やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 歯科医療ではきわめて多種類の材料を駆使して歯の欠損などを補い,口腔機能の回復を図る側面が存在する.それ以外でも,短期的・長期的に口腔内外で材料が応用される.これに使用される材料・機器の理論と応用に関する学問が歯科理工学とされ,その範囲は金属,高分子,セラミックス,複合材料ときわめて多岐にわたる.
 歯科医療に応用される材料の大部分は歯科理工学で取り扱う項目に含まれており,このことが基礎科目でありながら歯科理工学が臨床科目に近い性格を有している所以である.しかし,多くの歯科医学教育機関においては,歯科理工学の履修時期は低学年であることが多く,臨床科目を履修する前に教育が終了しているのが現実である.したがって,歯科理工学を苦手とする歯科学生が多いように思う.同時に,幅広い分野構成であることも特徴的であり,歯科医師国家試験出題基準においても「歯科材料と歯科医療機器」として独立した領域となっている.近年の出題傾向を見ても,臨床科目との関連性を深く理解することが求められている.
 旧来から歯科理工学教育は「鋳造加工技術」を中心としてきた.しかし,わが国の疾病構造ならびに社会情勢や患者ニーズの変化を背景として,接着技術やデジタル加工技術の著しい進歩とともに,歯科材料のニーズも金属材料からセラミックスや高分子材料へとシフトしつつある.歯科医師国家試験出題基準の改訂ごとに,新しい材料や技術が追加されていることからも,本書ではそれらに準拠した内容になっている.
 本書が,歯科学生の卒前教育の教材として幅広く活用され,歯科理工学ならびに関連の臨床科目への理解が深まる一助となれば筆者の喜びとするところである.
 2023年4月
 服部雅之
Chapter 1 生体材料の科学
Chapter 2 診療用器械・器具
Chapter 3 印象用材料
Chapter 4 模型用材料,ワックス
Chapter 5 成形修復・予防填塞・歯内療法用材料
Chapter 6 歯冠修復・義歯用材料
Chapter 7 金属の成形技術・機器
Chapter 8 接着処理・技術
Chapter 9 装着用材料
Chapter 10 歯科矯正用材料
Chapter 11 口腔インプラント,口腔外科,歯周治療用材料
 索引