やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯科衛生士という職業は昭和二十三年,歯科疾患予防の専門家として誕生しました.この仕事は,人の口腔を一生涯ケアする仕事です.地域歯科保健事業として,マタニティー教室に通う妊産婦さんへの指導から,乳幼児健診,学校歯科保健の授業,住民検診,介護教室などさまざまな公衆衛生の場で相談や指導をします.介護を受けている方への訪問口腔ケアでは,亡くなる前日まで口腔ケアをさせていただくこともあります.
 人生の最後まで,美味しく食べて,楽しく会話し,笑って過ごせる口を持ち続けられれば幸せだと思いませんか.そのためには歯や口腔の健康が欠かせません.けれども,ほとんどの日本人の方が毎日歯磨きをしているにもかかわらず虫歯や歯周病になり,歯科医院に通いながらも歯を失っているのが現実です.
 しかし昨今,「歯を削ったり抜いたりの治療ではなく,積極的に歯を守る仕事をしたい」という思想の歯科医院が増えつつあります.ホームドクターとして定期検診をし,早期発見・早期治療をさらに前進させた,早期予防という考えを実践しているのです.そこでは必ず,歯科衛生士が患者さんの支援をしています.ブラッシング指導,フッ化物塗布,歯石除去はもちろん,食事をはじめ日常生活をアドヴァイスしているのです.生活習慣病として位置づけられる虫歯や歯周病が蔓延している現代社会では,生活全般の指導抜きでは予防や治療が成り立たないからです.今後,かかりつけの歯科医師と歯科衛生士をもち,健康な口腔状態を保つ,賢い患者さん(クライアント)が増えることを願っています.
 この本は,四国新聞に連載した記事「イラストで見る介護の知恵」(二〇〇一年)と「笑って暮らす実践,歯,は,Ha」(二〇〇二年)に加筆・修正を施したものです.内容は前もって決めていたものではなく,読者の方からの質問や意見に答える形で連載しました.お便りの多くが歯科医院に通院中の方々からのもので,患者さんと歯科医院とのコミュニケーションの難しさを痛感しました.どちらにとっても残念なことです.この本が,患者さんと歯科医院の架け橋になれば幸いです.
 最後に,山下和彦さん(四国新聞社),牧潤さん(イラストレーター),大矢貴之さん(香川県歯科技術専門学校技工科一年生),医歯薬出版の皆様には大変お世話になりました.心より感謝申し上げます.
 平成十七年一月
 本田里恵
はじめに
(1)歯や口について 知っておいてほしいこと
 1●歯のお値段は?・28本で1億4千万円にも
 2●なぜ歯を磨く?・水に溶けない難敵を退治する
 3●ブラッシングの時間・1日1回,5分以上の時間をかけて
 4●歯ブラシ・毛先が開いたら早めに交換
 5●歯磨剤・効果を見極めて選ぼう
 6●糸ようじを上手に・汚れを引っかく要領で
 7●歯間ブラシ・根元の隙間清掃に有効
 8●電動歯ブラシの使い方・軽く当て,毛先を確実に歯面に届かせる
 9●な・き・た・い・わ・普段から検診を怠りなく
 10●唾液の効力・発がん性物質を撃退
 11●噛むことの重要性・生き生きと脳を活性化
 12●真の豊かさとは・口の健康が保ててこそ
 13●健康な歯でいるために・かかりつけの歯科医院をもとう
(2)歯周病・虫歯・その他
 1●歯肉炎の症状・健康な歯ぐきは薄ピンク
 2●歯周炎の症状・35歳は歯ぐきの曲がり角
 3●歯周炎の治療・歯科医院と「二人三脚」で
 4●歯周炎の異なる治療方針・歯周炎の原因は2つ
 5●効果的なブラッシング・ていねいにじっくりが基本
 6●歯周炎の治療・食生活を見直し抵抗力をつける
 7●口臭を防ぐ・予防には食間のティータイムもお勧め
 8●口臭の原因・口の中の原因以外に4タイプ
 9●虫歯の進行度(上)・C2でやっと自覚症状
 10●虫歯の進行度(下)・重度の場合の治療には根気が必要
 11●象牙質知覚過敏症・しみればお口の黄信号
 12●白く美しく見せる・磨きすぎて濁ることも
 13●たばこで黒ずむ?・本数が多いほど悪影響
 14●歯ぎしりを防ぐ・緊張をほぐす体操も効果的
 15●顎の関節がおかしい・正しく噛む習慣をつける
 16●親知らずは抜く,抜かない?・状態により異なる対応
 17●歯を抜く場合・放置すれば周囲に影響する
(3)育児と子どもの歯と口
 1●妊婦と口腔衛生・胎児のためにも清潔に
 2●赤ちゃんのお口・母乳育児で自然な味覚
 3●乳児期のしつけ・よく噛み上唇を鍛える
 4●仕上げ磨きのすすめ・六歳臼歯がそろうまで
 5●楽しくブラッシング・遊び感覚も取り入れて
 6●六歳臼歯の重要性・最初に生える「歯の王様」
 7●虫歯予防としつけ・5セットを習慣にする
 8●夏休みの過ごし方・糖分を控えて健康的に
 9●歯が溶ける・酸性度の高い飲みものに注意
 10●清涼飲料水を科学する・こんなに甘い缶の中身
 11●歯が折れた!・早期処置で復元も可能
 12●お口は閉じて・乾燥していると頑固な汚れに
(4)入れ歯・高齢者・介護
 1●抜いた分の歯を補う・ぐらつく前に早期対応
 2●部分入れ歯の手入れ・水と入れ歯用ブラシで毎日洗う
 3●インプラント治療・しっかりと美しく固定
 4●総入れ歯に慣れる・本を読んだり歌を歌うのも効果的
 5●入れ歯ライフ・清潔にしておしゃれに
 6●ブラッシングの便利グッズ・確実にプラークを取り除くことが大切
 7●口の汚れから肺炎に・食べていなくても清潔に
 8●入れ歯を使いこなす・義歯安定剤は応急処置用
 9●お口を清潔に・口臭も消え,食事もすすむ
 10●上手に食べてもらう・楽しみながら確実に
 11●困った現象・味がわからない,ヨダレが止まらない
 12●入れ歯の紛失・名前を入れることもできる
あとがき
参考図書