やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防と治療のためには,食事や運動,薬の服用や禁煙など,人が生活習慣を変え(行動変容し),その行動を維持する必要があります.
 しかし,ただ「こうした方がいいですよ」と健康によい行動を勧めるだけでは,人は,なかなか「やる気」にならなかったり,変えた行動を維持できなかったりします.
 そのため,医療と保健の現場で,行動変容を促す患者指導や保健指導,健康教育を行っている皆さんは,行動変容への「やる気」を引き出したり,変えた行動を維持してもらうためにどう働きかければよいのか,日々苦労されていると思います.
 そこで役立つのが,健康行動理論です.
 健康行動理論を学ぶと,人に行動変容を促す場合の働きかけのポイントが分かるようになります.
 本書では,代表的な7つの健康行動理論について,多くの図を使って分かりやすく説明しています.
 本書の初版は,20年以上もの間,多くの医療・保健スタッフの皆さんにお読みいただいてきました.
 今回の改訂版では,医療・保健スタッフの皆さんにとって,さらに役立つ書籍になるように,約30ページが初版にはない全く新しい内容になっています.
 大きな改訂内容は,次の3点です.
 (1)「自己効力感」の章を「社会的認知理論」の章に替え,自己効力感を含めて説明しました.
 (2)現場での働きかけの参考になる,ランダム化比較試験によって行動変容への有効性が証明された,行動変容プログラムを紹介しました.
 (3)理論の補足情報や,現場で理論を活用する場合のコツなどを示した「コラム」を追加しました.
 この改訂版が初版同様,行動変容を促す患者指導や保健指導,健康教育を行う医療・保健スタッフの皆さんにとって,少しでもお役に立てれば幸いです.
 2023年11月
 松本千明
序章 健康行動理論とは何か
第1章 健康信念モデル(ヘルス・ビリーフ・モデル)
 健康信念モデルの考え方
 健康信念モデルの現場への応用
 健康信念モデルに関する研究結果
 Column 「メリット」の認識を強める場合のポイント
 Column 「妨げ」を減らす働きかけの方法
第2章 社会的認知理論
 社会的認知理論の考え方
 社会的認知理論の現場への応用
 社会的認知理論に関する研究結果
 Column 「自信尺度」の使い方
 Column 人は他人の行動に影響されやすい
第3章 変化のステージモデル
 変化のステージモデルの考え方
 変化のステージモデルの現場への応用
 変化のステージモデルに関する研究結果
 Column 各ステージの人の特徴
 Column 人のステージを調べる場合の注意点
 Column 変化のステージの進行に関する注意点
 Column 「逆戻り」をした人への働きかけ
 Column 「一時的なつまずき」
 Column 行動計画を立てる場合のポイント
第4章 計画的行動理論
 計画的行動理論の考え方
 計画的行動理論の現場への応用
 計画的行動理論に関する研究結果
第5章 ストレスとコーピング
 ストレスとコーピングの考え方
 ストレスとコーピングの現場への応用
 ストレスとコーピングに関する研究結果
 Column ストレッサーの優先順位づけ
 Column 首尾一貫感覚
第6章 ソーシャルサポート(社会的支援)
 ソーシャルサポートの考え方
 ソーシャルサポートの現場への応用
 ソーシャルサポートに関する研究結果
第7章 コントロール所在
 コントロール所在の考え方
 コントロール所在の現場への応用
 コントロール所在に関する研究結果

 健康行動理論 問題と解答