.日常検査において臨床検査技師の手がかかわるのは検体の前処理くらい,分析装置に搭載すれば後は機械が勝手に測定,結果は自動送信される,そんな施設もあるのではないでしょうか.
 そんななか,皆さんの手元に残るのは異常データだけ.普段データを見ていないのに,異常データだけ適切に評価しろと言われても…….不安しかないその気持ち,わかります.
 このほど,読者の方から「よくある生化学異常データと,その解釈について教えて下さい」というご要望をいただきました.そこで,臨床化学検査の“異常値“事例について,“検査データから変動要因を推測する”形式の特集を,今月号を含む2本立てでお届けする予定です ※.
 第1弾となる本特集は,臨床化学検査で日常的に遭遇する“患者病態を反映した異常値”にフォーカスして企画しました.まずは,提示された症例データについて,自分なりに評価してみて下さい.その後は解説を通じて,作問者がどの検査項目に注目し,どのようにデータを読み解いているかを一緒に確認し,自分の考えと比較してみて下さい.
 検査データの変動には理由があります.焦らずゆっくりと順序立てて評価していけば,ほとんどの症例は基礎的な知識だけで問題なく読み解けるはずです.当然のことです.新人の方が評価するにしても,たとえば中堅どころの私が評価するにしても,各項目の臨床的意義や項目間相関は変わらないのですから.
 本特集では,一般的な項目を網羅的に学べる症例を選択し,明日から役立つデータ判読のコツやポイントを習得できるようにしました.さらに,同時掲載コーナー“特集とあわせて読みたい”では,緊急異常値(パニック値)・警戒値の設定や対応方法についてもまとめています.
 願わくば,状況に応じた多角的なデータ評価とその対応ができる臨床検査技師へ.さあ,次のページが旅立ちのファンファーレです.
 ※第2弾は,2026年6月号以降の掲載を予定しています.
 監修 三好雅士(徳島大学病院 医療技術部)
特集 どう読む!? よくある臨床化学検査の異常データ
 はじめに―本特集にあたって
  (三好雅士)
 1.検査値を読み解く考え方と評価手順
  (石嶺南生)
 2.項目から読み解く異常データ
  Question 1
  (寺田 祥)
  Question 2
  (河野正臣)
  Question 3
  (黄江泰晴)
  Question 4
  (三好雅士)
  Question 5
  (倉村英二)
  Question 6
  (山本裕之・下間雅夫・山田幸司・稲葉 亨)
  Question 7
  (牟田誠矢・早田峰子・井上賢二・川野祐幸・内藤嘉紀)
  Question 8
  (山本 肇)
  Question 9
  (小堺利恵)
  Question 10
  (中野恵一)
  特集とあわせて読みたい 緊急異常値(パニック値)/警戒値の対応方法
  (汐谷陽子)

Editorial―今月のことば
 熟練と新風の融合
 (奈良信雄)

クライテリア確立のための細胞所見―鑑別疾患と重要所見
 2.唾液腺・耳下腺領域
 (島田直樹)

基礎講座
 基本から学ぶ聴力検査の実際
 (野原秀明)
 随時尿(スポット尿)における臨床検査の注意点
 (石澤毅士・菊池春人)

MT Seminar
 おさえておきたい 体腔液の生化学検査項目
 (保科ひづる・伊藤 浩)
 シリーズ 不安解消! 高齢の患者さんへの対応(前編:介助や体位変換)
 (佐々木舞子)

FOCUS
 シリーズ 臨床検査とAIの活用
 1.検体検査部門
 (高山知子・大江宏康)

薬剤感受性検査データ(MIC)の読み方と耐性菌検査
 グラム陽性菌編
 4.Streptococcus pneumoniae,Viridans group Streptococcus spp.
 (大瀧博文)

臨床検査技師のための資格ガイド
 日本臨床一般検査学会編
 4.専門・認定腎臓病検査技師
 (伊藤彰洋・星 雅人)

Information
 日本心エコー図学会第36回学術集会
 日本医療検査科学会第39回春季セミナー
 第30回第1種ME技術実力検定試験講習
 第30回第1種ME技術実力検定試験

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 編集後記・次号予告