やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

 近代歯科医学の進展は,歯科材料学の進歩に呼応しているといっても過言ではない.さまざまな新材料の開発が,新しい歯科臨床を創造してきている.
 歯科材料は,基本的には「メタル」「レジン」「ポーセレン」の3つであり,それらおよびそれらの複合材が現代歯科臨床を支えている.さらに最近では,より生体に近い材料ということで異種材料を複合化することにより,単一材料では出せなかった特異な性質をもつ材料を,ニーズに応じて自在に作り出せるようになってきた.たとえば,航空機やボートなどの材料に用いられているFRP(fber renforced plastc)は,強度と軽量化を求めた複合材料であることは周知のとおりである.
 なかでも,メタルとセラミックスの複合体であるメタルボンドポーセレンは,歯科材料の“雄”として歯冠色修復法の主流をなしている.しかしながら,従来より応用されているこれら歯科材料も多くの利点,欠点を有しており,材料強度を上げ簡単に壊れないようにすることに開発の主眼がおかれ,故にほとんどの材料が天然歯に比べ格段に高強度であった.しかし,近年「いくら補綴物が破損しなくても,歯牙およびその支持組織にダメージを与えるようでは歯冠修復材として要件を満たしていない」という考え方が広がりつつあるのも事実であろう.
 このたび本書で取り上げた,大幅に改良された従来型硬質レジンおよび新しい概念から開発されたセラミックス+高分子複合型のいわゆるハイブリッドセラミックスと呼ばれる歯冠修復材は,高強度でありながら高靭性のため,生体材料により近いという点でこれからの歯科医療を支えていくうえでも有効な歯科材料といえるであろう.
 本書では,現在健康保険にも収載され,使用頻度の高い従来型硬質レジンおよび新規ハイブリッド系修復材を9種取り上げ,それらの具体的な特徴と選択基準の整理を行うとともに,今日までの材料の変遷と理工学的諸性質およびハイブリッドセラミックス系材料の定義について解説を加えたうえで,それぞれの材料特性を最大限に活かした臨床応用例を紹介している.さらに,使用者の立場からぜひ聞いてみたい疑問・質問に対し,各メーカーより的確な回答をいただいている.
 本書が,これら21世紀の歯科臨床を支える新しい歯科材料の日常臨床への導入の一助となれば幸いである.
 1999年8月
 日本歯科大学歯学部歯科補綴学第二講座 高橋英登
 筑波大学附属聾学校歯科技工科 友田浩三
 Introduction

Color Table
  セラミックス・高分子複合型歯冠修復材料の臨床用途と選択基準一覧
Part 1 解説
  前装用レジンの新しい流れ 田上直美/熱田 充
  前装補綴装置の製作過程における接着操作 松村英雄/下江宰司・永野清司
  セラミックス・高分子複合歯冠修復材料の理工学的諸性質 平澤忠/内田馨子
  ハイブリッドセラミックスの定義 野口八九重
Part 2 ケースプレゼンテーション
  エステニアの臨床応用 松井信人/高橋英登
  アートグラスの臨床応用 橘田修/岡本裕樹/荒金光夫
  Targis/Vectrisの臨床応用 高橋広昭/坂東信
  ベルグラスの臨床応用 加藤敏明/藍浩之
  アクシス(AXIS)の臨床応用 赤坂政彦/奥津哲也/関根由紀子/佐藤俊之
  ニューメタカラーインフィスの臨床応用 福井淳一/加藤英材/原口陽子/大安努
  セシード IIの臨床応用 千葉慎太郎/宮川敏之/佐藤達也
  アイサイトの特徴と臨床応用 森修一/添野光洋/松村英雄
  ソリデックスによる審美的色調再現性を求めた歯冠修復物の臨床応用─機能美・自然美・健康美─ 浅野正司/篠ヶ瀬鋼
Part 3 Q&A
  Q.1:開発コンセプトを知りたいのですが?
  Q.2:接着システムは? また,接着性能はどれくらいですか?
  Q.3:機械的性質はどれくらいですか?
  Q.4:耐摩耗性の面から,対合歯の摩耗についてどのようにお考えですか?
  Q.5:特性が最大限に発揮できるのはどのようなオーダーの場合ですか?
  Q.6:技工操作上の特性は? また,現時点で問題点はありませんか?
  Q.7:色調について,どのようにお考えですか?
  Q.8:メタルフレームの形態について,どのようにお考えですか?
  Q.9:作業能率と材料コストについて,どのようにお考えですか?(単冠の場合)
  Q.10:他社の類似商品とは,どこが,どう違うのですか?
最新海外事情
  アメリカにおける硬質レジンの評価 大石幸男
  ドイツにおける硬質レジンの現況 子安博之
付録
  システム一覧