やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

JT CONCEPTという治療指針
 「患者にとっての歯科治療」とは決して楽しいものではなく,歯科医院で過ごす時間には非常にネガティブなイメージが一般的であると考えていた.しかし,私が歯科医師になって初めて立ち会った臨床経験で感じた患者と術者との関係,「口腔内の機能的・審美的な環境整備を,ともに楽しんでいるかのようなポジティブな雰囲気」に,大きな衝撃と歯科治療の理想を予感した.そして,その治療の雰囲気をつくり出していた「田上順次先生の臨床」を目の当たりにし,術者としてもつべき治療に関する知識・技術・経験と,それに裏打ちされた人間性構築の必要性を感じることになった.そのときから私は,患者の治療に対する不安を取り除き,コンポジットレジン修復を中心とした「MI」のアプローチにより,口腔内を美しく環境整備することができる歯科治療を目指して,日々の臨床に取り組んでいる.
 「コンポジットレジン修復」は,齲蝕治療用の修復材料として小規模窩洞に使用された時代から,1口腔単位での治療計画のなかで,臨床術式をシンプルにするための歯質保存的な審美修復オプションとして,発想転換される必要性を強く感じる.本書を通じて,田上臨床から得たさまざまな修復治療の発想転換(JT CONCEPT)により,患者にとって低侵襲かつ効果的にコンポジットレジン修復が適応された臨床症例を紹介したい.
 DRC.HAMAMATSU・田代歯科医院
 田代浩史
Introduction
 コンポジットレジン修復の臨床的特徴
Chapter 1 臼歯部へのコンポジットレジン修復
 齲蝕除去時の注意事項
 CASE 1 齲蝕検知液・ステンレスラウンドバー・スプーンエキスカベータ使用(臼歯1級修復)
 コンポジットレジン修復の窩洞形態
 臼歯部コンポジットレジン修復
 CASE 2 臼歯1級修復
 CASE 3 臼歯2級修復
Chapter 2 前歯部へのコンポジットレジン修復
 前歯部コンポジットレジン修復
 CASE 1 前歯3・4級修復
 CASE 2 5級修復
 前歯部修復における歯冠形態回復
 積層充填による審美的色調回復
 CASE 3 前歯小規模3級修復
 CASE 4 前歯大規模4級修復
Chapter 3 破折歯へのコンポジットレジン修復
 前歯部破折症例への接着修復対応
 CASE 1 破折歯への修復(歯冠形態の大規模復元)
 CASE 2 破折歯への修復(歯冠形態の小規模復元)
 CASE 3 破折歯への修復(歯冠形態の審美的修正)
Chapter 4 離開歯列へのコンポジットレジン修復
 離開歯列への低侵襲対応
 CASE 1 部分的離開歯列への修復(下部鼓形空隙)
 CASE 2 部分的離開歯列への修復(上部鼓形空隙)
 CASE 3 離開歯列への修復(離開距離1mm以下)
 CASE 4 離開歯列への修復(離開距離1〜2mm・歯軸方向偏位)
 CASE 5 離開歯列への修復(離開距離1〜2mm・切縁位置変更)
Chapter 5 ホワイトニングとコンポジットレジン修復
 ホワイトニング併用のコンポジットレジン修復
 CASE 1 WALKING BLEACH併用コンポジットレジン修復(失活歯への修復)
 ホワイトニング材料の分類と効果
 CASE 2 OFFICE BLEACH追加併用コンポジットレジン修復(破折歯への修復)
 CASE 3 HOME BLEACH併用コンポジットレジン修復(離開歯列への修復)
Chapter 6 コンポジットレジンによるダイレクトベニア修復
 直接法コンポジットレジンによるベニア修復の適応
 CASE 1 矮小歯へのダイレクトベニア修復
 CASE 2 変色歯へのダイレクトベニア修復
 CASE 3 矯正治療後のダイレクトベニア修復
 ダイレクトベニア修復の研磨操作
Chapter 7 コンポジットレジンによるダイレクトクラウン修復
 ダイレクトレジンコアからの進化,ダイレクトクラウン修復
 CASE 1 失活歯へのダイレクトコンポジットレジンクラウン修復(ダイレクトレジンコア併用)
 CASE 2 生活歯へのダイレクトコンポジットレジンクラウン修復
Chapter 8 コンポジットレジンによるダイレクトブリッジ修復
 欠損歯列への対応方法にも発想転換,ダイレクトブリッジ修復
 CASE 1 1歯欠損へのインプラント治療(治療期間:約1年)
 CASE 2 1歯欠損へダイレクトブリッジ修復(治療期間:約2時間)
Chapter 9 メインテナンスと適応範囲拡大への期待
 コンポジットレジン修復の可能性
 CASE 1 破折歯への修復(歯冠形態の審美的復元)4年経過観察
 CASE 2 欠損歯列への修復(下顎前歯部)3年経過観察
 CASE 3 欠損歯列への修復(上下顎前歯部)4年経過観察

 文献