まえがき
歯科臨床と基礎歯学との調和・融合を求めて,飯島国好先生と編集の任にあたった『治癒の病理』が発刊されたのは23年前の1988年である.その後,『治癒の病理』は「臨床編」として,第1巻:歯内療法(1993年),第2巻:歯周療法(1994年),第3巻:歯の移植・再植(1995年),第4巻:インプラント(1996年)が発刊された.これらの本の発刊に至った背景には優れた臨床家との出会いとディスカッションがあり,その先生方の協力のおかげで,エビデンスに基づく臨床と基礎の融合した書を出すことができたと思っている.
その後歯科臨床では,インプラントのめざましい普及,象牙質・歯髄複合体の新しい概念の定着,エムドゲインの開発と応用などがあり,研究面でも免疫染色,共焦点レーザー顕微鏡,PCRなど新しい方法が続々と登場し新知見が生み出されてきた.しかし,この20 年の間,歯科臨床と基礎歯学とを関連づけた書の出版は数少なく,既刊の『治癒の病理』は「臨床編」も含めて絶版や在庫なしで,手に入らない状況である.日々の臨床の中で疑問を抱いた若い歯科医師が,その疑問を解く手がかりを求めて歯科専門書の書店を訪れると聞いた.
そこで定年退職を迎えるにあたり,若い歯科医師のために,『治癒の病理』のまとめを書いておかなければならないのでは,と考え本書執筆を思い立った.構成内容は「歯周疾患」,「象牙質・歯髄複合体」,「移植・再植・歯の移動」,「インプラント」とした.
出版にあたって心がけたことは,治癒に関する基本的・普遍的な事項はすでにわかっていることであっても,しっかりと既述する,歯科臨床と関連する基礎医学の新しい情報をできるだけ多く紹介する,さらに,日常忙しく基礎歯学を敬遠しがちな臨床家にとってもわかりやすい内容にする,ということであった.そのため,文章を簡潔明瞭にし,フルカラーの図,表,イラストを多く用いて説明するようにした.ページ左の欄外にはキーワードを英文とともに記載したので,索引から容易に調べることができるであろう.前述したページに提示した図との関連を明らかにするため,欄外に縮小した図も随時掲載した.付図説明はできるかぎり丁寧に記載し,図とその説明だけで概要が理解できるようにした.臨床家にとってなじみの薄い顕微鏡写真には,図の中に単語や記号を入れた.
さらに,研究と関連する専門用語については可及的MEMOの項目で取り上げ,簡単な説明を加えた.─臨床の疑問に基礎が答える─という副題にあるように,「臨床的考察」に力点をおいて記載した.講演会などで臨床家から良く受ける質問を基にして,クエスチョン・アンド・アンサー形式にした.読者諸賢のご批判を仰ぎたい.
本書が日常の臨床における疑問に対する解答となり,臨床術式の生物学的な理解の一助となれば幸いである.
最後に,本書出版にあたり,写真の使用を快諾してくださった多くの先生に心より感謝申し上げます.また,出版の企画に深いご理解・ご協力を賜った医歯薬出版株式会社の関係各位,特に本書編集にあたり多大なご援助を頂いた大城惟克氏に心より御礼申し上げます.
2011年8月
下野正基
歯科臨床と基礎歯学との調和・融合を求めて,飯島国好先生と編集の任にあたった『治癒の病理』が発刊されたのは23年前の1988年である.その後,『治癒の病理』は「臨床編」として,第1巻:歯内療法(1993年),第2巻:歯周療法(1994年),第3巻:歯の移植・再植(1995年),第4巻:インプラント(1996年)が発刊された.これらの本の発刊に至った背景には優れた臨床家との出会いとディスカッションがあり,その先生方の協力のおかげで,エビデンスに基づく臨床と基礎の融合した書を出すことができたと思っている.
その後歯科臨床では,インプラントのめざましい普及,象牙質・歯髄複合体の新しい概念の定着,エムドゲインの開発と応用などがあり,研究面でも免疫染色,共焦点レーザー顕微鏡,PCRなど新しい方法が続々と登場し新知見が生み出されてきた.しかし,この20 年の間,歯科臨床と基礎歯学とを関連づけた書の出版は数少なく,既刊の『治癒の病理』は「臨床編」も含めて絶版や在庫なしで,手に入らない状況である.日々の臨床の中で疑問を抱いた若い歯科医師が,その疑問を解く手がかりを求めて歯科専門書の書店を訪れると聞いた.
そこで定年退職を迎えるにあたり,若い歯科医師のために,『治癒の病理』のまとめを書いておかなければならないのでは,と考え本書執筆を思い立った.構成内容は「歯周疾患」,「象牙質・歯髄複合体」,「移植・再植・歯の移動」,「インプラント」とした.
出版にあたって心がけたことは,治癒に関する基本的・普遍的な事項はすでにわかっていることであっても,しっかりと既述する,歯科臨床と関連する基礎医学の新しい情報をできるだけ多く紹介する,さらに,日常忙しく基礎歯学を敬遠しがちな臨床家にとってもわかりやすい内容にする,ということであった.そのため,文章を簡潔明瞭にし,フルカラーの図,表,イラストを多く用いて説明するようにした.ページ左の欄外にはキーワードを英文とともに記載したので,索引から容易に調べることができるであろう.前述したページに提示した図との関連を明らかにするため,欄外に縮小した図も随時掲載した.付図説明はできるかぎり丁寧に記載し,図とその説明だけで概要が理解できるようにした.臨床家にとってなじみの薄い顕微鏡写真には,図の中に単語や記号を入れた.
さらに,研究と関連する専門用語については可及的MEMOの項目で取り上げ,簡単な説明を加えた.─臨床の疑問に基礎が答える─という副題にあるように,「臨床的考察」に力点をおいて記載した.講演会などで臨床家から良く受ける質問を基にして,クエスチョン・アンド・アンサー形式にした.読者諸賢のご批判を仰ぎたい.
本書が日常の臨床における疑問に対する解答となり,臨床術式の生物学的な理解の一助となれば幸いである.
最後に,本書出版にあたり,写真の使用を快諾してくださった多くの先生に心より感謝申し上げます.また,出版の企画に深いご理解・ご協力を賜った医歯薬出版株式会社の関係各位,特に本書編集にあたり多大なご援助を頂いた大城惟克氏に心より御礼申し上げます.
2011年8月
下野正基
まえがき
第I編 歯周疾患
第1章 歯周組織の構造と機能
1 歯肉の構造と機能
1.歯肉の構造
A 歯肉上皮
1 歯肉口腔上皮
2 歯肉溝上皮
3 付着(接合)上皮
B 歯肉結合組織(歯肉固有層)
1 歯槽上線維装置
C 歯肉の血管
D 歯肉の神経
2.歯肉の機能
A 歯の位置的安定性の維持
B 防御機構(生理学的透過性関門)
1 傍細胞経路と経細胞経路
2 上皮の物質通過経路
3 口腔粘膜における透過性関門
4 角化上皮と非角化上皮の透過性関門
5 付着上皮の防御機構(付着上皮に防御機構はあるか?)
6 付着上皮細胞内の小顆粒(付着上皮にMCGは存在するか?)
7 付着上皮の貪食能(付着上皮細胞は貪食能をもっているか?)
8 歯肉溝滲出液(歯肉溝滲出液はどこからくるか?)
9 歯肉溝滲出液の構成成分
10 口腔粘膜上皮のタイト結合構成タンパク
11 ディフェンシン
C 恒常性維持(高いターンオーバー率)
D 歯との接着機構(粘膜表面のシール,基底板の形成)
1 外側基底板の構造と構成成分
2 ヘミデスモゾームの構造と構成成分
3 ラミニン─5やインテグリンα6β4はどこで作られるのか?
4 内側基底板の構成成分は外側基底板の構成成分と同じか?
5 付着上皮の内側基底板には大量のラミニンが発現している
6 ラミニンとインテグリンは細胞接着のみならず細胞移動にも関与している
7 DAT(Directly Attached to the Tooth:歯と直接付着した)細胞は動くのか?
8 細胞移動と接着の過程で,ラミニン分子とインテグリン分子が変化する
9 付着上皮は接着しながら移動する
E 非分化状態の維持(非角化)
1 歯肉上皮細胞のサイトケラチンの分布
2 4─META/MMA─TBB─O(4─METAと略)レジンと再生上皮の分化(4─METAレジンは口腔上皮を非分化状態に維持するか?)
F 白血球遊走のための通路(拡大した細胞間隙)
1 細胞間隙の拡大
2 デスモゾームの構造と機能
G 機械的圧力から歯肉組織を守る保護機構
2 歯槽骨の構造と機能
1.歯槽骨の構造
2.歯槽骨の化学組成
3.歯槽骨の細胞
A 骨芽細胞
1 骨芽細胞の分化・発生と転写因子(Cbfa─1とOsx)
2 骨芽細胞の成熟に伴う増殖と分化の相関
B 骨細胞
C 破骨細胞
1 破骨細胞の分化
4.歯槽骨の機能
A 骨のリモデリング
3 セメント質の構造と機能
1.セメント質の構造
A セメント質の細胞
1 セメント芽細胞
2 セメント細胞
3 破セメント細胞(破歯細胞)
B セメント質の線維
C セメント質の非コラーゲンタンパク
D セメント質に特有のタンパクは存在するか?
2.セメント質の分類
1 無細胞性無線維性セメント質
2 無細胞性外部性線維性セメント質
3 細胞性混合重層性セメント質
4 細胞性固有線維性セメント質
付 中間セメント質
3.セメント質の機能
4 歯根膜の構造と機能
1.歯根膜の構造
A 歯根膜の幅径
B 歯根膜を構成する成分
1 歯根膜の細胞成分
2 マラッセ上皮遺残はどのようにしてヘルトヴィッヒ上皮鞘の細胞から変化するのか?
3 ヘルトヴィッヒ上皮鞘の細胞はアポトーシスを起こすか?
4 歯根膜の細胞外質
5 その他
2.歯根膜の機能
1 支 持
2 感 覚
3 栄 養
4 恒常性
5 再 生
第2章 歯周組織の病態
1 歯周病の概念と疫学
1.歯周炎の発症・進行過程
1 開始期病変
2 早期病変
3 確立期病変
4 発展期病変
2.実験的歯周炎の発症
3.歯周病の罹患率
2 歯周病の病因
1.細菌因子
2.宿主因子
3.環境因子
3 歯周炎の発症と進行のメカニズム
1.歯周病原性細菌の特性
A 歯周病原性細菌とは?
B 歯肉縁上プラークの形成
C 歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク
D 歯周病原性細菌
1 Porphyromonas gingivalis
2 Aggregatibacter actinomycemcomitans
3 Tannerella forsythis
4 Prevotella intermedia
5 Treponema denticola
6 Fusobacterium nucleatum
7 Campylobacter rectus
E 細菌の蓄積
F 細菌性タンパク分解酵素
G 内毒素(リポ多糖体)
2.歯周病進行の病理学的機構
A 循環障害と滲出
B ケミカルメディエーター(化学伝達物質)
C 好中球の遊走
D 炎症性細胞
E 接着分子
F 好中球の貪食能
G 免疫応答
H サイトカイン
1 サイトカイン
2 炎症性サイトカイン
3 走化性サイトカイン(ケモカイン)
4 リンパ球シグナリングサイトカイン
5 サイトカインネットワーク
I タンパク分解酵素と分解抑制物質
3.歯周組織の破壊
A 結合組織の破壊
B 歯周ポケットの形成
C 歯槽骨吸収
4 歯周病の病態と病理診断
1.歯肉病変
A プラーク性歯肉炎
B 非プラーク性歯肉炎
C 歯肉増殖
1 薬物性歯肉増殖症
2 遺伝性歯肉過形成(遺伝性歯肉線維腫症)
2.歯周炎
A 慢性歯周炎(成人性歯周炎)
B 侵襲性歯周炎
C 遺伝疾患に伴う歯周炎
3.壊死性歯周疾患
4.歯周組織の膿瘍
A 歯肉膿瘍
B 歯周膿瘍
5.歯周─歯内病変
6.歯肉退縮
7.咬合性外傷
A 急性外傷性変化
B 慢性外傷性変化(咬合性外傷)
1 一次性咬合性外傷
2 二次性咬合性外傷
C 咬合性外傷と歯周病の進行
8.歯周病の病理診断
5 ビスフォスフォネートによる顎骨壊死
1.壊死はなぜ顎骨にのみ発生するのか?
2.どうやってビスフォスフォネート関連顎骨壊死と診断するのか?
3.どのような臨床症状を表すのか?
4.ビスフォスフォネート関連顎骨壊死発生のリスクファクターは何か?
5.ビスフォスフォネート製剤患者の歯科治療における留意点は?
6 セメント質の病変
1.セメント質増生
2.セメント粒
3.アンキローシス
第3章 歯周病と全身疾患
1 歯周病と全身疾患の関係
1.歯周病は全身病である
2.歯科処置と菌血症
A 菌血症
B 細菌の血管内侵入
2 心臓血管系疾患と歯周病
1.歯周病原性細菌は血管内に侵入するか?
2.心血管系疾患発症の予測因子
3.Rossの傷害反応説
4.虚血性心疾患
3 誤嚥性肺炎と歯周病
1.高齢者の肺炎
A 不顕性誤嚥
B 誤嚥性肺炎の細菌
2.誤嚥性肺炎は口腔ケアによって予防できる
4 糖尿病と歯周病
1.糖尿病とは?
2.ランゲルハンス島の細胞
3.インスリンの機能
4.インスリン抵抗性とは?
5.糖尿病の分類
6.糖尿病の診断
7.外科的処置の判断基準
8.糖尿病の症状
9.糖尿病の合併症
10.糖尿病と歯周病との関連
5 早期低体重児出産と歯周病
1.妊娠と歯周病
2.炎症性物質と早産
6 肥満と歯周病
1.リスク因子としての肥満
2.肥満の判定基準
3.肥満関連物質(アディポサイトカイン)と歯周病
第4章 歯周組織の再生
1 創傷治癒について
1.創傷治癒の原則と肉芽組織
A 創傷治癒の原則
B 肉芽組織
C 更新性組織と安定性組織
2.治癒過程における上皮の役割
2 歯肉の再生
1.歯肉切除後の上皮の再生
A 歯肉切除後に上皮はどのように再生するのか?
B 再生上皮の微細構造
2.再生上皮と接着性タンパクの発現
3.歯肉溝の環境と上皮の角化
3 歯槽骨,セメント質,歯根膜の再生
1.歯周組織の再生における歯根膜の役割
A 歯根窩洞形成実験
B オートラジオグラフィー
C 未分化間葉細胞の増殖と分化
2.歯根膜細胞の硬組織形成能
A 歯根膜の移植実験
B 歯根膜の培養実験
3.骨誘導タンパク
4.骨誘導と骨伝導
A 骨誘導
B 骨伝導
5.Melcherの仮説とGTR
A Melcherの仮説
B GTR(Guided Tissue Regeneration)
C 非吸収性膜と吸収性膜
6.エムドゲイン(R)
A エムドゲインとは?
B エムドゲインの期待される作用
7.エナメルタンパク
A エナメルタンパクとその特性
B エナメル基質の酵素
8.歯周組織再生に関与する成長因子,分化因子
4 長い付着上皮
1.長い付着上皮による上皮性付着
2.長い付着上皮には歯肉溝滲出液による防御機構はない
3.一旦形成された長い付着上皮は短くなる
A 上皮性付着から結合組織性付着への置換
B 長い付着上皮のターンオーバー
4.なぜ長い付着上皮は短くなるのか?
5.長い付着上皮の接着装置
A 長い付着上皮にもラミニンやインテグリンが発現している
B インテグリンα3の発現が弱かったことの意味
6.再生上皮と4─METAレジン
A 健常歯肉上皮は4─METAレジンに対してどのように反応するのか?
B 再生上皮とレジン界面における接着性タンパク
C 4─METAレジンパックを除去すると歯肉に発現する接着性タンパクはどのように変化するか?
第5章 臨床的考察
Q 1─付着上皮のターンオーバー時間が非常に早いことは臨床的にどんな意味があるのか?
Q 2─歯肉溝滲出液の検査から何がわかるのか?
Q 3─付着上皮の歯との接着の臨床的意義は何か?
Q 4─長い付着上皮による上皮性付着の臨床的意義は何か?
Q 5─長い付着上皮による上皮性付着を臨床的に確認するには?
Q 6─硬口蓋皺壁は何のために存在するのか?
Q 7─メラニンはどのようにして歯肉に発現するのか?
Q 8─歯肉結合組織(歯肉固有層:歯槽上線維装置)の臨床的な意義は何か?
Q 9─セメント質が吸収されにくいのはなぜか?
Q 10─細胞性セメント質と無細胞性セメント質との違いは何か?
Q 11─セメント質の添加はなぜ起きるか?
Q 12─プラークフリーゾーンは何を意味するか?
Q 13─歯肉の色や形は病態を反映しているか?
Q 14─歯肉鞍部(コル)は歯肉炎の好発部位か?
Q 15─歯肉縁上プラークをコントロールすると歯肉縁下プラークは増えないか?
Q 16─プロービングによって付着上皮は剥がれるか?
Q 17─プロービングによって生じた上皮間亀裂は修復するのか?(プロービング時に付着上皮を傷つけたらどうなる?デスモゾームは再付着するか?)
Q 18─上皮性付着が起きるのは上皮細胞の侵入のスピードが早いためか?
Q 19─応力によって骨増生は起きるか?ブリッジポンティック下における骨増生の機序(仮説)
Q 20─なぜ突然の歯肉退縮が惹き起こされるのか?
Q 21─歯頸部楔状欠損はどうしてできるのか?咬合力とアブフラクション(abfraction)
Q 22─ルートプレーニングはどこまでやればいいのか?アタッチメントレベルについて
Q 23─歯科臨床研究をどのように再評価するか?
Q 24─コクラン・ライブラリーとは?
Q 25─4─METAレジンパックの臨床的意義は何か?
Q 26─有髄歯と無髄歯とでは歯槽骨,セメント質,歯根膜の再生に差があるのか?
Q 27─EmdogainとGTR,どちらが効果的か?
Q 28─歯肉退縮に対する根面被覆のための有効な術式は何か?
Q 29─クリーピングアッタチメントはどうして起きるのか?
Q 30─糖尿病患者に対する歯周治療はどうすればよいか?
Q 31─抜歯後の歯槽骨吸収を防ぐ方法はあるか?
Q 32─シルバーポイントが入る歯と歯肉の間の隙間はどうなっているのか?
文献(第I編)
第II編 象牙質・歯髄複合体
第1章 象牙質・歯髄複合体という考え方
第2章 構造,発生と機能
1 象牙質・歯髄複合体の構造
1.象牙質形成について
2.象牙質の構造
A 象牙細管
B 象管周囲象牙質
C 管間象牙質
D 硬化象牙質
E 球間象牙質
F 成長線
G トームス顆粒層
H セメント─象牙境
3.歯髄の構造
4.歯髄を構成する細胞
A 象牙芽細胞
B 線維芽細胞
C 未分化間葉細胞
D マクロファージ
E 樹状細胞
5.歯髄の血管
6.歯髄の神経
A 歯髄神経の分布
B Aβ線維,Aδ線維,C線維
2 象牙質・歯髄複合体の発生
1.発生学的に象牙質も歯髄も,ともに歯乳頭に由来する
2.歯の発生過程におけるシグナル伝達
3.象牙芽細胞の分化
3 象牙質・歯髄複合体の機能
1.象牙質の特性
2.歯冠象牙質と歯根象牙質
3.石灰化の制御
4.象牙質の透過性
5.刺激の種類と細管内液の移動
6.歯の痛み
A 感覚の種類
B 痛みとは?
C 適刺激と痛覚
D 痛みの分類
E 侵害受容器とは?
F 歯の痛みのメカニズム
G 刺激の種類と細管内液の移動
H 象牙質・歯髄複合体における神経
I Aβ線維とプリペイン
J 動水力学説から知覚受容複合体説へ
第3章 象牙質・歯髄複合体の病態
1 修復処置によって引き起こされる象牙質・歯髄複合体の病態
1.切削による変化
A 切削による摩擦熱
B 切削による細管内液の移動
C スメア層・スメアプラグの形成
D 循環障害と炎症
E 第三象牙質形成
2.エッチングによる変化
3.修復材料の影響
A 修復材料自体の影響
B 微小漏洩による影響
C ハイブリッド層(樹脂含浸層)
4.局所麻酔による歯髄の変化
2 象牙質知覚過敏症
3 象牙質・歯髄複合体の退行性病変
1.歯髄の変性
A 空胞変性
B 硝子様変性
C 石灰変性
D アミロイド変性
E 脂肪変性
F 色素変性
2.歯髄の萎縮
A 網様萎縮
B 変性萎縮
3.歯の内部吸収
4 象牙質・歯髄複合体の創傷治癒
1.第二および第三象牙質
A 第二象牙質(生理的第二象牙質)
B 第三象牙質(修復象牙質,補綴象牙質,病的第二象牙質)
C 第二象牙質と第三象牙質の違い
2.デンチンブリッジ(象牙質橋)
3.不整象牙質(不正象牙質)
4.象牙質粒(瘤)
5.化生
5 歯髄の炎症
1.歯髄炎の原因
A 細菌因子
B 物理的因子
C 化学的因子
D 神経的因子
2.細菌感染の経路
A 齲蝕病巣からの感染
B 根尖孔からの感染
C 血行性感染
3.歯髄炎の分類と経過
A 歯髄炎の分類
B 歯髄炎の経過─ドミノ理論─
C 歯髄炎の分子制御
4.歯髄充血
5.急性歯髄炎
A 急性漿液性(単純性)歯髄炎
B 急性化膿性歯髄炎
C 急性上行性歯髄炎
6.慢性歯髄炎
A 慢性潰瘍性歯髄炎
B 慢性増殖性歯髄炎
C 慢性閉鎖性歯髄炎
7.歯髄壊死
A 歯髄壊死の特徴
B 壊死歯髄の細菌
8.歯髄壊疽
6 根尖性歯周炎
1.根尖性歯周炎の特徴
2.根尖性歯周炎の原因
3.根尖性歯周炎における細菌の役割
4.細菌の有害因子
5.混合細菌による日和見感染
6.特定の細菌の存在と臨床症状との関係
7.根尖部歯周組織における細菌
8.根尖性歯周炎の初期変化
A 炎症性細胞の集積と増殖
B 組織破壊
C 歯内療法によるフレアアップ
D 硬化性骨炎
E 歯根肉芽腫と歯根ハV胞
第4章 象牙質・歯髄複合体の治癒
1 歯髄の創傷治癒を規制している因子
2 刺激に対する歯髄の応答
1.象牙質形成
2.修復性象牙質形成と反応性象牙質形成
3.象牙質形成におけるナトリウム・カルシウム交換体とTRPVチャンネルの働き
4.歯髄神経の再生
3 歯髄鎮静療法と治癒
4 覆髄(歯髄覆罩)法と治癒
1.直接覆髄法
2.間接覆髄法
5 歯髄切断法と治癒
1.生活歯髄切断法
2.失活歯髄切断法
6 デンチンブリッジを形成する新生象牙芽細胞の起源について
7 無菌飼育ラットにおけるデンチンブリッジ形成
8 移植実験からみた歯髄の象牙質形成能
9 培養条件下における歯髄の分化能
10 接着性レジンに対する歯髄の反応
1.歯髄の治癒能力
2.4─METAレジンの細胞増殖への影響
3.4─METAレジンの細胞毒性試験
4.イヌ歯髄への4─METAレジンの影響
5.軟組織ハイブリッド層(樹脂含浸層)
6.ヒト歯髄への影響
7.4─METAレジン応用による歯髄神経の再生
11 抜髄後の治癒
12 根管治療と治癒
1.根管治療後の治癒変化
1 デンチンブリッジの形成
2 線維性結合組織による根尖病巣部の補填
3 根尖外に溢出した充填材の被包または吸収
4 硬組織による根尖孔の閉鎖
5 歯根膜組織と歯槽骨の再生
2.根尖切除術に伴う組織変化
3.根未完成歯の根管処置
第5章 臨床的考察
Q 1─接着性レジンは象牙質とどのようにくっついているのか?
Q 2─接着性レジンが硬化象牙質には,くっつきにくいといわれているが,臨床的にどのように対応すべきか?
Q 3─熱いものや冷たいもので歯がしみるのはなぜか?
Q 4─なぜ歯髄は低酸素状態でも生きられるのか?
Q 5─なぜ歯髄細胞は熱刺激に対して強いのか?
Q 6─象牙質知覚過敏症の治療にはどのような方法があるか?
Q 7─知覚過敏抑制のための歯磨剤にはどのようなものがあるか?
Q 8─レジン系・グラスアイオノマー系知覚過敏抑制材にはどのようなものがあるか?
Q 9─最近,開発されたMTAセメントは非感染性露髄に対して長期的な効果はあるか?
Q 10─加齢に伴って,なぜ歯髄腔は狭窄するのか?
Q 11─トウガラシと歯の痛みとの関係は?
Q 12─ユージノールが鎮静効果を発揮するわけは?
Q 13─根管治療をしても治癒が困難な症例とはどのようなものか?
Q 14─歯根ハV胞の上皮成分はどこから生じるのか?
Q 15─なぜ歯根ハV胞はゆっくり成長するのか?
Q 16─非定型性歯痛とは?
Q 17─根管治療と歯根破折
Q 18─なぜデンチンブリッジにはいっぱい穴があいているのか?
文献(第II編)
第III編 移植・再植・歯の移動
第1章 歯の移植・再植
1 歯根膜の特性
1.歯根膜の幅径
2.歯根膜の線維芽細胞
3.マラッセ上皮遺残
4.歯根膜のコラーゲン
2 歯根膜の機能
1.栄 養
2.再生・恒常性
3 外科的侵襲の意義
4 歯根表面歯根膜の特性
5 再生歯根膜の構成細胞
6 歯根膜におけるマラッセ上皮遺残の機能
7 アンキローシスと歯根膜
8 成長因子(増殖因子)
9 歯に付着した歯根膜が歯槽骨を作る
10 歯根表面には約55%の歯根膜が付着している
11 再植歯根膜の細胞増殖とアポトーシス
12 移植・再植後の創傷治癒
1.移植・再植直後〜 1日後
2.移植・再植3〜 5日後
3.移植・再植1週後
4.移植・再植2週後
5.移植・再植3週以降
第2章 矯正学的歯の移動
1 歯の移動と移動量
2 矯正学的歯の移動に伴う組織変化
1.圧迫側の変化
2.牽引側の変化
3.中間部の変化
3 歯周組織のリモデリングを助けるアポトーシス
4 最適矯正力
5 臨床的移動形態と組織反応
1 歯体移動
2 傾斜移動
3 挺出移動
4 圧下移動
5 回転移動
6 垂直方向への歯の移動
7 歯根膜の幅が一定に維持される機序
第3章 歯の萌出に伴う歯の移動
1 歯の萌出のメカニズム
1.骨のリモデリング説
2.歯根形成説
3.血管圧説
4.歯根膜の牽引力説
2 歯根膜の牽引力の源
3 歯の萌出に関与する分子
4 歯の萌出とアポトーシス
5 萌出後の歯の移動
6 異常な歯の移動
7 咬合圧と歯根膜の恒常性
第4章 臨床的考察
Q 1─歯の自家移植よりも再植のほうがアンキローシスを起こしやすいのはなぜか?
Q 2─移植歯が歯肉結合組織によって囲まれると吸収するのか?
Q 3─移植・再植歯根膜の保存には何がよいか?
Q 4─移植歯歯根膜内に神経は再生するか?
Q 5─ジグリングフォースによって歯根膜内細胞はどのように変化するのか?
Q 6─どのくらいの力を加えると歯根膜は壊死するのか?
Q 7─矯正力と外傷性咬合力に違いはあるか?
Q 8─矯正力によって歯周病は起きるか?
Q 9─成人患者への矯正治療で留意すべきことは何か?
文献(第III編)
第IV編 インプラント
第1章 インプラント周囲組織
1 上皮界面
1.インプラント周囲上皮の増殖能
2.インプラント周囲上皮の接着能
3.インプラント周囲の血管
4.インプラント周囲上皮と付着上皮の違い
2 結合組織界面
3 骨組織界面
1.緻密骨と海綿骨
第2章 インプラントの治癒
1 骨のリモデリングと骨形成
2 遠隔骨形成と接触骨形成
1.遠隔骨形成
2.接触骨形成
3 骨折の治癒
4 インプラント周囲骨の治癒
A インプラント埋入による生体反応期
B 骨伝導期─接触骨形成への鍵
1 インプラント周囲組織の血液細胞
2 一時的基質としてのフィブリン
C 骨の新生期
D 骨のリモデリング
第3章 臨床的考察
Q 1─上顎洞の形態を決めている因子は何か,またその機能は?
Q 2─即時型インプラント埋入法(抜歯後直ちにインプラントを埋入)と遅延型インプラント埋入法(抜歯後2週間経過後インプラントを埋入)によって,インプラント周囲上皮の特徴に違いはあるのか?
Q 3─インプラント埋入部に大量の骨組織がほしいが,骨を作るためにはどのような条件が必要か?
Q 4─PRPとは何か?
Q 5─PRFはメンブレンの代わりに使えるのか?
Q 6─移植材として,BIO─OSS,DFDBA,FDBA,GEM21,β─TCP,自家骨海綿骨,自家骨皮質骨などがあるが,推奨されるのはどれか?
Q 7─Bio─OSSにも種類があるが,どのように使い分けすればいいのか?
Q 8─インプラントの臨床的効果は評価できるか?
文献(第IV編)
索引
第I編 歯周疾患
第1章 歯周組織の構造と機能
1 歯肉の構造と機能
1.歯肉の構造
A 歯肉上皮
1 歯肉口腔上皮
2 歯肉溝上皮
3 付着(接合)上皮
B 歯肉結合組織(歯肉固有層)
1 歯槽上線維装置
C 歯肉の血管
D 歯肉の神経
2.歯肉の機能
A 歯の位置的安定性の維持
B 防御機構(生理学的透過性関門)
1 傍細胞経路と経細胞経路
2 上皮の物質通過経路
3 口腔粘膜における透過性関門
4 角化上皮と非角化上皮の透過性関門
5 付着上皮の防御機構(付着上皮に防御機構はあるか?)
6 付着上皮細胞内の小顆粒(付着上皮にMCGは存在するか?)
7 付着上皮の貪食能(付着上皮細胞は貪食能をもっているか?)
8 歯肉溝滲出液(歯肉溝滲出液はどこからくるか?)
9 歯肉溝滲出液の構成成分
10 口腔粘膜上皮のタイト結合構成タンパク
11 ディフェンシン
C 恒常性維持(高いターンオーバー率)
D 歯との接着機構(粘膜表面のシール,基底板の形成)
1 外側基底板の構造と構成成分
2 ヘミデスモゾームの構造と構成成分
3 ラミニン─5やインテグリンα6β4はどこで作られるのか?
4 内側基底板の構成成分は外側基底板の構成成分と同じか?
5 付着上皮の内側基底板には大量のラミニンが発現している
6 ラミニンとインテグリンは細胞接着のみならず細胞移動にも関与している
7 DAT(Directly Attached to the Tooth:歯と直接付着した)細胞は動くのか?
8 細胞移動と接着の過程で,ラミニン分子とインテグリン分子が変化する
9 付着上皮は接着しながら移動する
E 非分化状態の維持(非角化)
1 歯肉上皮細胞のサイトケラチンの分布
2 4─META/MMA─TBB─O(4─METAと略)レジンと再生上皮の分化(4─METAレジンは口腔上皮を非分化状態に維持するか?)
F 白血球遊走のための通路(拡大した細胞間隙)
1 細胞間隙の拡大
2 デスモゾームの構造と機能
G 機械的圧力から歯肉組織を守る保護機構
2 歯槽骨の構造と機能
1.歯槽骨の構造
2.歯槽骨の化学組成
3.歯槽骨の細胞
A 骨芽細胞
1 骨芽細胞の分化・発生と転写因子(Cbfa─1とOsx)
2 骨芽細胞の成熟に伴う増殖と分化の相関
B 骨細胞
C 破骨細胞
1 破骨細胞の分化
4.歯槽骨の機能
A 骨のリモデリング
3 セメント質の構造と機能
1.セメント質の構造
A セメント質の細胞
1 セメント芽細胞
2 セメント細胞
3 破セメント細胞(破歯細胞)
B セメント質の線維
C セメント質の非コラーゲンタンパク
D セメント質に特有のタンパクは存在するか?
2.セメント質の分類
1 無細胞性無線維性セメント質
2 無細胞性外部性線維性セメント質
3 細胞性混合重層性セメント質
4 細胞性固有線維性セメント質
付 中間セメント質
3.セメント質の機能
4 歯根膜の構造と機能
1.歯根膜の構造
A 歯根膜の幅径
B 歯根膜を構成する成分
1 歯根膜の細胞成分
2 マラッセ上皮遺残はどのようにしてヘルトヴィッヒ上皮鞘の細胞から変化するのか?
3 ヘルトヴィッヒ上皮鞘の細胞はアポトーシスを起こすか?
4 歯根膜の細胞外質
5 その他
2.歯根膜の機能
1 支 持
2 感 覚
3 栄 養
4 恒常性
5 再 生
第2章 歯周組織の病態
1 歯周病の概念と疫学
1.歯周炎の発症・進行過程
1 開始期病変
2 早期病変
3 確立期病変
4 発展期病変
2.実験的歯周炎の発症
3.歯周病の罹患率
2 歯周病の病因
1.細菌因子
2.宿主因子
3.環境因子
3 歯周炎の発症と進行のメカニズム
1.歯周病原性細菌の特性
A 歯周病原性細菌とは?
B 歯肉縁上プラークの形成
C 歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラーク
D 歯周病原性細菌
1 Porphyromonas gingivalis
2 Aggregatibacter actinomycemcomitans
3 Tannerella forsythis
4 Prevotella intermedia
5 Treponema denticola
6 Fusobacterium nucleatum
7 Campylobacter rectus
E 細菌の蓄積
F 細菌性タンパク分解酵素
G 内毒素(リポ多糖体)
2.歯周病進行の病理学的機構
A 循環障害と滲出
B ケミカルメディエーター(化学伝達物質)
C 好中球の遊走
D 炎症性細胞
E 接着分子
F 好中球の貪食能
G 免疫応答
H サイトカイン
1 サイトカイン
2 炎症性サイトカイン
3 走化性サイトカイン(ケモカイン)
4 リンパ球シグナリングサイトカイン
5 サイトカインネットワーク
I タンパク分解酵素と分解抑制物質
3.歯周組織の破壊
A 結合組織の破壊
B 歯周ポケットの形成
C 歯槽骨吸収
4 歯周病の病態と病理診断
1.歯肉病変
A プラーク性歯肉炎
B 非プラーク性歯肉炎
C 歯肉増殖
1 薬物性歯肉増殖症
2 遺伝性歯肉過形成(遺伝性歯肉線維腫症)
2.歯周炎
A 慢性歯周炎(成人性歯周炎)
B 侵襲性歯周炎
C 遺伝疾患に伴う歯周炎
3.壊死性歯周疾患
4.歯周組織の膿瘍
A 歯肉膿瘍
B 歯周膿瘍
5.歯周─歯内病変
6.歯肉退縮
7.咬合性外傷
A 急性外傷性変化
B 慢性外傷性変化(咬合性外傷)
1 一次性咬合性外傷
2 二次性咬合性外傷
C 咬合性外傷と歯周病の進行
8.歯周病の病理診断
5 ビスフォスフォネートによる顎骨壊死
1.壊死はなぜ顎骨にのみ発生するのか?
2.どうやってビスフォスフォネート関連顎骨壊死と診断するのか?
3.どのような臨床症状を表すのか?
4.ビスフォスフォネート関連顎骨壊死発生のリスクファクターは何か?
5.ビスフォスフォネート製剤患者の歯科治療における留意点は?
6 セメント質の病変
1.セメント質増生
2.セメント粒
3.アンキローシス
第3章 歯周病と全身疾患
1 歯周病と全身疾患の関係
1.歯周病は全身病である
2.歯科処置と菌血症
A 菌血症
B 細菌の血管内侵入
2 心臓血管系疾患と歯周病
1.歯周病原性細菌は血管内に侵入するか?
2.心血管系疾患発症の予測因子
3.Rossの傷害反応説
4.虚血性心疾患
3 誤嚥性肺炎と歯周病
1.高齢者の肺炎
A 不顕性誤嚥
B 誤嚥性肺炎の細菌
2.誤嚥性肺炎は口腔ケアによって予防できる
4 糖尿病と歯周病
1.糖尿病とは?
2.ランゲルハンス島の細胞
3.インスリンの機能
4.インスリン抵抗性とは?
5.糖尿病の分類
6.糖尿病の診断
7.外科的処置の判断基準
8.糖尿病の症状
9.糖尿病の合併症
10.糖尿病と歯周病との関連
5 早期低体重児出産と歯周病
1.妊娠と歯周病
2.炎症性物質と早産
6 肥満と歯周病
1.リスク因子としての肥満
2.肥満の判定基準
3.肥満関連物質(アディポサイトカイン)と歯周病
第4章 歯周組織の再生
1 創傷治癒について
1.創傷治癒の原則と肉芽組織
A 創傷治癒の原則
B 肉芽組織
C 更新性組織と安定性組織
2.治癒過程における上皮の役割
2 歯肉の再生
1.歯肉切除後の上皮の再生
A 歯肉切除後に上皮はどのように再生するのか?
B 再生上皮の微細構造
2.再生上皮と接着性タンパクの発現
3.歯肉溝の環境と上皮の角化
3 歯槽骨,セメント質,歯根膜の再生
1.歯周組織の再生における歯根膜の役割
A 歯根窩洞形成実験
B オートラジオグラフィー
C 未分化間葉細胞の増殖と分化
2.歯根膜細胞の硬組織形成能
A 歯根膜の移植実験
B 歯根膜の培養実験
3.骨誘導タンパク
4.骨誘導と骨伝導
A 骨誘導
B 骨伝導
5.Melcherの仮説とGTR
A Melcherの仮説
B GTR(Guided Tissue Regeneration)
C 非吸収性膜と吸収性膜
6.エムドゲイン(R)
A エムドゲインとは?
B エムドゲインの期待される作用
7.エナメルタンパク
A エナメルタンパクとその特性
B エナメル基質の酵素
8.歯周組織再生に関与する成長因子,分化因子
4 長い付着上皮
1.長い付着上皮による上皮性付着
2.長い付着上皮には歯肉溝滲出液による防御機構はない
3.一旦形成された長い付着上皮は短くなる
A 上皮性付着から結合組織性付着への置換
B 長い付着上皮のターンオーバー
4.なぜ長い付着上皮は短くなるのか?
5.長い付着上皮の接着装置
A 長い付着上皮にもラミニンやインテグリンが発現している
B インテグリンα3の発現が弱かったことの意味
6.再生上皮と4─METAレジン
A 健常歯肉上皮は4─METAレジンに対してどのように反応するのか?
B 再生上皮とレジン界面における接着性タンパク
C 4─METAレジンパックを除去すると歯肉に発現する接着性タンパクはどのように変化するか?
第5章 臨床的考察
Q 1─付着上皮のターンオーバー時間が非常に早いことは臨床的にどんな意味があるのか?
Q 2─歯肉溝滲出液の検査から何がわかるのか?
Q 3─付着上皮の歯との接着の臨床的意義は何か?
Q 4─長い付着上皮による上皮性付着の臨床的意義は何か?
Q 5─長い付着上皮による上皮性付着を臨床的に確認するには?
Q 6─硬口蓋皺壁は何のために存在するのか?
Q 7─メラニンはどのようにして歯肉に発現するのか?
Q 8─歯肉結合組織(歯肉固有層:歯槽上線維装置)の臨床的な意義は何か?
Q 9─セメント質が吸収されにくいのはなぜか?
Q 10─細胞性セメント質と無細胞性セメント質との違いは何か?
Q 11─セメント質の添加はなぜ起きるか?
Q 12─プラークフリーゾーンは何を意味するか?
Q 13─歯肉の色や形は病態を反映しているか?
Q 14─歯肉鞍部(コル)は歯肉炎の好発部位か?
Q 15─歯肉縁上プラークをコントロールすると歯肉縁下プラークは増えないか?
Q 16─プロービングによって付着上皮は剥がれるか?
Q 17─プロービングによって生じた上皮間亀裂は修復するのか?(プロービング時に付着上皮を傷つけたらどうなる?デスモゾームは再付着するか?)
Q 18─上皮性付着が起きるのは上皮細胞の侵入のスピードが早いためか?
Q 19─応力によって骨増生は起きるか?ブリッジポンティック下における骨増生の機序(仮説)
Q 20─なぜ突然の歯肉退縮が惹き起こされるのか?
Q 21─歯頸部楔状欠損はどうしてできるのか?咬合力とアブフラクション(abfraction)
Q 22─ルートプレーニングはどこまでやればいいのか?アタッチメントレベルについて
Q 23─歯科臨床研究をどのように再評価するか?
Q 24─コクラン・ライブラリーとは?
Q 25─4─METAレジンパックの臨床的意義は何か?
Q 26─有髄歯と無髄歯とでは歯槽骨,セメント質,歯根膜の再生に差があるのか?
Q 27─EmdogainとGTR,どちらが効果的か?
Q 28─歯肉退縮に対する根面被覆のための有効な術式は何か?
Q 29─クリーピングアッタチメントはどうして起きるのか?
Q 30─糖尿病患者に対する歯周治療はどうすればよいか?
Q 31─抜歯後の歯槽骨吸収を防ぐ方法はあるか?
Q 32─シルバーポイントが入る歯と歯肉の間の隙間はどうなっているのか?
文献(第I編)
第II編 象牙質・歯髄複合体
第1章 象牙質・歯髄複合体という考え方
第2章 構造,発生と機能
1 象牙質・歯髄複合体の構造
1.象牙質形成について
2.象牙質の構造
A 象牙細管
B 象管周囲象牙質
C 管間象牙質
D 硬化象牙質
E 球間象牙質
F 成長線
G トームス顆粒層
H セメント─象牙境
3.歯髄の構造
4.歯髄を構成する細胞
A 象牙芽細胞
B 線維芽細胞
C 未分化間葉細胞
D マクロファージ
E 樹状細胞
5.歯髄の血管
6.歯髄の神経
A 歯髄神経の分布
B Aβ線維,Aδ線維,C線維
2 象牙質・歯髄複合体の発生
1.発生学的に象牙質も歯髄も,ともに歯乳頭に由来する
2.歯の発生過程におけるシグナル伝達
3.象牙芽細胞の分化
3 象牙質・歯髄複合体の機能
1.象牙質の特性
2.歯冠象牙質と歯根象牙質
3.石灰化の制御
4.象牙質の透過性
5.刺激の種類と細管内液の移動
6.歯の痛み
A 感覚の種類
B 痛みとは?
C 適刺激と痛覚
D 痛みの分類
E 侵害受容器とは?
F 歯の痛みのメカニズム
G 刺激の種類と細管内液の移動
H 象牙質・歯髄複合体における神経
I Aβ線維とプリペイン
J 動水力学説から知覚受容複合体説へ
第3章 象牙質・歯髄複合体の病態
1 修復処置によって引き起こされる象牙質・歯髄複合体の病態
1.切削による変化
A 切削による摩擦熱
B 切削による細管内液の移動
C スメア層・スメアプラグの形成
D 循環障害と炎症
E 第三象牙質形成
2.エッチングによる変化
3.修復材料の影響
A 修復材料自体の影響
B 微小漏洩による影響
C ハイブリッド層(樹脂含浸層)
4.局所麻酔による歯髄の変化
2 象牙質知覚過敏症
3 象牙質・歯髄複合体の退行性病変
1.歯髄の変性
A 空胞変性
B 硝子様変性
C 石灰変性
D アミロイド変性
E 脂肪変性
F 色素変性
2.歯髄の萎縮
A 網様萎縮
B 変性萎縮
3.歯の内部吸収
4 象牙質・歯髄複合体の創傷治癒
1.第二および第三象牙質
A 第二象牙質(生理的第二象牙質)
B 第三象牙質(修復象牙質,補綴象牙質,病的第二象牙質)
C 第二象牙質と第三象牙質の違い
2.デンチンブリッジ(象牙質橋)
3.不整象牙質(不正象牙質)
4.象牙質粒(瘤)
5.化生
5 歯髄の炎症
1.歯髄炎の原因
A 細菌因子
B 物理的因子
C 化学的因子
D 神経的因子
2.細菌感染の経路
A 齲蝕病巣からの感染
B 根尖孔からの感染
C 血行性感染
3.歯髄炎の分類と経過
A 歯髄炎の分類
B 歯髄炎の経過─ドミノ理論─
C 歯髄炎の分子制御
4.歯髄充血
5.急性歯髄炎
A 急性漿液性(単純性)歯髄炎
B 急性化膿性歯髄炎
C 急性上行性歯髄炎
6.慢性歯髄炎
A 慢性潰瘍性歯髄炎
B 慢性増殖性歯髄炎
C 慢性閉鎖性歯髄炎
7.歯髄壊死
A 歯髄壊死の特徴
B 壊死歯髄の細菌
8.歯髄壊疽
6 根尖性歯周炎
1.根尖性歯周炎の特徴
2.根尖性歯周炎の原因
3.根尖性歯周炎における細菌の役割
4.細菌の有害因子
5.混合細菌による日和見感染
6.特定の細菌の存在と臨床症状との関係
7.根尖部歯周組織における細菌
8.根尖性歯周炎の初期変化
A 炎症性細胞の集積と増殖
B 組織破壊
C 歯内療法によるフレアアップ
D 硬化性骨炎
E 歯根肉芽腫と歯根ハV胞
第4章 象牙質・歯髄複合体の治癒
1 歯髄の創傷治癒を規制している因子
2 刺激に対する歯髄の応答
1.象牙質形成
2.修復性象牙質形成と反応性象牙質形成
3.象牙質形成におけるナトリウム・カルシウム交換体とTRPVチャンネルの働き
4.歯髄神経の再生
3 歯髄鎮静療法と治癒
4 覆髄(歯髄覆罩)法と治癒
1.直接覆髄法
2.間接覆髄法
5 歯髄切断法と治癒
1.生活歯髄切断法
2.失活歯髄切断法
6 デンチンブリッジを形成する新生象牙芽細胞の起源について
7 無菌飼育ラットにおけるデンチンブリッジ形成
8 移植実験からみた歯髄の象牙質形成能
9 培養条件下における歯髄の分化能
10 接着性レジンに対する歯髄の反応
1.歯髄の治癒能力
2.4─METAレジンの細胞増殖への影響
3.4─METAレジンの細胞毒性試験
4.イヌ歯髄への4─METAレジンの影響
5.軟組織ハイブリッド層(樹脂含浸層)
6.ヒト歯髄への影響
7.4─METAレジン応用による歯髄神経の再生
11 抜髄後の治癒
12 根管治療と治癒
1.根管治療後の治癒変化
1 デンチンブリッジの形成
2 線維性結合組織による根尖病巣部の補填
3 根尖外に溢出した充填材の被包または吸収
4 硬組織による根尖孔の閉鎖
5 歯根膜組織と歯槽骨の再生
2.根尖切除術に伴う組織変化
3.根未完成歯の根管処置
第5章 臨床的考察
Q 1─接着性レジンは象牙質とどのようにくっついているのか?
Q 2─接着性レジンが硬化象牙質には,くっつきにくいといわれているが,臨床的にどのように対応すべきか?
Q 3─熱いものや冷たいもので歯がしみるのはなぜか?
Q 4─なぜ歯髄は低酸素状態でも生きられるのか?
Q 5─なぜ歯髄細胞は熱刺激に対して強いのか?
Q 6─象牙質知覚過敏症の治療にはどのような方法があるか?
Q 7─知覚過敏抑制のための歯磨剤にはどのようなものがあるか?
Q 8─レジン系・グラスアイオノマー系知覚過敏抑制材にはどのようなものがあるか?
Q 9─最近,開発されたMTAセメントは非感染性露髄に対して長期的な効果はあるか?
Q 10─加齢に伴って,なぜ歯髄腔は狭窄するのか?
Q 11─トウガラシと歯の痛みとの関係は?
Q 12─ユージノールが鎮静効果を発揮するわけは?
Q 13─根管治療をしても治癒が困難な症例とはどのようなものか?
Q 14─歯根ハV胞の上皮成分はどこから生じるのか?
Q 15─なぜ歯根ハV胞はゆっくり成長するのか?
Q 16─非定型性歯痛とは?
Q 17─根管治療と歯根破折
Q 18─なぜデンチンブリッジにはいっぱい穴があいているのか?
文献(第II編)
第III編 移植・再植・歯の移動
第1章 歯の移植・再植
1 歯根膜の特性
1.歯根膜の幅径
2.歯根膜の線維芽細胞
3.マラッセ上皮遺残
4.歯根膜のコラーゲン
2 歯根膜の機能
1.栄 養
2.再生・恒常性
3 外科的侵襲の意義
4 歯根表面歯根膜の特性
5 再生歯根膜の構成細胞
6 歯根膜におけるマラッセ上皮遺残の機能
7 アンキローシスと歯根膜
8 成長因子(増殖因子)
9 歯に付着した歯根膜が歯槽骨を作る
10 歯根表面には約55%の歯根膜が付着している
11 再植歯根膜の細胞増殖とアポトーシス
12 移植・再植後の創傷治癒
1.移植・再植直後〜 1日後
2.移植・再植3〜 5日後
3.移植・再植1週後
4.移植・再植2週後
5.移植・再植3週以降
第2章 矯正学的歯の移動
1 歯の移動と移動量
2 矯正学的歯の移動に伴う組織変化
1.圧迫側の変化
2.牽引側の変化
3.中間部の変化
3 歯周組織のリモデリングを助けるアポトーシス
4 最適矯正力
5 臨床的移動形態と組織反応
1 歯体移動
2 傾斜移動
3 挺出移動
4 圧下移動
5 回転移動
6 垂直方向への歯の移動
7 歯根膜の幅が一定に維持される機序
第3章 歯の萌出に伴う歯の移動
1 歯の萌出のメカニズム
1.骨のリモデリング説
2.歯根形成説
3.血管圧説
4.歯根膜の牽引力説
2 歯根膜の牽引力の源
3 歯の萌出に関与する分子
4 歯の萌出とアポトーシス
5 萌出後の歯の移動
6 異常な歯の移動
7 咬合圧と歯根膜の恒常性
第4章 臨床的考察
Q 1─歯の自家移植よりも再植のほうがアンキローシスを起こしやすいのはなぜか?
Q 2─移植歯が歯肉結合組織によって囲まれると吸収するのか?
Q 3─移植・再植歯根膜の保存には何がよいか?
Q 4─移植歯歯根膜内に神経は再生するか?
Q 5─ジグリングフォースによって歯根膜内細胞はどのように変化するのか?
Q 6─どのくらいの力を加えると歯根膜は壊死するのか?
Q 7─矯正力と外傷性咬合力に違いはあるか?
Q 8─矯正力によって歯周病は起きるか?
Q 9─成人患者への矯正治療で留意すべきことは何か?
文献(第III編)
第IV編 インプラント
第1章 インプラント周囲組織
1 上皮界面
1.インプラント周囲上皮の増殖能
2.インプラント周囲上皮の接着能
3.インプラント周囲の血管
4.インプラント周囲上皮と付着上皮の違い
2 結合組織界面
3 骨組織界面
1.緻密骨と海綿骨
第2章 インプラントの治癒
1 骨のリモデリングと骨形成
2 遠隔骨形成と接触骨形成
1.遠隔骨形成
2.接触骨形成
3 骨折の治癒
4 インプラント周囲骨の治癒
A インプラント埋入による生体反応期
B 骨伝導期─接触骨形成への鍵
1 インプラント周囲組織の血液細胞
2 一時的基質としてのフィブリン
C 骨の新生期
D 骨のリモデリング
第3章 臨床的考察
Q 1─上顎洞の形態を決めている因子は何か,またその機能は?
Q 2─即時型インプラント埋入法(抜歯後直ちにインプラントを埋入)と遅延型インプラント埋入法(抜歯後2週間経過後インプラントを埋入)によって,インプラント周囲上皮の特徴に違いはあるのか?
Q 3─インプラント埋入部に大量の骨組織がほしいが,骨を作るためにはどのような条件が必要か?
Q 4─PRPとは何か?
Q 5─PRFはメンブレンの代わりに使えるのか?
Q 6─移植材として,BIO─OSS,DFDBA,FDBA,GEM21,β─TCP,自家骨海綿骨,自家骨皮質骨などがあるが,推奨されるのはどれか?
Q 7─Bio─OSSにも種類があるが,どのように使い分けすればいいのか?
Q 8─インプラントの臨床的効果は評価できるか?
文献(第IV編)
索引