やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 本書『ナーシング・ポケットマニュアル 基礎看護技術 第2版』は,看護技術の手順のみならず,看護過程の展開において看護技術をどのように活用していくかを学習できるポケットマニュアルです.
 本書の前身となる『看護過程にそったポケッタブル・マニュアル基礎看護技術』(1990年発行)から,新シリーズ『ナーシング・ポケットマニュアル 基礎看護技術』(2011年発行)へと引き継がれ,今日まで30年以上にわたり多くの看護学生・看護師の皆さまにご活用いただき,心より感謝申し上げます.
 本書は,看護技術を学ぶ際の参考書として,特に臨地実習や演習でご活用いただける内容を組み入れています.
 本書の構成・特徴は次のとおりです.

 ・「看護師の独自の機能は日常生活行動への援助である」というV・ヘンダーソンの考えをもとに,14の基本的欲求を充足する行動(日常生活行動)を助けるための看護技術を柱とし,医師の立てた治療計画の実行を助ける技術,いわゆる診療の補助技術も組み入れて構成しました.
 ・実際の援助の流れをイメージしながら学べるよう,看護技術を活用して援助する際の手順(準備→援助時のポイント・根拠→留意点→観察ポイント)に沿って解説しています.
 ・看護技術の手順のみならず,「なぜこの手順が必要なのか」を理解して実践できるよう,援助に有用な知識・根拠を簡潔に示しました.
 ・臨地実習や臨床では,習得した基本技術を活用して実際の患者(対象者)に看護を実践します.しかし,患者の病理的状態(疾病の症状や治療・処置など)によって日常生活行動はさまざまに変化するため,基本的な看護技術だけでは援助しきれない場面に直面することがあります.そこで本書の こんな時どうする? では,さまざまな患者・場面を想定し,状況に応じた看護技術の応用の実際や注意点を解説しています.
 ・必要最低限の技術・知識を網羅しながらも,臨地実習などで手軽に活用できるようコンパクトなポケットサイズとしています.

 今回の改訂では,上記に示した初版からの構成・特徴はそのままに,現在の臨床現場や最新の知見に基づいて全編を見直しました.
 制作にあたっては,今回も多くのご執筆者の先生方にご尽力いただきました.この場を借りて深く感謝を申し上げます.
 本書が,基礎看護技術を学ぶ看護学生の皆さま,臨床の現場で働く看護師の皆さまの学習や看護実践の一助となれば幸いです.
 2023年7月 編者
第1章 正常に呼吸する
 1.呼吸測定(宮ア素子)
  ?呼吸測定中に患者が話し出す場合
 2.体温測定(宮ア素子)
  ?痩せていて,体温計が腋窩に密着できない場合
 3.脈拍測定(宮ア素子)
  ?結滞がある場合
 4.血圧測定(宮ア素子)
  ?上腕が細い(太い)場合
  ?肘関節に拘縮がある場合
  ?上肢に麻痺やシャント,点滴静脈注射を実施している場合
 5.酸素吸入(鼻カニュラ法)(蒲生澄美子)
  ?加湿を必要とする場合
  ?酸素投与が必要な患者が車椅子で移動する場合
 6.パルスオキシメータ(蒲生澄美子)
  ?指が細く,センサーがずれやすい場合
  ?指先が冷たく,センサーが感知しない場合
 7.一時吸引(鼻腔・口腔内吸引)(蒲生澄美子)
  ?気管内吸引(気管内挿管チューブ)を行う場合
第2章 適切な飲食をする
 1.食事介助(佐藤智子・岡本恵里)
  ?嚥下障害がある場合
  ?視力障害がある場合
 2.経鼻経管栄養法(佐藤智子・岡本恵里)
第3章 あらゆる排泄経路から排泄する
 1.排尿・排便の介助(木根久江)
  ?側臥位をとることができない患者の便器の挿入(下肢の牽引療法中の場合)
  ?運動制限のある患者の便器の挿入(股関節手術後で屈曲・内転・内旋が制限されている場合)
  ?温罨法により自然な排便・排ガスを促す(腰部に熱布を用いる方法)
 2.一時的導尿(木根久江)
 3.持続的導尿(木根久江)
  ?カテーテル挿入が困難な場合
 4.浣腸(グリセリン)(木根久江)
  ?側臥位をとることができない患者の場合
 5.摘便(木根久江)
第4章 身体の位置を動かし,また良い姿勢を維持する
 1.体位変換(ボディメカニクス)(関口恵子)
 2.移動介助─(1)車椅子(関口恵子)
 3.移動介助─(2)ストレッチャー(関口恵子)
 4.移動介助─(3)歩行介助(関口恵子)
  ?各種チューブ・ラインを挿入中の場合
  ?片麻痺がある患者の車椅子移乗
  ?膝関節が屈曲できない患者の車椅子移乗
   (1)看護師2人で移乗動作を行う場合
   (2)患者が自力で移乗する場合
第5章 睡眠と休息をとる
 1.リラクセーション(腹式呼吸法:椅座位で行う場合)(鈴木聡美)
 2.アロマセラピー(鈴木聡美)
第6章 適切な衣服を選び,それを着たり脱いだりする
 1.寝衣交換(前開きのパジャマの場合)(玉木ミヨ子)
  ?かぶりのパジャマを着ている臥床患者の場合(上衣の脱がせ方,着せ方)
  ?上肢に片麻痺,持続点滴,創傷などがある場合(寝衣の袖が広い場合)
  ?輸液ポンプを使い,上肢に持続点滴をしている場合(寝衣の袖が細い場合)
第7章 衣類の調節と環境の調節により,体温を生理的範囲内に維持する
 1.冷罨法(酒井見名子)
  ?解熱を目的とする冷罨法
 2.温罨法(酒井見名子)
第8章 身体を清潔に保ち,身だしなみを整え,皮膚を保護する
 1.手洗い・含嗽(今野葉月)
  ?唾液・排泄物・血液などの湿性生体物質が手に付着した場合
 2.創部消毒・皮膚消毒(今野葉月)
  ?皮膚が弱い人に創部消毒を行う場合
 3.全身清拭(蒲生澄美子)
  ?掻痒感が強い場合
  ?浮腫(腹水)がある場合
  ?創部・褥瘡がある場合
  ?張りのない皮膚(高齢者など)の場合
 4.陰部洗浄(鷲塚寛子)
  ?膀胱留置カテーテルを挿入している場合
  ?大腿静脈から中心静脈カテーテルを挿入している場合
  ?おむつを装着している場合
 5.手浴(寺岡三左子)
 6.足浴・爪切り(寺岡三左子)
  ?真菌症がある場合
  ?出血傾向がある場合
 7.洗髪(仰臥位・洗髪車使用)(吉武幸恵)
  ?うつ伏せ姿勢の保持が必要な場合
  ?頸部の安静が必要な場合
 8.口腔ケア(今野葉月)
  ?舌苔がある場合
  ?意識障害がある(自分で洗口できない)場合
  ?経鼻経管栄養(栄養チューブの留置)をしている場合
  ?出血傾向がある場合
  ?義歯を使用している場合
 9.整容─(1)結髪(吉武幸恵)
 10.整容─(2)髭剃り(吉武幸恵)
第9章 環境のさまざまな危険因子を避け,また,他人を傷害しないようにする
 1.病床の環境整備(ベッド上に臥床患者がいる場合)(三善郁代)
 2.臥床患者のシーツ交換(2人で行う場合)(三善郁代)
  ?膀胱留置カテーテル挿入中の臥床患者の場合
  ?胸腔ドレーン挿入中の臥床患者の場合
第10章 自分の感情,欲求,恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションをもつ
 1.コミュニケーション・カウンセリング(岡本恵里)
  ?沈黙が続く場合
  ?認知症のある人とのコミュニケーション─ユマニチュード(R)
第11章 自分の信仰に従って礼拝する
 1.エンゼルケア(玉木ミヨ子)
  ?中心静脈カテーテルが挿入されている場合
  ?浮腫がある場合
第12章 達成感をもたらすような仕事をする
 1.役割達成への援助(今野葉月)
第13章 遊ぶ,あるいはさまざまな種類のレクリエーションに加わる
 1.気分転換の援助(レクリエーション)(岡本恵里)
  ?レクリエーションに「回想法」を取り入れる場合
第14章 “正常”な発達および健康を導くような学習をし,発見をし,あるいは好奇心を満足させる
 1.教育的支援(宮ア素子)
その他 診療・治療に応じた技術/観察技術
 1.内服薬の与薬(浦井珠恵)
 2.坐薬の与薬(浦井珠恵)
 3.その他の与薬(経皮的与薬,吸入,点眼)(浦井珠恵)
 4.注射(皮下,筋肉内,静脈内,点滴静脈内)(浦井珠恵)
 5.上腕での静脈血採取(真空採血と直針を用いる場合)(白石葉子)
  ?血管が細くて見えにくい場合
  ?誤って動脈に採血針を刺入してしまった場合
  ?針刺し事故を起こしてしまった場合
 6.医療廃棄物の処理(白石葉子)
 7.血糖測定(看護師が実施する場合)(M野初恵)
 8.フィジカルアセスメント(視診・触診・打診・聴診)(岡本恵里)
  ?患者が「息苦しい」「胸がチクチク痛い」「お腹に鈍い痛みがある」と訴える場合
付録
 1.主要な検査項目と基準値(岡本恵里)
 2.形態機能図(岡本恵里)

 文献