やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯内治療学は歯の硬組織,歯髄および根尖歯周組織に対する疾病の予防および治療を考究する学問です.歯内疾患の多くは,齲蝕,あるいは外傷に継発する感染症であるため,細菌学,ならびに免疫学に関する知識を身につけることが病態を深く理解するうえで大切です.現代の超高齢社会において,口腔内の感染巣をコントロールすることは,歯科医師に求められる重要な社会的ニーズであり,歯内治療の有する大きな意義の1つとなっています.
 臨床実習の現場において,歯内治療の印象を学生に尋ねると“見えない部位の治療で難しい”という意見をよく聞きます.たしかに根管,特に根尖付近を直視しながら治療することは困難な場合が多いのですが,近年では歯科用コーンビームCT(CBCT),あるいは実体顕微鏡(マイクロスコープ)の応用が広がり,診断と治療の確実性が格段に向上しています.CBCTやマイクロスコープを適切に応用することが臨床現場では必須となっており,歯科医師国家試験の臨床実地問題ではそれらの画像を読み取る力が試されます.
 本書は,主に歯科医師国家試験ならびに共用試験歯学系CBTの受験を控えた学生を対象としたもので,歯内治療学を学習していくうえでの導入的役割を担ういわゆる“まとめ本“です.歯内治療学では歯と根管の形態を把握・イメージできることが大切であるため,他のパーフェクトマスターシリーズと同様にイラスト・画像の充実をはかっています.特に,国家試験問題の画像をできるだけ多く掲載し,本書内容と過去問題の関連性が明確になるように工夫しました.また,言葉の丸暗記とならないように,原因や根拠の説明を可能な限り付け加えてあります.“まとめ本”としての不足部分は学生諸君の書き込みで補い,独自の“まとめ本”として育て上げてください.本書が未来の歯科界を担う皆さんのお役に立てることを願っています.
 2022年8月 執筆者一同
Chapter 1 歯の構造と形態異常(歯内疾患と関連が深いもの)
Chapter 2 歯内治療における診査・検査法
Chapter 3 歯髄疾患
Chapter 4 歯髄保存療法
Chapter 5 生活断髄法と抜髄法
Chapter 6 根尖性歯周疾患
Chapter 7 根管処置
Chapter 8 根管充填
Chapter 9 外科的歯内治療
Chapter 10 根未完成歯の歯内治療
Chapter 11 歯内治療における安全対策
Chapter 12 マイクロスコープ(歯科用実体顕微鏡)
Chapter 13 歯内-歯周疾患
Chapter 14 外傷歯の診断と処置
Chapter 15 歯の病的吸収
 付録 歯内疾患まとめ
 文献
 索引