やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序

 本書の第1版第1刷が,1987年3月に上梓されて以来,12年目を迎えた.第1版第13刷を目前にして,著者らが本書を基本に,解剖・組織学を講じ,また実習の伴侶としてきた体験を自省した結果,つぎのような理由で改訂に踏み切った.
 1)「解剖学用語改訂12版」は,本書初版刊行の半年後に,初めて組織学・発生学用語を一般解剖学用語に併記して発刊された.著者らは本書の増刷ごとに少しずつ用語の修正に努力してきた.しかしながら,いろいろの観点から組織学・発生学の用語については全面的に準拠しがたい点があるものの,多くの資料や著者らの体験をもとにして,統一された用語を最大限尊重しつつ本書の改訂に手を加えた.
 2)初版の序にも述べたように,本書の記述は「簡明と短い表現」をモットーとした.しかしながら,学生諸君の理解度をより早く高めるため,図を追加し,解説表現の訂正などによって,どのページも詰まり過ぎの感がいなめず,時代の流れにも乗って判型をA4判変形とすることにより,大きな図形を扱うことができ,字数の凝縮感を和らげ,総ページ数のスリム化も計った.
 3)本書の各章,とくに神経系に関することは,初学者にとっても最も重要である総合的解説を最近の生理学や臨床歯医学の進歩,記述の変遷に合わせて表現を改めてみた.また末梢神経系の記述は完全な表形式とした.
 4)以上のようなことが改訂の諸点であるが,最大の改訂目標は,著者らが,歯科大学・コデンタル,さらにはコメディカル関係の専門学校で,講義に実習にと,10年余にわたって年間1000部を超える好評をつづけ,広範囲に使用してきた事実と,著者みずからの体験,そして学生諸君の利用の仕方を見聞して,その結果,歯学部学生に対しても充分使いこなせてあまりある内容になったと自負している.
 基礎歯医学教育は,だれもが認識しているように,臨床歯学・医学の要望にも即応しなければならない.しかしながら,歯学・医学教育のなかの解剖・組織学は,形態学のそれであってはならず,常に歯学・医学の解剖・組織学であって,臨床歯学・医学に直結することを念頭にしたものでなければならないと腐心している.本書の将来像について,関係の先生方,さらには学生諸君からの遠慮ないご批判とご希望をおよせ下さるよう,いつも心を開いてお待ちする次第です.
 1999年 初春 著者一同に代わって 太田義邦
第1章 解剖学総論
 I.解剖学とは
 II.ヒトの体の構成
 III.体の位置と方向を示す用語
第2章 人体発生学総論
 I.生殖細胞
 II.精子形成
 III.卵子形成
 IV.排卵-受精
  V.卵割-着床
  A.割球
  B.桑実胚
  C.胞胚
 VI.胚子の初期発生
  A.卵期
  B.胚子期(胎芽期)
   1.体節前期
    a.胚子の外観
    b.外胚葉
    c.中胚葉
    d.内胚葉
    e.原基
   2.体節期
    a.体節の形成
    b.神経胚形成
    c.体の形成
   3.体節後期
    a.内胚葉
    b.中胚葉
    c.外胚葉
  C.胎児期
   1.内胚葉から派生するもの
   2.中胚葉から派生するもの
   3.外胚葉から派生するもの
第3章 組織学総論
 I.組織標本作製と観察
  A.生鮮(なまの)組織の観察
  B.組織標本の観察
   1.生体検索
   2.死体検索
    a.固定
    b.脱水,硬化
    c.包埋
    d.薄切
    e.染色
  C.光学顕微鏡
 II.細胞
  A.細胞の大きさと形
  B.細胞の構造
   1.細胞質
   2.核
  C.細胞の運動
  D.細胞の物質代謝
  E.細胞の増殖
 III.四大組織
  A.上皮組織
   〔定義と一般性状〕
   〔発生由来〕
   〔機能〕
   〔分類〕
   1.発生源によって
   2.機能によって
   3.形態によって
    a.表面上皮
   〔口腔粘膜の重層扁平上皮の一般構成〕
    b.腺(分泌)上皮=腺
   〔定義と発生由来〕
   〔分類〕
   1.位置によって
   2.分泌物が放出される場所によって
   3.外分泌腺の形態によって
   4.分泌物の性状によって
   5.腺細胞の放出機序によって
   〔器官としての腺〕
  B.支持組織
   〔定義と一般性状〕
   〔発生由来〕
   〔分類〕
   1.結合組織
   2.軟骨組織
   3.骨組織(骨の発生)
   4.血液とリンパ
  C.筋組織
   〔定義と一般性状〕
   〔発生由来〕
   〔分類〕
   1.平滑筋
   2.心筋
   3.骨格筋
   〔器官としての筋〕
   1.筋
   2.神経終末
  D.神経組織
   〔定義と一般性状〕
   〔発生由来〕
   〔分類〕
   1.ニューロン
   2.神経線維
   3.神経膠
第4章 骨格系
 I.総論
  A.骨の数
  B.骨の外形
  C.骨の構造
  D.骨の連結
   1.線維性の連結
   2.軟骨性の連結
   3.滑膜性の連結(関節)
 II.各論
  A.頭蓋
   1.頭蓋骨
   2.顔面骨
   3.頭蓋の全景
   4.頭蓋の連結
  B.胴骨
   1.脊柱
   2.胸郭
  C.上肢骨
   1.上肢帯
   2.上腕骨
   3.前腕の骨
   4.手の骨
   5.上肢骨の連結
  D.下肢骨
   1.下肢帯(寛骨)
   2.骨盤
   3.大腿骨
   4.膝蓋骨
   5.下腿の骨
   6.足の骨
   7.下肢骨の連結
第5章 筋系
 I.総論
  A.筋の一般性状
  B.筋の分類
   1.筋の付着によって
   2.筋の形や走向によって
   3.筋の運動方向によって
   4.筋の作用によって
  C.筋の補助装置
   1.筋膜
   2.筋支帯
   3.腱鞘(滑液鞘)
   4.滑液包
   5.筋滑車
   6.種子骨
 II.各論
  A.頭部の筋
   1.表情筋(顔面筋あるいは浅頭筋)
   2.咀嚼筋(深頭筋)
  B.頚部の筋
   1.浅頚筋
   2.外側頚筋
   3.前頚筋
    a.舌骨上筋(群)
    b.舌骨下筋(群)
   4.後頚筋
  C.胸部の筋
  D.腹部の筋
  E.背部の筋
   1.浅背筋群
   2.深背筋群
  F.上肢の筋
   1.上肢帯の筋
   2.上腕の筋
   3.前腕の筋
   4.手の筋
  G.下肢の筋
   1.下肢帯の筋
   2.大腿の筋
   3.下腿の筋
   4.足の筋
第6章 内臓学
 I.総論
  A.中腔性臓器
   1.粘膜
   2.粘膜下組織
   3.筋層
   4.漿膜または外膜
  B.実質性臓器
 II.各論
  A.消化器系
   〔消化管管壁の基本構造〕
   1.口腔
   〔口腔粘膜の特徴〕
   〔顔面,口腔,口蓋の発生〕
   2.咽頭
   3.食道
   4.胃
   5.小腸
   6.大腸
   7.肝臓
   8.脾臓
   9.腹膜
  B.呼吸器系
   1.鼻
   2.咽頭
   3.喉頭
   4.気管と気管支
   5.肺
   6.胸膜
   7.縦隔
  C.泌尿器系
   1.腎臓
   2.尿管
   3.膀胱
   4.尿道
  D.生殖器系
   1.男の生殖器
    a.精巣(睾丸)
    b.精巣上体(副睾丸)
    c.精管と精索
    d.精嚢
    e.前立腺
    f.尿道球腺
    g.男の外生殖器
   2.女の生殖器
    a.卵巣
    b.卵管
    c.子宮
    d.腟
    e.女の外生殖器(外陰部)
  E.内分泌腺
   1.甲状腺
   2.上皮小体
   3.副腎
   4.パラガングリオン(傍節)
   5.下垂体
   6.松果体
   7.膵臓(膵島)
   8.生殖腺(精巣,卵巣)
第7章 脈管系
 I.総論
  A.血管系の構成
  B.循環路
  C.脈管に関する一般事項
 II.各論
  A.心臓
  B.肺循環
  C.体循環
   1.動脈系
   2.静脈系
  D.胎生期の循環
  E.脾臓
  F.リンパ系
   1.リンパ性器官
   2.リンパ節
   3.リンパの流れと本幹
   4.全身のリンパ管とリンパ節
第8章 神経系
 I.総論
  A.神経系の構成
  B.中枢および末梢神経系に関する一般事項
 II.各論
  A.中枢神経系
   1.脳
    a.脳の区分
    b.脳室
    c.延髄と橋
    d.小脳
    e.中脳
    f.間脳
    g.終脳
    h.神経路
   .髄膜
   2.脊髄
    a.灰白質
    b.白質
  B.末梢神経系
   1.脳脊髄神経
    a.脳神経
    b.脊髄神経
   2.自律神経系
第9章 感覚器
 I.眼(視覚器)
  A.眼球
   1.位置と形態
   2.構造と機能
  B.視神経(脳神経II)
  C.眼筋
  D.眼と結膜
  E.涙器
 II.耳(平衡聴覚器)
  A.外耳
  B.中耳
  C.内耳
 III.味覚器
 IV.嗅覚器
  V.外皮(総被)
  A.皮膚
  B.毛
  C.爪