はじめに
杉山直也
沼津中央病院院長,日本精神科救急学会理事長
今回,危機介入・救急対応の視点を軸に,自殺予防の特集を企画することとなった.ハイリスク者への危機介入は,自殺予防における最重要活動であり,救急医療の実践における主要任務のひとつである.
1998年の自殺の急増以降,その予防や対策についてさまざまな分野の論説を目にするようになった.日本の動向はかねてより経済状況との連動が特徴で,急増以前に観察された1983年ごろのピークも中高年男性の増加で説明される.ところが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降の様相はこれまでとは明らかに異なり,まさに“新たな局面“を迎えた.キーワードは“女性”,そしてパンデミック以前,急増後の対策が効果を発揮するにつれ課題となった“若年者”とされる.
“新たな局面”に対し,同じ国の現象として,やはり経済要因に関連するという考察もあろうが,別の事象が観察されるのであれば,それは十分に精査される必要がある.まずは,これまでわが国がどのように成果を上げたのか,従来の対策を確認することが必須であろう.中高年男性の自殺者数が依然多くを占める現状は引き続き認識しておかなければならない.そして現在の動向について,わが国特有のジェンダーギャップ,非正規雇用者への支援不足,子育て負担の増加など,パンデミックにより生じた社会変化の脈絡による説明は一定の説得力を有す.また,自粛による防衛意識の強化は,一時的な自殺の減少をもたらしたともいわれる.しかし,より理解の精度を高めるためには,想像力を動員しつつ,データを援用した科学的検証によらなければならない.解析の結果,より踏み込んだ解釈に至るかもしれない.ありきたりな言い方にはなるが,評価を違えれば対策を誤りかねず,対象が深刻なだけにこれを外すことはできない.
今回の特集では,幸いにも国内最高峰の優れた著者陣を参集できた.自殺の要因は複雑で多岐にわたる.多方面からの専門家による解説は,施策の最大特徴である“総合“対策に資することが期待される.本特集が“新たな局面”にあるわが国の現状と,今後の対策に向けた知識集となることを願う.
杉山直也
沼津中央病院院長,日本精神科救急学会理事長
今回,危機介入・救急対応の視点を軸に,自殺予防の特集を企画することとなった.ハイリスク者への危機介入は,自殺予防における最重要活動であり,救急医療の実践における主要任務のひとつである.
1998年の自殺の急増以降,その予防や対策についてさまざまな分野の論説を目にするようになった.日本の動向はかねてより経済状況との連動が特徴で,急増以前に観察された1983年ごろのピークも中高年男性の増加で説明される.ところが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降の様相はこれまでとは明らかに異なり,まさに“新たな局面“を迎えた.キーワードは“女性”,そしてパンデミック以前,急増後の対策が効果を発揮するにつれ課題となった“若年者”とされる.
“新たな局面”に対し,同じ国の現象として,やはり経済要因に関連するという考察もあろうが,別の事象が観察されるのであれば,それは十分に精査される必要がある.まずは,これまでわが国がどのように成果を上げたのか,従来の対策を確認することが必須であろう.中高年男性の自殺者数が依然多くを占める現状は引き続き認識しておかなければならない.そして現在の動向について,わが国特有のジェンダーギャップ,非正規雇用者への支援不足,子育て負担の増加など,パンデミックにより生じた社会変化の脈絡による説明は一定の説得力を有す.また,自粛による防衛意識の強化は,一時的な自殺の減少をもたらしたともいわれる.しかし,より理解の精度を高めるためには,想像力を動員しつつ,データを援用した科学的検証によらなければならない.解析の結果,より踏み込んだ解釈に至るかもしれない.ありきたりな言い方にはなるが,評価を違えれば対策を誤りかねず,対象が深刻なだけにこれを外すことはできない.
今回の特集では,幸いにも国内最高峰の優れた著者陣を参集できた.自殺の要因は複雑で多岐にわたる.多方面からの専門家による解説は,施策の最大特徴である“総合“対策に資することが期待される.本特集が“新たな局面”にあるわが国の現状と,今後の対策に向けた知識集となることを願う.
はじめに(杉山直也)
総論─救急医療に求めること
1.グローバルな視点から見た日本の自殺未遂者対策─救急医療に求められる課題(本橋 豊・吉野さやか)
KeyWord 自殺未遂者対策,登録データベース事業,自殺対策拠点病院,HATプログラム
自殺予防研究の動向
2.診療報酬化された自殺予防医療─アサーティヴ・ケース・マネージメント介入は自殺未遂者の自殺再企図・自傷行為を抑止する(河西千秋)
KeyWord アサーティヴ・ケース・マネージメント,自殺未遂,自殺予防,自傷,診療報酬制度
3.コロナ禍における自殺の動向と対策(衞藤暢明・川嵜弘詔)
KeyWord 自殺予防,自殺未遂者,新型コロナウイルス感染症(COVID-19),救急医療
4.災害精神医療の観点から(太刀川弘和)
KeyWord 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),自殺予防対策,災害精神医療,コロナ禍
5.臨床での活用が期待される自殺の生物学的知見(大塚郁夫・菱本明豊)
KeyWord バイオマーカー,機能的磁気共鳴画像法(fMRI),ポリジェニックリスクスコア(PRS),GTF2IRD1遺伝子
危機・救急対応の標準化
6.精神科救急医療ガイドライン─自殺未遂者対応(大塚耕太郎・他)
KeyWord ガイドライン,自殺未遂者ケア,精神科救急,自殺予防,精神科救急学会
7.自殺未遂者ケア研修会(須田 顕・杉山直也)
KeyWord 自殺未遂者ケア研修会,精神科救急,自殺予防,再企図予防,自殺予防教育
危機・救急対応の現状
8.救急医の視点から(三宅康史)
KeyWord 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),標準的初期対応,日本臨床救急医学会「自殺企図者のケアに関する検討委員会」,自殺未遂者ケア研修,PEEC(psychiatric evaluation in emergency care)
9.精神科リエゾン医の立場から(日野耕介)
KeyWord 精神科リエゾンチーム,自殺企図者対応,精神腫瘍学,院内自殺対策
10.PEECと病院前救護活動(橋本 聡)
KeyWord 病院前救護,自殺危機介入,PEEC,PPST,JEPS-Ex
11.精神科入院外医療での危機介入(長谷川直実)
KeyWord 精神科外来,アウトリーチ,デイケア,地域連携,CMHT(community mental health team)
12.受診前相談における自殺が切迫した事例への対応(関口隆一)
KeyWord 精神科救急医療システム,受診前相談,トリアージ,危機介入,自殺予防対策
13.自殺未遂者の理解と分類(川畑俊貴)
KeyWord 衝動型自殺,うつ病型自殺,虚無型自殺,決意型うつ病
14.わが国の自殺対策とコロナ禍のいのちの電話活動(堀井茂男)
KeyWord 自殺予防対策,いのちの電話,日本いのちの電話連盟(FIND),ボランティア活動,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
15.プライマリ・ケア医による自殺予防と危機対応(宮崎 仁)
KeyWord プライマリ・ケア(PC),自殺予防,自殺リスク評価,PIPC(psychiatry in primary care)
16.自殺対策におけるSNSを活用した危機対応(森山花鈴)
KeyWord 自殺対策,自殺予防,SNS,相談,危機対応
サイドメモ
自殺の危険因子
自殺念慮
自殺企図および精神科救急の特集
精神科リエゾンチーム加算とは
包括的支援マネジメント
精神科マクロ救急システムと受診前相談
MAPSO
総論─救急医療に求めること
1.グローバルな視点から見た日本の自殺未遂者対策─救急医療に求められる課題(本橋 豊・吉野さやか)
KeyWord 自殺未遂者対策,登録データベース事業,自殺対策拠点病院,HATプログラム
自殺予防研究の動向
2.診療報酬化された自殺予防医療─アサーティヴ・ケース・マネージメント介入は自殺未遂者の自殺再企図・自傷行為を抑止する(河西千秋)
KeyWord アサーティヴ・ケース・マネージメント,自殺未遂,自殺予防,自傷,診療報酬制度
3.コロナ禍における自殺の動向と対策(衞藤暢明・川嵜弘詔)
KeyWord 自殺予防,自殺未遂者,新型コロナウイルス感染症(COVID-19),救急医療
4.災害精神医療の観点から(太刀川弘和)
KeyWord 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),自殺予防対策,災害精神医療,コロナ禍
5.臨床での活用が期待される自殺の生物学的知見(大塚郁夫・菱本明豊)
KeyWord バイオマーカー,機能的磁気共鳴画像法(fMRI),ポリジェニックリスクスコア(PRS),GTF2IRD1遺伝子
危機・救急対応の標準化
6.精神科救急医療ガイドライン─自殺未遂者対応(大塚耕太郎・他)
KeyWord ガイドライン,自殺未遂者ケア,精神科救急,自殺予防,精神科救急学会
7.自殺未遂者ケア研修会(須田 顕・杉山直也)
KeyWord 自殺未遂者ケア研修会,精神科救急,自殺予防,再企図予防,自殺予防教育
危機・救急対応の現状
8.救急医の視点から(三宅康史)
KeyWord 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),標準的初期対応,日本臨床救急医学会「自殺企図者のケアに関する検討委員会」,自殺未遂者ケア研修,PEEC(psychiatric evaluation in emergency care)
9.精神科リエゾン医の立場から(日野耕介)
KeyWord 精神科リエゾンチーム,自殺企図者対応,精神腫瘍学,院内自殺対策
10.PEECと病院前救護活動(橋本 聡)
KeyWord 病院前救護,自殺危機介入,PEEC,PPST,JEPS-Ex
11.精神科入院外医療での危機介入(長谷川直実)
KeyWord 精神科外来,アウトリーチ,デイケア,地域連携,CMHT(community mental health team)
12.受診前相談における自殺が切迫した事例への対応(関口隆一)
KeyWord 精神科救急医療システム,受診前相談,トリアージ,危機介入,自殺予防対策
13.自殺未遂者の理解と分類(川畑俊貴)
KeyWord 衝動型自殺,うつ病型自殺,虚無型自殺,決意型うつ病
14.わが国の自殺対策とコロナ禍のいのちの電話活動(堀井茂男)
KeyWord 自殺予防対策,いのちの電話,日本いのちの電話連盟(FIND),ボランティア活動,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
15.プライマリ・ケア医による自殺予防と危機対応(宮崎 仁)
KeyWord プライマリ・ケア(PC),自殺予防,自殺リスク評価,PIPC(psychiatry in primary care)
16.自殺対策におけるSNSを活用した危機対応(森山花鈴)
KeyWord 自殺対策,自殺予防,SNS,相談,危機対応
サイドメモ
自殺の危険因子
自殺念慮
自殺企図および精神科救急の特集
精神科リエゾンチーム加算とは
包括的支援マネジメント
精神科マクロ救急システムと受診前相談
MAPSO