やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

新編第2版の序
 食品の成り立ちの学びは,食品学総論において食品の成分論や物性論,保存や加熱による変化などを通してその特質を理解し,各論では食品群の一般的特徴や個別食品の特徴と性状を学び,また,これらを食品学実験によって後押しする形をとっています.そしてこれらの学びを通して,食品の好ましい活用によって豊かな食生活を形作る力を培うことを目的としています.
 そのため本書の原編は,数千品目に及ぶ食品を類型化し,それらの代表的食品の特徴や性状ついて基本的で正確な知識や情報をとりまとめ,1999年に刊行されました.長きにわたって多くの学生の皆さんに活用されてきましたが,その間の食品を取り巻く研究や技術の発展をふまえて,2018年原編の特徴を維持しつつ,新たな知見や将来につながる事項を加え,収載品目も増やしてさらに充実を図り,新編として刊行しました.
 その新編も発刊から5年が経過したこともあり,統計資料の更新や若干の加筆,読者の利便を図る補足を行うこととしました.食品の好ましい活用は,市場や店頭に並ぶ食材の山からよりよい品質のものを選ぶことから始まります.しかし従来の食品学では,これらは食品材料学の裾野部分に相当するので,ほとんど語られませんでした.そこで,本書第2版では,各種統計資料を刷新し,また「おいしい食材の選び方」について紙面を圧迫しない範囲で手短に「補足事項」として収録し,さらに索引語を大幅に充実させ,読者の利便を図ることにしました.本書が,書名にある“各論の本の標準”にさらに近づくよう,そして,大地や海の恵みである食品を好ましく活用でき,豊かな食生活を形作る力を培える一助となるよう今後も目指す所存です.皆様からの忌憚のないご批判やご意見を頂ければ幸甚です.
 2023年 春
 改訂第2版編者 高橋幸資


新編の序
 本書は,大学,専門学校等の食品および栄養関係学科のテキスト,管理栄養士国家試験の参考書として1999年に刊行され,以来19年間にわたり多くの学生の皆さんに利用されてきました.
 この間,食品および関係分野の研究が進歩し,農畜水産技術,保蔵技術,調理・加工技術,流通管理技術も発達しました.日本食品標準成分表も七訂版として刷新され,炭水化物・脂肪酸・アミノ酸の組成表も充実されました.一方教育面においても,大学院や研究機関等に進む人も増え,専門職大学制度が新たに始まるなど,教育環境の変化もありました.
 そのため,原編の見直しとともに適宜増改訂する必要が生じ,今般,その任の機会を頂くこととなりました.そこで,特徴ある原編の内容の根幹的部分は維持しつつ,新たな知見や将来につながる事項について増補し,新編として制作することとしました.
 本書では,ポピュラーな食品を中心としつつも,できるだけ多くの食品を収録し,原編と同様に英語名を付記しました.植物性食品の植物学分類は,ゲノム解析から実証的に構築したAPG植物分類体系に基づいて記し,高知学園短期大学元教授・元牧野植物園評議員の寺峰孜氏に校閲頂きました.菓子類は,原編では扱いませんでしたが,嗜好食品であっても食品機能も付加され消費も増えていることから,新たに増補し,概要を記すことにしました.
 解説本文(基本的事項中心の記述)と,補足事項(細部や注釈など)や参考事項(発展的な内容)とを区分した紙面とし,食品のイラストも増やしてイメージしやすくし,内容の充実と読者の利便を図りました.用語の表記は,原則的に次のように統一しました,生体成分や栄養成分用語は,「タンパク質」のようにカタカナ表記,原料となる動植物食品名・原料に近い加工食品名・解剖用語に近い食品名および外国語由来食品名は,「コメ」「キャベツ」「リンゴ」「ウシ」「モモ」「アジ」「ダイズ油」「チーズ」のようにカタカナ中心の表記に,加工食品名は,「小麦粉」「醤油」「みりん」のように漢字やひらがな表記とし,読みにくい場合はルビや「・」をふりました.
 本書を制作するに当たって,多くの公的機関の調査資料や文献を参考にさせて頂きました.巻末に挙げてお礼申し上げます.不十分なところもあると思いますが,皆様からのご批判やご意見を頂いて,自然の恵みである食品の性状とその利用の知恵を学び,活用するための一助となるよう,さらなる充実を目指す所存です.
 2018年 夏
 新編編者 高橋幸資


原編の序
 食品学の分野は,大きく分けて食品学総論と食品学各論とに分けられている.個別の食品に共通の食品成分や物性を対象とする総論に対して,各論では当然のことながら,さまざまな食品の備えている,それぞれの性質・性状に触れることになり,その分野はたいへん多岐にわたっている.さらに,時代の推移とともにこれまで食卓にのらなかった食品も新規に登場してきた.品種改良や産地の拡大などの条件から,同一食品といっても実質は変わっている食品もある.
 このような状況の中で,食品学各論は常に新しいものが求められる.日本食品標準成分表も,10数年にわたって使用されてきた四訂版から五訂版へと,食品・成分項目など,新たな装いでの刊行が準備されている.また,管理栄養士国家試験制度の改革をはじめ,栄養士養成をめぐる教育分野にも新しい動きがみられている.
 一方,ジャーナリズムや生産側からはますます多彩な食品関係情報が提供され,時として消費者は溢れる情報に惑わされかねない現象も表れている.このような時代なればこそ,正確で基本的な食品知識が求められているといえよう.
 そこで本書では,こうした時代に対応するものとして,特に次の諸点に留意して,基本となる食品知識を取りまとめた.
 1.大学,短大,専門学校で食品関係学科を学ぶためのテキストとすることを前提としながら,管理栄養士国家試験受験のための参考書としても使えるように配慮した.
 2.できるだけ日本食品標準成分表五訂版新規食品編に収載された食品も取りあげた.また,従来カロチン,カロチイドと呼ばれていた呼称は日本食品標準成分表五訂版新規食品編に準じてカロテン,カロテノイドとした(日本化学会もこれによっている).
 3.日本の伝統的な食文化の理解を助けるため,また正確な用語を正しく読めるよう考慮して,食品名の単語や日常なじみのない単語にはルビをふった.
 4.生産・消費の実態については,参考となるものを巻末にまとめた.さらに新しいデータを身近なところから入手できるように,手軽な情報源としての参考書籍をあげて検索の便をはかった.

 執筆に際しては,多くの先輩諸氏の著書を参考にさせていただいた.執筆者を代表してお礼申しあげます.
 1999年 初夏
 編者 澤野 勉
1 食生活と食品学各論
 (高橋幸資)
 1 食品学各論の位置づけ
  1.食品学総論と食品学各論
  2.食品の分類と種類
 2 食品と食物
  1.食品の条件
  2.食品の用語
  3.食品の性状と成分
 3 現代の食生活と食品
  1.風土と食品
  2.社会の変化と食
  3.商品としての食品の特性
  4.食の今と課題
2 植物性食品
 1 穀類(高橋幸資)
     1.コメ
     2.コムギ
     3.オオムギ
     4.その他のムギ類
     5.トウモロコシ
     6.ソバ
     7.その他の穀類
 2 イモ類(高橋幸資)
     1.ジャガイモ(バレイショ)
     2.サツマイモ
     3.サトイモ
     4.ヤマノイモ
     5.コンニャクイモ
     6.キャッサバ
     7.キクイモ
     8.その他のイモ
 3 マメ類(岡本匡代,丹尾式希)
   タンパク質・脂質に富むマメ
     1.ダイズ
     2.ラッカセイ
   糖質・タンパク質に富むマメ
     1.アズキ
     2.インゲンマメ
     3.ソラマメ
     4.エンドウ
     5.ササゲ
     6.ヒヨコマメ
     7.ライマメ
     8.紅花インゲン
     9.レンズマメ
     10.リョクトウ
   多水分で野菜に近い発芽体
     1.モヤシ
 4 種実類(西出充コ)
   種子類
    ◆デンプンに富む種子類
     1.ハスの実
    ◆脂質・タンパク質に富む種子類
     1.アサの実
     2.カボチャの種
     3.ケシの実
     4.ゴマ
     5.スイカの種
     6.ヒマワリの種
   堅果類
    ◆デンプンに富む堅果類
     1.ギンナン
     2.クリ
     3.シイの実
     4.トチの実
     5.ヒシの実
    ◆脂質・タンパク質に富む堅果類
     1.アーモンド
     2.カシューナッツ
     3.カヤの実
     4.クルミ
     5.ココナッツ
     6.ピスタチオ
     7.ヘーゼルナッツ
     8.ペカン
     9.マカダミアナッツ
     10.マツの実
 5 野菜類(稲熊隆博)
   葉菜類
     1.キャベツ類
     2.シソ
     3.シュンギク
     4.ニラ
     5.ネギ
     6.ハクサイ
     7.ホウレンソウ
     8.モロヘイヤ
     9.レタス類
   茎菜類
     1.アスパラガス
     2.ウド
     3.セロリ
     4.タケノコ
     5.タマネギ
     6.ニンニク
   根菜類
     1.カブ
     2.ゴボウ
     3.ショウガ
     4.ダイコン
     5.ニンジン
     6.ユリ根
     7.レンコン
     8.ワサビ
   果菜類
     1.オクラ
     2.カボチャ
     3.キュウリ
     4.トマト類
     5.ナス
     6.ピーマン・トウガラシ
   花菜類
     1.カリフラワー
     2.ブロッコリー
     3.ミョウガ
     4.中国野菜
     5.エディブルフラワー
     6.野菜加工品
 6 果実類(西出充コ)
   仁果類
     1.カリン
     2.ナシ
     3.ビワ
     4.マルメロ
     5.リンゴ
   柿果類
     1.カキ
   柑橘類
    ◆ミカン属ミカン類
     1.ウンシュウ(温州)ミカン
     2.ポンカン(椪柑)
    ◆ミカン属オレンジ類
     1.オレンジ
    ◆ミカン属グレープフルーツ類
     1.グレープフルーツ
    ◆ミカン属香酸柑橘類
     1.サンボウカン(三宝柑)
     2.レモン
    ◆ミカン属タンゴール類
     1.イヨカン(伊予柑)
    ◆ミカン属ブンタン類
     1.ブンタン(文旦)
    ◆雑柑類
     1.ナツダイダイ(夏橙)
     2.ハッサク(八朔)
     3.ヒュウガナツ(日向夏)
    ◆キンカン(金柑)属
     1.キンカン(金柑)
   核果類
     1.アンズ
     2.ウメ
     3.サクランボ
     4.モモ
     5.ヤマモモ
   漿果類(液果類)
     1.アケビ
     2.イチゴ
     3.イチジク
     4.ザクロ
     5.ベリー類
     6.ブドウ
   果菜類
     1.スイカ
     2.メロン
     3.プリンスメロン
     4.マクワウリ
   熱帯果実・輸入果実類
     1.アセロラ
     2.アテモヤ
     3.アボカド
     4.オロブランコ
     5.キウイフルーツ
     6.キワノ
     7.グァバ
     8.スターフルーツ
     9.チェリモヤ
     10.ドリアン
     11.パインアップル
     12.バナナ
     13.パパイア
     14.プルーン
     15.ホワイトサポテ
     16.マンゴー
     17.マンゴスチン
     18.ライチー
 7 キノコ類(山辺重雄)
     1.エノキタケ
     2.エリンギ
     3.キクラゲ
     4.シイタケ
     5.シメジ
     6.トリュフ
     7.ナメコ
     8.マイタケ
     9.マッシュルーム
     10.マツタケ
 8 藻類(山辺重雄)
   藍藻類
     1.スイゼンジノリ
     2.スピルリナ
   緑藻類
     1.アオサ
     2.アオノリ
     3.カワノリ
     4.ヒトエグサ
   褐藻類
     1.コンブ
     2.ヒジキ
     3.モズク
     4.マツモ
     5.ワカメ
   紅藻類
     1.アマノリ
     2.テングサ
3 動物性食品
 1 肉類(岡本匡代,丹尾式希)
  1.筋肉の構造
  2.筋肉から食肉への転換(死後硬直と熟成)
  3.食肉成分
  4.各種の肉の特徴
  5.分割法と肉の部位
  6.食肉の加工と加工肉の色
 2 乳類(梶野涼子)
  1.乳種と乳の性状・成分
  2.試験法
  3.飲用乳の規格
  4.各種の乳製品
 3 卵類(梶野涼子)
  1.卵用種
  2.鶏卵の構造
  3.鶏卵の成分と調理加工特性
  4.鶏卵の商品特性
  5.鶏卵の鮮度と保存
  6.鶏卵の加工品・食品素材
 4 魚介類(岡本匡代,丹尾式希)
  1.分類
  2.魚介肉の組織と成分
  3.鮮度の判定
  4.主な魚介類の特徴と加工・調理特性
   遠洋回遊魚類
     1.カジキ
     2.カツオ
     3.サメ
     4.マグロ
   近海回遊魚類
     1.アジ
     2.イワシ
     3.サバ
     4.サワラ
     5.サンマ
     6.ニシン
     7.ブリ
   沿岸魚類
     1.アイナメ
     2.オコゼ
     3.キス
     4.スズキ
     5.フグ
     6.ホッケ
     7.ボラ
   底棲魚類
     1.アンコウ
     2.カレイ
     3.タイ
     4.タラ
     5.ヒラメ
     6.メルルーサ
   遡・降下性魚類
     1.アユ
     2.ウナギ
     3.サケ・マス
     4.シシャモ
     5.ワカサギ
   淡水魚類
     1.コイ
     2.フナ
     3.その他の淡水魚
   甲殻類
     1.エビ類
     2.カニ
   軟体動物
     1.イカ
     2.タコ
   貝類
    ◆2枚貝(斧足類)
     1.アサリ
     2.カキ
     3.ハマグリ
     4.ホタテガイ
     5.シジミ
    ◆巻貝(腹足類)
     1.アワビ類
     2.サザエ
     3.ツブ
     4.バイガイ
     5.タニシ
   棘皮動物
     1.ウニ
     2.ナマコ
   その他の魚介類
     1.クラゲ
     2.ホヤ
  5.魚介類の貯蔵と加工品
4 油脂食品
 (山辺重雄)
 1 食品中の脂質の一般的性質
  1.トリアシルグリセロールの組成と性状
  2.トリアシルグリセロールの構造と融点
  3.油脂の特数と変数
 2 植物性油脂
     1.ダイズ油
     2.ナタネ油
     3.綿実油
     4.トウモロコシ油(コーン油)
     5.コメ糠油(コメ油)
     6.ゴマ油
     7.ヤシ油(コプラ油)
     8.サフラワー油
     9.パーム油
     10.オリーブ油
     11.その他の油
 3 動物性油脂
     1.豚脂(ラード)
     2.牛脂(ヘット)
 4 食用加工油脂
     1.硬化油
     2.マーガリン
     3.ショートニング
5 嗜好材料食品と菓子類
 (渡邉 靜)
 1 甘味料
     1.砂糖
     2.ブドウ糖
     3.果糖
     4.異性化糖,転化糖
     5.オリゴ糖類
     6.糖アルコール
     7.ステビオニド(非糖質系天然甘味料)
     8.非糖質系合成甘味料
 2 塩味料
     1.食塩
 3 調味料
     1.醤油
     2.味噌
     3.食酢
     4.ソース
     5.たれ類
     6.トマト加工品
 4 香辛料
 5 菓子類
     1.和菓子
     2.洋菓子
     3.中華菓子
6 嗜好飲料類
 (若林素子)
 1 茶
     1.緑茶
     2.紅茶
     3.中国茶
 2 コーヒー
 3 ココア
 4 清涼飲料
 5 その他の嗜好飲料
7 アルコール 飲料類
 (若林素子)
 1 アルコール発酵とアルコール飲料
 2 清酒
 3 ビール
 4 ワイン(ブドウ酒)
 5 焼酎
 6 ウイスキー
 7 ブランデー
 8 みりん
 9 その他の酒類
8 調理加工食品
 (稲熊隆博)
 1 調理加工食品の増加
 2 冷凍食品
  1.食品の保存と冷凍の歴史
  2.冷凍食品増加の背景
  3.冷凍食品の定義
  4.主な冷凍食品
 3 レトルトパウチ食品
  1.定義
  2.レトルトパウチ食品の特徴
  3.種類
  4.消費の動向
 4 乾燥食品
  1.乾燥食品の目的
  2.乾燥方法と主な乾燥食品
 5 調理済み食品
  1.調理済み食品の定義
  2.種類
  3.消費の動向
 6 電子レンジ対応食品

 資料/参考資料・文献(高橋幸資)
 索引