やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 約10年前,“やっぱり天然歯にこだわりたい”をコンセプトに,『はじめてのフラップ手術』と銘打った歯界展望別冊を出版しました.たいへんご好評をいただいたのですが,現在では手にとれない状況になっていることを知り,この度,新版として内容を改訂し,発行する運びとなりました.
 2018年を迎えたいま,歯内療法,歯周治療を通して,天然歯へのこだわりがますます重視される時代になっています.母校の卒後研修プログラムでの歯周外科治療のインストラクターや教室の新人研修での歯周外科実習を経験するなかで,基本の大切さを痛感し,フラップ手術をはじめとする歯周外科治療をやってみたいが自信がない方々にできるだけわかりやすく,読みやすい形でテキストブックをまとめたいとあらためて思うようになりました.
 本書は,フラップ手術を始める前に考えておくべきこと,基本的なフラップ手術の術式から,一歩進めて歯周組織再生療法,歯周形成外科の術式までをStep by stepで解説しています.さらに,フラップ手術の臨床での活かし方をそれぞれのお立場で,6名の臨床家の先生方にご執筆いただきました.また,多くの方が悩む根分岐部病変については著者が集まってディスカッションを行い,最後には講演会などでよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました.新たな試みとして,術式の動画を見ていただけるように工夫してみましたので,ぜひご覧になってください.
 全体の方向性を決めたほかは,各世代の著者の個性を活かして書いていただきましたので,繰り返しや書籍としての一貫性の不足があるかもしれません.繰り返しは重要な点として,一貫性に関しては各先生の考え方としてご理解いただければ幸いです.本書が,これからフラップ手術を始めようとする方,それをアシストする方のガイドブックとして,また,もう一歩を踏み出してみたいと思っていらっしゃる方の読み物として幅広く楽しんでいただければ嬉しく思います.
 本のタイトルは『フラップ手術のすすめ』です.『学問のすゝめ』を著した福澤諭吉は,著書の中で学ぶことの大切さを繰り返し述べています.この本が少しでも皆様の歯周外科治療に対する学びの助けになることを願ってやみません.
 たいへんご多忙の中,著者としてご執筆いただいた先生方,内容,価格を含めできるだけ見やすく,手に取りやすいようにとの私の希望に,企画の段階から発刊まで根気よくサポートしていただいた医歯薬出版の皆様に心より御礼申し上げます.
 2018年6月
 編者 中川 種昭
 はじめに
Section 0 フラップ手術を始める前に知っておくこと
 (1)フラップ手術を行う基準と治癒形態を知ろう(中川種昭)
 (2)おさえておきたい解剖学〜歯周組織を三次元的に把握しよう(田中真喜)
 (3)チャートとX線写真から手術部位を診断しよう!(斎田寛之)
 (4)まずSRPができるようになろう(高橋潤一)
 (5)フラップ手術の前に……歯肉の炎症はとれていますか?(巻島由香里)
 (6)全身状態を知ろう(森川 暁)
Section 1 フラップ手術をやってみよう
 (1)器具選択と取り扱いの基本(藤本浩平)
 (2)フラップ手術の基本ステップ(中川種昭)
 (3)フラップ手術のポイント(井原雄一郎)
 (4)術前・術中・術後のケア(中山亮平・中川種昭)
 (5)歯科衛生士がかかわる歯周コントロールとフラップ手術時のアシスタントワーク(橋優子)
 (6)ビギナーが陥りやすいピットフォール(中山亮平・中川種昭)
Section 2 フラップ手術から一歩前進しよう!
 (1)歯周組織再生療法をやってみよう!〜エムドゲイン(R),リグロス(R),GTR法(片山明彦)
 (2)骨移植をやってみよう(片山明彦・斎田寛之)
 (3)歯間乳頭保存フラップ手術(Papilla Preservation Flap Surgery)(北島 一)
Section 3 歯周形成外科にトライしよう!
 歯冠長延長術,遊離歯肉移植術,結合組織移植術,歯槽堤増大術のポイント(井原雄一郎)
Section 4 歯周外科治療を臨床にどう活かすか
 Interview 歯を残す切り札としての歯周外科治療を目指して(二階堂雅彦)
 (1)時間軸(ライフステージ)に配慮した歯周治療計画(北島 一)
 (2)失敗の原因を考えぬく(長谷川嘉昭)
 (3)歯槽骨整形術の臨床的意義(藤本浩平)
 (4)歯周治療のラーニングステージ(吉野宏幸)
 (5)フラップ手術を行う前に考えておきたいこと(斎田寛之)
Section 5 座談会 根分岐部病変〜私はこう考える
 (中川種昭・井原雄一郎・田中真喜・斎田寛之・片山明彦・吉野宏幸)
Section 6 フラップ手術のすすめQ&A
 (吉野敏明)

 Column
  基礎からの手紙 1 臨床医からの疑問にこたえる(1)(井上 孝)
  基礎からの手紙 2 臨床医からの疑問にこたえる(2)(井上 孝)
  基礎からの手紙 3 フラップ手術とナイチンゲール的発想(石原和幸)
  臨床ヒント 1 デンタルX線写真へのこだわり(斎田寛之)
  臨床ヒント 2 歯周外科治療への拡大鏡の応用(吉野宏幸)
  臨床ヒント 3 骨欠損の形態による歯周外科治療の選択(吉野宏幸)