やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 脳卒中のリハビリテーションでは,急性期,回復期,生活期と治療の流れが整備されてきた.しかし,精神・身体機能の回復が不十分で在宅復帰に至らないことも少なくなく,さらなる機能改善が望まれる.従来のリハビリテーションのアプローチに加え,経頭蓋磁気刺激,経頭蓋直流刺激,薬物療法等により神経機能を修飾するニューロモデュレーション(neuromodulation),ロボットやVR(virtual reality)を利用した訓練等の新しい機能回復の方法が導入され,効果を上げている.
 近年,運動イメージ訓練(mental practice;MP)や運動観察訓練(action observation practice;AOT)等,実際の運動を伴わずに内的(心象的)に運動をシミュレートし,認知運動機能にアプローチする訓練方法や鏡による運動錯覚を利用した訓練等が試みられ,その効果についても検証が始まっている.これらの訓練には,ミラーニューロンが大きく関与することが知られているが,この分野についてはまとまった解説は少なく,原理や具体的な訓練方法の詳細についてはまだよく知られていない.
 本特集では,これらの内的運動シミュレーションを利用した運動機能訓練について,基礎(原理)から応用(方法,効果,限界)まで各分野の第一線で活躍されている先生方に解説いただいた.内藤栄一先生には「運動イメージをリハビリテーションで有効に使うための基礎知識―感覚誘導型イメージトレーニングの提案―」において,運動イメージの定義,脳活動との関係,運動学習との関係,リハビリテーションへの応用と総論的に解説いただいた.川上途行先生には「上肢の運動イメージ療法」において,上肢の運動イメージ療法のリハビリテーションにおける位置づけ,具体的な実践方法,その適応,電気刺激法やBMI(Brain-Machine Interface)との併用による今後の展望について解説いただいた.田邉淳平先生,網元 和先生らには「脳卒中における認知運動療法を利用した機能訓練〜ミラーセラピー(上肢)〜」において,ミラーセラピーの原理とその適応や具体的な実践方法,問題点や視覚性運動錯覚の活用について解説いただいた.渕上 健先生,森岡 周先生らには「下肢の運動観察療法」において,下肢の運動観察療法の原理,適応と効果,具体的な実践方法,本方法の問題点や展望について解説いただいた.坂口雄哉先生,山アせつ子先生らには,「脳卒中上肢麻痺に対する運動観察療法」において上肢の運動観察療法の適応,具体的な実践方法,その効果について解説いただいた.
 本特集の内容を読者の皆様方の脳卒中リハビリテーションの臨床現場における実践に役立てていただければ幸いである.
 (編集委員会 企画担当:和田 太)
特集 脳卒中における認知運動機能を利用した機能訓練
 特集にあたって(和田 太)
 運動イメージをリハビリテーションで有効に使うための基礎知識―感覚誘導型イメージトレーニングの提案―(内藤栄一)
 上肢の運動イメージ療法(川上途行)
 ミラーセラピー(上肢)(田邉淳平 網本 和)
 下肢の運動観察療法(渕上 健 森岡 周)
 脳卒中上肢麻痺に対する運動観察療法(坂口雄哉 山アせつ子)

新連載
認知症の基礎知識とリハビリテーション
 1.認知症と身体疾患の併発(藤田康介 櫻井 孝)

連載
巻頭カラー デザインが拓くリハビリテーションの未来
 3.補装具(筋電義手支援における3Dプリンタの活用)(横山 修 松田健太)

ニューカマー リハ科専門医
 (平 薫代)

リハビリテーションと薬剤
 25.リハビリテーションのセッティング別の薬剤管理:(3)外来・クリニック(小瀬英司)

知っておきたい神経科学のキィワード
 17.相反性抑制(橋容子 山口智史・他)

リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
 I.急性期病院における安全管理:4.暴力・離院・自殺対策について(秋元秀昭)

リハビリテーション診療におけるEvidence-Based Practice
 3.Evidence-Based Practiceにおける情報収集(湯浅秀道)

リハビリテーション治療中のリスクに備える医療機器管理
 6.脳室ドレナージ・VPシャント・LPシャント(松浦大輔)

リハビリテーション医学・医療の歴史秘話“あの時なにが?”
 7.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会(植木 純)

学会報告
 第14回日本ニューロリハビリテーション学会学術集会(田中 亮)
 リハビリテーション医療DX研究会 第1回学術集会(古橋 哲)

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