2版の序
本書は1998年に発刊以来3年を経過したが,1999年に『第六次改定 日本人の食事摂取基準』が,続いて2000年11月には『五訂 日本食品標準成分表』が公表された.本書は,これを機に加筆修正を行い,第2版を発行することとした.
今日,科学と技術の進歩・発展はまさに日進月歩で,栄養学,食事療法の分野も例外ではない.栄養補給の方法についても大きな進歩が見られ,経口栄養補給のみでなく経腸栄養剤,静脈栄養剤など,疾病や病態に応じてその方法が決められ,さらに保健機能食品や特別用途食品などの開発が進み,多様化を促進している.
しかしながら食事として経口的に食物を摂取し,消化吸収をしたほうが,より生理的で合併症が少なく,いろいろな食事や料理を楽しみながら味わうことができれば生きる力につながることはいうまでもない.
臨床調理においては特定の栄養素の増減や食事の形態,調理法,摂取量などにいろいろな制約がある.このようななかでも食べる意欲をそそるようなものでなければ,食事療法の目的を達成することはできない.そのためには調理の理論をよく把握し,創意と工夫によって食べやすくする調理の手法を中心に解説した.また食事計画の立て方については成分栄養管理別に,常食と比較しながら,その違いを食品の選択や調理方法の変更などを具体的に示すとともに,特別用途食品の調理性とその使い方などを併せて解説した.
食事療法は治療の一環であると同時に患者サービスの重要な役割を果たしている.医療サイドが患者に一方的に押しつけるのではなく,患者への説明と納得(Informed consent)と,患者の生活の質(Quality of Life)に合わせて行われるようになっている.食事療法においても患者自身が納得して自己管理ができるように,それだけの理論と手法を身につけられるような援助が大切である.それらのための指導用の資料や参考書として活用していただければ幸いである.
2001年9月 筆者一同
初版の序
今日,臨床栄養学関連の研究が進展し,人の健康と食との間に強い相関関係のあることが認められている.とくに疾病発症のメカニズムが解明されるにつれ,人の長いスパーンの食生活のありようが疾病の危険因子となりうることを,われわれは知るところとなった.
このことは人が健康的に老いるためのQuality of Life実現のために,または疾病をもっている場合であっても,食生活のあり方が人にとっていかに重要であるかを物語っている.
食生活は通常,食事計画,食品の選択,調理操作,食卓構成などの一連の工程を含む技術としてとらえられているが,それらは,人間の五感のすべての知覚との関わりによってはじめて好みにあったおいしい食べ物としての価値が生ずるものである.この一連の技術を科学的,文化的に追究する総合科学が広義の調理学の対象であることはすでに知られているところである.
一方,臨床栄養の管理は,栄養成分別管理方式であろうと疾病別管理方式であろうと,栄養成分の量の増減や質の交換によって,食事計画やマニュアルがつくられている.
本書は,栄養成分の増減について,各栄養成分別にコントロールする方法を具体的に示し,さらに減塩食,軟菜食,摂食障害時の食事についても,その基本を調理学の視点に立って編集した.また,食事計画の手順を各コントロール食別に解説し,さらに基本献立から各コントロール食への展開の方法を示すことにより,その特徴を理解しやすくするように努めた.
食事計画は,栄養を食品に転換し,献立・調理というように一連の工程から成り立っている.本書ではこの工程のなかから各コントロール食の特徴をよく理解し,その上に立って,献立・調理を取り上げるようにしたものである.ややもすると治療食を栄養成分の増減にまかせがちになることから,この領域に重点を置くことにした.
臨床調理は栄養・食品・調理形態や調味に制約があるので,一般の調理とは異なる特有の調理の理論があり,科学があるはずである.このことを十分に理解しなければおいしく食べることができないし,治療効果も上げることができない.食べる人の立場に立った治療食のノウハウを示したつもりである.
このような視点に立って臨床時の食事の考え方を「臨床調理」と命名し,私どもは本書を構成することにした.
計画から今日まで相当の月日を要したが,発刊の運びに至ってもまだ目的の入り口という感は免れない.
どうか諸先輩,皆様方の率直なご指摘やご批判をお願いいたしたく,切に望むしだいである.
おわりに,本書出版の機会を与えて下さった医歯薬出版株式会社および編集部の皆様に深甚の謝意を表したい.
1997年12月 著 者
本書は1998年に発刊以来3年を経過したが,1999年に『第六次改定 日本人の食事摂取基準』が,続いて2000年11月には『五訂 日本食品標準成分表』が公表された.本書は,これを機に加筆修正を行い,第2版を発行することとした.
今日,科学と技術の進歩・発展はまさに日進月歩で,栄養学,食事療法の分野も例外ではない.栄養補給の方法についても大きな進歩が見られ,経口栄養補給のみでなく経腸栄養剤,静脈栄養剤など,疾病や病態に応じてその方法が決められ,さらに保健機能食品や特別用途食品などの開発が進み,多様化を促進している.
しかしながら食事として経口的に食物を摂取し,消化吸収をしたほうが,より生理的で合併症が少なく,いろいろな食事や料理を楽しみながら味わうことができれば生きる力につながることはいうまでもない.
臨床調理においては特定の栄養素の増減や食事の形態,調理法,摂取量などにいろいろな制約がある.このようななかでも食べる意欲をそそるようなものでなければ,食事療法の目的を達成することはできない.そのためには調理の理論をよく把握し,創意と工夫によって食べやすくする調理の手法を中心に解説した.また食事計画の立て方については成分栄養管理別に,常食と比較しながら,その違いを食品の選択や調理方法の変更などを具体的に示すとともに,特別用途食品の調理性とその使い方などを併せて解説した.
食事療法は治療の一環であると同時に患者サービスの重要な役割を果たしている.医療サイドが患者に一方的に押しつけるのではなく,患者への説明と納得(Informed consent)と,患者の生活の質(Quality of Life)に合わせて行われるようになっている.食事療法においても患者自身が納得して自己管理ができるように,それだけの理論と手法を身につけられるような援助が大切である.それらのための指導用の資料や参考書として活用していただければ幸いである.
2001年9月 筆者一同
初版の序
今日,臨床栄養学関連の研究が進展し,人の健康と食との間に強い相関関係のあることが認められている.とくに疾病発症のメカニズムが解明されるにつれ,人の長いスパーンの食生活のありようが疾病の危険因子となりうることを,われわれは知るところとなった.
このことは人が健康的に老いるためのQuality of Life実現のために,または疾病をもっている場合であっても,食生活のあり方が人にとっていかに重要であるかを物語っている.
食生活は通常,食事計画,食品の選択,調理操作,食卓構成などの一連の工程を含む技術としてとらえられているが,それらは,人間の五感のすべての知覚との関わりによってはじめて好みにあったおいしい食べ物としての価値が生ずるものである.この一連の技術を科学的,文化的に追究する総合科学が広義の調理学の対象であることはすでに知られているところである.
一方,臨床栄養の管理は,栄養成分別管理方式であろうと疾病別管理方式であろうと,栄養成分の量の増減や質の交換によって,食事計画やマニュアルがつくられている.
本書は,栄養成分の増減について,各栄養成分別にコントロールする方法を具体的に示し,さらに減塩食,軟菜食,摂食障害時の食事についても,その基本を調理学の視点に立って編集した.また,食事計画の手順を各コントロール食別に解説し,さらに基本献立から各コントロール食への展開の方法を示すことにより,その特徴を理解しやすくするように努めた.
食事計画は,栄養を食品に転換し,献立・調理というように一連の工程から成り立っている.本書ではこの工程のなかから各コントロール食の特徴をよく理解し,その上に立って,献立・調理を取り上げるようにしたものである.ややもすると治療食を栄養成分の増減にまかせがちになることから,この領域に重点を置くことにした.
臨床調理は栄養・食品・調理形態や調味に制約があるので,一般の調理とは異なる特有の調理の理論があり,科学があるはずである.このことを十分に理解しなければおいしく食べることができないし,治療効果も上げることができない.食べる人の立場に立った治療食のノウハウを示したつもりである.
このような視点に立って臨床時の食事の考え方を「臨床調理」と命名し,私どもは本書を構成することにした.
計画から今日まで相当の月日を要したが,発刊の運びに至ってもまだ目的の入り口という感は免れない.
どうか諸先輩,皆様方の率直なご指摘やご批判をお願いいたしたく,切に望むしだいである.
おわりに,本書出版の機会を与えて下さった医歯薬出版株式会社および編集部の皆様に深甚の謝意を表したい.
1997年12月 著 者
臨床料理の基本
1 栄養管理の考え方
2 臨床調理のめざすもの
3 臨床調理の考え方
おいしさの基本条件
おいしさの生かし方
食べる人の心理のとらえ方,満足感のもたせ方
ふつうの食品や調理で補うことが困難な場合の方法
4 臨床調理の食事プラン
献立の立て方
臨床調理の実際
1 エネルギーコントロールのための調理
エネルギーバランス食
■考え方
■食品の選び方
■食事計画と献立の実際
低エネルギー食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
2 脂質コントロールのための調理
低脂質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
脂質の質のコントロール食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
3 たんぱく質コントロールのための調理
高たんぱく質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
低たんぱく質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
4 食塩を減らすための調理
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
5 軟菜食のための調理
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
6 摂食障害時の食事の工夫
■考え方
■食品の選び方と食形態
■調理上の注意と工夫
■料理例
7 その他の栄養素と調理
カルシウム
■カルシウムの働き
■カルシウムと疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
鉄
■鉄の働き
■鉄と疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
食物繊維
■食物繊維の働き
■食物繊維の機能と疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
付表
付表1 基本料理からの各コントロール食への展開
付表2 料理の種類と配合調味例
付表3 食品群別荷重平均成分表
付表4 日本人の栄養所要量
参考文献
索引
1 栄養管理の考え方
2 臨床調理のめざすもの
3 臨床調理の考え方
おいしさの基本条件
おいしさの生かし方
食べる人の心理のとらえ方,満足感のもたせ方
ふつうの食品や調理で補うことが困難な場合の方法
4 臨床調理の食事プラン
献立の立て方
臨床調理の実際
1 エネルギーコントロールのための調理
エネルギーバランス食
■考え方
■食品の選び方
■食事計画と献立の実際
低エネルギー食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
2 脂質コントロールのための調理
低脂質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
脂質の質のコントロール食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
3 たんぱく質コントロールのための調理
高たんぱく質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
低たんぱく質食
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■食事計画と献立の実際
4 食塩を減らすための調理
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
5 軟菜食のための調理
■考え方
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
6 摂食障害時の食事の工夫
■考え方
■食品の選び方と食形態
■調理上の注意と工夫
■料理例
7 その他の栄養素と調理
カルシウム
■カルシウムの働き
■カルシウムと疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
鉄
■鉄の働き
■鉄と疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
食物繊維
■食物繊維の働き
■食物繊維の機能と疾患との関わり
■食品の選び方
■調理上の注意と工夫
■料理例
付表
付表1 基本料理からの各コントロール食への展開
付表2 料理の種類と配合調味例
付表3 食品群別荷重平均成分表
付表4 日本人の栄養所要量
参考文献
索引