やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 「リハビリテ-ション看護研究」も,シリ-ズ6冊目発刊の運びとなりました.これもひとえに皆様のご支援のお陰と存じ,感謝申し上げます.
 本シリ-ズは常に3つの柱で展開しています.今回は第1の柱として,リハビリテ-ション看護を考える視点を地域社会で生活する人々への支援に置き,『地域生活を支えるリハビリテ-ション看護の役割とその方法』としました.このテ-マは,第4号のテ-マであった「チ-ムアプロ-チ」とも関連していますが,リハビリテ-ションの「維持期」としての日常生活における支援が重要であるという考えに基づくものです.維持期に関わる組織間で効果的な「連携」を果たすためには,それぞれの場の状況を十分に理解することが第一歩ではないかと思います.そこで,はじめに,看護の立場から地域・在宅リハビリテ-ションへの提言を述べていただき,次に,リハビリテ-ション看護と訪問看護との連携,学校保健・産業保健の各領域での支援の現状とあり方や課題,連携を目指す組織づくりについて,各分野の第一線でご活躍中の皆様にわかりやすくまとめていただきました.
 第2の柱であるリハビリテ-ション看護実践研究では,排泄への支援を取りあげました.第5号のテ-マであった「セルフケア」とも関連しますが,その人の『活動を確保するための排泄支援の実践』は,極めて日常的で,かつ多彩な課題が含まれるものの1つでもあります.そこで,排泄ケアの基本的考え方として「排泄障害に対するリハビリテ-ション看護とは」「排泄に問題のある場合のケアのプロセス」に関してわかりやすく解説をお願いしました.そして,臨床の皆様から,スト-マケア・自己導尿などを必要としながら社会的自立を目指す人々への支援について,その実際をご提示いただきました.多様な取り組みの実践例からは,多くの示唆を得られることと思います.
 第3の柱である『リハビリテ-ション看護の国内外の動き』では,わが国のリハビリテ-ション医療について,今日的課題の題でお考えを示していただきました.ともすると激しく変化する社会の流れの中で足元を見失いがちになりますが,リハビリテ-ション看護の基盤をあらためて考えていただけるのではないかと思います.
 地域社会へのアプロ-チの必要性を理解していても,その支援は決して易しいことではありません.それを妨げてきた組織間の連携の不都合も,制度改革と共に少しずつ変化してきていますが,社会の変化はそれをも超えた凄まじい勢いのように感じます.保健医療福祉に関わる多くの組織の1つとして,リハビリテ-ション看護はどのように地域生活支援に取り組むべきなのか,どのような「構造改革」が望ましいのか,本書がそれを考える機会となれば幸いです.
 2003年新春 編者
1 地域生活を支えるリハビリテーション看護の役割とその方法
  1 地域,在宅におけるリハビリテーションでの看護の役割(山田 みどり)
   はじめに / リハビリテーション医療とリハビリテーション看護 / 地域リハビリテーションと在宅リハビリテーション / 「急性期」「回復期」を担う医療施設における,地域および在宅リハビリテーションへの基本的問題点 / 地域および在宅におけるリハビリテーション活動 / まとめ
  2 地域の側からみたリハビリテーション看護の役割とは(深沢 啓子)
   在宅生活を支援する地域リハビリテーションのシステム / 地域リハビリテーションと看護活動の展開 / 地域・医療機関連携室の機能とリンクした看護の継続性と連携のメリット / 地域リハビリテーションを支えるチームアプローチ / 事例検討より地域からみたリハビリテーションナースの役割を考える / まとめ
  3 学校保健の現場における看護的支援を要する児童・生徒の実態とこれからの支援のあり方(岡田 加奈子・三村 由香里)
   はじめに / 学校保健の特徴 / 看護的支援がとくに必要となる子どもとは / 支援体制とこれからのあり方
  4 産業保健領域におけるリハビリテーション(丹羽 成雄・濱田 雅子・須藤 美智子)
   産業保健領域でのリハビリテーションとは / 当企業におけるリハビリテーション支援体制の変遷と現在 / 慢性疾患フォローとしての職域疾病管理 / 今後の産業保健領域におけるリハビリテーションと看護
  5 地域に密着した組織づくりとリハビリテーション看護(板垣 昭代)
   はじめに / 在宅生活支援チームから組織づくりを考える / 「患者・家族会」からみた組織づくりを考える / おわりに
2 リハビリテーション看護実践研究―スペシャリストのための理論と実践「活動を確保するための排泄支援の実践」
  1 排泄障害に対するリハビリテーション看護とは(金城 利雄)
   排泄障害に対するアプローチのための基本事項 / 排泄動作障害に対する看護アプローチ / 排泄機能障害に対する看護アプローチ / 神経因性膀胱の尿路管理 / 神経因性直腸の排便管理
  2 排泄に問題のある場合のケアのプロセス(西村 かおる)
   なぜ排泄障害は問題となりやすいか / 排泄障害から起こる問題 / 正常な排泄行為とは / 排泄障害のケアのプロセス/おわりに
  3 排尿障害患者の個別ケア―在宅に向けて(甲州リハビリテーション病院)(諏訪 由美子・佐野 晃子・後藤 けさ美・内木 和彦・秋山 絵梨)
   はじめに / リハビリテーション看護における排尿ケア / 排尿ケアの実際 / 事例を振り返って排尿ケアのポイントを考える / おわりに
  4 人工肛門・人工膀胱の患者のリハビリテーション看護(社会保険広島市民病院)(岩根 弘栄)
   はじめに / ストーマリハビリテーションの実際 / 手術前ケア / 症例からみる術後ケア / ストーマ外来における患者個々に応じた対応
  5 尿路変更術前後の社会的自立に向けた看護支援(広島赤十字原爆病院)(三村 聖子)
   はじめに / 尿路変更術の基本的知識 / 尿路変更術後患者の社会的自立へのリハビリテーション看護のポイント / 尿路変更術を受けた患者のリハビリテーション看護の実際 /おわりに
  6 排泄を自立し活動を確保する自己導尿とは(茨城県立医療大学付属病院)(砂原 みどり・堀内 ふき)
   はじめに / CIC自立への援助 / 看護の実際 / おわりに
3 リハビリテーション看護の国内外の動き
  1 リハビリテーション医療の今日的課題(大田 仁史)
   地域リハビリテーション医療の流れ / リハビリテーション医療の流れ / 地域リハビリテーションの本質 / 福祉との接点を求めて / おわりに
 トピックス
  リハビリテーション看護関係の書籍紹介(宮腰 由紀子)