やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序

 本シリーズを1996年に発行して以来3年が経過した.この間,国家試験対策に取り組む多くの歯科衛生士学校の学生の方々にご利用いただいた.本書の出版企画の意図は,「ただ単に知識の整理を行ったのみでなく,国家試験対策について十分検討し,学力向上のための効果的な勉強ができるように配慮した」(「第1版の序」より)ことにある.この所期の目的がほぼ達成できたことは,本書を編集した歯科衛生士試験対策検討会としては喜びにたえない.
 さて,このたび本書の第2版の改訂版を出版することになった.その理由は,以下のとおりである.
 本年(1999年)4月に「歯科衛生士試験出題基準」が改訂された.今回の改訂は5,6年以内に予定される歯科衛生士養成の修業年限延長(2年以上から3年以上へ)による「出題基準」大改訂までの暫定措置として行われた.現在,歯科衛生士養成施設で使われている教科書の内容を,一部あと追い的に反映した性格をもつ小改訂といえる.
 この出題基準の改訂の内容を分析してみると,次のとおりである.(1)用語の言い換え,(2)項目の配列や内容の整理,(3)新しい項目の追加,(4)出題内容が他の科目にもわたるようになった,などである.
 しかもこの「新出題基準」は,来年(2000年)3月5日に行われる国家試験から適用される.そこで本書を国家試験受験生のために急きょ改訂した次第である.
また,今年(1999年)3月実施の歯科衛生士国家試験の出題傾向の変化をみると,
 (1)状況設定問題が増えた
 (2)組み合わせ問題で,3項目組み合わせのものが出題された
 (3)カラーの口腔内写真を見て答える問題が出た
 などの点で,従来とは傾向が変わってきている.合格率も過去数年の99.数%から96.9%へと低下し,受験者6,392名中200名が不合格となっている.
 以上のことを十分考慮し,また「出題基準」の大改訂は5,6年後に行われることを予想して,本書の必要最小限の改訂をした次第である.
 読者の皆さんは,まず本書のVページの「本書の特徴および利用方法」を十分読んでから受験対策に取り組んでいただきたい.
 来春には,多くの受験生が専門性をもった立派な歯科衛生士として誕生することを期待している.
 1999年11月 歯科衛生士試験対策検討会

第1版の序

 近年の急速な高齢化社会の到来と少子化は,保健・医療・福祉の基本的なフレームの見直しをわれわれに迫っている.
 歯科保健医療をとりまく環境も,1989年から厚生省が提唱している8020運動の推進,1992年からの老人保健法の歯科衛生士による寝たきり老人の訪問指導の実施,1994年の保健所法から地域保健法への改正,1995年の老人保健法による歯周疾患検診の導入,さらに1996年の社会保険歯科診療における歯周治療システムの大幅改定など,新たな時代の到来ともいうべき様相を呈してきた.そのような状況のもとで,歯科衛生士に期待される役割はきわめて大きくなってきている.
 歯科衛生士を目指す諸姉には,それゆえ,臨床や地域保健で活躍するための十分な基礎体力を,まずは教育を通じて身につけることが求められている.
 そこで,このたび教育と国家試験をつなぐ“橋”の役割を担うことをねらいとした本シリーズを企画した.
 本シリーズの発刊にあたっては,ただ単に知識の整理を行ったのみではなく,国家試験対策について十分に検討し,学力向上のための効果的な勉強ができるように配慮したつもりである.
 すなわち,厚生省の「歯科衛生士試験出題基準」をもとに,「歯科衛生士養成所教授要綱」を加味して各科目のセクション化をはかり,それぞれの重要なエッセンスを解説している.さらに,各科目ごとの主要なテーマを問題例としてあげ,それを解くための基本的な考え方を習得することで,国家試験問題を解くための思考過程が自然と備わるように構成した.また,知識の確認としての一問一答を科目ごとに付して,短時間で学習効果を高めるように工夫してある.
 本書を手にされた諸姉が,これを上手に利用することにより,所期の目的を達成されることを祈念している.
 1996年7月 歯科衛生士試験対策検討会
I編 口腔衛生学/1
SECTION 1 口腔衛生学の意義……2
 I.口腔衛生学の概念……2
 II.健康の概念……2
 III.疾病予防の概念……2
 IV.西暦2000年における歯科保健目標(WHO)……2
 V.8020運動(日本)……3
SECTION 2 口と健康……4
 I.口の機能……4
 II.審美感……4
 III.口腔保健と健康……4
SECTION 3 歯の形成と発育……5
 I.歯の発生と形成……5
 II.歯の萌出と交換……6
 III.歯の喪失……6
SECTION 4 歯と口腔環境……7
 I.エナメル質の特徴……7
 II.唾液の作用……8
 III.ペリクルの形成……8
 IV.口腔微生物の存在……8
SECTION 5 歯口の不潔……9
 I.歯の付着物,沈着物……9
 II.舌苔……10
SECTION 6 口臭……11
 I.分類と原因……11
 II.予防と処置……11
SECTION 7 口腔清掃……12
 I.口腔清掃……12
SECTION 8 口腔清掃用具……13
 I.口腔清掃用具の種類と特徴……13
SECTION 9 歯磨剤……14
 I.薬事法による分類……14
 II.成分と効能……14
SECTION 10 ブラッシングの術式……15
 I.術式と内容……15
SECTION 11 齲蝕の基礎知識……16
 I.齲蝕予防の考え方……16
SECTION 12 齲蝕の予防方法……19
 I.第一次予防……19
 II.第二次予防……20
 III.第三次予防……20
SECTION 13 歯とフッ素……21
 I.フッ素の分布……21
 II.フッ素量と中毒症状……21
 III.齲蝕予防機序……21
SECTION 14 歯周疾患の基礎知識……23
 I.歯周疾患の症状と分類……23
 II.発病の要因……23
 III.歯周疾患の疫学……24
SECTION 15 歯周疾患の予防方法……25
 I.第一次予防……25
 II.第二次予防……25
 III.第三次予防……25
SECTION 16 不正咬合……26
 I.種類……26
 II.影響……26
 III.頻度……26
 IV.原因と予防……26
SECTION 17 歯科疾患の疫学と歯科保健統計……27
 I.疫学の定義……27
 II.疫学の研究法……27
 III.疫学調査に用いる指数……28
 IV.齲蝕の疫学……28
 V.歯周疾患の疫学……28
SECTION 18 指数……29
 I.齲蝕に用いる指数……29
 II.歯周疾患に用いる指数……29
 III.歯垢・歯石の指数……31
 IV.歯のフッ素症の指数……32
SECTION 19 衛生統計の基礎……33
SECTION 20 歯科保健統計……35
SECTION 21 地域歯科保健活動の基礎……36
 I.地域歯科保健活動の意義……36
 II.年齢と口腔保健の問題点……37
 III.地域歯科保健活動の進め方……37
 IV.口腔保健の目標……37
 V.口腔保健教育……37
 VI.口腔の健康診断と事後措置……37
SECTION 22 地域歯科保健……38
 I.保健所の歯科保健業務……38
 II.市町村の歯科保健事業……38
 III.市町村保健センター……38
 IV.口腔保健センター……38
 V.保健所と市町村の連携……38
 VI.8020運動……38
SECTION 23 母子歯科保健……39
 I.法的根拠……39
 II.1歳6カ月児歯科健康診査……39
 III.3歳児歯科健康診査……40
 IV.妊産婦・乳幼児への歯科健康診査……41
SECTION 24 学校歯科保健……42
 I.学校歯科保健の意義……42
 II.学校保健の構造……42
 III.学校保健法……42
SECTION 25 産業歯科保健……44
 I.産業歯科保健の意義……44
 II.労働タ全衛生法……44
 III.産業保健管理……44
 IV.職業性歯科疾患……44
 V.トータルヘルスプロモーションプラン(THP)……44
SECTION 26 成人・老人・要介護者歯科保健……45
 I.法的根拠……45
 II.歯科保健事業……45
Key Point……46
一問一答……52

II編 衛生学・公衆衛生学/55
SECTION 1 衛生・公衆衛生の定義……56
 I.衛生・公衆衛生の定義……56
 II.健康の概念……56
 III.予防医学の考え方……56
SECTION 2 人口……58
 I.世界の人口の推移……58
 II.人口に関する統計……58
 III.生命表……60
 IV.日本の人口の問題点……60
SECTION 3 環境衛生……61
 I.生活環境と健康……61
 II.温熱環境……61
 III.空気……62
 IV.水……63
 V.気候……64
 VI.放射線……64
 VII.住居と衣服……65
 VIII.廃棄物処理……65
 IX.公害……66
SECTION 4 感染症……67
 I.感染症の疫学……67
 II.感染症の予防……67
 III.おもな感染症……68
SECTION 5 食品と健康……71
 I.国民栄養の現状……71
 II.食品保健……71
SECTION 6 疫学……74
 I.定義……74
 II.疫病・異常の発生要因……74
 III.研究方法……74
 IV.調査方法……74
 V.スクリーニング検査……75
 VI.国家統計……75
SECTION 7 地域保健活動……76
 I.地域保健の特徴……76
 II.地域保健活動の組織……76
 III.地域保健活動の進め方……77
 IV.地域保健医療計画……77
SECTION 8 母子保健……78
 I.母子保健用語……78
 II.母子保健統計……78
 III.母子保健管理……78
 IV.小児保健管理……78
 V.母子保健対策……78
 VI.おもな母子保健施策……79
SECTION 9 学校保健……80
 I.学校保健の意義……80
 II.学校保健の概要……80
 III.保健組織活動……81
SECTION 10 成人・老人保健……82
 I.成人・老人保健の現状……82
 II.おもな生活習慣病と予防対策……82
 III.老人保健法……84
 IV.高齢者に対する総合的な社会サービス……84
SECTION 11 産業保健……85
 I.産業保健に関する法律……85
 II.職業性疾病……85
 III.産業保健管理……86
 IV.健康保持・増進対策……86
SECTION 12 精神保健……87
 I.精神障害の分類……87
 II.ライフスタイルからみた精神保健……87
 III.精神保健福祉対策……87
 IV.精神保健行政……87
Key Point……89
一問一答……94

III編 衛生行政・社会福祉/97
SECTION 1 衛生行政の概念と組織……98
 I.衛生行政の目的……98
 II.衛生行政の特色……98
 III.衛生行政の分野……98
 IV.厚生省……98
 V.保健所……98
 VI.市町村保健センター……99
SECTION 2 歯科衛生士法……100
 I.歯科衛生士法の目的,歯科衛生士の定義……100
 II.歯科衛生士の資格取得(免許取得要件)……100
 III.歯科衛生士免許,歯科衛生士名簿……100
 IV.歯科衛生士免許の申請,免許証の書き換え……100
 V.歯科衛生士の業務……101
 VI.業務に従事する歯科衛生士の届出……101
 VII.歯科衛生士免許の取り消し,業務の停止……102
 VIII.歯科衛生士教育,その他……102
SECTION 3 歯科衛生関係法規……103
 I.法制概論……103
 II.歯科医師法,医師法……103
 III.歯科技工士法……103
 IV.医療法……103
 V.その他の関係法規……104
SECTION 4 医療施設等の現況……106
 I.医療施設……106
 II.医療関係者……106
 III.受療状況(患者調査)……106
 IV.歯科疾患の状況(歯科疾患実態調査)……106
SECTION 5 社会保険……107
 I.社会保険行政……107
 II.医療保険制度……107
 III.年金保険制度……107
 IV.雇用保険および労働者災害補償制度……108
 V.介護保険制度……108
SECTION 6 社会福祉……110
 I.社会福祉行政……110
 II.公的扶助制度(生活保護制度)……110
 III.社会福祉制度……110
Key Point……111
一問一答……114

IV編 栄養指導・生化学/115
SECTION 1 基礎知識――栄養学,栄養指導,生化学……116
 I.栄養学とは……116
 II.栄養指導とは……116
 III.生化学――生命活動の概要……116
 IV.食生活と栄養……116
 V.五大栄養素……116
SECTION 2 栄養所要量……117
 I.栄養所要量……117
 II.エネルギー所要量……117
 III.人体のエネルギー消費量の測定法……118
 IV.基礎代謝量……118
SECTION 3 糖質……119
 I.糖質の種類……119
 II.糖質の作用……119
 III.歯・口と糖質……119
 IV.糖質の代謝……119
SECTION 4 タンパク質……120
 I.タンパク質の分類……120
 II.タンパク質の所要量……120
 III.必須アミノ酸……120
 IV.タンパク質の栄養価……120
 V.タンパク質の代謝……120
SECTION 5 脂質……122
 I.脂質の種類……122
 II.脂肪酸の種類……122
 III.コレステロール……122
 IV.脂肪の適正摂取量……122
 V.脂質の代謝……122
SECTION 6 ビタミン……124
 I.ビタミンの働き……124
 II.水溶性と脂溶性のビタミン……124
 III.おもなビタミンの作用と欠乏症……124
 IV.所要量……125
SECTION 7 無機質……126
SECTION 8 食生活の基礎……127
 I.食生活と健康との関連……127
 II.近年の食行動の特徴……127
 III.食生活指針……127
 IV.食欲と嗜好……127
 V.味覚……127
 VI.食生活と咀嚼……128
SECTION 9 食生活とライフステージ……129
 I.乳幼児期の食生活……129
 II.老年期の食生活……129
SECTION 10 食生活と食品……130
 I.食品成分表……130
 II.食品群……130
 III.食品構成……131
 IV.植物性食品と動物性食品……131
 V.ナトリウムとカリウム……131
SECTION 11 甘味料……132
 I.甘味食品……132
 II.代用甘味料……132
 III.歯と甘味料……133
SECTION 12 食生活と歯科保健……134
 I.齲蝕と食生活……134
 II.歯周疾患と食生活……134
 III.顎発育と食生活……134
 IV.歯の喪失と食生活……134
 V.特殊患者の食事指導……135
SECTION 13 歯・口の生化学……136
 I.歯の構造と組成……136
 II.歯の無機成分……136
 III.歯の有機成分……136
 IV.硬組織の石灰化……136
 V.歯の脱灰と再石灰化……137
 VI.歯周組織の構造と組成……138
SECTION 14 唾液の生化学……139
 I.唾液の成分……139
 II.唾液の機能……139
 III.唾液の緩衝能……139
Key Point……140
一問一答……144

索引……151