やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 歯科医療が発達し,暮らしが豊かになって受診の機会がふえればふえるほど,口の中の状態は自然のままのすがたとは異なってくる.たとえば,むし歯は削られて詰め物がなされ,もっとすすんで根だけになってしまった歯なら,人為的に抜歯されてブリッジや入れ歯がはいるだろう.
 ところが,歯科医療の担い手のいない地域では,むし歯はむし歯のまま口の中に残り,根だけになった歯もそれなりに物をかむ役割を果たしていたりする.あるいは,炎症が顎骨にまで及んで厳しい状態になっていることもある.
 そのような地域では,食物や生活習慣の口の中への影響をそのまま見ることができる.どんな食物が歯の悪くなる原因なのだろうかとか,むし歯ができたときどのように進行してゆくのだろうかといったことの推測が,日本でよりずっと容易なような気がする.そうした理由もあって,歯科医の眼でチベット系民族を西から東へとフォローしてみたいと思いたった.
 ここでは私の第2回の遠征地,西北ネパールでの村人の生活や診療の様子,また当地の人々の歯の状態などを,そのときどきのスナップとともに紹介してみたい.
1.到着…4
2.村の中…6
3.診療…8
4.口の中…l0
5.食物…12
6.暮らし…14
7.こども・チベット系…16
8.こども・ネパール系…18
9.チベット族の家の中…20
10.学校…22