やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 世界随一の長寿国といえるわが国において,フレイル対策・介護予防は不可欠な要素です.日本で「介護予防」が公的な事業として導入されるようになったのは2006年,「フレイル」という用語が誕生したのは2014年と,いずれもまだ浅い歴史しかありません.それでもこの間,様々な関連領域の方(行政関係者,学術関係者,各専門職など)の尽力により,現在のような体系的な形へと進化を遂げてきました.そして,いまだ発展途上の段階ではありますが,これまでの経験を整理し,次のフェーズへとつないでいく時期にさしかかりました.
 本書では,フレイル対策・介護予防に対する現場の声と科学の情報を融合した内容にしました.フレイルは有害健康転帰を招きやすいハイリスクな状態ですが,適切な介入によって維持・改善を期待できる状態でもあります.このようなフレイルの特性を多面的に理解し,対策へとつなげていくことが求められます.そこで,フレイル対策・介護予防に必要と思われる50の項目をQ&A形式で整理しました.「50のQ」は,常に最前線の現場で,フレイル対策・介護予防と向き合い実践されている方々の声を形にしたものです.そして,その声に答えるべく,科学的根拠に基づく情報を整理したものが「50のA」になります.
 また,「必要な情報へすぐにアクセス」「短時間で情報把握」「忘れた頃に再確認」という現場で求められる要素の解決を目指しました.見開きページで完結,関連するQを記載,さらに多くの図を準備するなど,必要な情報を直感的に理解でき,印象に残るような構成に仕上げています.ふとした際に,「この本の,ここの部分に書いてあったよね」と振り返っていただければと思います.
 本書でまとめた情報は,いずれも発展途上段階で日進月歩なものです.新たなフェーズへと入っていくフレイル対策・介護予防の分野において,これらの情報は日々更新され書き換えられていくと思いますし,そうあるべきとも思います.本書が現場で活躍される皆様の業務に少しでも貢献し,対象となる高齢者の健康寿命の延伸に寄与できる,そのような存在になれば幸いです.
 2021年11月
 筑波大学人間系
 山田 実
I.フレイル・介護予防の概念的特徴
  1.フレイルとは何ですか?
  2.フレイルの前段階のことを何といいますか?
  3.フレイルとサルコペニアは同義ですか?
  4.フレイルの状態にある人とサービス事業対象者は同じですか?
  5.介護予防とは何ですか?
  6.介護予防にはどのような段階がありますか?
  7.リハビリテーションと予防の違いは何ですか?
  8.フレイルの有病率はどのくらいでしょうか?
  9.フレイルになると有害健康転帰の発生割合は高まりますか?
  10.フレイル対策を行ううえで重要な要素は何ですか?
II.フレイル・介護予防の判定と評価
  11.身体的フレイルはどのように判定しますか?
  12.認知的フレイルはどのように判定しますか?
  13.社会的フレイルはどのように判定しますか?
  14.身体機能は何歳頃から加齢による影響が認められやすくなりますか?
  15.加齢によって影響を受ける骨格筋には特徴がありますか?
  16.身体的フレイルに対する介入の効果判定指標にはどのようなものがありますか?
  17.基本チェックリスト(KCL)とは何ですか?
  18.後期高齢者に対するフレイル健診とは何ですか?
  19.SPPBとは何ですか?
III.フレイル対策・介護予防の実際
 【生活習慣への取り組み】
  20.生活習慣の是正のためにはどのような方法がお勧めですか?
  21.運動の継続にはどのような方法がお勧めですか?
  22.対象者本人の危機感が薄い(自分は大丈夫という)場合にはどのような対応をとりますか?
 【運動への取り組み】
  23.運動にはどのような効果がありますか?
  24.どのような運動をすればよいでしょうか?
  25.どのくらい運動をすればよいでしょうか?
  26.ウォーキングはフレイル対策として効果が高い運動ですか?
  27.運動していれば身体機能は向上し続けますか?
  28.大腿四頭筋の強化方法にはどのようなものがありますか?
  29.大殿筋の強化方法にはどのようなものがありますか?
  30.股内外転筋の強化方法にはどのようなものがありますか?
  31.体幹筋の強化方法にはどのようなものがありますか?
  32.バランス能力の向上にはどのような方法がありますか?
  33.持久力の向上にはどのような方法がありますか?
  34.敏捷性の向上にはどのような方法がありますか?
 【栄養への取り組み】
  35.なぜ,たんぱく質の摂取が必要ですか?
  36.たんぱく質はいつ摂ればよいでしょうか?
  37.たんぱく質はどのくらい摂ればよいでしょうか?
  38.食品摂取の多様性は重要ですか?
 【社会参加への取り組み】
  39.社会参加を促進する方法はありますか?
  40.独居は要介護の要因になりますか?
  41.二言目が出せる関係とは何でしょうか?
 【介護予防】
  42.身体機能の向上の延長線上に介護予防がありますか?
  43.いわゆる二次予防介入には介護予防効果が認められますか?
  44.いわゆる一次予防介入には介護予防効果が認められますか?
  45.通いの場の状況はどうなっているのでしょうか?
  46.通いの場の参加者を増やすためにはどうすればよいでしょうか?
  47.インターネットを用いて介護予防を行うことは可能でしょうか?
  48.電話を用いて介護予防を行うことは可能でしょうか?
  49.介護予防の理想的なストラテジーとはどのようなものでしょうか?
  50.介護予防が実施できない状況になった場合どうすればよいでしょうか?

 一言メモ
  有害健康転帰
  通所型サービスC
  身体機能の浪費と節約
  オーラルフレイル
  歩行速度低下
  軽度認知障害(MCI)
  心理・精神的フレイルと認知的フレイル
  筋力と骨格筋量のギャップ
  骨格筋量は効果判定指標として適切か?
  機能レベル
  朝食の重要性
  1日の目安を3食で
  食品摂取の多様性とたんぱく質の摂取
  独居だから一層の介護予防を
  通いの場の状況

 索引