やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版の序
 現代の生活習慣病とまでいわれる象牙質知覚過敏症を訴える患者さんが急増しています.昨今の健康ブームなどによる酸性飲食物やサプリメントなどの頻回摂取,あるいは咬合に大きな影響を及ぼしているストレス,高齢化による歯根面の露出などが,知覚過敏の発症,再発や悪化に大きく関与しています.そのため,知覚過敏抑制材を単に塗布するだけでは完治せず,再発するケースも多々見受けられ,症例によっては増悪する場合もあります.
 象牙質知覚過敏の原因除去や再発防止には,さまざまな知覚過敏抑制材の特性を理解し,それぞれの患者さんに最適な材料を適切な方法で使用するだけでなく,患者さんの生活習慣の改善まで踏み込んだ治療が必要です.そのためには患者さんへの教育とホームケアの実施,そして患者さんに接する機会の多い歯科衛生士の協力が不可欠です.つまり,象牙質知覚過敏にはチーム医療で対応することで,知覚過敏抑制材の効果を最大に引き出すことができるといえます.しかし,多くの先生方にとって,そのようなチーム医療としてのアプローチ法については手がかりがほとんどないのが実情ではないかと思います.
 このような状況下で,『象牙質知覚過敏症 第3版(増補) 目からウロコのパーフェクト治療ガイド』を刊行以降(2019年4月),リニューアル製品も含め各社から発売された製品を新たに収載し,また令和2年度診療報酬改定において新規保険収載された「象牙質レジンコーティング」について掲載し,さらにチーム医療としての知覚過敏抑制治療についても新製品を含め充実させ,ここに第4版を上梓するに至りました.
 本書における主な改訂点は以下の通りです.
 1)リニューアルの4製品を含め12製品を追加し,現在容易に入手可能な知覚過敏抑制材をほぼすべて(全38製品)収載しました(第4章).
 2)生活歯における窩洞形成や支台歯形成時に露出する象牙質をボンディングレジンにより即時封鎖し歯髄保護を図る「象牙質レジンコーティング」の基本的考え方と臨床ステップについて新たに掲載しました(第2章).
 3)生活習慣病として捉えた象牙質知覚過敏症に対するチーム医療としての抑制治療について,チェアサイドのマニュアルとしてさらに充実させました.新製品を含めた抑制材の効果的塗布処置法はもちろんのこと,原因除去や再発防止のためのプロフェッショナルケアならびにホームケアなどについての記述をブラッシュアップしました(第6章).
 4)全章にわたって再度見直し,また新たな情報や知見をもとに加筆修正することにより,さらに理解しやすいよう工夫しました.
 本書が,先生ならびに歯科衛生士の皆様のチーム医療において,必ずや明日から役立つチェアサイドの治療ガイドとなるよう心より願っております.
 2024年1月
 編者 冨士谷盛興


刊行にあたって
 超高齢社会の到来のなか,オーラルヘルスプロモーションの浸透による口腔衛生状態の改善,あるいは歯科材料や治療技術の発展などにより,歯の寿命が格段に延びてきました.このように天然歯の保存が進む一方で,Tooth Wear(歯の加齢現象)や根面齲蝕が多くみられるようになってきており,象牙質知覚過敏症を訴える患者さんが急増しています.これは,咬耗や摩耗,あるいは歯肉の退縮による象牙質露出,また,昨今の健康ブームによる酸蝕症やストレス,咬合などが深く関与しています.
 象牙質知覚過敏症への対処には,まず患者教育と生活習慣改善が第一でありますが,症状を訴える患者さんに対し対症療法的に処置しなければならないのも現状です.
 最近,知覚過敏抑制を謳ったさまざまな材料が市場に溢れています.ところが,実際の患者さんを目の前にしたとき,どの材料が最も効果的なのか選択の手がかりとなる情報が少ないのが実情と思います.しかし,知覚過敏の多くは,各材料の作用機序等を理解し適切に使い分けることで,その症状改善がすばやく確実にできるのです.そして,それによって患者さんが不快症状から解放されるのみならず,信頼を獲得することで,患者数増加にもつながると思います.
 本書では,最新の基礎的・臨床的知識を基盤にして,象牙質知覚過敏症の病態,診断,ならびに治療法の基本戦略を解説するとともに,現在臨床で広く用いられている材料の作用機序や使い分け,あるいはそれらを駆使した対応法などについて症状別に情報を提供しています.
 また,第5章では,さらに読者の皆様のより深い理解のために,約10年前になりますが,歯界展望に掲載された象牙質知覚過敏症の生理学,形態学や機序などを中心にまとめた総説論文を再度紹介させていただきました.
 本書が,必ずや先生方の明日からの臨床に役立つ,チェアサイドの治療ガイドとなるよう心より願っております.
 2011年8月
 編者 冨士谷盛興・千田 彰
第1章 理解しておきたい3つの治療戦略
 (冨士谷盛興)
第2章 歯がしみる─こんな場合にはどうする?
 1.咬み合わせの部分がしみる(高見澤俊樹・宮崎真至)
 2.歯を削ってからしみるようになった(冨士谷盛興)
 3.最終の修復処置後にしみるようになった(田上順次)
 4.象牙質レジンコーティングの基本的考え方(二階堂 徹)
 5.ホワイトニング後にしみるようになった(大森かをる)
 6.抜髄したくなるくらい悩ましい象牙質知覚過敏症への対処─究極の知覚過敏対策(冨士谷盛興・千田 彰)
第3章 象牙質知覚過敏症の治療に使えるレーザー
 (篠木 毅)
第4章 この患者さんにはこの材料─作用を知って正しく使おう
 1.シュミテクト シリーズ(冨士谷盛興)
 2.システマハグキプラスS(冨士谷盛興)
 3.おとなのトータルケア歯みがきジェル(内田昌コ)
 4.ウルトライーズ(保坂啓一)
 5.システマセンシティブ ソフトペースト(中嶋省志)
 6.G・U・M Pro'sデンタルジェル センシティブ(高山真一)
 7.G・U・M PROCAREハイパーセンシティブ ペースト 集中ケアタイプ(高山真一)
 8.メルサージュヒスケア(寺田林太郎)
 9.Check-Up rootcare(冨士谷盛興)
 10.Newリカル センシティブ(冨士谷盛興)
 11.グルーマ ディセンシタイザー(宇野 滋)
 12.デセンシー(村岡宏祐・中島啓介)
 13.サホライド 液歯科用38%(福島正義)
 14.Fバニッシュ歯科用5%(荒木久生)
 15.エナメラスト(辻本暁正)
 16.クリンプロ ホワイト バーニッシュF(冨士谷盛興)
 17.ティースメイト ディセンシタイザー(誉田雄司)
 18.ティースメイト APペースト(加藤正治)
 19.アパシールド(加藤正治)
 20.スーパーシール 5秒(内山 茂)
 21.ナノシール(韓 臨麟・興地隆史)
 22.ケアダインシールド(冨士谷盛興)
 23.PRGバリアコート(寺田林太郎)
 24.G-ガード(吉山昌宏)
 25.ハイブリッドコートII(山本 寛)
 26.トクヤマ シールドフォース プラス(高橋英登)
 27.スコッチボンド ユニバーサル プラス アドヒーシブ(冨士谷盛興)
 28.G-プレミオ ボンド(吉川一志)
 29.G2-ボンド ユニバーサル(辻本暁正)
 30.クリアフィル ユニバーサルボンドQuick ER(小城賢一)
 31.クリアフィル メガボンド 2(加藤正治)
 32.BioコートCa(伊藤修一)
 33.フジフィルLCフロー(齋藤季夫)
 34.クリンプロXTバーニッシュ(冨士谷盛興・千田 彰)
 35.フジVII(日野浦 光)
 36.MSコートONE(山本 寛)
 37.MSコートF(鈴木司郎)
 38.MSコートHysブロックジェル(冨士谷盛興)
第5章 象牙質知覚過敏─その生理学,形態学,機序と治療法
 (Charles F.Cox・千田 彰ほか)
第6章 チーム医療としての知覚過敏抑制治療─生活習慣病として捉えよう
 (冨士谷盛興)

 コラム1 象牙質知覚過敏症はなぜ起こる?(向井義晴)
 コラム2 歯がしみるのはすべて象牙質知覚過敏症か?(池田英治)

 索引