やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文

 社会保障制度改革の第一歩と位置づけられた介護保険制度が導入されて,はや3年を迎えた.本年は当該制度の見直しもさることながら,4月からは障害者の向こう10年間を見据えた新長期計画が始まり,さらに,利用者本位のサービス提供を目的とした「支援費制度」も導入された.
 このように,われわれを取り巻く状況は,大きくかつ日々変化してきているが,われわれの意識はこのような変化に十分対応できているだろうか.日々の業務に流され,その日の対応に追われている感がなきにしもあらずである.しかし,時代は変化し人々の意識が大きく変化してきている今日,われわれの従来からの意識も大きく変革する時期に来ているのではないかと思う.
 本書は,保健・医療・福祉等の現場で勤務している福祉関係者および福祉職を目指している学生を主たる対象に,リハビリテーションの考えかたを整理したものである.リハビリテーションに対する考えかたやニーズは,時代とともに変化し,今日では医療としてのリハビリテーションのみならず,生活障害に対するリハビリテーションが重視されつつある.本編でも述べているが,本来リハビリテーションとは「全人間的復権」を意味し,簡潔にいえばその人らしい生活の再獲得を保障する一連の活動にほかならない.これまでのリハビリテーションは,理学療法士や作業療法士等の職種を中心に,医療的要素がその活動の大半を占めてきた.しかし,医療の進歩やライフスタイルの変化,少子高齢化の進展等,社会情勢は大きく変化し,リハビリテーション活動も過渡期を迎えている.
 このような状況のなか,福祉関係者の役割は非常に重要であり,リハビリテーション活動の成否を左右する存在になりつつある.したがって,福祉関係職は,その理念や視点を十分理解しておく必要があり,本書がその一助となれば幸いである.
 2003年4月
 編者 山本和儀
 執筆者一覧
 序文

第1章 リハビリテーションの理念と基本原則
第1節 リハビリテーション事業の発展と現代社会におけるリハビリテーションの受容
   1.リハビリテーションの語源と歴史
   2.リハビリテーションの目的と今日的受容
第2節 リハビリテーションの概念および基本原則
   1.概念と影響を与えた思想
   2.基本原則
第3節 リハビリテーションにおける総合的サービス体系
   1.リハビリテーションの領域
   2.チームアプローチ
   3.まとめ

第2章 障害の程度とその影響
第1節 老化による機能障害
   1.老化とは
   2.老化の具体的な状態像
   3.老化を遅らせる
第2節 身体障害
   1.身体障害とは
   2.身体障害者の実態
   3.身体障害者の心理的・社会的背景
   4.障害者プランについて
   5.身体障害者福祉施策
第3節 知的障害
   1.知的障害とは
   2.知的障害者の現状
   3.知的障害児者支援対策
   4.知的障害の原因分類
   5.障害の考えかた
   6.知的障害のケアマネジメント
   7.支援費制度
第4節 精神障害
   1.精神障害とは
   2.精神障害者の現状
   3.精神保健福祉対策の現状
   4.精神的機能の分類と障害
   5.精神障害各論
   6.精神障害の特性(身体障害と比較して特異な点)
   7.統合失調症についての理解
   8.治療とリハビリテーション
   9.リハビリテーションへの視点と関わり
第5節 重複障害
   1.重複障害とは
   2.介護援助の実際―日常生活のなかのリハビリテーション的対応
   3.成人期以降の問題と課題
第6節 障害児の発達障害
   1.基本視点
   2.発達障害の実際
   3.まとめ

第3章 リハビリテーションの展開過程
第1節 リハビリテーションの過程
   1.はじめに
   2.急性期におけるリハビリテーション
   3.回復期におけるリハビリテーション
   4.維持期におけるリハビリテーション
   5.まとめ
第2節 個人的特性の把握
   1.はじめに
   2.身体的機能の機能障害
   3.運動障害各論
   4.まとめ
第3節 日常生活動作(ADL)評価
   1.ADL(Activities of Daily Living)とは
   2.広義のADLの特性
   3.ADLの範囲
   4.APDLの範囲
   5.「しているADL」と「できるADL」
   6.日常生活動作(ADL)の評価―IL(Independent Living)運動と自立,QOL
   7.評価様式の紹介
第4節 学校教育
   1.はじめに
   2.障害児教育のあゆみについて
   3.現在の特殊教育の位置づけについて
   4.特殊教育での現状と課題
第5節 就労支援
   1.はじめに
   2.日本の障害者雇用促進の仕組みと現状
   3.就労相談の窓口
   4.職業生活の実現・安定のために
   5.まとめ
第6節 社会参加の実現
   1.社会参加の意義
   2.社会参加の具体像

第4章 リハビリテーションと介護
第1節 日常生活の自立支援および社会生活能力の維持・拡大への援助
   1.生活をどうとらえるか
   2.「生活を支援する」ということ
   3.生活の質(QOL)とADL
   4.生活スタイルの再構築―生活の動機づけ
   5.生活リハビリテーション
   6.障害者の立場から―「障害者の考える自立,社会生活の維持,拡大」
   7.社会生活能力の維持・拡大
第2節 リハビリテーション分野の専門職との連携
   1.リハビリテーションと介護福祉
   2.リハビリテーションチーム
   3.チームアプローチの必要性
   4.チームアプローチの機能と手順
   5.チームアプローチの重要性
   6.チームメンバーの共通理解
   7.リハビリテーションチームにおける主なメンバーの機能と役割
   8.チームにおける介護福祉士の役割と機能
第3節 身体拘束
   1.今,なぜ身体拘束が問われるのか
   2.身体拘束の背景にある行動と身体拘束の目的
   3.具体的な身体拘束行為
   4.身体拘束の弊害
   5.「拘束」が「拘束」を生む
   6.不適応行動への正しい理解
   7.生活を整えるケアの実践―生活リハビリテーションの視点
   8.身体拘束ゼロに向けて―ケアスタッフに求められる姿勢
   9.身体拘束をしないケアの工夫

第5章 福祉領域のリハビリテーション提供施設における役割と仕事
第1節 特別養護老人ホーム
   1.特別養護老人ホームの制度上の位置づけ
   2.特別養護老人ホームの役割
   3.特別養護老人ホームにおける介護サービス提供の基本
   4.介護サービスの実際
   5.認知症高齢者への生活支援
   6.身体拘束廃止に向けた取り組み
   7.特別養護老人ホームのユニット化
   8.福祉サービスへの第三者評価事業
第2節 介護老人保健施設
   1.介護老人保健施設とは
   2.介護老人保健施設でのサービス
   3.各スタッフの役割
   4.介護老人保健施設でのリハビリテーション
   5.チームアプローチ
   6.ケアマネジメント
   7.事 例
第3節 痴呆対応型共同生活介護(痴呆性高齢者グループホーム)
   1.痴呆対応型共同生活介護の目的
   2.痴呆対応型共同生活介護を利用するには
   3.痴呆対応型共同生活介護の実際
   4.事 例
   5.グループホーム評価システムについて
   6.まとめ
第4節 通所サービス
   1.通所施設の内容
   2.パワーリハビリテーション
   3.事例 脳梗塞により右片麻痺と失語症を有しながら在宅生活を送る利用者
   4.まとめ
第5節 精神障害領域における介護福祉士の実際
   1.はじめに
   2.精神科病院の現状
   3.精神科病院の特徴
   4.精神科病院における介護福祉士の役割
   5.精神科作業療法とは
   6.介護福祉士に期待すること
   7.まとめ

 索引