序
歯科用ジルコニアとしてcerconが2005年に歯科医療用材料として承認されて以来約18年が経過し,ジルコニア修複は日本の歯科修復治療として急速に普及し,今や特別な治療方法ではなくなりました.デジタルデンティストリー,とりわけCAD/CAMテクノロジーの発展も相まって,ジルコニア修複は世界的にも審美修復治療の中核になっています.さらに,ジルコニア自体も進化し,歯科用ジルコニアは多種類になり選択の時代になってきました.
著者は2013年7月から2年間,12回にわたり「歯科用ジルコニアの材料科学入門」と題して『補綴臨床』で連載する機会を得て,歯科用ジルコニアの材料学的に興味深い内容および周辺技術・機器・材料についての最新情報を解説しました.そのジルコニアに関係する内容をもとにガラスセラミックス,有機系材料,金属系材料の項目を追加して書籍『CAD/CAMマテリアル完全ガイドブック』(医歯薬出版)を2017年12月に刊行しました.しかし,未だにジルコニアに対する,さまざまな誤解や認識不足による誤った臨床応用の事例も見受けられ,ジルコニアに特化した解説が要望されました.そこで,2019年1月より2年間・計12回にわたり,「ジルコニア修復 あなたの常識大丈夫?」と題して,歯科臨床における“ジルコニア修復の常識とウソ“を材料学の立場から整理・判定してきました.それは,歯科技工士にとっての“常識とウソ”,チェアサイドで治療にあたる歯科医師にとっての“常識とウソ“など,実に広範囲にわたっています.合計25題の“常識”に対し,“○“と“×”を是々非々で明示し,明確に判断できない内容は“△”とし,その理由を説明しました.著者の主観的な判断ではなく,科学的根拠に基づく客観的判断であることを示すため,証拠論文の引用を大事に,また,平易に図解することを心がけました.
今回,その連載に加えて,その後『補綴臨床』および『歯科技工』誌上に掲載された著者の執筆記事をベースに修正・加筆・再編集を施し,『ジルコニア修復の常識と鉄則』と題した別冊を刊行することになりました.歯科用ジルコニアは進化を続けており,今後も関連する新製品の発表が相継ぐものと推測されます.メーカー主導の宣伝内容に惑わされることなく,本質を理解した上で,適切に臨床応用していくことが望まれます.そのためには,信頼できる情報を入手し,科学的に判断できる基礎知識を身につける必要があります.本書が,その一助となれば幸いです.
新型コロナウィルスの蔓延により,緊急事態宣言措置が最初に特定7地域に行われたのは2020年4月7日から5月6日までで,これを機に「テレワーク」という働き方が注目されました.未だに完全な収束は達成されていませんが,今後もこのワークスタイルが定着していくと言われています.また,デジタル庁が2021年9月1日に発足し,さまざまな分野でのデジタル化が加速するものと思われます.そして,歯科界のデジタル化,いわゆる“デジタルデンティストリー”もますます進展していくであろうことは言うまでもありません.デジタルデンティストリーはテレワークを活用可能なシステムであり,その中核をなすCAD/CAMシステムに用いる主な材料はジルコニアです.加えて,2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻により貴金属価格が一段と高騰し,保険適用の12%金パラジウム銀合金の歯科修復物への応用は敬遠される傾向にあります.このような背景の中で,今後,ますますジルコニアの歯科臨床応用が進んでいくものと考えられます.その際に,臨床において読者の皆様が疑問を抱いたり,判断に迷ったりするときに,本書を活用して頂ければ幸甚です.
ご協力頂いた関係各位に,心より感謝申し上げます.有り難うございました.
愛知学院大学歯学部歯科理工学講座 伴 清治
歯科用ジルコニアとしてcerconが2005年に歯科医療用材料として承認されて以来約18年が経過し,ジルコニア修複は日本の歯科修復治療として急速に普及し,今や特別な治療方法ではなくなりました.デジタルデンティストリー,とりわけCAD/CAMテクノロジーの発展も相まって,ジルコニア修複は世界的にも審美修復治療の中核になっています.さらに,ジルコニア自体も進化し,歯科用ジルコニアは多種類になり選択の時代になってきました.
著者は2013年7月から2年間,12回にわたり「歯科用ジルコニアの材料科学入門」と題して『補綴臨床』で連載する機会を得て,歯科用ジルコニアの材料学的に興味深い内容および周辺技術・機器・材料についての最新情報を解説しました.そのジルコニアに関係する内容をもとにガラスセラミックス,有機系材料,金属系材料の項目を追加して書籍『CAD/CAMマテリアル完全ガイドブック』(医歯薬出版)を2017年12月に刊行しました.しかし,未だにジルコニアに対する,さまざまな誤解や認識不足による誤った臨床応用の事例も見受けられ,ジルコニアに特化した解説が要望されました.そこで,2019年1月より2年間・計12回にわたり,「ジルコニア修復 あなたの常識大丈夫?」と題して,歯科臨床における“ジルコニア修復の常識とウソ“を材料学の立場から整理・判定してきました.それは,歯科技工士にとっての“常識とウソ”,チェアサイドで治療にあたる歯科医師にとっての“常識とウソ“など,実に広範囲にわたっています.合計25題の“常識”に対し,“○“と“×”を是々非々で明示し,明確に判断できない内容は“△”とし,その理由を説明しました.著者の主観的な判断ではなく,科学的根拠に基づく客観的判断であることを示すため,証拠論文の引用を大事に,また,平易に図解することを心がけました.
今回,その連載に加えて,その後『補綴臨床』および『歯科技工』誌上に掲載された著者の執筆記事をベースに修正・加筆・再編集を施し,『ジルコニア修復の常識と鉄則』と題した別冊を刊行することになりました.歯科用ジルコニアは進化を続けており,今後も関連する新製品の発表が相継ぐものと推測されます.メーカー主導の宣伝内容に惑わされることなく,本質を理解した上で,適切に臨床応用していくことが望まれます.そのためには,信頼できる情報を入手し,科学的に判断できる基礎知識を身につける必要があります.本書が,その一助となれば幸いです.
新型コロナウィルスの蔓延により,緊急事態宣言措置が最初に特定7地域に行われたのは2020年4月7日から5月6日までで,これを機に「テレワーク」という働き方が注目されました.未だに完全な収束は達成されていませんが,今後もこのワークスタイルが定着していくと言われています.また,デジタル庁が2021年9月1日に発足し,さまざまな分野でのデジタル化が加速するものと思われます.そして,歯科界のデジタル化,いわゆる“デジタルデンティストリー”もますます進展していくであろうことは言うまでもありません.デジタルデンティストリーはテレワークを活用可能なシステムであり,その中核をなすCAD/CAMシステムに用いる主な材料はジルコニアです.加えて,2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻により貴金属価格が一段と高騰し,保険適用の12%金パラジウム銀合金の歯科修復物への応用は敬遠される傾向にあります.このような背景の中で,今後,ますますジルコニアの歯科臨床応用が進んでいくものと考えられます.その際に,臨床において読者の皆様が疑問を抱いたり,判断に迷ったりするときに,本書を活用して頂ければ幸甚です.
ご協力頂いた関係各位に,心より感謝申し上げます.有り難うございました.
愛知学院大学歯学部歯科理工学講座 伴 清治
第1章 歯科用ジルコニアの最新基本情報
(1)歯科用ジルコニアの動向
(2)歯科用ジルコニアの微細構造と分類
(3)歯科用ジルコニアの性質
第2章 ジルコニア修復の常識と鉄則
01 常識
ジルコニア修復物は割れにくいが,絶対に割れないわけではない
02 常識
ジルコニアはベニア,インレー,アンレーに適用できる
03 鉄則
混合組成積層型ジルコニアは層の組成により特徴・物性が異なるため,臨床に応じた注意深い配慮が欠かせない
04 鉄則
ジルコニア修復物の適合性に最も大きな影響を与えるのは焼成に関する項目である.臨床においては,特に焼成には注意を払うべきである
05 常識
モノリシックジルコニア修復物は,適正な形態で鏡面研磨処理をすれば,口腔内で疲労破壊する可能性は低く,長期に使用可能である
06 常識
ジルコニアを鏡面研磨すると生じる真珠光沢は“構造色”である
第3章 チェアサイドの常識と鉄則
01 鉄則
ジルコニアの種類によって,最適な支台歯削除量や支台歯形態は異なる
02 常識
鏡面研磨仕上げしたジルコニアは,他の修復材料と比較して対合歯の摩耗が最も少ない
03 鉄則
適切な器材を用いて鏡面研磨仕上げすれば,ジルコニア修復物を低温劣化させずに口腔内で長期間使用できる
04 常識
レジン系接着材の化学的接着力が充分に高い場合,ジルコニア表面のサンドブラスト処理の必要性は低い
05 常識
ジルコニア冠は再治療などの際にはチェアサイドで撤去することができる
06 常識
ジルコニアは金属アレルギーを誘発することはない
07 常識
ジルコニアはプラークが付着しにくい
08 常識
鏡面研磨したジルコニア修復物の表面と歯肉上皮とには,チタンと同等,または,それ以上に優れた上皮付着が生成される
09 常識
ジルコニアは表面改質をすれば骨接合する
第4章 ラボサイドの常識と鉄則
01 常識
半焼結ジルコニアは乾式で切削する
02 常識
ジルコニア修復物は3Dプリンターで製作可能である
03 鉄則
ジルコニアの研磨作業時間を短くするためには,形態修正・研磨に適切な器具・材料を順序正しく使用しなければならない
04 鉄則
ジルコニア修復物の咬合面に対する表面ステインおよびグレージングは避けるべきである
05 鉄則
ジルコニアと反応しやすい元素による過度な着色は避ける
06 常識
ジルコニアは溶接・ろう付けができない
07 鉄則
ジルコニア用電気焼成炉の温度校正は定期的に行う
08 鉄則
無着色ジルコニア焼成体の黄変は焼成炉内の汚染が原因であるため,炉内に付着した不純物を除去することが重要である
09 常識
最終焼成温度を高くしてもジルコニアの透光性は向上しない
10 鉄則
ジルコニアの焼成スケジュールは各メーカー指示に従うべきだが,修復物の大きさを考慮して対応すべきである
11 常識
高速焼成は特定のジルコニアにしか適用できない
12 常識
超高速焼成は4Yジルコニアに有効である
13 鉄則
超高透光性ジルコニアの焼成条件はメーカー指示に厳密に従う
(1)歯科用ジルコニアの動向
(2)歯科用ジルコニアの微細構造と分類
(3)歯科用ジルコニアの性質
第2章 ジルコニア修復の常識と鉄則
01 常識
ジルコニア修復物は割れにくいが,絶対に割れないわけではない
02 常識
ジルコニアはベニア,インレー,アンレーに適用できる
03 鉄則
混合組成積層型ジルコニアは層の組成により特徴・物性が異なるため,臨床に応じた注意深い配慮が欠かせない
04 鉄則
ジルコニア修復物の適合性に最も大きな影響を与えるのは焼成に関する項目である.臨床においては,特に焼成には注意を払うべきである
05 常識
モノリシックジルコニア修復物は,適正な形態で鏡面研磨処理をすれば,口腔内で疲労破壊する可能性は低く,長期に使用可能である
06 常識
ジルコニアを鏡面研磨すると生じる真珠光沢は“構造色”である
第3章 チェアサイドの常識と鉄則
01 鉄則
ジルコニアの種類によって,最適な支台歯削除量や支台歯形態は異なる
02 常識
鏡面研磨仕上げしたジルコニアは,他の修復材料と比較して対合歯の摩耗が最も少ない
03 鉄則
適切な器材を用いて鏡面研磨仕上げすれば,ジルコニア修復物を低温劣化させずに口腔内で長期間使用できる
04 常識
レジン系接着材の化学的接着力が充分に高い場合,ジルコニア表面のサンドブラスト処理の必要性は低い
05 常識
ジルコニア冠は再治療などの際にはチェアサイドで撤去することができる
06 常識
ジルコニアは金属アレルギーを誘発することはない
07 常識
ジルコニアはプラークが付着しにくい
08 常識
鏡面研磨したジルコニア修復物の表面と歯肉上皮とには,チタンと同等,または,それ以上に優れた上皮付着が生成される
09 常識
ジルコニアは表面改質をすれば骨接合する
第4章 ラボサイドの常識と鉄則
01 常識
半焼結ジルコニアは乾式で切削する
02 常識
ジルコニア修復物は3Dプリンターで製作可能である
03 鉄則
ジルコニアの研磨作業時間を短くするためには,形態修正・研磨に適切な器具・材料を順序正しく使用しなければならない
04 鉄則
ジルコニア修復物の咬合面に対する表面ステインおよびグレージングは避けるべきである
05 鉄則
ジルコニアと反応しやすい元素による過度な着色は避ける
06 常識
ジルコニアは溶接・ろう付けができない
07 鉄則
ジルコニア用電気焼成炉の温度校正は定期的に行う
08 鉄則
無着色ジルコニア焼成体の黄変は焼成炉内の汚染が原因であるため,炉内に付着した不純物を除去することが重要である
09 常識
最終焼成温度を高くしてもジルコニアの透光性は向上しない
10 鉄則
ジルコニアの焼成スケジュールは各メーカー指示に従うべきだが,修復物の大きさを考慮して対応すべきである
11 常識
高速焼成は特定のジルコニアにしか適用できない
12 常識
超高速焼成は4Yジルコニアに有効である
13 鉄則
超高透光性ジルコニアの焼成条件はメーカー指示に厳密に従う