やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 近年,遠隔リハビリテーションや慢性疼痛診療といったリハビリテーションの領域において,バーチャルリアリティ(VR)技術の活用が急速に進んでいる.VRを用いることで,実世界では困難であった評価や訓練を,より自由度の高い方法で実施できるようになった.さらに,自分が操作するアバターの外見が行動や感覚に影響を及ぼす「プロテウス効果」も注目されており,VR技術が患者の意欲やリハビリテーション成果を向上させる可能性が示唆されている.
 また,メタバースとよばれるバーチャル空間が多領域にて利用されるようになり,医療教育や医療相談の新たな形態としても提案され始めた.たとえば,臨床場面を再現したシミュレーションで医療スタッフを教育したり,地理的制約を超えて患者同士や専門家同士が交流・相談する環境を整えたりと,社会的・経済的な制限を大きく緩和する利点がある.このように,VRやメタバースは遠隔地医療の充実のみならず,包括的な医療連携を実現するうえでも有望な手段となりつつある.
 しかしながら,VR機器を装着することで生じる身体的負担や,メタバース内でのプライバシー保護・データ管理の課題等,実装に向けた検討事項も依然として山積している.本特集では,VR・メタバース領域で豊富な実績をもつ先生方に協力を得て,それぞれの専門分野における応用事例や課題点を幅広く紹介する.
 バーチャルリアリティと人間拡張(鳴海拓志先生)を皮切りに,遠隔リハビリテーションにおけるXR技術の活用(蔵田武志先生ら),半側空間無視や運転能力評価へのVR適用(安田和弘先生),そして慢性疼痛へのVR介入(船尾浩貴先生)の現状と展望を取り上げる.さらに,メタバースを用いた医療教育(虎 一真先生)や医療相談(半分はやさしさ先生)の最前線にも迫り,今後のリハビリテーション医療の可能性を探る.本特集を通じて,VR・メタバースの意義や課題,そして未来への期待を共有することで,明日のリハビリテーションがより豊かなものになることを願う.
 (編集委員会 企画担当:百崎 良)
特集 バーチャルリアリティ・メタバースが拓くリハビリテーション医療の可能性
 特集にあたって(百崎 良)
 バーチャルリアリティと人間拡張(鳴海拓志)
 遠隔リハビリテーションとXR技術(蔵田武志 大島賢典)
 バーチャルリアリティを活用した半側空間無視の評価・介入および自動車運転可否判断(安田和弘)
 慢性疼痛とバーチャルリアリティ(船尾浩貴)
 医療教育におけるメタバース活用の可能性と課題(虎 一真)
 メタバースの医療相談(半分はやさしさ)

連載
リハなひと
 理学療法士 村永信吾さん

巻頭カラー リハビリテーション科医が知っておくべき最新の義肢構成パーツ
 11.最新の義手「ミケランジェロ」「bebionic」「i-Limb」(田中洋平)

リハビリテーション科医に必要な消化器疾患の知識と近年の進歩
 14.小児疾患の評価法(芳賀信彦)

ニューカマー リハ科専門医
 (稗田保奈美)

最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
 11.表面筋電図(井上 誠)

知っておきたい! がんサポーティブケア
 4.オンコロジーエマージェンシー(高橋俊二)

リハビリテーション科医師に必要な診察,評価手技
 9.機能性消化管疾患(伊藤公訓)

おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
 7.転倒・転落の主な原因と対策:(6)環境(牧迫飛雄馬)

“こんなときどうする?” リハビリテーション臨床現場のモヤモヤ解決! 令和版
 形態変更・スキルアップ編 (3)研究テーマをうまくみつけたい(若林秀隆)

障害福祉サービスとリハビリテーション
 8.就労移行支援(横井 剛)

リハビリテーション関連職の現状と展望
 12.義肢装具士(野坂利也 東江由起夫)

 ご挨拶 CR編集委員代表就任にあたって(上月正博)
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