第2版 発行に際して
*情報の提供について
薬の〈説明〉に焦点をあわせた本書の第2版を刊行することになった.情報提供,情報の公開・開示は,もはや当たり前の風潮になりつつあり,インフォームド・コンセントもまた,日常医療のなかで大きな流れとして定着していくであろう.
その際,医療者が気をつけたいのは,患者がどう了解し,同意したかではなく,何をどのように説明しているか,説明してきたかをたえず確認し,省みることであろう.
「専門的なことをわかりやすく説明できるのが専門家だ」という,当然の言動が医療者に求められていく.
*EBMについて
エビデンスにもとづく医療行為の選択が望まれている.エビデンスはデータであり,そのエビデンスをいかに医療に取り入れていくかという適用の場面では,医療観や技術観が問われる.ここでも,どのような説明をするかが重要になる.
*薬剤師の責任
2002年,厚生労働省は,薬剤師の疑義照会は,「過量投与になる」と連絡するだけでなく,「投与したい量」や「現在の量ではどのくらい多すぎるのか」など,「具体的に」かつ「納得いくまで」問い合わせるべきだという内容の指摘をした.
安全という観点からも,薬局・薬剤師の主体的役割は今後,ますます重要になっていくであろう.
*医薬品の範囲
第2版では,第1版では記載しなかった市販後まもない薬品もいくつか取り上げた.疾病と薬物療法は一般診療の場面を想定して選択しているのにかわりはない.ただ,外来で処方されはじめている,新たな医薬品については,適応の判断,有効性・安全性・利便性などを現場でも,たえず関心をもつ必要があると思っている.
*代謝・排泄について
従来,ブラックボックス的な位置にあった薬の吸収・分布・代謝・排泄の様相がわかりはじめている.第2版ではその成果を少し取り入れた.添付文書もこれらの事項が記載されるようになっている.
過量投与や,相互作用などによる副作用の発現の原因として,これからはたえず意識しなければならない.
*お礼とお願い
1994年,「たかの薬局」の窓口で薬剤師が意識した「こんな本があったら」という〈思い〉が具体化(第1版刊行・1997年)して5年余が経った.〈思い〉を結実に導いた多くの方に感謝するとともに,第1版について,この間,さまざまなご意見・激励をいただいたことにお礼を申し上げたい.
とくに多忙な診療に携わっている開業医の方,診察を始めたばかりの研修医の方,そして保険薬局で信頼される薬剤師になりたいと日々,悩み,研鑽している方々に受け止められた意味を感じている.
第2版では説明の記載のダブりを多少,整理した.新しい薬を処方するときや,本書の記載内容に疑問が生じたときは必ず添付文書での確認をお願いしたい.
今後とも,積極的なご意見をお寄せいただければ幸いである.
2003年2月23日
編集委員を代表して
小坂富美子
***
第1版作成時の協力者(所属は当時)
松山公彦 医 師 みさと健和クリニック
太田久彦 医 師 みさと健和病院
内山浩子 薬剤師 たかの薬局
坂田純子 薬剤師 へいわ橋薬局
日野紀子 薬剤師 みなみ薬局
みさと健和病院薬剤課
はじめに
*医師と薬剤師と
医学はめざましく進歩しているが,薬物療法の重要性に変化はない.薬物療法については,有効性・安全性・経済性・利便性とさまざまな方向から,薬効と適正範囲を尊重した薬の使用が論じられている.医師はこうした薬のもつ多面性の意味を知って,薬物療法をすすめていかなければならない.
また,病棟の薬剤師には医療チームの一員として患者のためになる活動を展開することが望まれ,さらに地域に働く薬剤師には定着してきた医薬分業のシステムを内側から充実させることや,在宅医療にどうかかわっていくかが問われている.
このように薬をめぐる状況が大きく変わりつつあるなかで,安全性を配慮しながら薬物療法をするには,医師と薬剤師が〈薬〉をどう考え,扱うかが重要なポイントになる.
*実践的な処方をめざして
臨床医をめざす医師には,薬を適切に扱える技術の習得は大切な問題である.しかし,医学生・研修医がプライマリーケアのレベルの実践的な処方を学ぶチャンスは現実にはきわめて少ない.処方を学ぶテキストとして,すでに多くのすぐれた処方集があるが,本書は多数の薬のなかからどれを選び,どのような使い方をするのか,処方の第一歩を意識して薬を選択したことに,ひとつの特徴がある.
*医療システムの変化のなかで
診療所や病院の外来診療では,患者に薬を渡す方法として,処方箋を発行する医療機関が増えている.薬を調剤し,患者に渡すのは薬局の薬剤師であり,こうした医薬分業のシステムは,医師と薬剤師が処方箋という一枚の文書を介してチーム医療を担っているともいえる.だが,今のシステムでは,医師は薬剤師が,薬剤師は医師が,患者にどのような説明をしているのか知る機会はほとんどない.両者がどんなにていねいな説明をしても,医師と薬剤師の説明の内容がかみあわなければ,混乱・迷惑するのは患者である.
薬物療法の進歩と医薬分業の促進という医療システムの変化をふまえて,プライマリーケアを中軸に,一枚の処方箋の向こうにどんな〈説明〉があるか,医師と薬剤師の双方に,同時に,疾病と処方をもとにアプローチした点にも本書の特徴はある.
*医療現場での〈説明〉とはなにか
ここ数年,医療現場では情報公開やインフォームドコンセントが話題になり,患者や家族はていねいに説明を受ける機会が増えている.日常的な説明をさしてすべてインフォームドコンセントと表現するべきとも思えないが,患者の訴えや不安にこたえる説明とやりとりが日ごろから行われていないならば,インフォームドコンセントが成立するとは考えられない.いわゆる「指導」という表現で行われている,とかく一方通行になりがちな説明は〈説明〉とはいえないであろう.患者の同意や納得を得るには,医療現場での日常的な〈説明〉の量と質が問われているのであり,本書はこうした時代の要請にそって,〈説明〉に重点をおいたことにも特徴がある.
*医師と薬剤師の〈説明〉の違い
薬物療法に関する〈説明〉では,医師と薬剤師はポイントのおきかたが違わなければならない.まず,医師は「なぜ,どんな目的で処方するのか.期待する効果は,副作用,注意はなにか」の視点で患者に〈説明〉をする.薬剤師は「この薬はどんな作用・副作用,注意事項をもっているか」を中心にした〈説明〉になる.実際にはどこまでが医師の分野で,どこからが薬剤師の領域か明確に線を引けるわけではない.だが,このポイントが意識されないと,患者はどういう目的で薬をのむのか,何に注意すべきなのか理解できず,自己判断でのんだり,のまなかったりしがちになる.
*この本を手にしてもらいたい人たち
この本を書いた医師は,日々,地域病院・診療所で病棟・外来・在宅医療を担い,薬剤師は調剤中心の薬局で患者と応対している.執筆にあたっては,なによりも現場感覚を大切にした.
そのわけは,プライマリーケアを習得中の卒業後2〜3年までの若手医師にまず手にとってもらいたいからである.また,新薬の登場を前にして,とまどっている高齢の医師にも役立ってほしいと願っている.そして,これまで医療現場に接近することの少なかった街の薬局の薬剤師にも,ぜひ見て,読んでもらいたい.
さらに長い間,第一線で,地域医療を担ってきたベテランの開業医で,これから処方箋発行に踏み切ろうと考えている方の参考にもなるのではと思っている.診療室の隣に薬局があり,患者への説明が聞こえていたときには想像できなかったことが,この本には書かれているはずである.
*疾病と医薬品の範囲をどう考えたか
疾病と薬物療法については,一般診療の場面を想定した.専門分化していない内科一般病棟,二次医療機関の救急当直,診療所の一般外来での診療である.そこで高い頻度で出会い,他の医療機関に紹介せずに対応できる症状・疾患を中心にとりあげた.
薬物療法についてはなるべく薬品数をしぼり,基本となる処方モデルを考えた.成人病世代になると単一疾患の場合は少ないので,薬の併用が増える.それでも,初めて使う薬や疑問をもったときは,本書のみによらず,必ず添付文書を確認していただきたい.そのため,臨床の場から見た相互作用に配慮した.
現実には,Common Diseaseといえども,専門医との協力,専門病院への転送が必要になるときはある.一般診療ではどこまでが守備範囲かをたえず意識して記載したが,専門医の治療についても簡略にふれたところがある.
積極的なご意見をいただければ幸いである.
1997年10月20日
編集委員を代表して
藤井博之
本書の使用にあたって
1 各薬剤群ごとの章だてにして,それぞれのなかで疾患・症状別に配列した.「糖尿病剤-糖尿病」のように薬剤と疾病が対応しているものと,抗生剤,ステロイド剤,鎮痛剤など,いろいろな疾病で使われる薬剤がある.症状・疾患を治療する代表的な薬剤の項に,病名を入れた.関連項目はページ参照としてある.
2 薬剤一覧は,本文中の薬剤を中心にしてある.同一成分のどの製品をとりあげるかは,こうした本の悩みのひとつである.本書は多くを網羅して本が厚くなりすぎることを避けた.
同一薬効の製品をさがすには,薬効別に収載されている薬価基準の本などを手元に置いて参照してもらいたい.
3 〈治療開始〉〈治療中の観察と対応〉としたのは,診療の流れを意識して処方を示すためである.
4 処方は,処方箋に記載する形式をなるべく意識した.特に,同一薬品名でも規格(含有mg)が数種ある場合,処方箋に記入していないと,薬局では調剤できないので,薬品名のあとに(○mg)と書いた.以下に例を示す.
◇内服剤:アダラートL(10mg)1T/日 朝食後
(10mgのアダラートLを1錠,朝食後に服用の指示である)
:一日のうちいつ服用でもいい場合は一日1回とした.朝食後と記載しても薬理的に朝が適当という場合と,習慣的に朝に服用することが多い場合がある.前者については,その理由を述べておいた.
:処方箋には,いつ服用と指示をしなければいけない.
:処方箋には何日分か書く.
◇頓用剤:ロキソニン 1T/回 疼痛時 としてある.
:処方箋には,用法,回数の記載を忘れないようにする.
◇外用剤:処方箋では患者に渡す総量を書くことになっている.
本書では規格製品の最小単位か一般的に処方される量を示している.
リンデロンVG軟膏 5g(リンデロンVG軟膏は5gのチューブがある.患部の範囲や次回診療日までの間隔を考えて5gの倍数を処方箋には記載するのが実際的であろう)
点眼剤・眼軟膏などについても同様.
◇坐 剤:処方箋では患者に渡す総量を書く場合と,一日の使用量を書き,一日何回何日分かを書く場合がある.本書では一回量のみ記載している.
◇注射剤:処方箋での注射はインスリンなどが主である.規格品の最小単位を示した.病棟での注射処方箋は,各医療機関で記載方法が異なる.本書では(mg/ml/A)(mg/ml/V)の形式で記載している.
5 〈説明〉とともに,特に副作用では対処法が大切である.同じ対処法が繰り返されるので,すべての説明のところに記載はしていないが,患者には対処法も話してもらいたい.たとえば,「薬をやめて次回診療のときに医師にいう」,「すぐに医師に連絡する……」などいくつかのパターンがある.
6 薬害への監視の強化,PL法の導入を背景に,薬理学や薬物動態学の進歩もあって,薬剤の添付文書に記載される禁忌・副作用・注意事項は増えている.すべてを指摘するのは困難なので,臨床をとおして日ごろ注意すべきと判断していることを基準に記載した.初めての薬を使うときや,副作用を疑ったときは,すぐ添付文書をみる習慣をつけ,DIセンターに問い合わせることも臨床医の仕事の一部である.
社会保険診療報酬の範囲で診療・調剤をすすめることがほとんどだが,本書ではその範囲だけでなく,日常診療の視角で記載している.保険適応でない場合はその旨記載するよう努めた.
あとがき
患者に情報を渡すのは,自分のことを知りたいというあたりまえの要求にこたえるためである.さらに,それによって広い意味での医療被害をゼロにはできなくても,多くは防げるし,軽くすむ可能性も高くなると考える.
そのための〈説明〉は患者のためばかりではなく,実は医療者自身のためでもある.〈説明〉をとおして,自己の判断の根拠や思考過程が明確になるからである.
〈説明〉にこだわって,本書を企画し,執筆するなかで,私たち医師と薬剤師は,この事実を痛感させられた.お互いにそんな〈説明〉をしているのかと問いかけあい,〈説明〉に対する意識の違いも明確になった.医師同士でも他の人の〈説明〉を耳にする機会は多くはないので刺激になった.
病棟の薬剤師と保険薬局の薬剤師では,同じ薬剤師の立場からの〈説明〉といっても違うという,あたりまえのことに気がついたのも,企画を具体化する作業の段階であった.つまり,病棟の薬剤師は病名を知ったうえで〈説明〉できるが,薬局の場合は病名はわからないことを前提にしなければならない.そこに薬剤師としての専門知識を駆使した推理が入る.だが,これがまったくの推測・憶測であってはならないのは当然である.医師の〈説明〉とセットになって初めて薬物療法が成立するのである.
この主旨を生かすため,医師と薬剤師が分担執筆という形をとらずに,草稿をもとに討論を繰り返し,さらに原稿を回覧して補足執筆をするという方法で本書はつくられた.
薬物療法は進歩し,医薬品の評価方法への疑問,薬価基準の国際比較からみた日本の薬使用の問題などが提示されている.薬害エイズの問題をはじめ,日本で薬害が多く繰り返されている事実を,私たちは医療者として厳粛に受け止めている.
薬物治療の基本は,医薬品の知識をやみくもに増やしていくことではなく,診断学や治療学,さらに予後学を範疇に入れたなかで,どんな技術思想で薬を使うかである.若い医師たちが先輩の処方をまねて覚えていく現状では,処方の背後にあるこの技術思想まで察知しろというのは,酷である.臨床研修指定病院に認定されている地域病院で,若い研修医たちに接している私たちには,その思いがいつもあった.それが本書の執筆の動機のひとつであるのは間違いない.
また,DI室が完備している大型病院は別として,とかく添付文書の記載をそのまま説明せざるをえない薬剤師の立場も考えた.添付文書の内容を現場感覚で判断できないのが,今の多くの薬剤師の現状である.添付文書側の問題,薬剤師側の問題の両方があると考えている.
「説明を重視した薬の使い方」,「医師と薬剤師のための本=両者が同次元で薬物療法について考える,患者の立場を尊重して」という本書の企画は,健和会の顧問である川上武先生より提案された.そのコンセプトをどう具体化するかの作業から始まり,完成までに多くの人に協力をいただいた.健和会のみさと健和病院および柳原病院の医局の方々,健康サービスKKの新井淳氏,たかの薬局の同僚薬剤師たち,さらにKKメディックスに所属する薬局の薬剤師の協力・助言があった.また,最終段階ではみさと健和クリニックの松山公彦先生と,みさと健和病院の太田久彦先生に協力をいただいた.多忙な業務のなかでの作業であったため,いろいろな形で援助を受けてきたことを感謝している.
最後に,どんな本になるかわからない模索のなかで,見守り,現場で使うのだから,読むよりも見る感覚で手にとれる処方集にしたいという私たちの思いを実現してくださった医歯薬出版の担当者の皆さんに厚く感謝するとともに,お礼を申し上げます.
1997年10月20日
編集委員を代表して
小坂富美子
*情報の提供について
薬の〈説明〉に焦点をあわせた本書の第2版を刊行することになった.情報提供,情報の公開・開示は,もはや当たり前の風潮になりつつあり,インフォームド・コンセントもまた,日常医療のなかで大きな流れとして定着していくであろう.
その際,医療者が気をつけたいのは,患者がどう了解し,同意したかではなく,何をどのように説明しているか,説明してきたかをたえず確認し,省みることであろう.
「専門的なことをわかりやすく説明できるのが専門家だ」という,当然の言動が医療者に求められていく.
*EBMについて
エビデンスにもとづく医療行為の選択が望まれている.エビデンスはデータであり,そのエビデンスをいかに医療に取り入れていくかという適用の場面では,医療観や技術観が問われる.ここでも,どのような説明をするかが重要になる.
*薬剤師の責任
2002年,厚生労働省は,薬剤師の疑義照会は,「過量投与になる」と連絡するだけでなく,「投与したい量」や「現在の量ではどのくらい多すぎるのか」など,「具体的に」かつ「納得いくまで」問い合わせるべきだという内容の指摘をした.
安全という観点からも,薬局・薬剤師の主体的役割は今後,ますます重要になっていくであろう.
*医薬品の範囲
第2版では,第1版では記載しなかった市販後まもない薬品もいくつか取り上げた.疾病と薬物療法は一般診療の場面を想定して選択しているのにかわりはない.ただ,外来で処方されはじめている,新たな医薬品については,適応の判断,有効性・安全性・利便性などを現場でも,たえず関心をもつ必要があると思っている.
*代謝・排泄について
従来,ブラックボックス的な位置にあった薬の吸収・分布・代謝・排泄の様相がわかりはじめている.第2版ではその成果を少し取り入れた.添付文書もこれらの事項が記載されるようになっている.
過量投与や,相互作用などによる副作用の発現の原因として,これからはたえず意識しなければならない.
*お礼とお願い
1994年,「たかの薬局」の窓口で薬剤師が意識した「こんな本があったら」という〈思い〉が具体化(第1版刊行・1997年)して5年余が経った.〈思い〉を結実に導いた多くの方に感謝するとともに,第1版について,この間,さまざまなご意見・激励をいただいたことにお礼を申し上げたい.
とくに多忙な診療に携わっている開業医の方,診察を始めたばかりの研修医の方,そして保険薬局で信頼される薬剤師になりたいと日々,悩み,研鑽している方々に受け止められた意味を感じている.
第2版では説明の記載のダブりを多少,整理した.新しい薬を処方するときや,本書の記載内容に疑問が生じたときは必ず添付文書での確認をお願いしたい.
今後とも,積極的なご意見をお寄せいただければ幸いである.
2003年2月23日
編集委員を代表して
小坂富美子
***
第1版作成時の協力者(所属は当時)
松山公彦 医 師 みさと健和クリニック
太田久彦 医 師 みさと健和病院
内山浩子 薬剤師 たかの薬局
坂田純子 薬剤師 へいわ橋薬局
日野紀子 薬剤師 みなみ薬局
みさと健和病院薬剤課
はじめに
*医師と薬剤師と
医学はめざましく進歩しているが,薬物療法の重要性に変化はない.薬物療法については,有効性・安全性・経済性・利便性とさまざまな方向から,薬効と適正範囲を尊重した薬の使用が論じられている.医師はこうした薬のもつ多面性の意味を知って,薬物療法をすすめていかなければならない.
また,病棟の薬剤師には医療チームの一員として患者のためになる活動を展開することが望まれ,さらに地域に働く薬剤師には定着してきた医薬分業のシステムを内側から充実させることや,在宅医療にどうかかわっていくかが問われている.
このように薬をめぐる状況が大きく変わりつつあるなかで,安全性を配慮しながら薬物療法をするには,医師と薬剤師が〈薬〉をどう考え,扱うかが重要なポイントになる.
*実践的な処方をめざして
臨床医をめざす医師には,薬を適切に扱える技術の習得は大切な問題である.しかし,医学生・研修医がプライマリーケアのレベルの実践的な処方を学ぶチャンスは現実にはきわめて少ない.処方を学ぶテキストとして,すでに多くのすぐれた処方集があるが,本書は多数の薬のなかからどれを選び,どのような使い方をするのか,処方の第一歩を意識して薬を選択したことに,ひとつの特徴がある.
*医療システムの変化のなかで
診療所や病院の外来診療では,患者に薬を渡す方法として,処方箋を発行する医療機関が増えている.薬を調剤し,患者に渡すのは薬局の薬剤師であり,こうした医薬分業のシステムは,医師と薬剤師が処方箋という一枚の文書を介してチーム医療を担っているともいえる.だが,今のシステムでは,医師は薬剤師が,薬剤師は医師が,患者にどのような説明をしているのか知る機会はほとんどない.両者がどんなにていねいな説明をしても,医師と薬剤師の説明の内容がかみあわなければ,混乱・迷惑するのは患者である.
薬物療法の進歩と医薬分業の促進という医療システムの変化をふまえて,プライマリーケアを中軸に,一枚の処方箋の向こうにどんな〈説明〉があるか,医師と薬剤師の双方に,同時に,疾病と処方をもとにアプローチした点にも本書の特徴はある.
*医療現場での〈説明〉とはなにか
ここ数年,医療現場では情報公開やインフォームドコンセントが話題になり,患者や家族はていねいに説明を受ける機会が増えている.日常的な説明をさしてすべてインフォームドコンセントと表現するべきとも思えないが,患者の訴えや不安にこたえる説明とやりとりが日ごろから行われていないならば,インフォームドコンセントが成立するとは考えられない.いわゆる「指導」という表現で行われている,とかく一方通行になりがちな説明は〈説明〉とはいえないであろう.患者の同意や納得を得るには,医療現場での日常的な〈説明〉の量と質が問われているのであり,本書はこうした時代の要請にそって,〈説明〉に重点をおいたことにも特徴がある.
*医師と薬剤師の〈説明〉の違い
薬物療法に関する〈説明〉では,医師と薬剤師はポイントのおきかたが違わなければならない.まず,医師は「なぜ,どんな目的で処方するのか.期待する効果は,副作用,注意はなにか」の視点で患者に〈説明〉をする.薬剤師は「この薬はどんな作用・副作用,注意事項をもっているか」を中心にした〈説明〉になる.実際にはどこまでが医師の分野で,どこからが薬剤師の領域か明確に線を引けるわけではない.だが,このポイントが意識されないと,患者はどういう目的で薬をのむのか,何に注意すべきなのか理解できず,自己判断でのんだり,のまなかったりしがちになる.
*この本を手にしてもらいたい人たち
この本を書いた医師は,日々,地域病院・診療所で病棟・外来・在宅医療を担い,薬剤師は調剤中心の薬局で患者と応対している.執筆にあたっては,なによりも現場感覚を大切にした.
そのわけは,プライマリーケアを習得中の卒業後2〜3年までの若手医師にまず手にとってもらいたいからである.また,新薬の登場を前にして,とまどっている高齢の医師にも役立ってほしいと願っている.そして,これまで医療現場に接近することの少なかった街の薬局の薬剤師にも,ぜひ見て,読んでもらいたい.
さらに長い間,第一線で,地域医療を担ってきたベテランの開業医で,これから処方箋発行に踏み切ろうと考えている方の参考にもなるのではと思っている.診療室の隣に薬局があり,患者への説明が聞こえていたときには想像できなかったことが,この本には書かれているはずである.
*疾病と医薬品の範囲をどう考えたか
疾病と薬物療法については,一般診療の場面を想定した.専門分化していない内科一般病棟,二次医療機関の救急当直,診療所の一般外来での診療である.そこで高い頻度で出会い,他の医療機関に紹介せずに対応できる症状・疾患を中心にとりあげた.
薬物療法についてはなるべく薬品数をしぼり,基本となる処方モデルを考えた.成人病世代になると単一疾患の場合は少ないので,薬の併用が増える.それでも,初めて使う薬や疑問をもったときは,本書のみによらず,必ず添付文書を確認していただきたい.そのため,臨床の場から見た相互作用に配慮した.
現実には,Common Diseaseといえども,専門医との協力,専門病院への転送が必要になるときはある.一般診療ではどこまでが守備範囲かをたえず意識して記載したが,専門医の治療についても簡略にふれたところがある.
積極的なご意見をいただければ幸いである.
1997年10月20日
編集委員を代表して
藤井博之
本書の使用にあたって
1 各薬剤群ごとの章だてにして,それぞれのなかで疾患・症状別に配列した.「糖尿病剤-糖尿病」のように薬剤と疾病が対応しているものと,抗生剤,ステロイド剤,鎮痛剤など,いろいろな疾病で使われる薬剤がある.症状・疾患を治療する代表的な薬剤の項に,病名を入れた.関連項目はページ参照としてある.
2 薬剤一覧は,本文中の薬剤を中心にしてある.同一成分のどの製品をとりあげるかは,こうした本の悩みのひとつである.本書は多くを網羅して本が厚くなりすぎることを避けた.
同一薬効の製品をさがすには,薬効別に収載されている薬価基準の本などを手元に置いて参照してもらいたい.
3 〈治療開始〉〈治療中の観察と対応〉としたのは,診療の流れを意識して処方を示すためである.
4 処方は,処方箋に記載する形式をなるべく意識した.特に,同一薬品名でも規格(含有mg)が数種ある場合,処方箋に記入していないと,薬局では調剤できないので,薬品名のあとに(○mg)と書いた.以下に例を示す.
◇内服剤:アダラートL(10mg)1T/日 朝食後
(10mgのアダラートLを1錠,朝食後に服用の指示である)
:一日のうちいつ服用でもいい場合は一日1回とした.朝食後と記載しても薬理的に朝が適当という場合と,習慣的に朝に服用することが多い場合がある.前者については,その理由を述べておいた.
:処方箋には,いつ服用と指示をしなければいけない.
:処方箋には何日分か書く.
◇頓用剤:ロキソニン 1T/回 疼痛時 としてある.
:処方箋には,用法,回数の記載を忘れないようにする.
◇外用剤:処方箋では患者に渡す総量を書くことになっている.
本書では規格製品の最小単位か一般的に処方される量を示している.
リンデロンVG軟膏 5g(リンデロンVG軟膏は5gのチューブがある.患部の範囲や次回診療日までの間隔を考えて5gの倍数を処方箋には記載するのが実際的であろう)
点眼剤・眼軟膏などについても同様.
◇坐 剤:処方箋では患者に渡す総量を書く場合と,一日の使用量を書き,一日何回何日分かを書く場合がある.本書では一回量のみ記載している.
◇注射剤:処方箋での注射はインスリンなどが主である.規格品の最小単位を示した.病棟での注射処方箋は,各医療機関で記載方法が異なる.本書では(mg/ml/A)(mg/ml/V)の形式で記載している.
5 〈説明〉とともに,特に副作用では対処法が大切である.同じ対処法が繰り返されるので,すべての説明のところに記載はしていないが,患者には対処法も話してもらいたい.たとえば,「薬をやめて次回診療のときに医師にいう」,「すぐに医師に連絡する……」などいくつかのパターンがある.
6 薬害への監視の強化,PL法の導入を背景に,薬理学や薬物動態学の進歩もあって,薬剤の添付文書に記載される禁忌・副作用・注意事項は増えている.すべてを指摘するのは困難なので,臨床をとおして日ごろ注意すべきと判断していることを基準に記載した.初めての薬を使うときや,副作用を疑ったときは,すぐ添付文書をみる習慣をつけ,DIセンターに問い合わせることも臨床医の仕事の一部である.
社会保険診療報酬の範囲で診療・調剤をすすめることがほとんどだが,本書ではその範囲だけでなく,日常診療の視角で記載している.保険適応でない場合はその旨記載するよう努めた.
あとがき
患者に情報を渡すのは,自分のことを知りたいというあたりまえの要求にこたえるためである.さらに,それによって広い意味での医療被害をゼロにはできなくても,多くは防げるし,軽くすむ可能性も高くなると考える.
そのための〈説明〉は患者のためばかりではなく,実は医療者自身のためでもある.〈説明〉をとおして,自己の判断の根拠や思考過程が明確になるからである.
〈説明〉にこだわって,本書を企画し,執筆するなかで,私たち医師と薬剤師は,この事実を痛感させられた.お互いにそんな〈説明〉をしているのかと問いかけあい,〈説明〉に対する意識の違いも明確になった.医師同士でも他の人の〈説明〉を耳にする機会は多くはないので刺激になった.
病棟の薬剤師と保険薬局の薬剤師では,同じ薬剤師の立場からの〈説明〉といっても違うという,あたりまえのことに気がついたのも,企画を具体化する作業の段階であった.つまり,病棟の薬剤師は病名を知ったうえで〈説明〉できるが,薬局の場合は病名はわからないことを前提にしなければならない.そこに薬剤師としての専門知識を駆使した推理が入る.だが,これがまったくの推測・憶測であってはならないのは当然である.医師の〈説明〉とセットになって初めて薬物療法が成立するのである.
この主旨を生かすため,医師と薬剤師が分担執筆という形をとらずに,草稿をもとに討論を繰り返し,さらに原稿を回覧して補足執筆をするという方法で本書はつくられた.
薬物療法は進歩し,医薬品の評価方法への疑問,薬価基準の国際比較からみた日本の薬使用の問題などが提示されている.薬害エイズの問題をはじめ,日本で薬害が多く繰り返されている事実を,私たちは医療者として厳粛に受け止めている.
薬物治療の基本は,医薬品の知識をやみくもに増やしていくことではなく,診断学や治療学,さらに予後学を範疇に入れたなかで,どんな技術思想で薬を使うかである.若い医師たちが先輩の処方をまねて覚えていく現状では,処方の背後にあるこの技術思想まで察知しろというのは,酷である.臨床研修指定病院に認定されている地域病院で,若い研修医たちに接している私たちには,その思いがいつもあった.それが本書の執筆の動機のひとつであるのは間違いない.
また,DI室が完備している大型病院は別として,とかく添付文書の記載をそのまま説明せざるをえない薬剤師の立場も考えた.添付文書の内容を現場感覚で判断できないのが,今の多くの薬剤師の現状である.添付文書側の問題,薬剤師側の問題の両方があると考えている.
「説明を重視した薬の使い方」,「医師と薬剤師のための本=両者が同次元で薬物療法について考える,患者の立場を尊重して」という本書の企画は,健和会の顧問である川上武先生より提案された.そのコンセプトをどう具体化するかの作業から始まり,完成までに多くの人に協力をいただいた.健和会のみさと健和病院および柳原病院の医局の方々,健康サービスKKの新井淳氏,たかの薬局の同僚薬剤師たち,さらにKKメディックスに所属する薬局の薬剤師の協力・助言があった.また,最終段階ではみさと健和クリニックの松山公彦先生と,みさと健和病院の太田久彦先生に協力をいただいた.多忙な業務のなかでの作業であったため,いろいろな形で援助を受けてきたことを感謝している.
最後に,どんな本になるかわからない模索のなかで,見守り,現場で使うのだから,読むよりも見る感覚で手にとれる処方集にしたいという私たちの思いを実現してくださった医歯薬出版の担当者の皆さんに厚く感謝するとともに,お礼を申し上げます.
1997年10月20日
編集委員を代表して
小坂富美子
第2版 発行に際して
はじめに
本書の使用にあたって
日常診療での薬物療法
1 解熱・鎮痛・消炎剤
症状と薬の使い方
1 発熱に対して
1)短期間(長くて1〜2週間)の経過が想定される場合
2)1〜2週間以上の長期間の発熱の場合
2 痛みに対して
1)診断のついている痛み
2)診断のついていない痛み
2 抗生剤・抗菌剤
主要な抗生剤・抗菌剤の世代と特徴
1)ペニシリン系
2)セフェム系
3)アミノグリコシド系
4)マクロライド系
5)テトラサイクリン系
6)ペプチド系
7)キノロン系
体内動態と排泄経路
MIC(最小発育阻止濃度)
薬剤選択・使用量・使用期間の決め方
1)感染部位を決定する
2)感染経路・場所を推定する
3)重症度をみる
4)患者の抵抗力をみる
5)すでに使用された薬物に注意する
6)起因菌の種類を推定・決定する
7)薬物療法以外の治療を考慮する
8)抗菌スペクトルの狭い薬剤を第一選択とする
9)広域抗生物質を第一選択にせざるをえない場合の原則
10)抗生物質による副作用の既往がある場合
注意すべき副作用
疾患と薬の使い方
1 気管支炎,肺炎
2 膀胱炎,腎盂腎炎
3 敗血症
4 感染性心内膜炎(IE)
5 細菌性髄膜炎
3 抗結核剤
疾患・症状と薬の使い方
1 肺結核
1)開放性肺結核
2)非開放性肺結核
2 非定型抗酸菌症
3 血痰・喀血に対して
4 抗ウイルス剤
疾患・症状と薬の使い方
1 単純ヘルペス感染症
1)口唇・口腔・陰部ヘルペス
2)ヘルペス脳炎
2 水痘・帯状疱疹ウイルス感染症
1)帯状疱疹
5 抗真菌剤
疾患・症状と薬の使い方
1 白癬症
1)皮膚白癬症
2)難治性の白癬症
2 カンジダ症
1)皮膚・粘膜への感染
2)消化管カンジダ症,肺カンジダ症およびカンジダ血症
3 その他の真菌性疾患
1)クリプトコッカス症
2)アスペルギルス症
6 抗癌剤
疾患・症状と薬の使い方
1 入院中の抗癌剤療法
2 外来で使用する抗癌剤
1)消化器癌(胃癌,大腸癌),肺癌に対して
2)乳癌に対して
3 抗癌剤使用時の補助療法
1)嘔気・食欲不振など消化器症状
2)骨髄抑制
3)口内炎
4 ターミナルケア時の緩和治療
1)癌性疼痛に対して
7 呼吸器疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 呼吸器感染症
1)急性上気道炎
2)気管支炎,肺炎
3)胸膜炎
2 気管支喘息
1)急性発作で受診したとき
2)非発作時または慢性期
3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
1)肺気腫と慢性気管支炎
2)急性増悪による呼吸不全
4 肺線維症(特発性間質性肺炎)
5 肺梗塞
8 心不全・虚血性心疾患・不整脈用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 心不全
1)急性心不全
2)慢性心不全
2 虚血性心疾患
1)狭心症
2)不安定狭心症
3)急性心筋梗塞
3 不整脈
1)上室性不整脈
2)心室性不整脈
3)徐脈性不整脈
4)ジギタリス不整脈
9 高血圧症用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 薬物を用いない治療
2 薬物による治療
1)利尿剤
2)交感神経抑制剤
3)血管拡張剤
3 合併症のある高血圧症
1)心機能障害
2)腎機能障害
3)糖尿病
4)痛 風
5)慢性閉塞性呼吸器疾患
6)閉塞性動脈硬化症
7)脳血管障害
8)高齢者
4 高血圧緊急症
10 昇圧・ショック用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 ショックの初期診療の流れ
1)ショックの初期診断
2)ショック治療の開始
3)より精密な治療
2 低容量性(出血性)ショック
3 敗血症性ショック
4 DIC(播種性血管内凝固)
5 アナフィラキシーショック
6 神経原性ショック
7 心原性ショック
11 胃・十二指腸疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 診断がつく前の上腹部症状
1)吐血や下血,突然の激烈な腹痛
2)上腹部痛の対症療法
3)急性虫垂炎を疑う場合
4)神経性胃炎,non-ulcer dyspepsia
2 逆流性食道炎
3 急性胃炎
4 胃潰瘍
5 十二指腸潰瘍
12 止瀉剤・下痢用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性腸炎
2 感染性腸炎(細菌性食中毒)
1)感染型
2)毒素型(ブドウ球菌)
3)毒素型(ボツリヌス菌)
4)毒素型(ベロ毒素産生性大腸菌)
3 過敏性腸症候群
4 潰瘍性大腸炎
5 クローン病
13 便秘用剤
疾患・症状と薬の使い方
14 肝・胆・膵疾患用剤
肝疾患
1 急性肝炎
2 劇症肝炎
3 急性肝炎B型の予防
1)母子感染
2)汚染事故
3)一般感染予防
4 慢性肝炎と肝硬変
5 慢性肝炎のインターフェロン療法
1)C型慢性肝炎
2)B型慢性肝炎
6 肝不全
1)腹 水
7 肝性脳症の予防・治療
胆道疾患
1 胆石症と胆嚢炎
膵疾患
1 急性膵炎
2 慢性膵炎
15 痔疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 内痔核
2 脱肛
3 血栓性外痔核
4 肛門周囲膿瘍
5 痔瘻
6 裂肛
16 尿路疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 尿路感染症
1)膀胱炎
2)腎盂腎炎
2 尿管結石・腎結石
3 排尿障害,前立腺肥大症
17 腎臓疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性糸球体腎炎(AGN)
2 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
3 急性腎不全
1)腎前性腎不全
2)腎後性腎不全
3)腎性腎不全
4 慢性糸球体腎炎
5 慢性腎不全
6 ネフローゼ症候群
18 鉄剤
疾患・症状と薬の使い方
1 外来で診断された鉄欠乏性貧血
2 消化管手術後,消化管出血
19 止血剤
疾患・症状と薬の使い方
1 緊急に治療を要する出血
1)鼻出血
2)吐血・下血:急性上部消化管出血
3)急性下部消化管出血
4)喀 血
2 出血傾向
1)ビタミンK欠乏症による出血傾向
2)ワーファリン使用中の出血
3)ヘパリン使用中の出血
20 抗凝固剤
疾患・症状と薬の使い方
1 抗凝固療法の適応となる疾患
2 抗血小板療法の適応となる疾患
21 内分泌疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 甲状腺疾患
1)甲状腺機能低下症
2)甲状腺機能亢進症
3)甲状腺クリーゼ
4)亜急性甲状腺炎
2 その他の内分泌疾患
1)副腎皮質機能低下症
2)尿崩症
22 糖尿病用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 外来で始める治療
2 経口血糖降下剤の使用──食事・運動療法で効果が不十分な場合──
3 インスリン療法──2型糖尿病(インスリン非依存)──
1)食事,運動,経口血糖降下剤でもコントロール不良,または肝性・膵性糖尿病の場合
2)インスリン療法中の患者が発熱・食思不振を起こしたとき
3)重症感染症・手術の場合
4 糖尿病性ケトアシドーシス
5 高浸透圧性非ケトン性昏睡
6 1型糖尿病(インスリン依存)
7 合併症の治療
1)糖尿病性網膜症
2)糖尿病性腎症
3)糖尿病性神経症
23 痛風用剤
1 急性発作時
2 発作予感時
3 間欠期
24 高脂血症用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 治療が必要かどうかの評価
2 治療不要な場合
3 治療が必要な場合
1)高コレステロール血症
2)高トリグリセリド血症
3)リスクの高い高脂血症
25 ビタミン剤
疾患・症状と薬の使い方
1 VB群を用いる症状・疾患
1)口角炎,舌炎,脂漏性湿疹などの皮膚疾患のとき
2)抗結核剤使用時の末梢神経障害
3)ビタミンB1欠乏症
4)悪性貧血,巨赤芽球性貧血
5)末梢性神経障害
2 VD を用いる症状・疾患──骨粗鬆症──
3 VE を用いる症状・疾患
4 VK を用いる症状・疾患──ワーファリン使用中の出血──
5 高カロリー補液時
26 アレルギー性疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 花粉症
1)問診上,はっきりした花粉症の既往がない場合
2)既往に花粉症がある場合
2 蕁麻疹および血管性浮腫
1)皮膚に限局した場合
2)顔面の浮腫と咳,粘膜症状がある場合
27 膠原病・リウマチ性疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 慢性関節リウマチ(RA)
2 全身性エリテマトーデス(SLE)
3 その他の疾患
28 脳血管障害・痴呆用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 脳血管障害
1)急性期
2)回復期,維持期の治療──再発予防のために──
2 痴呆──脳血管性痴呆,アルツハイマー病──
1)随伴症状に対して
2)中核症状に対して
29 抗パーキンソン剤
疾患・症状と薬の使い方
1 パーキンソン病
2 二次性パーキンソン症候群
30 抗てんかん剤
疾患・症状と薬の使い方
1 痙攣発作時
2 痙攣発作の治まったあと
31 精神安定剤
1 不安
1)不安発作(心臓神経症など)
2)経過の長い,不安,緊張,イライラなど
2 不眠
3 抑うつ
4 幻覚,妄想,興奮状態
32 寄生虫疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 蟯虫症
2 アニサキス症
3 マラリア症
4 アメーバ赤痢
33 小児科疾患用剤
疾患と薬の使い方
1 小児の急性症状
1)発 熱
2)嘔 吐
3)下 痢
4)脱 水
5)咳
6)喘鳴,呼吸困難
7)痙 攣
8)腹 痛
2 小児の疾患
1)溶連菌感染症
2)喉頭炎(クループ症候群)
3)気管支喘息
4)百日咳
5)肺炎,気管支炎
6)急性伝染病
3 予防接種
1)三種混合,二種混合
2)ポリオ
3)はしか
4)風 疹
5)ツベルクリン
6)BCG
34 皮膚科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 湿疹・接触性皮膚炎
2 蕁麻疹
3 薬疹
4 白癬(みずむし)
5 帯状疱疹
6 単純ヘルペス
7 熱傷
35 産婦人科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 不正性器出血
2 更年期障害
3 生理痛・月経困難症
4 女性性器感染症
1)外陰炎
2)バルトリン腺炎
3)膣 炎
5 生理周期の変更,避妊
36 眼科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 眼部の外傷や結角膜の異物
2 細菌性結膜炎
3 ウイルス性結膜炎
4 アレルギー性結膜炎
5 ヘルペス角膜炎
6 老人性白内障
7 緑内障
8 眼底検査のための散瞳処置
9 眼精疲労
10 麦粒腫
37 耳鼻咽喉科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性鼻炎
1)急性カタル性鼻炎
2)急性副鼻腔炎
2 扁桃腺炎,扁桃周囲膿瘍
3 アレルギー性鼻炎
4 急性中耳炎
5 めまい
1)急性期の眩暈
2)めまいを繰り返す場合
6 突発性難聴
38 輸液・電解質製剤
疾患・症状と薬の使い方
1 水・電解質異常
1)脱 水
2)低Na血症
3)高Na血症
4)低K血症
5)高K血症
2 酸・塩基平衡異常
1)代謝性アシドーシス
2)代謝性アルカローシス
3)呼吸性アルカローシス
4)呼吸性アシドーシス
3 高カロリー輸液(IVH)
薬剤索引
一般索引
あとがき
はじめに
本書の使用にあたって
日常診療での薬物療法
1 解熱・鎮痛・消炎剤
症状と薬の使い方
1 発熱に対して
1)短期間(長くて1〜2週間)の経過が想定される場合
2)1〜2週間以上の長期間の発熱の場合
2 痛みに対して
1)診断のついている痛み
2)診断のついていない痛み
2 抗生剤・抗菌剤
主要な抗生剤・抗菌剤の世代と特徴
1)ペニシリン系
2)セフェム系
3)アミノグリコシド系
4)マクロライド系
5)テトラサイクリン系
6)ペプチド系
7)キノロン系
体内動態と排泄経路
MIC(最小発育阻止濃度)
薬剤選択・使用量・使用期間の決め方
1)感染部位を決定する
2)感染経路・場所を推定する
3)重症度をみる
4)患者の抵抗力をみる
5)すでに使用された薬物に注意する
6)起因菌の種類を推定・決定する
7)薬物療法以外の治療を考慮する
8)抗菌スペクトルの狭い薬剤を第一選択とする
9)広域抗生物質を第一選択にせざるをえない場合の原則
10)抗生物質による副作用の既往がある場合
注意すべき副作用
疾患と薬の使い方
1 気管支炎,肺炎
2 膀胱炎,腎盂腎炎
3 敗血症
4 感染性心内膜炎(IE)
5 細菌性髄膜炎
3 抗結核剤
疾患・症状と薬の使い方
1 肺結核
1)開放性肺結核
2)非開放性肺結核
2 非定型抗酸菌症
3 血痰・喀血に対して
4 抗ウイルス剤
疾患・症状と薬の使い方
1 単純ヘルペス感染症
1)口唇・口腔・陰部ヘルペス
2)ヘルペス脳炎
2 水痘・帯状疱疹ウイルス感染症
1)帯状疱疹
5 抗真菌剤
疾患・症状と薬の使い方
1 白癬症
1)皮膚白癬症
2)難治性の白癬症
2 カンジダ症
1)皮膚・粘膜への感染
2)消化管カンジダ症,肺カンジダ症およびカンジダ血症
3 その他の真菌性疾患
1)クリプトコッカス症
2)アスペルギルス症
6 抗癌剤
疾患・症状と薬の使い方
1 入院中の抗癌剤療法
2 外来で使用する抗癌剤
1)消化器癌(胃癌,大腸癌),肺癌に対して
2)乳癌に対して
3 抗癌剤使用時の補助療法
1)嘔気・食欲不振など消化器症状
2)骨髄抑制
3)口内炎
4 ターミナルケア時の緩和治療
1)癌性疼痛に対して
7 呼吸器疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 呼吸器感染症
1)急性上気道炎
2)気管支炎,肺炎
3)胸膜炎
2 気管支喘息
1)急性発作で受診したとき
2)非発作時または慢性期
3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
1)肺気腫と慢性気管支炎
2)急性増悪による呼吸不全
4 肺線維症(特発性間質性肺炎)
5 肺梗塞
8 心不全・虚血性心疾患・不整脈用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 心不全
1)急性心不全
2)慢性心不全
2 虚血性心疾患
1)狭心症
2)不安定狭心症
3)急性心筋梗塞
3 不整脈
1)上室性不整脈
2)心室性不整脈
3)徐脈性不整脈
4)ジギタリス不整脈
9 高血圧症用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 薬物を用いない治療
2 薬物による治療
1)利尿剤
2)交感神経抑制剤
3)血管拡張剤
3 合併症のある高血圧症
1)心機能障害
2)腎機能障害
3)糖尿病
4)痛 風
5)慢性閉塞性呼吸器疾患
6)閉塞性動脈硬化症
7)脳血管障害
8)高齢者
4 高血圧緊急症
10 昇圧・ショック用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 ショックの初期診療の流れ
1)ショックの初期診断
2)ショック治療の開始
3)より精密な治療
2 低容量性(出血性)ショック
3 敗血症性ショック
4 DIC(播種性血管内凝固)
5 アナフィラキシーショック
6 神経原性ショック
7 心原性ショック
11 胃・十二指腸疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 診断がつく前の上腹部症状
1)吐血や下血,突然の激烈な腹痛
2)上腹部痛の対症療法
3)急性虫垂炎を疑う場合
4)神経性胃炎,non-ulcer dyspepsia
2 逆流性食道炎
3 急性胃炎
4 胃潰瘍
5 十二指腸潰瘍
12 止瀉剤・下痢用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性腸炎
2 感染性腸炎(細菌性食中毒)
1)感染型
2)毒素型(ブドウ球菌)
3)毒素型(ボツリヌス菌)
4)毒素型(ベロ毒素産生性大腸菌)
3 過敏性腸症候群
4 潰瘍性大腸炎
5 クローン病
13 便秘用剤
疾患・症状と薬の使い方
14 肝・胆・膵疾患用剤
肝疾患
1 急性肝炎
2 劇症肝炎
3 急性肝炎B型の予防
1)母子感染
2)汚染事故
3)一般感染予防
4 慢性肝炎と肝硬変
5 慢性肝炎のインターフェロン療法
1)C型慢性肝炎
2)B型慢性肝炎
6 肝不全
1)腹 水
7 肝性脳症の予防・治療
胆道疾患
1 胆石症と胆嚢炎
膵疾患
1 急性膵炎
2 慢性膵炎
15 痔疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 内痔核
2 脱肛
3 血栓性外痔核
4 肛門周囲膿瘍
5 痔瘻
6 裂肛
16 尿路疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 尿路感染症
1)膀胱炎
2)腎盂腎炎
2 尿管結石・腎結石
3 排尿障害,前立腺肥大症
17 腎臓疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性糸球体腎炎(AGN)
2 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
3 急性腎不全
1)腎前性腎不全
2)腎後性腎不全
3)腎性腎不全
4 慢性糸球体腎炎
5 慢性腎不全
6 ネフローゼ症候群
18 鉄剤
疾患・症状と薬の使い方
1 外来で診断された鉄欠乏性貧血
2 消化管手術後,消化管出血
19 止血剤
疾患・症状と薬の使い方
1 緊急に治療を要する出血
1)鼻出血
2)吐血・下血:急性上部消化管出血
3)急性下部消化管出血
4)喀 血
2 出血傾向
1)ビタミンK欠乏症による出血傾向
2)ワーファリン使用中の出血
3)ヘパリン使用中の出血
20 抗凝固剤
疾患・症状と薬の使い方
1 抗凝固療法の適応となる疾患
2 抗血小板療法の適応となる疾患
21 内分泌疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 甲状腺疾患
1)甲状腺機能低下症
2)甲状腺機能亢進症
3)甲状腺クリーゼ
4)亜急性甲状腺炎
2 その他の内分泌疾患
1)副腎皮質機能低下症
2)尿崩症
22 糖尿病用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 外来で始める治療
2 経口血糖降下剤の使用──食事・運動療法で効果が不十分な場合──
3 インスリン療法──2型糖尿病(インスリン非依存)──
1)食事,運動,経口血糖降下剤でもコントロール不良,または肝性・膵性糖尿病の場合
2)インスリン療法中の患者が発熱・食思不振を起こしたとき
3)重症感染症・手術の場合
4 糖尿病性ケトアシドーシス
5 高浸透圧性非ケトン性昏睡
6 1型糖尿病(インスリン依存)
7 合併症の治療
1)糖尿病性網膜症
2)糖尿病性腎症
3)糖尿病性神経症
23 痛風用剤
1 急性発作時
2 発作予感時
3 間欠期
24 高脂血症用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 治療が必要かどうかの評価
2 治療不要な場合
3 治療が必要な場合
1)高コレステロール血症
2)高トリグリセリド血症
3)リスクの高い高脂血症
25 ビタミン剤
疾患・症状と薬の使い方
1 VB群を用いる症状・疾患
1)口角炎,舌炎,脂漏性湿疹などの皮膚疾患のとき
2)抗結核剤使用時の末梢神経障害
3)ビタミンB1欠乏症
4)悪性貧血,巨赤芽球性貧血
5)末梢性神経障害
2 VD を用いる症状・疾患──骨粗鬆症──
3 VE を用いる症状・疾患
4 VK を用いる症状・疾患──ワーファリン使用中の出血──
5 高カロリー補液時
26 アレルギー性疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 花粉症
1)問診上,はっきりした花粉症の既往がない場合
2)既往に花粉症がある場合
2 蕁麻疹および血管性浮腫
1)皮膚に限局した場合
2)顔面の浮腫と咳,粘膜症状がある場合
27 膠原病・リウマチ性疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 慢性関節リウマチ(RA)
2 全身性エリテマトーデス(SLE)
3 その他の疾患
28 脳血管障害・痴呆用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 脳血管障害
1)急性期
2)回復期,維持期の治療──再発予防のために──
2 痴呆──脳血管性痴呆,アルツハイマー病──
1)随伴症状に対して
2)中核症状に対して
29 抗パーキンソン剤
疾患・症状と薬の使い方
1 パーキンソン病
2 二次性パーキンソン症候群
30 抗てんかん剤
疾患・症状と薬の使い方
1 痙攣発作時
2 痙攣発作の治まったあと
31 精神安定剤
1 不安
1)不安発作(心臓神経症など)
2)経過の長い,不安,緊張,イライラなど
2 不眠
3 抑うつ
4 幻覚,妄想,興奮状態
32 寄生虫疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 蟯虫症
2 アニサキス症
3 マラリア症
4 アメーバ赤痢
33 小児科疾患用剤
疾患と薬の使い方
1 小児の急性症状
1)発 熱
2)嘔 吐
3)下 痢
4)脱 水
5)咳
6)喘鳴,呼吸困難
7)痙 攣
8)腹 痛
2 小児の疾患
1)溶連菌感染症
2)喉頭炎(クループ症候群)
3)気管支喘息
4)百日咳
5)肺炎,気管支炎
6)急性伝染病
3 予防接種
1)三種混合,二種混合
2)ポリオ
3)はしか
4)風 疹
5)ツベルクリン
6)BCG
34 皮膚科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 湿疹・接触性皮膚炎
2 蕁麻疹
3 薬疹
4 白癬(みずむし)
5 帯状疱疹
6 単純ヘルペス
7 熱傷
35 産婦人科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 不正性器出血
2 更年期障害
3 生理痛・月経困難症
4 女性性器感染症
1)外陰炎
2)バルトリン腺炎
3)膣 炎
5 生理周期の変更,避妊
36 眼科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 眼部の外傷や結角膜の異物
2 細菌性結膜炎
3 ウイルス性結膜炎
4 アレルギー性結膜炎
5 ヘルペス角膜炎
6 老人性白内障
7 緑内障
8 眼底検査のための散瞳処置
9 眼精疲労
10 麦粒腫
37 耳鼻咽喉科疾患用剤
疾患・症状と薬の使い方
1 急性鼻炎
1)急性カタル性鼻炎
2)急性副鼻腔炎
2 扁桃腺炎,扁桃周囲膿瘍
3 アレルギー性鼻炎
4 急性中耳炎
5 めまい
1)急性期の眩暈
2)めまいを繰り返す場合
6 突発性難聴
38 輸液・電解質製剤
疾患・症状と薬の使い方
1 水・電解質異常
1)脱 水
2)低Na血症
3)高Na血症
4)低K血症
5)高K血症
2 酸・塩基平衡異常
1)代謝性アシドーシス
2)代謝性アルカローシス
3)呼吸性アルカローシス
4)呼吸性アシドーシス
3 高カロリー輸液(IVH)
薬剤索引
一般索引
あとがき