やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 東洋医学として発展した「鍼」の起源は約二千年前ともいわれ,ヒトの体表に存在する約361カ所の経穴(ツボ)や経穴を結ぶ線(経絡)を刺激して自然治癒力を高める治療法である.近年,刺さない鍼を含む刺激療法による治効機序に関する研究は飛躍的に進歩している.たとえば,薬を使わない刺激がモルヒネ様物質を発現させることや,神経系,免疫系,内分泌系を活性化させてホメオスタシス(恒常性)の向上作用など,科学的根拠に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)として検証が進められている.
 本書では,東洋医学を応用した刺激療法の実践書として,鍼灸・按摩マッサージ指圧師,柔道整復師はもちろんのこと医師,歯科医師,看護師,理学療法士,さらに介護福祉やスポーツトレーナー領域など幅広い臨床において活用できるように,その理論と実際をわかりやすく図説した.
 また,すでに欧米で普及している現代医療と東洋医学を含む伝統医療の利点を融合させた補完代替医療(complementary and alternative medicine:CAM)をわが国で実践するためにも,東洋医学の知識を有する医療スタッフとして学際的な見知から臨床にのぞみ,チーム医療のなかで補完代替医療(CAM)の実践に本書を役立てもらいたい.
 特に,刺さない鍼,SSP療法をはじめ,低反応レベルレーザー療法では経穴(ツボ)刺激を応用し,疼痛疾患を中心に整形外科やペインクリニックなど医療機関でのEBMが確立してきている.このことから,東洋医学的手法を統合して臨床効果を相乗させることで,今後さらに需要が高まることが予想される末期癌患者の緩和ケア,さらに高齢者の慢性疾患やスポーツ傷害に伴う疼痛などの臨床に,広く活用して頂きたい.
 本書の出版にあたり,外科領域における一部の研究成果は,明治国際医療大学名誉教授咲田雅一博士(現医療法人洛西シミズ病院副院長)のご指導によります.ここに感謝申し上げます.また,多大なご協力をいただいた医歯薬出版,竹内大氏に深謝いたします.
 平成20年11月
 了徳寺大学健康科学部
 教授 石丸圭荘
 序文
I.東洋医学を応用した刺激療法/理論と実際
1.東洋医学とは(有馬義貴)
 1.診察法〜病態の把握〜
  1)外感病初期と虚を把握するための問診
  2)気・血・水の運行状態を把握するための問診
  3)舌診による内傷病の把握
  4)臓の状態を把握するための問診
  5)触診による経脈の状態の把握
 2.治療
  1)外感病初期の治療
  2)内傷病に対する治療
2.東洋医学を応用した刺激療法とは(石丸圭荘)
 1.各種刺激療法の理論と実際
  1)刺激療法の理論
  2)刺激療法による疼痛抑制機構
 2.経穴(ツボ)刺激療法に用いられる医療機器
  1)経皮的電気神経刺激療法とは
  2)SSP療法とは
  3)レーザー療法とは
II.東洋医学を応用した刺激療法の臨床
1.頭部・顔面疾患(今井賢治)
 1.緊張型頭痛
 2.片頭痛
 3.顎関節症
 4.三叉神経痛
 5.非定型顔面痛
 6.顔面神経麻痺
 7.耳鳴・難聴
 8.眼精疲労
2.頸肩腕・胸部疾患(中澤寛元)
 1.肩こり
 2.頸椎症
 3.胸郭出口症候群
 4.肩関節痛
 5.肋間神経痛
 6.帯状疱疹後神経痛
3.腰下肢疾患(澤田規)
 1.いわゆる腰痛症
 2.坐骨神経痛
 3.腰椎椎間板ヘルニア
 4.膝関節痛(変形性膝関節症)
 5.膝靱帯損傷
4.スポーツ傷害(澤田規)
 1.テニス肘
 2.野球肘
 3.シンスプリント
 4.足関節捻挫
 5.肉ばなれ(筋部分断裂)
 6.アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎
5.術後疼痛(石丸圭荘)
6.心身領域疾患(岩 昌宏)
 1.不眠症
 2.過敏性腸症候群
 3.月経異常
 4.勃起障害
 5.肥満症
7.介護福祉領域疾患(渡邊一平)
 1.褥瘡
 2.嚥下障害
 3.排尿障害
 4.フットケア(足浴)

 付録(石丸圭荘)
  I.手指同身寸
  II.経穴(ツボ)の部位確認のポイント
  III.疾患別主要経穴表
  IV.索引