はじめに
■顎関節症ってどんな病気でしょうか?
まず,この質問からお答えします.顎関節症は,顎の関節や周囲の筋に変調が生じたために,顎の動きが悪くなったり,傷んだりする病気です.
■どうして起こるのですか?
いくつかの誘因が複合して起こります.たとえば,口の使い方や動かし方の癖,姿勢の悪さ,疲労やストレスの蓄積などが重なると,知らず知らずのうちに顎の関節や周囲の筋に負担がかかり,変調が生じて起こるのです.
■それでは生活習慣病ですか?
そうです.「ぎっくり腰」などと同じく典型的な生活習慣病です.
■では治すのは大変ですね?
検査をして病状を確認した後,カウンセリングをしながら顎の関節や周囲の筋に変調を起こしそうな誘因を探し出し,それらを一つずつ取り除いていきます.
たとえば,顎の関節や周囲の筋に負担をかけている癖があればそれを意識するようにし,顎の動きが不安定なら食事を奥歯でゆっくり噛んで食べる習慣をつける,姿勢が悪ければ背をまっすぐにする,疲労やストレスはできるだけ溜めないようにする,などができればよいのです.
こうして患者さんの約8割は,3カ月から6カ月で症状が軽快します.しかし具体的な誘因が探せなかったり,探してもそれが取り除けないときには,症状が軽快しないこともあります.
■どうしてカウンセリングで治るのですか?
顎関節症の患者さんの多くは軽症で,いつの間にか治ったり,あるいは再発したりを経験しています.何かのきっかけで誘因の一つか二つかが解消すれば,顎の調子も上向きになるのでしょう.
対話を通じて患者さんを勇気づけ,複合した誘因を探し出して一つずつ取り除くことが顎のリハビリになり,自然治癒を促していると考えられます.カウンセリングを繰り返しているうちに,患者さんは顎や周囲の筋と上手に付き合う方法を身に付けていくのです.
私たち医療者は,患者さんから多くのことを教わります.顎関節症に対する私たちのカウンセリングは,患者さんから話を聞き,患者さんを励まし勇気付けているうちにできあがってきたのです.これまで付き合ってくださった多くの患者さんに感謝します.
2004年3月1日
伊藤学而
■顎関節症ってどんな病気でしょうか?
まず,この質問からお答えします.顎関節症は,顎の関節や周囲の筋に変調が生じたために,顎の動きが悪くなったり,傷んだりする病気です.
■どうして起こるのですか?
いくつかの誘因が複合して起こります.たとえば,口の使い方や動かし方の癖,姿勢の悪さ,疲労やストレスの蓄積などが重なると,知らず知らずのうちに顎の関節や周囲の筋に負担がかかり,変調が生じて起こるのです.
■それでは生活習慣病ですか?
そうです.「ぎっくり腰」などと同じく典型的な生活習慣病です.
■では治すのは大変ですね?
検査をして病状を確認した後,カウンセリングをしながら顎の関節や周囲の筋に変調を起こしそうな誘因を探し出し,それらを一つずつ取り除いていきます.
たとえば,顎の関節や周囲の筋に負担をかけている癖があればそれを意識するようにし,顎の動きが不安定なら食事を奥歯でゆっくり噛んで食べる習慣をつける,姿勢が悪ければ背をまっすぐにする,疲労やストレスはできるだけ溜めないようにする,などができればよいのです.
こうして患者さんの約8割は,3カ月から6カ月で症状が軽快します.しかし具体的な誘因が探せなかったり,探してもそれが取り除けないときには,症状が軽快しないこともあります.
■どうしてカウンセリングで治るのですか?
顎関節症の患者さんの多くは軽症で,いつの間にか治ったり,あるいは再発したりを経験しています.何かのきっかけで誘因の一つか二つかが解消すれば,顎の調子も上向きになるのでしょう.
対話を通じて患者さんを勇気づけ,複合した誘因を探し出して一つずつ取り除くことが顎のリハビリになり,自然治癒を促していると考えられます.カウンセリングを繰り返しているうちに,患者さんは顎や周囲の筋と上手に付き合う方法を身に付けていくのです.
私たち医療者は,患者さんから多くのことを教わります.顎関節症に対する私たちのカウンセリングは,患者さんから話を聞き,患者さんを励まし勇気付けているうちにできあがってきたのです.これまで付き合ってくださった多くの患者さんに感謝します.
2004年3月1日
伊藤学而
カウンセリングで治す顎関節症 もくじ
1 顎関節症はどんな病気 伊藤学而
主症状で名づけられた症候群
顎関節の構造と関連筋
顎関節症の症状
1)主要症候
2)その他の症状
顎関節症の分類
1)顎関節症の症型分類
2)障害部位による顎関節症の分類
顎関節症の病態
1)顎関節の障害
2)筋の障害
顎関節症の罹患状況
1)顎関節症の患者さんの罹患状況
2)一般集団の罹患状況
3)顎関節症症状の自然経過
顎関節症の誘因
1)顎運動システムの脆弱さ
2)口腔習癖
3)不良姿勢
4)咬合因子
5)心理と行動因子
6)全身の疾患
7)その他
顎関節症の発症仮説
1)Parkerの仮説モデル
2)DeBoeverとCarlssonの仮説モデル
3)私たちの仮説モデル
2 顎関節症の患者さんの心とからだ身体 梶原和美
顎関節症における心身相関
顎関節症の患者さんの心
1)顎関節症になりやすいパーソナリティ
2)顎関節症と心理社会的ストレス
3)ストレスマネジメントとしてのカウンセリング療法
身体への心理学的アプローチ
1)自己コントロールと身体
2)「むずかしい」患者さんの心的構えと身体
3)臨床動作法
おわりに
3 顎関節症のカウンセリング療法 伊藤学而
なぜカウンセリング療法か
初診時の対応
1)主訴,現症,現病歴の確認
2)顎関節症と予後の一般的な説明
3)症状を悪化させないための一般的注意
4)診査と検査の予約
顎関節症の診査・検査
カウンセリング療法の進め方
1)顎関節と筋の病態の説明 48 2)誘因を一つずつ取り除く
3)定期的な通院
4 症例と治療経過 永田順子
比較的短い期間で軽快した症例
●学童期症例
●思春期症例
●成人症例
やや長い期間を経て軽快した症例
●思春期症例
●成人症例
長期間の通院を要した難治症例
●思春期症例
●成人症例
その他の症例
5 カウンセリング療法の背景 黒江和斗
はじめに
咀嚼器官の発達に関する研究
1.噛むことと顎骨,顎関節,咀嚼筋,唾液腺の発達
2.噛むことと筋機能の発達
3.人口哺乳の影響
4.噛むことと臼歯の咬耗
ストレスと歯ぎしり
顎関節症の誘因と病態に関する研究
1.顎関節症の誘因
2.顎関節症患者の関節円板と顎関節の形態
カウンセリング療法の効果
1.カウンセリング療法の効果
2.カウンセリング療法の治療成績
カウンセリング療法の背景にある当教室の研究の紹介
索引
1 顎関節症はどんな病気 伊藤学而
主症状で名づけられた症候群
顎関節の構造と関連筋
顎関節症の症状
1)主要症候
2)その他の症状
顎関節症の分類
1)顎関節症の症型分類
2)障害部位による顎関節症の分類
顎関節症の病態
1)顎関節の障害
2)筋の障害
顎関節症の罹患状況
1)顎関節症の患者さんの罹患状況
2)一般集団の罹患状況
3)顎関節症症状の自然経過
顎関節症の誘因
1)顎運動システムの脆弱さ
2)口腔習癖
3)不良姿勢
4)咬合因子
5)心理と行動因子
6)全身の疾患
7)その他
顎関節症の発症仮説
1)Parkerの仮説モデル
2)DeBoeverとCarlssonの仮説モデル
3)私たちの仮説モデル
2 顎関節症の患者さんの心とからだ身体 梶原和美
顎関節症における心身相関
顎関節症の患者さんの心
1)顎関節症になりやすいパーソナリティ
2)顎関節症と心理社会的ストレス
3)ストレスマネジメントとしてのカウンセリング療法
身体への心理学的アプローチ
1)自己コントロールと身体
2)「むずかしい」患者さんの心的構えと身体
3)臨床動作法
おわりに
3 顎関節症のカウンセリング療法 伊藤学而
なぜカウンセリング療法か
初診時の対応
1)主訴,現症,現病歴の確認
2)顎関節症と予後の一般的な説明
3)症状を悪化させないための一般的注意
4)診査と検査の予約
顎関節症の診査・検査
カウンセリング療法の進め方
1)顎関節と筋の病態の説明 48 2)誘因を一つずつ取り除く
3)定期的な通院
4 症例と治療経過 永田順子
比較的短い期間で軽快した症例
●学童期症例
●思春期症例
●成人症例
やや長い期間を経て軽快した症例
●思春期症例
●成人症例
長期間の通院を要した難治症例
●思春期症例
●成人症例
その他の症例
5 カウンセリング療法の背景 黒江和斗
はじめに
咀嚼器官の発達に関する研究
1.噛むことと顎骨,顎関節,咀嚼筋,唾液腺の発達
2.噛むことと筋機能の発達
3.人口哺乳の影響
4.噛むことと臼歯の咬耗
ストレスと歯ぎしり
顎関節症の誘因と病態に関する研究
1.顎関節症の誘因
2.顎関節症患者の関節円板と顎関節の形態
カウンセリング療法の効果
1.カウンセリング療法の効果
2.カウンセリング療法の治療成績
カウンセリング療法の背景にある当教室の研究の紹介
索引