やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文

 「関係法規」は,「歯科技工士法」が歯科技工士の資格および業務を明確にし,歯科技工業務の適正な運用と歯科医療の普及向上を目的として制定された趣旨にかんがみて,歯科技工士が歯科技工士法とその関連法規の理解を深め,これを積極的に守る態度を養うために設けられた科目である.
 近年,医事紛争の増加や各種医療関係職の新設などにともない,法知識の必要性と法を守る態度の重要性が再認識され,医療関係者養成における法学教育を拡充すべき旨の提言がなされている.先般の看護婦学校養成所のカリキュラム改定において,従来の「衛生法規15時間」を「関係法規30時間」と改めたのも,そうした動きの一つである.このような動向をみるとき,歯科技工士教育が早くから「関係法規」を必修とし,これを歯科技工士試験科目に加えてきたことは,将来を見越した先導的試行であったと評価できよう.
 本書は「歯科技工士養成所教授要綱」に基づき,歯科技工士法を中心に,それに歯科技工士に必要な諸種の法規を加えて体系化した.その内容は,新しい時代の要請にこたえるために,最新の資料と情報に基づき,基礎的な法理論と実務的な細目規定とを有機的に結合させて編集した.初学者でも短時間で効率よく学習できるよう,教科内容を構造的に構成することにつとめ,図表も入れて,その中に簡にして要をえた内容をもり込むようにした.法規の理解は正確でなければならず,そのためには学習の過程で常にその根拠規定を参照することが望ましい.本書では,各規定を参照しやすいように,文章の末尾ごとにその参照条項をカッコ書きで挿入するとともに,歯科技工士法および附属法令を付録として巻末に掲げた.この付録は,歯科技工士法・同法施行令・同法施行規則・歯科技工士学校養成所指定規則を,その体系を保持しつつ一覧できるように,レイアウトを工夫して編集した.
 なお,従前の教本においては「歯科技工制度の沿革」や「国民衛生と歯科医療の概況」などについても述べていたが,本科目の性質を考慮し,また内容を精選する方針に基づいて,その一部を「歯科技工学概論」に移したほかは削除することにした.
 本書が,学生諸君のテキストとして,あるいはまた,すでに業務に従事しておられる歯科技工士の方々の参考書として,ご活用いただければ幸いである.
 1994年9月20日 菅野耕毅 三井男也
I編 法と衛生行政
 1 法の概念と体系
  1.法の概念
  2.法の分類
  3.法の形式
  チェックポイント
 2 衛生行政の意義と体系
  1.衛生行政
  2.衛生行政の体系
  チェックポイント
 3 衛生行政の組織
  1.厚生省
  2.都道府県・市町村
  3.保健所・市町村保健センター
  チェックポイント
 4 衛生行政の財政と活動
  1.衛生行政の財政
  2.保健所の活動
  3.地方衛生研究所の活動
  4.市町村の活動
  チェックポイント
II編 歯科技工士法
 5 歯科技工士法総説
  1.歯科技工制度の沿革と本法制定
  2.歯科技工士法および附属法令
  3.歯科技工士法改正の経過
  4.歯科技工関係用語の定義
  チェックポイント
 6 歯科技工士免許
  1.免許の要件と方式
  2.歯科技工士名簿
  3.免許証
  4.免許取消と業務停止
  5.聴聞と弁明
  6.業務従事者届
  チェックポイント
 7 歯科技工士試験
  1.試験の目的と内容
  2.試験の実施
  3.受験資格と手続
  4.合格証書と合格証明書
  5.不正行為の禁止
  チェックポイント
 8 歯科技工業務
  1.禁止行為〔業務の独占〕
  2.歯科技工指示書
  3.業務上の注意〔業務範囲〕
  チェックポイント
 9 歯科技工所
  1.歯科技工所の届出
  2.歯科技工所の管理者
  3.改善命令と使用禁止
  4.報告の徴収と立入検査
  5.広告の制限
  チェックポイント
 10 歯科技工士法の罰則・附則等
  1.歯科技工士法の罰則等
  2.歯科技工士法の附則
  3.歯科技工関係の願・申請・届出
  チェックポイント

III編 その他の関係法規
 11 歯科医療関係者法
  1.歯科医療関係者法の意義
  2.歯科医師法
  3.歯科衛生士法
  チェックポイント
 12 一般医療関係者法
  1.医療関係者法の意義
  2.医師・薬剤師の法
   1.医師法
   2.薬剤師法
  3.保健・助産・看護・診療補助者の法
   1.保健婦助産婦看護婦法
   2.救急救命士法
  4.放射線・検査・臨床工学技術者の法
   1.診療放射線技師法
   2.臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律
   3.臨床工学技士法
  5.リハビリテーション技術者の法
   1.理学療法士及び作業療法士法
   2.視能訓練士法
   3.言語聴覚士法
   4.義肢装具士法
  チェックポイント
 13 医療衛生関係法
  1.医療法
  2.薬事衛生法規
   1.薬事法
   2.麻薬及び向精神薬取締法
   3.あへん法
   4.大麻取締法
  3.保健衛生法規
   1.地域保健法
   2.母子保健法
   3.老人保健法
  4.予防衛生法規
   1.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
   2.予防接種法
   3.結核予防法
  チェックポイント
 14 社会保障関係法
  1.医療保障と社会保障関係法
  2.医療保険関係法
   1.健康保険法
   2.国民健康保険法
  3.公費医療関係法
  4.社会福祉関係法
   1.生活保護法
   2.児童福祉法
   3.身体障害者福祉法
   4.知的障害者福祉法
  チェックポイント

〔付録〕歯科技工士法および附属法令
参考図書
講義の進め方目安例
さくいん