やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 摂食嚥下機能の低下した方に提供する食事は,食形態を調整する必要があります.摂食嚥下機能の低下の度合いは対象者により異なり,軽度の機能低下であれば,普通食に近いやわらかい食事が適応し,機能低下が大きくなると,ペースト食やムース食のような食形態が適応になります.つまり,食事にはさまざまな食形態があり,対象者の機能に合わせた食形態の食事を提供する必要があります.このさまざまな食形態を系統的にまとめたのが,2000年代初期に聖隷三方原病院の金谷節子先生が提唱された嚥下食ピラミッドです.当時は金谷節子先生主催の勉強会も開催され,多くの医療関係者が参加し学んでいました.
 筆者らは,嚥下食ピラミッドのレシピを再現して物性測定を行い,2006年には論文にまとめました.また,そのデータを用いて医歯薬出版から『嚥下食ピラミッドによる嚥下食レシピ125』を2007年に発刊し,大変好評を博しました.その後,系統立った嚥下調整食の分類は,2013年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した嚥下調整食分類(学会分類)に引き継がれ,2021年に一部改訂が行われました.現在,医療現場では学会分類を使用することが多くなっていることから,本書を発刊することとなりました.嚥下調整食の作成での悩みは多いと思いますが,本書がその一助になれば幸甚です.
 本書作成にあたり,ご協力いただいた調理師の宮城島宏先生,在川一平先生,辻秀治先生に感謝いたします.また,出版まで多大なサポートをいただきました,医歯薬出版の斎藤絵里子さん,綾野泰子さんに感謝いたします.
 2023年8月吉日
 栢下 淳,江頭文江
1 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021
 (栢下 淳)
 1 概説・総論
  物性測定値の非表示と形態の日本語表記
  段階数
  既存の分類との対照
  コード番号と名称,選択方法
 2 各コードの食形態の特徴
  コード0j(嚥下訓練食品0j)
  コード0t(嚥下訓練食品0t)
  コード1j(嚥下調整食1j)
  コード2(嚥下調整食2)(コード2-1およびコード2-2)
  コード3(嚥下調整食3)
  コード4(嚥下調整食4)
 3 学会分類2021(食事)のコード番号が重症度に適合しない主な病態
 4 学会分類2021(食事)における液体へのとろみ付けの考え方
 5 とろみについて
2 嚥下調整食コード別調理のポイント
 (江頭文江)
 1 コード0j
  飲料
  ゲル化剤
  離水
  スライス状
  調理の手順
 2 コード0t
  飲料
  とろみ調整食品
 3 コード1j
  飲料や食品
  ゲル化剤
  離水
  調理の手順
 4 コード2(2-1,2-2)
  飲料や食品
  とろみ調整食品やゲル化剤
  調理の手順
  加水して調理する場合
  加水ゼロで調理する場合
 5 コード3
  調理法(1) 舌で押しつぶせるくらいやわらかくする
  調理法(2) ゲル化剤を使って再成型する
 6 コード4
  咀嚼や嚥下機能の低下に対し,注意しなければならない食品
  食べやすくするための調理の工夫
 7 嚥下調整食調理の運用
3 嚥下調整食の歴史と変遷
 (藤島一郎)
 1 はじめての嚥下食―救命プリン
 2 嚥下食の系統的な解説
 3 嚥下食という用語について
 4 とろみについて
 5 おわりに
4 対象患者別の嚥下調整食の適応
 (仙田直之)
 1 学会分類2021
 2 先行期に問題がある人の食形態
 3 準備期に問題がある人の食形態
  咀嚼運動
  食塊形成(食塊の形状調整能力)
  食塊の口腔保持能力
 4 口腔期に問題がある人の食形態
 5 咽頭期に問題がある人の食形態
  嚥下のタイミング
  嚥下時の気道閉鎖
  嚥下時の食道入口部の開大
  嚥下時の咽頭の駆出力
 6 食道期に問題がある人の食形態
5 嚥下調整食の臨床的有用性
 (前田圭介)
 1 嚥下調整食の栄養価に配慮
 2 嚥下調整食のsip feedingの効果
 3 嚥下調整食を用いた専門的介入
6 嚥下調整食対象者の栄養状態
 (清水昭雄)
 1 嚥下調整食対象者と低栄養状態
 2 嚥下調整食が低栄養状態およびサルコペニアを招く原因
  嚥下調整食が栄養素摂取に及ぼす影響
  嚥下調整食が食欲に及ぼす影響
  嚥下調整食の栄養密度低下
 3 質の高い嚥下調整食提供のための教育的介入
7 摂食嚥下障害者に対する栄養管理
 (西岡心大)
 1 摂食嚥下障害と低栄養
 2 摂食嚥下障害者に対する栄養評価
 3 長期・短期目標と必要栄養量の算出
 4 栄養管理ルートおよび栄養プランニング
8 在宅介護者に嚥下調整食を指導する際のポイント
 (江頭文江)
 1 むずかしくないというイメージを与える
 2 時短で効率よくつくる
 3 摂食嚥下機能と食物物性を理解する
 4 コツを伝える
 5 献立作成のポイント
 6 市販食品や経口的栄養補助(ONS)を活用する
9 市販食品の利用―在宅での低栄養の予防
 (栢下淳子)
 1 栄養補助食品
  食形態
  利用方法
 2 一般の市販栄養強化食品の嚥下調整食への活用
  たんぱく質強化型商品
10 学会分類とIDDSIの互換性
 (中尾真理)
 1 IDDSI開発の経緯
 2 IDDSIフレームワークver2.0
 3 学会分類とIDDSIフレームワークの相違点
 4 学会分類2021とIDDSIフレームワークver2.0の互換マップ案
11 摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士
 (渡邉啓子)
嚥下調整食レシピ
 コード分類の方法(栢下 淳)
 コード0j
  みかんゼリー
  りんごゼリー
  ほうじ茶ゼリー
  イオンゼリー
  コーヒーゼリー
 コード0t
  ほうじ茶とろみ
  紅茶とろみ
  りんごジュースとろみ
  イオン飲料とろみ
  コンソメスープとろみ
 コード1j
  酵素入り全粥ゼリー
  全卵蒸し
  なめらか豆腐
  ほうれんそう
  だいこんの煮もの
  にんじんのグラッセ
 コード2-1
  酵素入り全粥
  えびしんじょ
  豚しゃぶ
  さばのみそ煮
  けんちん汁
  かぼちゃのポタージュスープ
  だいこんの煮もの
  かぼちゃの煮もの
  なすのごま酢和え
  麩の煮付け
  ほうれんそうのバターソテー
  揚げなすのお浸し
  ブロッコリーのみそマヨ和え
  かぶの含め煮
  りんごのコンポート
  ピーチコンポート
 コード2-2
  ツナのたまご焼き
  スクランブルエッグ
  豚しゃぶ
  ビーフシチュー
  鶏の甘酢炒め
  煮込みハンバーグ
  豆腐ハンバーグ
  さばのみそ煮
  コールスローサラダ
  ポテトサラダ
  ほうれんそうの和風サラダ
  フルーツヨーグルト
  こまつなの卵とじ
  だいこんの炊き合わせ
  ピーマンの煮浸し
  とろろ汁
 コード3
  いも粥
  シーフードチーズリゾット
  やわらかおはぎ
  だし巻き卵
  アボカドのスクランブルエッグ
  とんかつ煮
  鶏団子のおろしあん
  豚しゃぶ
  豚の角煮
  豆腐の卵とじ
  挽きわり納豆
  アボカド納豆
  サーモンのムース
  白身魚のムース
  えびのムース
  まぐろのたたき
  さばのみそ煮
  さけの塩焼き
  白和え
  ひじきの白和え
  なのはなの白和え
  昆布巻き
  マッシュポテト
  さつまいものクリーム煮
  さつまいものりんご煮
  れんこんつくね
  かぼちゃゼリー
  そらまめのマッシュ
  かぶの含め煮
  はくさいのスープ煮
  こんにゃくの田楽
  こんにゃくのピーナッツ和え
  ラタトゥイユ
  かぶのソテー
  ピーマンの煮浸し
  きんぴらごぼう
  ねぎぬた
  塩キャベツ
  レタスのサラダ
  ひじき煮
  なすのごま酢和え
  揚げなすのお浸し
  ほうれんそうのごま和え
  なめらか蒸しパン
  ココアカステラ
  焼きバナナ
  りんごのコンポート
 コード4
  フレンチトースト
  けんちん汁
  鶏のれんこんつくね
  豚のしょうが焼き
  煮込みハンバーグ
  鶏つくね
  肉団子
  豚しゃぶ
  五目豆煮
  えびしんじょ
  からすがれいの煮付け
  さけのみそマヨネーズ焼き
  うなぎの蒲焼き(皮なし)
  いわしつみれ
  はんぺんのふわふわ煮
  ブロッコリーのみそマヨ和え
  だいこんの炊き合わせ
  にんじんのグラッセ
  かぼちゃのいとこ煮
  れんこんつくね
  じゃがいもの煮付け
  かぼちゃの含め煮
  根菜のごま煮
  マッシュポテト
  ながいものたらこ和え
  湯むきトマト
  バナナ
  フルーツヨーグルト