やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 本書は,1999年,2001年初版刊行の「小児看護学1」「小児看護学2」を前身として,このたび「小児看護学I 子どもの健康と成長・発達」「小児看護学II 子どもへのケア技術と看護過程」と題し,全面的な再構築により新たな小児看護学のテキストとして刊行しました.
 少子高齢化が進むわが国では,子どもたちを取り巻く社会環境にも日々さまざまな変化が生じています.子どもたちは家族においても社会においてもとても大切な存在であり,子どもたちが健やかに育っていくことを願って多くの存在が子どもたちを見守り支えています.このような社会のなか,高度医療の発展により子どもたちの健康問題にもさまざまな課題やニーズが生じ,そこにアプローチする存在として看護の力は不可欠です.また,わが国は1994年に子どもの権利条約に批准し,1999年には日本看護協会により小児看護領域の業務基準では「小児看護領域で特に留意すべき子どもの権利と必要な看護行為」が示されるなど,小児医療において子どもの権利を擁護することの重要性が提唱されるようになり,医療において子どもが受ける苦痛やストレスに最大減の配慮をしながら看護を実践していくことが求められています.
 そこで本書では,子どもにとっての安全・安楽をふまえながら,第1章では小児看護に特有な技術として,日常生活援助の場面,診療の場面,事故・緊急時の場面と,看護技術を援助の場面別に整理して解説しています.第2章では子どもの主要な症状とケア技術として,各症状の観察やアセスメントのポイントから看護計画にあがるケア技術までの一連の流れを理解できるように解説しています.第3章では小児看護における看護過程と代表的な事例として,臨地実習で受け持ったり国家試験で出題されたりすることが多い症例を中心に10例取り上げて解説しています.このように,臨地実習や国家試験対策において看護学生が使いやすいテキストであることを目指して本書を編集しました.また,少しでも援助の場面がイメージできるようにと多くの写真を掲載し,可能な場面は実際のお子様にご協力いただいて撮影しました.そして,小児ならではのケア技術の工夫などもトピックスとして掲載するなど,実践の場で活動している看護職の方々にもご活用いただけることを願っております.
 最後に,第1章および第2章の小児看護技術に関する写真で,モデルになってくださったお子様とお母様,物品等の写真撮影にご協力くださった社会福祉法人京都社会事業財団 京都桂病院様には,心より感謝申し上げます.また,ご執筆くださいました皆様,企画編集を通して多くのお力添えをいただきました医歯薬出版株式会社編集部の皆様には心よりお礼申し上げます.
 2022年12月
 編者を代表して 守口絵里
第1章 小児看護に特有な技術
 A 日常生活援助に必要なケア技術
  1 食事(鈴木美佐)
   1)食事援助に必要な知識
    食事援助の目的
    子どもの摂食機能
    子どもの食事形態と食行動の発達
   2)授乳
    アセスメント
    調乳:調製粉乳など人工乳を調乳する場合
    冷凍母乳を温める場合
    授乳の方法
   3)離乳食の介助
    アセスメント
    離乳食介助の実際
   4)幼児食・学童食への支援
    アセスメント
    食事介助
   5)おやつ(間食)への支援
   6)治療食への支援
  2 排泄(村井博子)
   1)排泄援助に必要な知識
   2)おむつ交換
    目的
    必要物品
    手順
   3)ベッド上での排泄の援助
    目的
    必要物品
    手順
  3 睡眠(池田友美)
   1)睡眠援助に必要な知識
    小児の睡眠の特徴
    小児の睡眠の重要性
   2)睡眠への援助
    睡眠環境づくり
    注意点
  4 清潔(池田友美)
   1)清潔援助に必要な知識
    小児の皮膚の特徴
    歯の発達
    子どもの発達と清潔
    清潔の目的
   2)沐浴および入浴
    必要物品
    方法
   3)清拭と陰部洗浄および殿部浴
    必要物品
    方法
   4)うがいと歯磨き
    必要物品
    方法
 B 診療場面で必要なケア技術
  1 ヘルスアセスメント(村井博子)
   1)観察
    子どもの特徴
    子どもの全身状態の判断
   2)身体計測
    体重
    身長
    頭囲
    胸囲
    腹囲
   3)バイタルサイン
    呼吸測定
    脈拍・心拍測定
    体温測定
    血圧測定
  2 検体採取(工藤悦子)
   1)採血
   2)採尿
   3)咽頭・鼻腔培養
   4)骨髄穿刺
   5)腰椎穿刺
  3 与薬・輸液(平田美紀)
   1)与薬に必要な知識
    子どもと与薬
    与薬の基礎知識
   2)内服援助
    内服薬の特徴
    発達段階に合わせた内服の工夫
    内服とプレパレーション
   3)坐薬援助
    子どもの坐薬投与の工夫
   4)注射援助
   5)点滴静脈内注射の援助
 C 事故・緊急時に必要なケア技術
  1 小児期に起こりやすい事故への対処(長谷川由香)
   1)誤飲
    消化管異物
    中毒
   2)誤嚥
    喉頭異物
    声門下異物・気管異物・気管支異物
   3)熱傷
    応急処置
    局所療法
    輸液療法
    感染予防
    子どもと家族の長期的な支援
  2 緊急時の対処(西田千夏)
   1)救急蘇生法とは
   2)一次救命処置の方法
    アルゴリズム
    安全確認
    反応の確認と応援要請
    呼吸・脈拍確認
    胸骨圧迫
    人工呼吸
    AEDの使用
   2)二次救命処置の方法
    アルゴリズム
    呼吸管理
    静脈路の確保と心肺蘇生薬の投与
第2章 子どもの主要な症状とケア技術
  1 発熱(中山祐一)
   1)小児の体温の特徴
   2)発熱の定義
   3)観察とアセスメントのポイント
   4)関連する看護技術
    冷罨法
    適切な衣服や掛け物の調整,および快適な室温・湿度の調整
    水分,電解質の補給
    解熱薬の使用
  2 脱水(守口絵里)
   1)脱水とは
   2)小児の水分代謝の特徴と脱水
   3)小児によくみられる脱水時の症状や所見
    体重減少
    尿量減少
    皮膚や粘膜の乾燥
    大泉門の陥没
    末梢循環不全
    意識レベルの低下
   4)観察とアセスメントのポイント
   5)関連する看護技術
    経口による水分補給
    輸液療法
    ツルゴールの確認
    in-outバランスの計算
  3 消化器症状(伊織光恵)
   1)小児の消化器の特徴
   2)小児によくみられる消化器症状
    腹痛
    嘔吐
    下痢
    便秘
    下血
   3)観察とアセスメントのポイント
   4)関連する看護技術
    経管栄養法
    浣腸
  4 呼吸器症状(守口絵里)
   1)小児の呼吸器の特徴
   2)小児によくみられる呼吸器症状
    咳嗽
    鼻汁・鼻閉
    異常な呼吸音・喘鳴
    異常な呼吸運動
   3)観察とアセスメントのポイント
   4)関連する看護技術
    体位の工夫
    吸入療法
    酸素療法
    口鼻腔内吸引
  5 痙攣・意識障害(亀田直子)
   1)小児の神経系の特徴
   2)痙攣・意識障害に関連する小児によくみられる症状
    てんかん発作の種類
    姿勢の異常
    瞳孔の異常
    発作の重積状態
   3)観察とアセスメント/ケアのポイント
   4)関連する看護技術
    呼吸状態の観察,吸引
    安全確保(環境整備)・体位の工夫
    酸素供給
    意識レベル評価
    抗痙攣薬投与
  6 発疹(守口絵里)
   1)発疹とは
   2)子どもによくみられる発疹性の疾患
   3)発熱を伴わない発疹性の疾患
    蕁麻疹
    アトピー性皮膚炎
   4)関連する看護技術
    観察とアセスメント
    かゆみを伴う発疹のケア
    家族や本人への説明
第3章 小児看護における看護過程と代表的な事例
 A 小児看護における看護過程
  1 看護過程とは(茎津智子)
   1)アセスメント
    アセスメントの枠組み
   2)看護問題の明確化
    看護問題
    共同問題(Collaborative Problems;CP)
   3)計画立案
    目標設定
    計画立案
   4)実施(看護介入)
   5)評価・修正
  2 情報収集の実際(茎津智子)
   1)面接(インタビュー)による情報収集
    子どもとのコミュニケーション
    家族とのコミュニケーション
   2)観察
 B 代表的な疾患の事例展開
  事例1 喘息発作によりはじめて入院となった4歳の子ども(茎津智子)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例2 川崎病によって入院加療となった3歳6カ月の子ども(中山祐一)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題・共同問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例3 ファロー四徴症の心内修復術を受けた1歳5カ月の子ども(田中さおり)
   1)事例紹介
    入院までの経過
    入院後〜手術・ICUまでの経過
    小児病棟に戻ってからの経過
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例4 急性糸球体腎炎を発症した9歳の子ども(工藤悦子)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題・共同問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例5 血管性紫斑病によりはじめて入院となった7歳の子ども(伊織光恵)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化とその根拠
   5)看護計画
  事例6 神経芽腫により入院となった1歳の子ども(山口未久)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例7 1型糖尿病により入院となった10歳の子ども(平田美紀)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題・共同問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例8 消化器感染症のためはじめて入院となった10カ月の子ども(鈴木美佐)
   1)事例紹介
    本人の普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例9 滲出性中耳炎により鼓膜チューブ挿入術(チュービング)実施となった5歳の子ども(西田千夏)
   1)事例紹介
    年齢・性別・発達・入院前の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
    疾患のポイント
    治療
    術前の看護
    術後の看護
    退院後の留意点
   3)アセスメント内容
   4)看護問題の明確化と根拠
   5)看護計画
  事例10 ウエスト症候群(点頭てんかん)で入院となった8カ月の子ども(亀田直子)
   1)事例紹介
    本人の発達・普段の生活・家族構成など
    現病歴
   2)疾患のポイントと看護
   3)アセスメント内容
   4)看護問題・共同問題の明確化と根拠
   5)看護計画

 索引