第2版の序
本書の第1版『言語障害』が「リハビリテーション医学全書11」として出版されたのは,今から4半世紀前の1975年にさかのぼる.日本リハビリテーション医学会創設(1964年)から10年後のことである.ことば(言語)によるコミュニケーションの障害が,わが国におけるリハビリテーション医学の対象領域の一つとして認知されたことの証ともなった.
その後既に4半世紀の年月が経過し,言語・コミュニケーション障害の領域においても時代の変化を反映するさまざまな進展が認められている.なかでも人口の高齢化に伴う障害構造の変化,医学的進歩による重症患者の存命率の上昇,などを反映して臨床対象の分化・拡大が大幅に進み,これに対応した治療的アプローチないし介入もますます多様化の様相を深めている.こうした動向・知見を読者の皆様と共有するためにも,全般的な改訂が強く望まれるところであった(事実,1996年春の発行をめざして1994年暮より改訂作業にとりかかった)が,諸般の事情により進行が大幅に遅れ,今回ようやく第2版の出版に漕ぎ着けることができた.
第1版(初版)の構成は,10指に余る言語障害の諸領域の中からリハビリテーション医学との重なりがもっとも深い失語症,麻痺性構音障害,脳性麻痺の言語障害,小児失語症(後天性)を取り上げ,言語障害のリハビリテーション(総論)と併せて全5章から成るものであった.第2版では,大方において第1版の構成にならいながらも,過去20年余にわたる重要な進展の様相を織り込んだものとすることを目指した.すなわち第2版を構成する全6章中の5章(第1章:言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション,第2章:成人の失語症,第3章:運動障害性構音障害,第5章:後天性小児失語症,第6章:脳性麻痺の言語障害)は第1版の全5章にそれぞれ対応する章としたが,内容的には各領域独自の進展の様相を十分に反映させたものに改めることとした.こうした進展が理論・臨床の両面で特に顕著であったのは高次脳機能障害の一つとしての失語症の領域であり,「成人の失語症」(第2章)および「後天性小児失語症」(第5章)は,ほぼ全面的な改訂が必要であった.さらに,近年注目すべき発展を遂げつつある嚥下障害の領域を,新たな章(第4章:嚥下障害―第I部:診断と治療,第II部:リハビリテーション)として加えることにより,全体としての刷新をはかった.
各章の作成には新旧入り交じった執筆者があたった.第1〜3章,第6章は第1版と同じ(旧)執筆者が担当し,第4章と第5章はそれぞれ新しい執筆者にお願いした(第4章「嚥下障害」は,この領域のチームワークの重要性を踏まえて医師と言語聴覚士(ST)の2名が分担した).これら執筆者は,いずれも当該領域におけるベテランの医師またはSTであり,長年の臨床経験に裏付けられた理論と方法とを確立した個性豊かな臨床家・研究者である.各章の構成,執筆のスタイルなどはすべて各執筆者にお任せした.
21世紀を目前に控え,人間らしく生きることの本質が問われている.人類のみが共有する「ことば」によるコミュニケーションは,人間らしく生きることの中心テーマにほかならない.折しも,長年の懸案であった言語聴覚士法が関係各位の一方ならぬご支援・ご尽力により1997年12月に成立し,有資格言語聴覚士の数も5,000名に近づきつつある.本年1月には日本言語聴覚士協会が発足し,全国600万人にのぼる言語・コミュニケーション障害者を支援する専門職としての責務を果たすための諸活動を開始した.言語臨床の質量両面にわたる飛躍的向上,医師をはじめとする関連職種との従来にも増して緊密な連携,などの必要性も再確認された.従来ともすると乏しかった言語・コミュニケーション障害に対する社会全般の理解・関心も今後急速に改善することが期待される.
なお,本書の編集に際して,諸般の事情から各執筆者による第1稿提出の時期に2〜3年余にわたるずれが生じ(しかも,編者自身の提出が最後となった),早期に提出された執筆者には多大のご迷惑をかける結果となった.ひとえに編者の不明の致すところであり,深くお詫び申し上げる.
本書が言語障害者のリハビリテーションにかかわるさまざまな関連職種の方々,言語聴覚障害領域における現任者や現在勉学中の学生などにとどまらず,広く医療・保健・福祉関係に関心をお持ちの方々にもお読みいただけるよう心から願うものである.また,本書の構成・内容面について忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである.
2000年12月 笹沼澄子
本書の第1版『言語障害』が「リハビリテーション医学全書11」として出版されたのは,今から4半世紀前の1975年にさかのぼる.日本リハビリテーション医学会創設(1964年)から10年後のことである.ことば(言語)によるコミュニケーションの障害が,わが国におけるリハビリテーション医学の対象領域の一つとして認知されたことの証ともなった.
その後既に4半世紀の年月が経過し,言語・コミュニケーション障害の領域においても時代の変化を反映するさまざまな進展が認められている.なかでも人口の高齢化に伴う障害構造の変化,医学的進歩による重症患者の存命率の上昇,などを反映して臨床対象の分化・拡大が大幅に進み,これに対応した治療的アプローチないし介入もますます多様化の様相を深めている.こうした動向・知見を読者の皆様と共有するためにも,全般的な改訂が強く望まれるところであった(事実,1996年春の発行をめざして1994年暮より改訂作業にとりかかった)が,諸般の事情により進行が大幅に遅れ,今回ようやく第2版の出版に漕ぎ着けることができた.
第1版(初版)の構成は,10指に余る言語障害の諸領域の中からリハビリテーション医学との重なりがもっとも深い失語症,麻痺性構音障害,脳性麻痺の言語障害,小児失語症(後天性)を取り上げ,言語障害のリハビリテーション(総論)と併せて全5章から成るものであった.第2版では,大方において第1版の構成にならいながらも,過去20年余にわたる重要な進展の様相を織り込んだものとすることを目指した.すなわち第2版を構成する全6章中の5章(第1章:言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション,第2章:成人の失語症,第3章:運動障害性構音障害,第5章:後天性小児失語症,第6章:脳性麻痺の言語障害)は第1版の全5章にそれぞれ対応する章としたが,内容的には各領域独自の進展の様相を十分に反映させたものに改めることとした.こうした進展が理論・臨床の両面で特に顕著であったのは高次脳機能障害の一つとしての失語症の領域であり,「成人の失語症」(第2章)および「後天性小児失語症」(第5章)は,ほぼ全面的な改訂が必要であった.さらに,近年注目すべき発展を遂げつつある嚥下障害の領域を,新たな章(第4章:嚥下障害―第I部:診断と治療,第II部:リハビリテーション)として加えることにより,全体としての刷新をはかった.
各章の作成には新旧入り交じった執筆者があたった.第1〜3章,第6章は第1版と同じ(旧)執筆者が担当し,第4章と第5章はそれぞれ新しい執筆者にお願いした(第4章「嚥下障害」は,この領域のチームワークの重要性を踏まえて医師と言語聴覚士(ST)の2名が分担した).これら執筆者は,いずれも当該領域におけるベテランの医師またはSTであり,長年の臨床経験に裏付けられた理論と方法とを確立した個性豊かな臨床家・研究者である.各章の構成,執筆のスタイルなどはすべて各執筆者にお任せした.
21世紀を目前に控え,人間らしく生きることの本質が問われている.人類のみが共有する「ことば」によるコミュニケーションは,人間らしく生きることの中心テーマにほかならない.折しも,長年の懸案であった言語聴覚士法が関係各位の一方ならぬご支援・ご尽力により1997年12月に成立し,有資格言語聴覚士の数も5,000名に近づきつつある.本年1月には日本言語聴覚士協会が発足し,全国600万人にのぼる言語・コミュニケーション障害者を支援する専門職としての責務を果たすための諸活動を開始した.言語臨床の質量両面にわたる飛躍的向上,医師をはじめとする関連職種との従来にも増して緊密な連携,などの必要性も再確認された.従来ともすると乏しかった言語・コミュニケーション障害に対する社会全般の理解・関心も今後急速に改善することが期待される.
なお,本書の編集に際して,諸般の事情から各執筆者による第1稿提出の時期に2〜3年余にわたるずれが生じ(しかも,編者自身の提出が最後となった),早期に提出された執筆者には多大のご迷惑をかける結果となった.ひとえに編者の不明の致すところであり,深くお詫び申し上げる.
本書が言語障害者のリハビリテーションにかかわるさまざまな関連職種の方々,言語聴覚障害領域における現任者や現在勉学中の学生などにとどまらず,広く医療・保健・福祉関係に関心をお持ちの方々にもお読みいただけるよう心から願うものである.また,本書の構成・内容面について忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いである.
2000年12月 笹沼澄子
第2版の序 (笹沼澄子)
第1章 言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション (笹沼澄子)
1.コミュニケーションの過程
2.言語・コミュニケーション障害の種類,原因/発生機序
3.言語・コミュニケーション障害の特殊性
4.STの臨床活動:原則と方法
5.学問的背景
1 言語聴覚障害学の発展の経緯
2 学問体系の特徴
6.近年の動向
1 臨床対象の分化・拡大
2 治療的アプローチの多様化
文献
第2章 成人の失語症 (笹沼澄子)
はじめに:失語症臨床の発展の経緯
〔ノート1〕わが国における失語症言語臨床の開幕
第I部 失語症とは
1.失語症とは?:問題の特徴
1 失語症の定義
2 神経学的背景
3 原因疾患・発現率
〔ノート2〕言語機能,左半球,利き手
4 失語症に伴って現れやすい諸問題
2.失語症の言語症状
1 流暢性の障害
2 構音・韻律(プロソディー)の障害
3 喚語障害
〔ノート3〕語頭音効果・意味的ヒント効果
〔ノート4〕音韻性錯語にみられる「音韻変化」の規則性
4 統語(構文)障害
5 談話レベルの伝達能力
〔ノート5〕失語症者の談話生成能力:Ulatowskaらの研究から
6 聴覚的理解の障害
7 復唱障害
8 読みの障害
9 書字の障害
10 計算障害
11 その他の高次脳機能障害
3.失語症の主要タイプ(失語症候群)
1 ブローカ失語
2 ウェルニッケ失語
3 伝導失語
4 健忘(失名詞)失語
5 全失語
6 超皮質性失語
7 皮質下性失語
8 交叉性失語
9 いわゆる“純粋型”(単一言語様式)の障害
〔ノート6〕失語症者のコミュニケーション能力
〔ノート7〕高齢者の失語症
まとめ
文献
第II部 失語症のリハビリテーション
1.リハビリテーションの目標と過程
2.評価・診断手続きの枠組
1 初回面接
2 関連分野からの情報
3.言語面の検査
1 言語機能の評価
〔ノート8〕“失語症鑑別診断検査(老研版)”の開発の経緯
2 コミュニケーション能力の評価
3 関連する認知・行動面の検査
4.評価・診断
1 類似障害との鑑別
〔ノート9〕失語症と痴呆との鑑別の試み:
・“高次脳機能検査
・(老研版)を用いて
2 失語症タイプ(失語症候群)への分類
3 予後の推定
5.言語治療:治療的アプローチの枠組
1 言語治療の適応と目標設定
2 治療的アプローチの枠組
6.治療的アプローチの諸相(1):機能改善的アプローチ
1 刺激法
1)Schuellの失語症観と刺激法の理論的根拠
2)失語症治療の6原則
〔ノート10〕高次脳機能の修復:失語症の回復にかかわる脳内機序
3)刺激法の応用・発展
2 機能再編成法
〔ノート11〕仮名単語の読み書きの情報処理過程
3 認知神経心理学的アプローチ
〔ノート12〕認知心理学的情報処理モデルの効用
7.治療的アプローチの諸相(2):代償的アプローチ―実用的コミュニケーション能力の促進・拡大をねらうアプローチ
1 代償手段,コミュニケーション・ストラテジーの獲得訓練
2 代償手段,コミュニケーション・ストラテジーの使用訓練
1)Promoting Aphasic's Communication Effectiveness(PACE)
2)拡大・代替コミュニケーションAugumentative and Alternative Communication(AAC)
8.グループ訓練について
1 グループ訓練の役割/メリット
2 グループ訓練の実施手続き/留意点
9.治療効果について
1 言語機能に対する治療的介入の効果について
2 実用コミュニケーション能力に対する治療的介入の効果について
3 グループ訓練の効果について
4 治療効果の般化の問題
10.<維持期/社会適応期>への対応
1 家族指導
2 社会(職業)復帰の支援
3 社会参加の支援
4 心理的問題への対応
結び
文献
第3章 運動障害性構音障害 (柴田貞雄)
運動障害性構音障害dysarthriaの定義
disarthriaの種類と原因
1.構音障害の基礎--音韻とspeech生成過程
1 音韻
1)語音(短音,音素)の種類と産生方法
2)音節syllable,モーラ
3)プロソディー
2 speechの生成過程
1)発声
2)調音
3)調音の記述
4)連続調音
5)調音運動の要素
6)構音運動の神経支配
2.症状と検査
1 構音症状
2 検査
1)分析的聴き取り検査
2)系統的な構音検査
3 構音器官の検査と所見
1)構音器官の随意運動検査
2)その他の検査
3.診断と構音病理--構音症状の発現機序
1 診断
2 構音病理
1)痙性構音障害(spastic dysarthria)
2)失調性構音障害(ataxic dysarthria)
3)運動低下性構音障害(hypokinetic dysarthria)
4.リハビリテーション
1 医学的治療・管理
2 構音器官に対する医学的治療
3 言語療法
1)訓練活動の構成と実際
2)訓練の運用
4 コミュニケーションの補助・代替
5.福祉援助--身体障害者手帳の交付
文献
第4章 嚥下障害
第I部 診断と治療 (伊藤裕之)……227
1.嚥下運動
1 嚥下運動とは何か
2 口腔,咽頭,喉頭の解剖
3 嚥下運動の神経機序
4 嚥下運動
2.嚥下障害を起こす疾患と誤嚥ならびに嚥下障害の分類
1 動的嚥下障害と静的嚥下障害
2 誤嚥の分類
3 脳神経麻痺の分類と嚥下障害
3.嚥下障害の診断
1 問診
2 視診
3 触診
4.嚥下障害の検査
1 内視鏡検査
2 咽頭食道透視検査
3 筋電図検査
4 嚥下圧測定検査
5.嚥下障害の治療--総論
1 嚥下障害治療とリハビリテーションの考え方
2 嚥下障害(狭義)の治療
3 嚥下障害の外科的治療
6.嚥下障害の治療--各論
1 進行しないあるいは進行しにくい原因による嚥下障害の治療
2 治療やコントロールが可能な神経筋疾患による嚥下障害
3 治療が困難な進行性神経筋疾患による嚥下障害
4 パーキンソン病
5 頭頚部悪性腫瘍の術後の嚥下障害
7.嚥下障害の合併症と対策
1 気道の食片異物の予防
8.気管切開術と嚥下機能
9.小児の嚥下障害
1 球啜と嚥下の発達
2 小児の嚥下障害の検査
3 小児の嚥下障害の原因と治療
10.老人の嚥下障害
1 老人の嚥下運動の特徴
2 老人の嚥下障害の治療とリハビリテーション
主要参考文献
第II部 嚥下障害のリハビリテーション (矢守麻奈) 298
1.嚥下障害のリハビリテーションの開始
1 診療録から
2 患者・家族から
3 臨床的観察から
4 摂食観察
2.嚥下障害の評価
1 嚥下器官機能検査
2 摂食試行
3 嚥下造影検査(SVF検査)
4 その他の検査
5 嚥下機能以外の検査
6 嚥下障害のタイプ分類
7 評価のまとめ
3.嚥下障害のマネジメントと訓練テクニック
1 嚥下訓練施行の原則
2 感染症に対する注意
3 訓練テクニック
1)基礎的嚥下訓練(間接的訓練,機能改善アプローチ)
2)摂食訓練(直接的訓練,代償的アプローチ)
3)段階の変更
4 服薬
5 食器
6 口腔内衛生
7 摂食注意書の掲示
4.チーム連携
1 チーム連携の必要性
2 各職種の役割
3 チーム連携の方法
5.患者・家族指導
1 嚥下病態の具体的説明
2 嚥下リハビリテーションについての理解・協力
3 嚥下リハビリテーションの継続
6.症例
文献
第5章 後天性小児失語症 (進藤美津子)
1.小児失語症の歴史
2.神経学的背景
1 子どもの言語機能と大脳の側性化
1)脳の発生・発達と可塑性
2)言語機能の側性化
2 小児失語症の原因疾患
3.小児失語症の臨床像
1 新しい考え方
2 小児失語症の鑑別診断
1)診断の基準
2)鑑別診断
3 小児失語症の言語症状
4.小児失語症の評価
1 聴覚機能検査
2 言語機能検査
3 認知機能検査
4 非言語性知能検査
5.小児失語症の臨床例
〔症例1〕
〔症例2〕
〔症例3〕
〔症例4〕
〔症例5〕
〔症例6〕
6.小児失語症の回復と予後
7.言語・学習指導について
1 小児失語症の言語指導
2 小児失語症児への学習指導
文献
第6章 脳性麻痺の言語障害 (森永京子,森山梅千代)
1.脳性麻痺とは
1 脳性麻痺の定義
2 筋緊張の特徴に基づく分類
3 障害部位による分類
4 随伴障害
2.脳性麻痺の言語障害
3.脳性麻痺言語障害の発生
4.脳性麻痺児の言語発達および加齢による変化
1 言語の発達
2 構音の発達
3 加齢による変化
4 重度・重症児のコミュニケーションの発達
5.話しことばと声の特徴
6.言語と話しことばの検査・評価
1 言語障害の検査・評価
1)言語発達の評価
2)呼吸パターン
3)発語器官の形態,機能およびその知覚
4)摂食パターン
5)発声
6)構音
7)流暢さ
8)コミュニケーションの態度の異常
2 生育歴
3 関係ある専門家の意見を聴く
7.言語治療
1 言語治療の原則
2 言語治療の実際
1)乳幼児期の援助
2)言語治療の概要
3)言語発達の促進
4)話しことばのための身体的レディネスを育てる
5)構音を改善する
6)プロソディーの改善
7)コミュニケーション手段の拡大
8)話す意欲を育てる
9)年長児および成人脳性麻痺者への援助
10)障害の重い子どもへの発達援助
文献
資料1 老研版失語症鑑別診断検査
資料2 トークンテスト(Token Test)
和文索引
欧文索引
第1章 言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション (笹沼澄子)
1.コミュニケーションの過程
2.言語・コミュニケーション障害の種類,原因/発生機序
3.言語・コミュニケーション障害の特殊性
4.STの臨床活動:原則と方法
5.学問的背景
1 言語聴覚障害学の発展の経緯
2 学問体系の特徴
6.近年の動向
1 臨床対象の分化・拡大
2 治療的アプローチの多様化
文献
第2章 成人の失語症 (笹沼澄子)
はじめに:失語症臨床の発展の経緯
〔ノート1〕わが国における失語症言語臨床の開幕
第I部 失語症とは
1.失語症とは?:問題の特徴
1 失語症の定義
2 神経学的背景
3 原因疾患・発現率
〔ノート2〕言語機能,左半球,利き手
4 失語症に伴って現れやすい諸問題
2.失語症の言語症状
1 流暢性の障害
2 構音・韻律(プロソディー)の障害
3 喚語障害
〔ノート3〕語頭音効果・意味的ヒント効果
〔ノート4〕音韻性錯語にみられる「音韻変化」の規則性
4 統語(構文)障害
5 談話レベルの伝達能力
〔ノート5〕失語症者の談話生成能力:Ulatowskaらの研究から
6 聴覚的理解の障害
7 復唱障害
8 読みの障害
9 書字の障害
10 計算障害
11 その他の高次脳機能障害
3.失語症の主要タイプ(失語症候群)
1 ブローカ失語
2 ウェルニッケ失語
3 伝導失語
4 健忘(失名詞)失語
5 全失語
6 超皮質性失語
7 皮質下性失語
8 交叉性失語
9 いわゆる“純粋型”(単一言語様式)の障害
〔ノート6〕失語症者のコミュニケーション能力
〔ノート7〕高齢者の失語症
まとめ
文献
第II部 失語症のリハビリテーション
1.リハビリテーションの目標と過程
2.評価・診断手続きの枠組
1 初回面接
2 関連分野からの情報
3.言語面の検査
1 言語機能の評価
〔ノート8〕“失語症鑑別診断検査(老研版)”の開発の経緯
2 コミュニケーション能力の評価
3 関連する認知・行動面の検査
4.評価・診断
1 類似障害との鑑別
〔ノート9〕失語症と痴呆との鑑別の試み:
・“高次脳機能検査
・(老研版)を用いて
2 失語症タイプ(失語症候群)への分類
3 予後の推定
5.言語治療:治療的アプローチの枠組
1 言語治療の適応と目標設定
2 治療的アプローチの枠組
6.治療的アプローチの諸相(1):機能改善的アプローチ
1 刺激法
1)Schuellの失語症観と刺激法の理論的根拠
2)失語症治療の6原則
〔ノート10〕高次脳機能の修復:失語症の回復にかかわる脳内機序
3)刺激法の応用・発展
2 機能再編成法
〔ノート11〕仮名単語の読み書きの情報処理過程
3 認知神経心理学的アプローチ
〔ノート12〕認知心理学的情報処理モデルの効用
7.治療的アプローチの諸相(2):代償的アプローチ―実用的コミュニケーション能力の促進・拡大をねらうアプローチ
1 代償手段,コミュニケーション・ストラテジーの獲得訓練
2 代償手段,コミュニケーション・ストラテジーの使用訓練
1)Promoting Aphasic's Communication Effectiveness(PACE)
2)拡大・代替コミュニケーションAugumentative and Alternative Communication(AAC)
8.グループ訓練について
1 グループ訓練の役割/メリット
2 グループ訓練の実施手続き/留意点
9.治療効果について
1 言語機能に対する治療的介入の効果について
2 実用コミュニケーション能力に対する治療的介入の効果について
3 グループ訓練の効果について
4 治療効果の般化の問題
10.<維持期/社会適応期>への対応
1 家族指導
2 社会(職業)復帰の支援
3 社会参加の支援
4 心理的問題への対応
結び
文献
第3章 運動障害性構音障害 (柴田貞雄)
運動障害性構音障害dysarthriaの定義
disarthriaの種類と原因
1.構音障害の基礎--音韻とspeech生成過程
1 音韻
1)語音(短音,音素)の種類と産生方法
2)音節syllable,モーラ
3)プロソディー
2 speechの生成過程
1)発声
2)調音
3)調音の記述
4)連続調音
5)調音運動の要素
6)構音運動の神経支配
2.症状と検査
1 構音症状
2 検査
1)分析的聴き取り検査
2)系統的な構音検査
3 構音器官の検査と所見
1)構音器官の随意運動検査
2)その他の検査
3.診断と構音病理--構音症状の発現機序
1 診断
2 構音病理
1)痙性構音障害(spastic dysarthria)
2)失調性構音障害(ataxic dysarthria)
3)運動低下性構音障害(hypokinetic dysarthria)
4.リハビリテーション
1 医学的治療・管理
2 構音器官に対する医学的治療
3 言語療法
1)訓練活動の構成と実際
2)訓練の運用
4 コミュニケーションの補助・代替
5.福祉援助--身体障害者手帳の交付
文献
第4章 嚥下障害
第I部 診断と治療 (伊藤裕之)……227
1.嚥下運動
1 嚥下運動とは何か
2 口腔,咽頭,喉頭の解剖
3 嚥下運動の神経機序
4 嚥下運動
2.嚥下障害を起こす疾患と誤嚥ならびに嚥下障害の分類
1 動的嚥下障害と静的嚥下障害
2 誤嚥の分類
3 脳神経麻痺の分類と嚥下障害
3.嚥下障害の診断
1 問診
2 視診
3 触診
4.嚥下障害の検査
1 内視鏡検査
2 咽頭食道透視検査
3 筋電図検査
4 嚥下圧測定検査
5.嚥下障害の治療--総論
1 嚥下障害治療とリハビリテーションの考え方
2 嚥下障害(狭義)の治療
3 嚥下障害の外科的治療
6.嚥下障害の治療--各論
1 進行しないあるいは進行しにくい原因による嚥下障害の治療
2 治療やコントロールが可能な神経筋疾患による嚥下障害
3 治療が困難な進行性神経筋疾患による嚥下障害
4 パーキンソン病
5 頭頚部悪性腫瘍の術後の嚥下障害
7.嚥下障害の合併症と対策
1 気道の食片異物の予防
8.気管切開術と嚥下機能
9.小児の嚥下障害
1 球啜と嚥下の発達
2 小児の嚥下障害の検査
3 小児の嚥下障害の原因と治療
10.老人の嚥下障害
1 老人の嚥下運動の特徴
2 老人の嚥下障害の治療とリハビリテーション
主要参考文献
第II部 嚥下障害のリハビリテーション (矢守麻奈) 298
1.嚥下障害のリハビリテーションの開始
1 診療録から
2 患者・家族から
3 臨床的観察から
4 摂食観察
2.嚥下障害の評価
1 嚥下器官機能検査
2 摂食試行
3 嚥下造影検査(SVF検査)
4 その他の検査
5 嚥下機能以外の検査
6 嚥下障害のタイプ分類
7 評価のまとめ
3.嚥下障害のマネジメントと訓練テクニック
1 嚥下訓練施行の原則
2 感染症に対する注意
3 訓練テクニック
1)基礎的嚥下訓練(間接的訓練,機能改善アプローチ)
2)摂食訓練(直接的訓練,代償的アプローチ)
3)段階の変更
4 服薬
5 食器
6 口腔内衛生
7 摂食注意書の掲示
4.チーム連携
1 チーム連携の必要性
2 各職種の役割
3 チーム連携の方法
5.患者・家族指導
1 嚥下病態の具体的説明
2 嚥下リハビリテーションについての理解・協力
3 嚥下リハビリテーションの継続
6.症例
文献
第5章 後天性小児失語症 (進藤美津子)
1.小児失語症の歴史
2.神経学的背景
1 子どもの言語機能と大脳の側性化
1)脳の発生・発達と可塑性
2)言語機能の側性化
2 小児失語症の原因疾患
3.小児失語症の臨床像
1 新しい考え方
2 小児失語症の鑑別診断
1)診断の基準
2)鑑別診断
3 小児失語症の言語症状
4.小児失語症の評価
1 聴覚機能検査
2 言語機能検査
3 認知機能検査
4 非言語性知能検査
5.小児失語症の臨床例
〔症例1〕
〔症例2〕
〔症例3〕
〔症例4〕
〔症例5〕
〔症例6〕
6.小児失語症の回復と予後
7.言語・学習指導について
1 小児失語症の言語指導
2 小児失語症児への学習指導
文献
第6章 脳性麻痺の言語障害 (森永京子,森山梅千代)
1.脳性麻痺とは
1 脳性麻痺の定義
2 筋緊張の特徴に基づく分類
3 障害部位による分類
4 随伴障害
2.脳性麻痺の言語障害
3.脳性麻痺言語障害の発生
4.脳性麻痺児の言語発達および加齢による変化
1 言語の発達
2 構音の発達
3 加齢による変化
4 重度・重症児のコミュニケーションの発達
5.話しことばと声の特徴
6.言語と話しことばの検査・評価
1 言語障害の検査・評価
1)言語発達の評価
2)呼吸パターン
3)発語器官の形態,機能およびその知覚
4)摂食パターン
5)発声
6)構音
7)流暢さ
8)コミュニケーションの態度の異常
2 生育歴
3 関係ある専門家の意見を聴く
7.言語治療
1 言語治療の原則
2 言語治療の実際
1)乳幼児期の援助
2)言語治療の概要
3)言語発達の促進
4)話しことばのための身体的レディネスを育てる
5)構音を改善する
6)プロソディーの改善
7)コミュニケーション手段の拡大
8)話す意欲を育てる
9)年長児および成人脳性麻痺者への援助
10)障害の重い子どもへの発達援助
文献
資料1 老研版失語症鑑別診断検査
資料2 トークンテスト(Token Test)
和文索引
欧文索引