1992年当時,回転パノラマ撮影装置のデジタル化に一応成功したものの,被曝線量,計算時間,画質,コストともに従来のフィルム法に比較して著しく性能が劣り,まったく実用化のめどがたたず,研究に行き詰まっていました.そんなとき,当時から熱心に顎関節を研究していた本田和也先生が私の開発したデジタルパノラマ装置を指さして,「顎関節を3次元でみられないか?」と質問され,私は「原理的に不可能」とお答えしました.そう答えた自分でしたが,必要性があるのなら開発を開始しようと心に決め,この歯科用小型X線CTの開発が始まりました.ちょうど,沖縄へ離島診療に出張する機会にめぐまれ,じっくり考える機会を得て構想をねりました. 開発にはX線管球が頭部の周囲を360°回転する装置が必要であったので,当時,世界で唯一それを満たす,歯科用多機能撮影装置(Scanora,Soredex Co.,Finland)をどうしても実験機として必要としていました.そこで,この装置を開発したFinlandのTurku大学のErkki Tammisalo教授のところへ留学を決意し,1995年4月より9カ月間留学しました.現地で,Scanoraを改造した装置で何とか顎関節の3次元画像の再構築に成功したのは,帰国間近の12月でした.帰国のときにTammisalo教授より,研究遂行のためにこのScanoraが必要であろうと,その実験機を譲っていただき日本に持ち帰ることができました.その後,2年間,理論値が出るまで研究を続け,1997年の11月に完成し,その翌月には臨床応用を開始しました.その後,技術移転をしてモリタ製作所が実用機として“3DX multi image micro CT”を完成させ,輸出第1号機がTammisalo先生の診療所に2002年2月に設置され,稼働を開始しました.Tammisalo先生にはわが子が凱旋したように喜んでいただき,開発が完了したことを報告できたことは,開発した者でしか理解できない至福でありました. この10年間,開発を断念する機会は無数にありましたが,それを支えていただいた篠田宏司教授,西連寺永康教授,E.Tammisalo教授をはじめ,本田和也先生,岩井一男先生に御礼申しあげます.また,モリタ製作所の森田隆一郎社長をはじめ,牧野高雄様,森啓介様,橘昭文様,鈴木正和様,中井照二様,堀田光彦様,技術移転にご苦労をいただいた日本大学国際産業技術・ビジネス育成センタ-のコ-ディネ-タ-片山充子様,3DXの撮影および処理をしていただいた佐藤精明技師,丸橋一夫技師,本城谷孝技師,里見智恵子技師,6,400症例のデ-タベ-スを運用していただいた加島正浩先生,鈴木ひとみ先生,高野由美先生,秋山裕先生に御礼申しげます.また,以下の補助金により本装置の研究開発が行えました.日本大学歯学部佐藤奨学金,日本大学歯学部上村奨学金,日本大学歯学部総合歯学研究所,日本大学学術研究助成金,日本歯科医学会受託研究補助金,文部省私学助成金(高度化推進新技術開発研究),文部省科学研究費,近畿通産局新規産業創造技術開発補助事業,文部科学省学術フロンティア推進事業,モリタ製作所受託研究費,松本歯科大学特別研究費補助金.そして最後に,わが家族,とくに妻良江に深謝します.
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