やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 われわれを取り巻く社会は,めざましい進歩を遂げている.それに伴い,歯科医学の面においても進歩はめざましく,急激な変化をもたらしている.一方,各歯科大学を含めた全国の大学でも社会の新しいニーズに対応すべくカリキュラムの大改革が進行中である.
 また1993年には歯科医師国家試験出題基準が,1994年には歯科教授要綱も改訂された.それらの結果,新しい科目や新たに教育する項目が増加し,そのために定められた教授要綱を教育する十分な時間が減少している.本書はこられの事情を考慮し,できるだけやさしく,しかし内容をおとさず,歯科医師国家試験出題基準や歯科教授要綱をも網羅したテキストにしたいと目指したものである.さらに,歯の組織・発生を理解しやすくするために一般組織学総論や初期発生学を取り入れ,さらに図を多用して理解しやすいように試みた.
 本書は平井五郎先生によって企画されたものであるが,初版の発行がなされる前に惜しくも急逝された.まことに残念であり,哀悼の意を表するしだいである.
 これからも常に時代にあった教科書にすべく努力したいと思っている.ご活用いただきみなさんの率直なご意見をお寄せいただければ幸いである.
 1995年2月 川崎堅三

第3版の序

 実習編のなかの,フッ化物溶液のつくり方実習を,再版にあたって削除した.
 実際に現場では製剤が用いられ,この実習はまったく無意味になっているので,この際,削除することにした.
 1999年1月20日 著者一同
1章 総論……1
 I 歯の構造概要……1
    歯冠と歯根……1
    歯を構成する組織……1
    歯周組織……2
 II 歯の進化……3
    角質歯……3
    真歯……3
    エナメル質の進化……3
    歯と顎骨との関係……3
    顎関節の進化……4
2章 人体発生学概論……5
 I 精子と卵子……5
    生殖子……5
    精子……5
    卵子……6
 II 受精と着床……7
    受精と着床……7
    性の決定……7
    桑実胚と胞胚……7
    二胚葉性胚盤……8
    羊膜腔……9
    卵黄包……11
 III 三胚葉性胚盤の形成……11
    原始線条……11
    中胚葉……11
    脊索前板……12
 IV 外胚葉……13
    神経板……13
    外胚葉性組織……15
    神経堤……15
 V 中胚葉……17
    体節の形成……17
    体節の分化……18
 VI 内胚葉と消化管……18
    原始腸管の形成……20
    口窩……20
    消化器の形成……20
 VII 鰓弓……21
    所在と意義……21
    鰓弓……22
    鰓裂……23
    鰓嚢……23
    鰓裂および鰓嚢の分化……24
    鰓弓の神経支配……24
3章 顔面と口腔の発生……25
 I 一次口腔の形成……25
    上顎突起,下顎突起および鼻前頭突起……25
    鼻窩……25
    上唇の形成……26
    一次口蓋の形成……27
 II 二次口蓋と二次口腔の形成……28
    二次口蓋の形成……28
    下顎骨の発生……28
    二次軟骨……29
    魚類の下顎との比較……31
    上顎骨の発生……31
    顎関節の発生……32
    舌の発生……32
 III 口唇裂と口蓋裂……34
    顔面の形成……34
    口唇裂……34
    口蓋裂……34
    その他の先天異常……34
    先天異常の原因……34
4章 歯の発生……37
 I 歯胚の形成……37
    歯堤と唇溝堤……37
    歯胚……38
 II 蕾状期・帽状期・鐘状期歯胚……38
    歯胚の形態分化……38
    蕾状期歯胚……38
    帽状期歯胚……38
    鐘状期歯胚……40
    鐘状期後期歯胚……41
    歯髄の形成……42
    歯堤の運命……43
 III 歯根の形成……43
    ヘルトヴィッヒの上皮鞘……43
    セメント質の発生……43
    無細胞セメント質と有細胞セメント質……43
    マラッセの上皮遺残……43
5章 エナメル質……47
 I エナメル質の組織学……47
    所在と意義……47
    色と厚さ……47
    物理化学的性状……48
    エナメル小柱……48
    エナメル小柱の横紋……50
    レッチウス条……51
    新産線……51
    周波条……52
    シュレーゲル条……52
    ナールドエナメル質……53
    エナメル叢……53
    エナメル葉……53
    エナメル紡錘……54
    エナメル小皮……54
    エナメル象牙境……55
    年齢的変化……55
 II エナメル質の組織発生……56
    エナメル芽細胞……56
    エナメル芽細胞の生活環……56
    分泌期エナメル芽細胞の構造……57
    トームス突起……57
    成熟期エナメル芽細胞……58
    退縮期エナメル芽細胞……59
    エナメル質の石灰化……59
6章 象牙質と歯髄……61
 I 象牙質の組織学……61
    所在と意義……61
    物理化学的性状……61
    有機性基質……61
    外表象牙質と髄周象牙質……62
    象牙細管……62
    管周象牙質……64
    象牙質の石灰化……64
    球間象牙質……65
    トームスの果粒層……65
    象牙質の成長線……66
    原生象牙質と第二象牙質……69
    修復象牙質……70
    死帯……70
    透明象牙質……70
 II 歯髄……71
    所在と意義……71
    歯髄腔と歯髄……71
    組織学的特徴……71
    歯髄細胞……72
    未分化間葉細胞……72
    リンパ球……72
    組織球……72
    その他の細胞……73
    歯髄表層の構造……73
    歯髄の基質……74
    歯髄の血管……74
    歯髄の神経……75
    歯の知覚……75
    リンパ管……75
7章 セメント質および歯周組織……77
 I セメント質……77
    所在と意義……77
    発生……77
    物理化学的性状……78
    厚さ……78
    無細胞セメント質と有細胞セメント質……79
    セメント芽細胞……80
    セメント細胞……80
    シャーピー線維……81
    セメント象牙境……82
    セメント・エナメル境……82
    過セメント質症……83
 II 歯根膜……83
    所在と意義……83
    組織学的構造……84
    細胞……84
    基質……85
    主線維……86
    血管および神経……87
 III 歯槽骨……88
    所在と意義……88
    発生と部位分類……89
    固有歯槽骨……89
    支持歯槽骨……90
    歯の生理的移動……91
 IV 歯肉……93
    所在と意義……93
    歯肉の部位分類……93
    遊離歯肉……94
    スティップリング……94
    歯間乳頭……94
    歯肉の組織学的特徴……94
    歯肉の線維……95
    歯肉溝……96
    接合上皮……96
    接合上皮の発生……97
    接合上皮の構造……100
    歯肉溝の形成……100
    接合上皮の移動……101
 V 歯の萌出と脱落……103
    萌出の定義……103
    萌出の経過……103
    萌出機構に関する学説……104
    乳歯の脱落……104
    乳歯脱落の経過……104
    歯の萌出時期と順序……106
8章 口腔粘膜,唾液腺および舌……107
 I 口腔粘膜……107
    基本的構造……107
    粘膜上皮……108
    粘膜固有層……108
    粘膜下組織……108
    口腔粘膜の分類……108
 II 唾液腺……110
    唾液腺の種類……110
    終末部の構造……111
    導管系の構造……112
    大唾液腺……112
    耳下腺……112
    顎下腺……113
    舌下腺……114
    小唾液腺……114
 III 舌……115
    機能……115
    構造……115
    舌乳頭……115
    味蕾……117
9章 顎関節……119
    所在と意義……119
    下顎頭……119
    下顎窩……121
    関節円板……121
    関節包……121

和文索引……123
欧文索引……127