やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 大学時代から尊敬する峯 篤史先生(現:大阪大学歯学部附属病院口腔補綴科講師)からの助言とご尽力をいただき,筆者は2011年,ベルギー王国にあるルーベン大学で接着の基礎研究を学びました.1年という短い期間でしたが,臨床家として生きてきた自分にとっては目にするもの何もかもが刺激的で,耳にすること何もかもが新鮮な毎日でした.
 ベルギーからの帰国後,臨床を行うかたわら,学んだことを自分なりにまとめる作業を行っていました.堅苦しい文章にするよりも,実体験に基づいた会話劇である方がわかりやすいと思ってひたすら書き溜めていたところ,当時交際していた女性(後に妻となります)から「少しくらいなら,マンガ描けるよ」という驚きの告白を受け,それならばと会話劇をマンガにしてまとめていく作業を二人で進めていました.今から7,8年前の話です.めでたく彼女と結婚し,白い紙に黒の鉛筆のみでシンプルに描き上げたマンガ「タカシが留学して接着を学ぶ物語」はある程度仕上がったものの特に日の目を見ることなく,しばらくそのままになっていました.
 そのような折,いつも仲良くしてもらっている大学の後輩,石井 圭先生(浜松市開業)が原稿を目にし,「これ,面白いから出版したらいいじゃないですか.医歯薬出版を紹介しますよ」と言ってくれました.石井先生に紹介いただいてからはプロジェクトがどんどん具体的に進んでいきました.妻と二人で白黒で描いてきたマンガ原稿に色が付き,手書きの台詞が文字起こしされ,書籍としての体裁が整っていく作業は,何とも言えない楽しさに満ちていました.
 本書に登場する人物や出来事はフィクションですが,筆者自身が悩んだこと,考えたこと,そのことについてどのように勉強したかということを,できるだけ率直に記しました.これから接着歯学を学ぼうとされる方にとって,少しでも参考になるポイントがあれば心から嬉しく思います.
 末筆ながら,本書の監修をご快諾いただきました二階堂 徹教授に心から感謝申し上げます.引用した論文,専門的な用語,内容の妥当性について細部にわたってご指導,ご助言をいただき,また各章末に素晴らしいコラムをご執筆いただきました.本当にありがとうございました.
 そして,イラストを丁寧に描き上げてくれた妻と,一生懸命色塗りを手伝ってくれた6歳の娘に,渾身の感謝と愛を伝えたいと思います.
 2022年7月 鷲野 崇
第1章 MIとは? CRとは?
第2章 ラバーダムって必要なの?
第3章 タカシの自己紹介
第4章 接着試験をみてみよう
第5章 1ステップ vs 2ステップ
第6章 1ステップができるまでの歴史
第7章 1ステップは取扱注意!?(1)
第8章 1ステップは取扱注意!?(2)
第9章 接着材の温度管理とは?
第10章 接着を勉強する必要性とは?
第11章 リン酸エッチング前処理は必要?
第12章 タカシinワンダーランド
第13章 さよならベルギー
第14章 帰国後の臨床

 索引