やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 このたび,『臨床家のための口腔疾患診断トレーニングブック』を出版することとなりました.本書は主に研修医,あるいは一般の歯科医院で臨床に従事している若い歯科医師を対象とし,口腔外科的疾患・口腔内科的疾患の診断能力の向上に役立つように企画したものです.
 第1章では口腔病変の診断の進め方として,医療面接のポイント,診断に必要な主な検査法とその見方について,簡単に説明を加えました.
 第2章は,読者の先生方が勤務している一般の歯科医院に,さまざまな症状を主訴として患者さんが来院したことを想定し,症例を提示しました.まず,簡単な病歴と病態写真を提示しています.しばらくこの写真を眺めてください.この時点で,さまざまな疾患名や対応の仕方などが頭に浮かぶと思います.その次のページには病歴や病態写真のなかから鑑別診断に役立つヒントをピックアップしました.この時点で鑑別疾患が少しずつ絞られてくると思います.
 次いで,診断へのプロセス,最初に考えるべき鑑別疾患名,鑑別の要点,最終的な診断などを記載しました.ここで示した疾患は口腔外科的疾患や口腔内科的疾患ですので,先生方が勤務する一般の歯科医院で診断を確定するために必要な検査や治療が困難な症例も含まれます.そこで,患者さんへの疑われる疾患の説明や,必要な検査,想定される治療法,大学病院や総合病院への受診の必要性などの伝え方を最後に加えました.また,診断の根拠となる画像,血液検査,病理像を提示しました.
 今回提示した症例のなかには,読者の先生方がいままで経験したことのない症例・疾患名が多く含まれているものと思います.さまざまな症例に遭遇した場合に,適切に鑑別診断をすすめ,適切に患者さんに対応できるように本書を活用していただきたいと思います.
 最後に,口腔所見に用いられる主な用語をまとめました.カルテ記載や紹介状を記載するときは症状に合致した正確な病態の記載が必要ですので活用してください.
 本書が,研修医や若い先生方の口腔疾患の鑑別診断のためのトレーニングに広く活用され,口腔の医療に貢献することができれば幸いです.
 神部芳則
 自治医科大学 歯科口腔外科学講座
 はじめに
 編著者・執筆者一覧
1章 口腔病変の診断の進め方
2章 口腔疾患診断トレーニング〈症例〉
 1 顔貌が非対称の患者が来院したらどうしますか?((1),(2))
 2 顎下部の腫脹,腫瘤を主訴に患者が来院したらどうしますか?
 3 多発性に頸部リンパ節の腫脹を生じた患者が来院したらどうしますか?
 4 顔面が発赤している患者が来院したらどうしますか?((1),(2))
 5 神経麻痺,知覚の異常を訴えて患者が来院したらどうしますか?((1),(2))
 6 口が開かないと訴える患者が来院したらどうしますか?
 7 口唇の腫脹,発赤を主訴に患者が来院したらどうしますか?
 8 多発性の口内炎を訴えて患者が来院したらどうしますか?
 9 歯肉からの出血を主訴に患者が来院したらどうしますか?
 10 歯肉の腫脹,腫瘤を訴えて患者が来院したらどうしますか?
 11 歯肉の紅斑やびらんを訴えて患者が来院したらどうしますか?
 12 歯肉に壊死,潰瘍を伴った患者が来院したらどうしますか?
 13 歯肉,粘膜の色の変化を主訴に患者が来院したらどうしますか?
 14 舌の痛みと平滑舌を呈する患者が来院したらどうしますか?
 15 舌の腫脹,腫瘤を訴えて患者が来院したらどうしますか?
 16 口腔粘膜の白色病変を訴えて患者が来院したらどうしますか?
 17 口唇粘膜の紅斑と痛みを訴えて患者が来院したらどうしますか?
 18 広範囲な口腔粘膜のびらんを訴えて患者が来院したらどうしますか?
 19 口底部の腫脹を訴えて患者が来院したらどうしますか?
 20 口蓋の腫脹を訴えて患者が来院したらどうしますか?

 付録:口腔所見に用いられる主な用語集