『最新臨床工学講座』の刊行にあたって
日本臨床工学技士教育施設協議会の「教科書検討委員会」では,全国の臨床工学技士教育養成施設(以下,CE養成施設)で学ぶ学生達が共通して使用できる標準教科書として,2008年から『臨床工学講座』シリーズの刊行を開始しました.シリーズ発足にあたっては,他医療系教育課程で用いられている教科書を参考にしながら,今後の臨床工学技士育成に必要,かつ教育レベルの向上を目的とした教科書作成を目指して検討を重ねました.刊行から15年が経過した現在,本シリーズは多くのCE養成施設で教科書として採用いただき,また国家試験出題の基本図書としても利用されています.
しかしながらこの間,医学・医療の発展とそれに伴う教育内容の変更により,教科書に求められる内容も変化してきました.そこでこのたび,臨床工学技士国家試験出題基準の改定〔令和3年版および令和7年版(予定)〕,臨床工学技士養成施設カリキュラム等の関係法令改正,タスク・シフト/シェアの推進に伴う業務拡大等に対応するため,『最新臨床工学講座』としてシリーズ全体をリニューアルし,さらなる質の向上・充実を図る運びとなりました.
新シリーズではその骨子として以下の3点を心がけ,臨床工学技士を目指す学生がモチベーション高く学習でき,教育者が有機的に教育できる内容を目指しました.
(1)前シリーズ『臨床工学講座』の骨格をベースとして受け継ぐ.
(2)臨床現場とのつながりをイメージできる記述を増やす.
(3)紙面イメージを刷新し,図表の使用によるビジュアル化,わかりやすい表現を心がけ,学生の知識定着を助ける.
医療現場において臨床工学技士に求められる必須な資質を育むための本教科書シリーズの意義を十分にお汲み取りいただき,本講座によって教育された臨床工学技士が社会に大きく羽ばたき,医療の発展の一助として活躍されることを願ってやみません.
本講座のさらなる充実のために,多くの方々からのご意見,ご叱正を賜れば幸甚です.
2024年春
日本臨床工学技士教育施設協議会 教科書検討委員会
最新臨床工学講座 編集顧問
序
本書,最新臨床工学講座「医用治療機器学」は15年にわたり学生諸君に活用された「臨床工学講座」の理念を受け継ぎ,近年の医学の進歩と臨床工学技士の業務拡大,養成カリキュラム改訂などに対応すべく新規に企画したものである.
1987年の臨床工学技士法制定時に規定された臨床工学技士の業務は,「循環・呼吸・代謝機能を代替・補助する生命維持管理装置の操作保守点検」であった.しかし内視鏡外科手術やInterventional Radiologyなどの低侵襲治療の進歩もあって,臨床工学技士の活動の場は手術・透析・ICU部門とともに,内視鏡・放射線部門,医療機器安全管理,在宅医療から災害時の病院機能維持などにも拡大した.
さらに2021年の臨床工学技士法改正では,医師業務のタスクシフト・タスクシェアという社会的要請もあり,麻酔・内視鏡外科手術・カテーテルアブレーション治療等において,これまで以上の直接的な操作が臨床工学技士業務として認められた.
医学の進歩や社会情勢の変化とともに,今後も臨床工学技士への期待と業務はますます増大するものと思われるが,手術支援ロボットやナビゲーション装置に代表される先進医療機器は,コンピュータ支援下の計測と治療を同時に行う統合的システムへと進化した.このため臨床工学技士は,医師とのタスクシェア・タスクシフトに留まることなく,臨床工学技士の側から他の医療職や技術者とのワークシェアを主導する責務も期待される.そのためには臨床工学技士を目指す学生諸君にもさらなる学修と研鑽が必要となる.
本書が新世代の臨床工学技士として巣立つ学生諸君とその教育担当者とともに,第一線で活躍中の臨床工学技士,さらに医用工学者や企業人にとっても医用治療機器学の知識の整理やアップデートに寄与するものと信じている.
2023年12月
執筆者を代表して 篠原一彦
日本臨床工学技士教育施設協議会の「教科書検討委員会」では,全国の臨床工学技士教育養成施設(以下,CE養成施設)で学ぶ学生達が共通して使用できる標準教科書として,2008年から『臨床工学講座』シリーズの刊行を開始しました.シリーズ発足にあたっては,他医療系教育課程で用いられている教科書を参考にしながら,今後の臨床工学技士育成に必要,かつ教育レベルの向上を目的とした教科書作成を目指して検討を重ねました.刊行から15年が経過した現在,本シリーズは多くのCE養成施設で教科書として採用いただき,また国家試験出題の基本図書としても利用されています.
しかしながらこの間,医学・医療の発展とそれに伴う教育内容の変更により,教科書に求められる内容も変化してきました.そこでこのたび,臨床工学技士国家試験出題基準の改定〔令和3年版および令和7年版(予定)〕,臨床工学技士養成施設カリキュラム等の関係法令改正,タスク・シフト/シェアの推進に伴う業務拡大等に対応するため,『最新臨床工学講座』としてシリーズ全体をリニューアルし,さらなる質の向上・充実を図る運びとなりました.
新シリーズではその骨子として以下の3点を心がけ,臨床工学技士を目指す学生がモチベーション高く学習でき,教育者が有機的に教育できる内容を目指しました.
(1)前シリーズ『臨床工学講座』の骨格をベースとして受け継ぐ.
(2)臨床現場とのつながりをイメージできる記述を増やす.
(3)紙面イメージを刷新し,図表の使用によるビジュアル化,わかりやすい表現を心がけ,学生の知識定着を助ける.
医療現場において臨床工学技士に求められる必須な資質を育むための本教科書シリーズの意義を十分にお汲み取りいただき,本講座によって教育された臨床工学技士が社会に大きく羽ばたき,医療の発展の一助として活躍されることを願ってやみません.
本講座のさらなる充実のために,多くの方々からのご意見,ご叱正を賜れば幸甚です.
2024年春
日本臨床工学技士教育施設協議会 教科書検討委員会
最新臨床工学講座 編集顧問
序
本書,最新臨床工学講座「医用治療機器学」は15年にわたり学生諸君に活用された「臨床工学講座」の理念を受け継ぎ,近年の医学の進歩と臨床工学技士の業務拡大,養成カリキュラム改訂などに対応すべく新規に企画したものである.
1987年の臨床工学技士法制定時に規定された臨床工学技士の業務は,「循環・呼吸・代謝機能を代替・補助する生命維持管理装置の操作保守点検」であった.しかし内視鏡外科手術やInterventional Radiologyなどの低侵襲治療の進歩もあって,臨床工学技士の活動の場は手術・透析・ICU部門とともに,内視鏡・放射線部門,医療機器安全管理,在宅医療から災害時の病院機能維持などにも拡大した.
さらに2021年の臨床工学技士法改正では,医師業務のタスクシフト・タスクシェアという社会的要請もあり,麻酔・内視鏡外科手術・カテーテルアブレーション治療等において,これまで以上の直接的な操作が臨床工学技士業務として認められた.
医学の進歩や社会情勢の変化とともに,今後も臨床工学技士への期待と業務はますます増大するものと思われるが,手術支援ロボットやナビゲーション装置に代表される先進医療機器は,コンピュータ支援下の計測と治療を同時に行う統合的システムへと進化した.このため臨床工学技士は,医師とのタスクシェア・タスクシフトに留まることなく,臨床工学技士の側から他の医療職や技術者とのワークシェアを主導する責務も期待される.そのためには臨床工学技士を目指す学生諸君にもさらなる学修と研鑽が必要となる.
本書が新世代の臨床工学技士として巣立つ学生諸君とその教育担当者とともに,第一線で活躍中の臨床工学技士,さらに医用工学者や企業人にとっても医用治療機器学の知識の整理やアップデートに寄与するものと信じている.
2023年12月
執筆者を代表して 篠原一彦
『最新臨床工学講座』の刊行にあたって
序
第1章 治療の基礎
1 作用と副作用
2 治療に用いる物理エネルギーの種類と特性
第2章 電磁気治療機器
1 電気メス
1.電気メスの歴史
2.電気メスの基礎
3.電気メスの事故と対策
4.安全対策
5.保守管理
6.その他の電気メス
2 マイクロ波手術装置
1.マイクロ波手術装置とは
2.歴史
3.加熱原理
4.構成
5.安全回路
6.保守管理
7.取り扱い上の注意事項
8.他の機器と併用する場合の注意点
3 除細動器
1.除細動器の目的と適応症
2.除細動器の種類
3.手動式除細動器の内部回路
4.安全機構
5.保守と点検
6.事故と対策
4 心臓ペースメーカ
1.心臓ペースメーカとは
2.心臓ペーシング治療の発展
3.ペースメーカ治療を理解するための基礎
4.体外式ペースメーカ
5.植込み型ペースメーカ
6.ペースメーカの機能と生理的ペーシング
7.ペーシングモード
8.ペーシング治療に用いる関連機器
9.ペースメーカのトラブル
10.体外式ペースメーカの保守管理
11.機能的電気刺激治療
5 カテーテルアブレーション装置
1.目的
2.原理
3.構成
4.取り扱い上の注意事項
5.保守管理
第3章 機械的治療機器
1 吸引器
1.吸引器の種類と目的
2.一般用吸引器
3.低圧持続吸引器
4.携帯型吸引器
2 結石破砕装置
1.結石破砕装置
3 心血管系インターベンション装置
1.心血管インターベンション
2.冠動脈インターベンション
3.大動脈と末梢血管に対するIVR
4.心臓内腔からのIVR
5.経皮的血管塞栓術
6.カテーテルアブレーション
4 輸液ポンプ
1.輸液ポンプの構成と分類
2.輸液ポンプの流量の制御方式
3.滴下センサ
4.輸液セット
5.輸液ポンプの使用手順
6.トラブルと対応
7.輸液ポンプの補助機能
8.保守・管理
第4章 光治療機器
1 レーザ手術装置
1.レーザの発明と治療への応用
2.レーザ治療を理解するための基礎
3.レーザ光の生体に対する物理的作用と治療形態例
4.レーザ装置の原理・構造
5.レーザ治療装置(臨床応用例と光伝送路)
6.レーザ装置の安全管理
第5章 超音波治療機器
1 超音波吸引手術装置
1.超音波の性質
2.超音波の発生法
3.超音波の医療への応用
4.超音波吸引手術装置の構造と原理
5.適応と対象疾患
2 超音波凝固切開装置
1.超音波凝固切開装置の構造と原理
2.適応と対象疾患
第6章 内視鏡
1 内視鏡
1.内視鏡の歴史と概要
2.内視鏡の原理と構造
3.カプセル内視鏡
4.内視鏡による診断と治療
5.内視鏡の保守管理
2 内視鏡外科手術機器
1.内視鏡外科手術の概要
2.内視鏡外科手術に使用する機器
3.内視鏡外科手術の留意点
4.内視鏡外科手術における保守管理
3 手術支援ロボット
1.概要
2.原理と構造
3.手術支援ロボットの使用上の留意点と課題
第7章 熱治療機器
1 冷凍手術器
1.冷凍手術とは
2.冷凍手術の作用機序と治療の特徴
3.冷凍手術器の原理・構造
4.操作・運用
5.保守・点検
2 ハイパーサーミア(癌温熱療法)装置
1.温熱と医療の関係
2.ハイパーサーミアの理工学的基礎
3.ハイパーサーミアの生物学的基礎
付録 臨床工学技士国家試験出題基準(医用治療機器学)
索引
序
第1章 治療の基礎
1 作用と副作用
2 治療に用いる物理エネルギーの種類と特性
第2章 電磁気治療機器
1 電気メス
1.電気メスの歴史
2.電気メスの基礎
3.電気メスの事故と対策
4.安全対策
5.保守管理
6.その他の電気メス
2 マイクロ波手術装置
1.マイクロ波手術装置とは
2.歴史
3.加熱原理
4.構成
5.安全回路
6.保守管理
7.取り扱い上の注意事項
8.他の機器と併用する場合の注意点
3 除細動器
1.除細動器の目的と適応症
2.除細動器の種類
3.手動式除細動器の内部回路
4.安全機構
5.保守と点検
6.事故と対策
4 心臓ペースメーカ
1.心臓ペースメーカとは
2.心臓ペーシング治療の発展
3.ペースメーカ治療を理解するための基礎
4.体外式ペースメーカ
5.植込み型ペースメーカ
6.ペースメーカの機能と生理的ペーシング
7.ペーシングモード
8.ペーシング治療に用いる関連機器
9.ペースメーカのトラブル
10.体外式ペースメーカの保守管理
11.機能的電気刺激治療
5 カテーテルアブレーション装置
1.目的
2.原理
3.構成
4.取り扱い上の注意事項
5.保守管理
第3章 機械的治療機器
1 吸引器
1.吸引器の種類と目的
2.一般用吸引器
3.低圧持続吸引器
4.携帯型吸引器
2 結石破砕装置
1.結石破砕装置
3 心血管系インターベンション装置
1.心血管インターベンション
2.冠動脈インターベンション
3.大動脈と末梢血管に対するIVR
4.心臓内腔からのIVR
5.経皮的血管塞栓術
6.カテーテルアブレーション
4 輸液ポンプ
1.輸液ポンプの構成と分類
2.輸液ポンプの流量の制御方式
3.滴下センサ
4.輸液セット
5.輸液ポンプの使用手順
6.トラブルと対応
7.輸液ポンプの補助機能
8.保守・管理
第4章 光治療機器
1 レーザ手術装置
1.レーザの発明と治療への応用
2.レーザ治療を理解するための基礎
3.レーザ光の生体に対する物理的作用と治療形態例
4.レーザ装置の原理・構造
5.レーザ治療装置(臨床応用例と光伝送路)
6.レーザ装置の安全管理
第5章 超音波治療機器
1 超音波吸引手術装置
1.超音波の性質
2.超音波の発生法
3.超音波の医療への応用
4.超音波吸引手術装置の構造と原理
5.適応と対象疾患
2 超音波凝固切開装置
1.超音波凝固切開装置の構造と原理
2.適応と対象疾患
第6章 内視鏡
1 内視鏡
1.内視鏡の歴史と概要
2.内視鏡の原理と構造
3.カプセル内視鏡
4.内視鏡による診断と治療
5.内視鏡の保守管理
2 内視鏡外科手術機器
1.内視鏡外科手術の概要
2.内視鏡外科手術に使用する機器
3.内視鏡外科手術の留意点
4.内視鏡外科手術における保守管理
3 手術支援ロボット
1.概要
2.原理と構造
3.手術支援ロボットの使用上の留意点と課題
第7章 熱治療機器
1 冷凍手術器
1.冷凍手術とは
2.冷凍手術の作用機序と治療の特徴
3.冷凍手術器の原理・構造
4.操作・運用
5.保守・点検
2 ハイパーサーミア(癌温熱療法)装置
1.温熱と医療の関係
2.ハイパーサーミアの理工学的基礎
3.ハイパーサーミアの生物学的基礎
付録 臨床工学技士国家試験出題基準(医用治療機器学)
索引