第2版発行にあたって
　本書が出版されてから10年が過ぎ，これまで多くの方々にご活用いただき深く感謝申し上げます．その間に，2015年6月には「水銀による環境の汚染の防止に関する法律（水銀汚染防止法）」が成立し，体温計，血圧計の電子化等進んでいます．また，新生児マススクリーニング法として，タンデムマス法の導入により対象疾患は大幅に拡大しました．このような変化に対応するように，第2版を刊行することになりました．
　もともと，本書の内容の構想中に学生が臨地実習中に漏らした「臍帯が乾燥して脱落すると言われてもイメージできない」の一言が，現象の変化の結果だけでなく経過を重視したことです．そして，観察方法は具体的に写真と説明文を掲載し，根拠や留意事項はone pointに載せました．今回の改訂は，初版同様に写真でイメージしやすいように，看護技術は概略を把握して自己学習しやすいように考慮しました．また，one pointを活用して根拠も学習して知識が深められるようにご活用いただければ幸いです．母性看護のみならず新生児を対象とする小児看護でもご活用いただけると存じます．
　近年の少子化現象と分娩件数の減少，地方における産科医の不足による産科入院施設の縮小や廃止は，妊産婦にとって居住地の近くに安心して分娩できる場がなくなりつつあります．また，増加し続ける看護系大学の母性看護学教育にも影響は多大です．特に臨地実習の実習施設の確保は困難な状況です．少ない臨地実習時間において，実習期間内では反復困難な技術も，目的と根拠，方法について事前学習をして臨む実習は短期間に効果的な知識と技術の修得に繋がることでしょう．本書はその一助となることを願っています．また，看護学生に限らず，実習指導や初任者のための手引き書としてもご活用いただければ幸いです．
　今回も医歯薬出版株式会社担当各位に多大なるご協力とご助言を賜り，感謝申し上げます．
　2017年8月
　櫛引美代子



はじめに
　「カラー写真で学ぶ　妊産褥婦のケア」の発刊後しばらくしてから，母性看護に関する「カラー写真で学ぶシリーズ」として次の出版のお話をいただき，数年が経てしまいました．既刊書をご活用いただいている皆様からのご希望・ご意見を念頭に入れながら，早期新生児に焦点を当てようと決めて，あれこれ構想を練っていました．
　学生が母性看護学実習でアセスメントに困る現象や，日常的に遭遇する処置について理解できるような内容にしようと考えていた矢先のことでした．臨地実習指導中，学生がふと漏らした一言にハッとさせられました．出生1日目の臍処置をしながら，学生は「（臍帯は）乾燥して脱落すると言われてもイメージがわかないんですよね……」と独り言のようにつぶやいたのでした．ああそうだったのか，講義において新生児の臍帯の変化を講義し，胎盤検査の実習では臍帯の膠様質・臍帯血管を確認させ，これらが漸次乾燥し，ミイラ化して脱落すると説明していたが，変化を具象化するのは難しいのだと改めて気づかされました．
　出生率の低下とともに実習場における分娩件数は減少し，学生の実習にご協力いただけるケースも減少しています．実習中に学生が分娩期，産褥期の褥婦と新生児を受け持って，継続的にその変化を観察できる機会は少なくなっているのが現状です．限られた実習時間内で効果的に学習を深めるために，教授法および教材の工夫や開発は必須です．初学者にとって，わかりやすく，簡便に活用できることを念頭に，できるだけ具体的に本書をまとめました．
　学生の皆様には，既刊書と併せて自習書として，ちょっと忘れたことの確認など手軽にご活用いただけることを願っていいます．学生の実習指導にもご活用いただければ幸いです．また，初任者の方々にもご参考になればと願っています．
　今回も，医歯薬出版株式会社の各位には多大なるご尽力とご助言を賜り，深く感謝申し上げます．
　2006年11月
　櫛引美代子