ごあいさつ

　はじめまして．そして，いつも「L・Lの日常」を読んで下さって，ありがとうございます．
　わたしが，「L・Lの日常」を描かせていただいております，周玲蓮です．もちろん，ペンネームですが．
　どんな人が描いてるのか，実は，現役の臨床検査技師です．性別は女性．けっこう歳いってます．東北地方の，雪深い山々に囲まれた田舎の検査センターでひっそりと働いております．
　「L・Lって，何?」という方もおありでしょう．これは，リンショウケンサギシという職業名が長い上にどうにも難解だったので，つくったコトバです．「会社で働くオフィス・レディがO・Lなら，検査・研究室で働くラボラトリ・レディはL・Lだろう」ということになりました．まぁ，考えてみれば，名前を短くする必要も，かっこよくする需要もなかったもので，かえってわかりづらいことになってしまった訳です．
　とにかく，この軽いノリでつけたタイトルで漫画らしきものを書き始めてから，はや十年以上の年月が経過しました．はじめは確か，Medical Technologyの巻末ハガキの裏に縮小コピーで張り付けたものだったような気がします．それにうっかり「つづく」と描いてしまったために，「これは続きもあるんですか?」と編集の方からお電話をいただいて……．「はいっ，山ほどあります」と答えた自分がいました．
　山ほどある，とはいったものの，それがまさかこんなに長く続くことになるとは，当時想像もつきませんでした．設定も何もなく，軽いノリで始まってしまい，軽いノリで現在に至っています．
　幸いなのは，職場がそのままネタになるので取材の必要がない，ということでしょうか．学会に行っても，なるべく若い参加者にまとわり，ロビーのお茶のみ話に耳を傾け，ネタを探す毎日です．妙な失敗をすると翌々月のMedical Technologyに載ることになるので，職場には妙な緊張感が漂っています．
　私がなぜ臨床検査技師をやってるのか，というのもよく訊かれます．子供の頃，病院で「看護婦さんでも女医さんでもない白衣の女の人」を見て，「どんな仕事をしているのか」と訊ねたのが，この職業を知るきっかけでした．医者はちょっと，看護婦はきつそうだ．しかしこれならやっていけそう……．今までMedical Technologyのコラムに載った方々には謝る他はない安直さで，私はこの道に入ることになったのです．しかし，今思い出せば，その仕事に興味を持たせるほどいきいきと働いていた技師がいた，それは素晴らしいことだったんですね．
　きっかけはどうあれ，十年以上続けてくることができた仕事です．今では，臨床検査技師は天職なのだと思っています．それに，小学校の卒業文集に「衛生検査技師になりたい」と書いてあったところをみると，これも初志貫徹，ということになるのでしょうか．
　さて，このところの就職難で我が職場にもなかなか新人がやってきません．新人君こそ，楽しい話題の宝庫なのに．求む，おもしろいネタ！あっ，でも，ミュージシャンでもベストアルバムが出ると，そろそろ引退ですよね．「L・Lの日常」は，どうだ?　続くのかしらん?
　最後に，ネタになろうとも笑って許してくれた職場の上司と同僚，これを手にとって下さったすべての人々にお礼を申し上げます．
　周　玲蓮