やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 プレシャス合金を中心とした歯科鋳造は,この20年の間に,ニッケルクロム合金,コバルトクロム合金などのノンプレシャス合金からチタンおよびチタン合金さらにはセラミックにまで拡大されてきた.歯科鋳造の出発は,諸説のあるものの,Wi111am H.Taggartから始まったといってよいだろう.Taggartが「New and accurate method of making go1d in1ays(新しい正確なゴールドインレーの作り方)」と題してNewYorkOdonto1ogical Societyで1907年1月15日に講演した記録がDenta1 Cosmos Vol.49(1907年11月号)に掲載されている.この咬合器の小窩裂溝に始まる齲蝕の修復に内側性インレーを鋳造したことから,MO(DO)インレー,MODインレー,クラウン,ブリッジ,床,バー,クラスプにいたるまで,今日,すべての歯科金属修復物は,鋳造によって製作されるようになった.
 「歯科技工」2巻5号が“歯科鋳造”を特集して発行されたのは1974年9月であったが,本別冊は,この20年間に変遷してきた歯科鋳造の現状をまとめた.テーマは,従来から使われている歯科用プレシャス合金の鋳造,1980年代に活用されたノンプレシャス合金の鋳造,1990年代になって製品化が定着してきたチタンおよびチタン合金の鋳造,さらに歯科鋳造のロストワックス法,あるいはインベストメント法を応用したセラミックの鋳造,および注入成型のすべてを取り上げた.歯科用合金の種類,あるいはセラミックと組成・素材は異なっていても,蝋型を製作し,インベストメント法,あるいはロストワックス法によって,正確な精度の高い歯科修復物を製作する基本操作は同じであり,共通点がある.現状では,各々が到達している水準にかなりの違いがあるが,精度の高い歯科修復物の製作を目的としている.新しい鋳造システムには,新しい器材の開発があり,鋳造システムの向上には鋳造関連器材の改善・改良がなされている.本書に紹介した機器は,選択の参考になるものを採択した.本書が“歯科鋳造のすべて”に携わる方々に役立つことを願うものである.
 1993年8月 伊集院ポーセレン研究所 伊集院正俊 松本歯科大学歯科理工学教室 高橋重雄(五十音順)
1.鋳造の基礎知識
 鋳造技術の変遷……中村健吾
 鋳造方法とそのしくみ
  圧迫鋳造法……高橋重雄
  遠心鋳造法……高橋重雄   吸引加圧鋳造法……長谷川二郎
 歯科鋳造用合金の性質
  金合金……長谷川二郎
  鋳造用12%金銀パラジウム合金……長谷川二郎
  鋳造用銀合金……長谷川二郎
  ノンプレシャス合金……野口八九重
  ポーセレン焼付け用合金……野口八九重
 チタンの性質……宮崎隆
 鋳造用セラミックスの性質――キャスタブルガラスセラミックスとlPSエンプレス……日野年澄ほか
 義歯用パターン材の性質……伊集院正俊
 埋没材の性質……吉田隆一
2.鋳造欠陥を防止する
 鋳巣……上新和彦
 “なめられ”穴およびひぴ……高橋重雄
 鋳肌あれ
  温度……仁科匡生
  チル……仁科匡生
  鋳バリ……仁科匡生
  融解……仲居明
 鋳造体の変形……住井俊夫
 鋳造再現性……仁科匡生
3.使用機器の種類と特徴
 各種埋没器
 各種加熟炉
 各種サンドブラスター
 各種鋳造機
 鋳造機の特徴による分類

 巻末付表