やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 最近の歯科分野におけるデジタルツールの発展はめざましく,ここ数年では普及率もかなり向上している.しかし,いくら最新のデジタルツールでも上手く使いこなさなければ効率化が図れないばかりか,逆に手間とコストがかかってしまうことになる.
 デジタルツールの使用においても,歯科医師と歯科技工士の連携をうまく取ることができれば作業効率が数倍に上がり,アナログな治療よりも良好な結果が得られると考えている.
 デジタルツールを臨床に取り入れるまでは,顔貌と歯列の調和を図るには顔貌写真を参考に歯科技工士が経験から仕上げることが多く,またブリッジのポンティック基底面の形態を適切に仕上げるためには多くのステップと経験が必要であった.特にブリッジのポンティック基底面の形態はプロビジョナルレストレーション(以下PVR)で適切な圧になるように調整し,その形態をファイナルレストレーションに移行させなければならないため難易度が高い 1).
 アナログで作業を行っているときは,様々な手法でPVRとファイナルレストレーションのポンティック基底面の形態が同じになるように工夫していた.1つ目の方法は,PVRをシリコーン印象に取り込んで印象する方法である(図1).この方法で印象すると,図2のようにポンティック基底面が正確に再現された模型を製作できるが,別に歯肉圧排をしてマージンが明瞭に確認できる印象も採得しなければならないため時間と手間を要する.さらに印象材の変形,石膏の膨張も考慮に入れる必要がある.
 2つ目の方法としては,ジルコニアフレーム完成後に試適を行い,適合に問題がなければ,PVRを外した直後にジルコニアフレームを口腔内にセットし,粘膜面とフレームの間にパターンレジンを流し込んでポンティック基底面の印象を採得する方法である(図3) 2).
 どちらの方法もPVRとかなり近似した形態の模型を製作できるが,多少の誤差が発生するため,模型をわずかに削って微調整をし,最終的にはファイナルレストレーションを仮着して経過観察をしなければならない.
 今回は前歯部審美修復治療時に歯科医師と歯科技工士がそれぞれデジタルツールを使用し連携して作業を行うことで効率的かつ良好な結果を得ることができたので,症例を通して,その方法を説明したいと思う.
 山崎章弘
 田村 亮
 下関市・山崎歯科クリニック

 参考文献
 1)T J Dylina:Contour determination for ovate pontics.J Prosthet Dent,82(2):136-142,1999.
 2)山崎章弘:成功するブリッジワーク 前編.補綴臨床,48(3):261〜269,2015.
Special Article
特別企画 前歯部審美修復治療におけるデジタルツールの活用
 ―IOSを活用したポンティック基底面の再現
 (山崎章弘,田村 亮)

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