はじめに
新世紀を迎え,科学の進歩によりヒトゲノムの全塩基配列が解読間近になってきました.今後は遺伝子の機能解析が進み,個人の遺伝情報をもとにした健康増進,病気の診断・治療が行われるようになるでしょう.情報化の波に乗り,遺伝に関する研究成果は時々刻々と世界中に公表されています.病み,苦しんでいる患者さんやそのご家族をはじめ,知りたいと思う人は,世界の研究機関や検査会社,専門団体あるいは個人のホームページなどから発信されるさまざまな遺伝情報を居ながらにして得ることができる時代です.
しかしながら,わが国においては情報や技術だけが先走りし,保健医療の場での対人サービスという点での十分な備えがありません.遺伝子診断が十分な説明がないままに行われ,その結果に対してしっかりとした事後対応もなされず,当事者だけがさまざまな重荷を負わされているのが現状です.しかし,やっとここ数年「遺伝サービス」,「チーム医療」をキーワードに遺伝医療システムが検討され始めました.
このような情勢のなか,保健医療専門職の教育カリキュラムに,人類遺伝学の知識や遺伝カウンセリングの技術を取り入れる必要性が関係者の間で認識されるようになってきました.現実に病院や地域において遺伝的な問題をもつ人々と接することの多い看護職に対しては,看護基礎教育だけでなく,現任教育における遺伝学的基礎知識や遺伝的な問題に関する理解が早急の課題となっております.
あえてこの新しい実践領域をここでは「遺伝看護」と呼ぶことにします.
本書は,わが国でははじめての看護職によって書かれた「遺伝看護」の本です.内容は,さまざまな遺伝的な問題をもつ人々に看護職はどのような援助をこれまでにしてきたか,これからはどのような援助ができるか,あるいはしなければならないか,またそのために必要な基礎科学の知識はなにか,さらに看護実践例を含めています.看護職はこれまでにも遺伝的な問題をもつ人々を支援してきましたが,さらに新しい遺伝学の知識を取り込んで,より専門的な知識・技術を駆使してケアを提供できるようにならなければなりません.
遺伝看護はその必要性が認識され始めたばかりの領域ですから,紹介している看護事例は決して模範になるという意味で提示しているわけではありません.また本書に掲げた事例は倫理的配慮のために,実際例をもとに家系構成員や情報などを変化させていますが,遺伝的な問題をより身近に感じていただくために,どのような遺伝的な問題があり,看護過程にそってどのように問題解決してゆくかを示すように努めました.この本を読んでくださる方々がこれらの事例を通して,遺伝看護とはどんなものかを理解するための手がかりにしていただくことがねらいです.
学生の方々は実習のなかで,またすでに看護職として活躍中のみなさまは日常業務において,今後実践される事例を通して,遺伝的な問題をもつ人々へのよりよいケアのあり方について討議の輪を広げ,看護のあらゆる場において「遺伝看護」が実践されるようになることを願っています.本書が,新しい保健医療ニーズに対応する「遺伝看護」の発展に少しでも貢献できれば幸いです.
なお保健婦助産婦看護婦法の一部改正(2001年12月6日国会可決)により,保健師・助産師・看護師・准看護師に呼称が変更になりましたので,本書では新しい呼称を用いました.
2002年1月 編者一同
新世紀を迎え,科学の進歩によりヒトゲノムの全塩基配列が解読間近になってきました.今後は遺伝子の機能解析が進み,個人の遺伝情報をもとにした健康増進,病気の診断・治療が行われるようになるでしょう.情報化の波に乗り,遺伝に関する研究成果は時々刻々と世界中に公表されています.病み,苦しんでいる患者さんやそのご家族をはじめ,知りたいと思う人は,世界の研究機関や検査会社,専門団体あるいは個人のホームページなどから発信されるさまざまな遺伝情報を居ながらにして得ることができる時代です.
しかしながら,わが国においては情報や技術だけが先走りし,保健医療の場での対人サービスという点での十分な備えがありません.遺伝子診断が十分な説明がないままに行われ,その結果に対してしっかりとした事後対応もなされず,当事者だけがさまざまな重荷を負わされているのが現状です.しかし,やっとここ数年「遺伝サービス」,「チーム医療」をキーワードに遺伝医療システムが検討され始めました.
このような情勢のなか,保健医療専門職の教育カリキュラムに,人類遺伝学の知識や遺伝カウンセリングの技術を取り入れる必要性が関係者の間で認識されるようになってきました.現実に病院や地域において遺伝的な問題をもつ人々と接することの多い看護職に対しては,看護基礎教育だけでなく,現任教育における遺伝学的基礎知識や遺伝的な問題に関する理解が早急の課題となっております.
あえてこの新しい実践領域をここでは「遺伝看護」と呼ぶことにします.
本書は,わが国でははじめての看護職によって書かれた「遺伝看護」の本です.内容は,さまざまな遺伝的な問題をもつ人々に看護職はどのような援助をこれまでにしてきたか,これからはどのような援助ができるか,あるいはしなければならないか,またそのために必要な基礎科学の知識はなにか,さらに看護実践例を含めています.看護職はこれまでにも遺伝的な問題をもつ人々を支援してきましたが,さらに新しい遺伝学の知識を取り込んで,より専門的な知識・技術を駆使してケアを提供できるようにならなければなりません.
遺伝看護はその必要性が認識され始めたばかりの領域ですから,紹介している看護事例は決して模範になるという意味で提示しているわけではありません.また本書に掲げた事例は倫理的配慮のために,実際例をもとに家系構成員や情報などを変化させていますが,遺伝的な問題をより身近に感じていただくために,どのような遺伝的な問題があり,看護過程にそってどのように問題解決してゆくかを示すように努めました.この本を読んでくださる方々がこれらの事例を通して,遺伝看護とはどんなものかを理解するための手がかりにしていただくことがねらいです.
学生の方々は実習のなかで,またすでに看護職として活躍中のみなさまは日常業務において,今後実践される事例を通して,遺伝的な問題をもつ人々へのよりよいケアのあり方について討議の輪を広げ,看護のあらゆる場において「遺伝看護」が実践されるようになることを願っています.本書が,新しい保健医療ニーズに対応する「遺伝看護」の発展に少しでも貢献できれば幸いです.
なお保健婦助産婦看護婦法の一部改正(2001年12月6日国会可決)により,保健師・助産師・看護師・准看護師に呼称が変更になりましたので,本書では新しい呼称を用いました.
2002年1月 編者一同
第I章 遺伝医療における看護の現状と展望
1 遺伝医療の現状(塚原正人)
1 遺伝医療の対象
2 遺伝医療の実践
1)初 診
2)診 察
3)情報の収集
4)検 査
5)診 断
6)治 療
7)遺伝性の有無のチェック
8)遺伝カウンセリング
9)経過観察
3 ポストゲノム時代の遺伝医療
2 遺伝看護の現状と歴史的概観(安藤広子)
1 わが国における遺伝看護の歴史的概観
1)家族ケアとしての看護
2)地域遺伝相談としての看護
3)遺伝看護への志向
4)チーム医療としての看護
2 遺伝看護の現状
1)地域における遺伝看護
2)臨床における遺伝看護
3 「遺伝看護」教育・研究の実態
4 現状における「遺伝看護」への課題
1)医療チームメンバーとしての役割遂行
2)「遺伝看護」教育体制の整備
3)国際的視野に立った看護実践
4)「遺伝」に関連する社会政策(social policy)への参画
3 遺伝看護教育(溝口満子)
1 必要な教育
1)すべての看護職に求められる教育―看護基礎教育
2)看護基礎教育の現状
3)看護基礎教育の課題
4)継続教育に求められる教育
5)期待される卒後教育
2 教育的課題
4 遺伝医療サービスと看護倫理(安藤広子)
1 遺伝医療サービスの倫理的課題
1)病因の明確化に向けた研究場面における課題
2)遺伝子検査・スクリーニングの場面における課題
3)処置・治療場面における課題
2 臨床場面における倫理的考察
3 看護実践における倫理的意思決定
5 看護への役割期待(有森直子)
1 遺伝医療のなかでの看護の役割
1)対象の理解
2)遺伝看護の場とそのかかわり
2 遺伝カウンセリングと看護
3 これからのわが国における看護
6 諸外国の遺伝看護(溝口満子)
1 イギリス
1)看護職が支える遺伝サービスシステム
2)癌遺伝医療サービスの実際(ウェールズ地域)
3)遺伝カウンセラー・遺伝専門看護婦の役割
4)遺伝カウンセラーの教育と資格認定
2 アメリカ
1)遺伝専門看護職の働く場
2)遺伝専門看護婦の役割
3)遺伝専門看護婦の教育と資格認定
3 その他の国
4 将来展望
第II章 遺伝看護の実践
胎児・周産期
1 出生前診断(中込さと子)
1 出生前診断をどのようにとらえていくか
2 出生前に胎児の状態を予測するための諸検査
3 出生前診断によって胎児の異常がわかった妊婦や家族がおかれている状況
1)高齢出産や遺伝性疾患に関連した出生前診断の場合
2)妊婦健康診査のなかで異常が発見された場合
4 出生前診断に関する相談の際に考慮しなければならない視点
1)女性の視点
2)胎児の視点
3)検査を受けないという選択
4)胎児をあきらめるという選択
5)結果的に流産や死産といった妊娠喪失の体験をした女性について
5 今後の課題
2 先天奇形(中込さと子)
1 対象となる疾患
1)先天奇形の実態
2 先天奇形をもって生まれてくる子どもや親がおかれる状況
1)出生前に診断された場合の親の状況
2)出生直後に診断された場合の親の状況
3)先天奇形をもった子どもが育つ過程
3 先天奇形に関するアセスメントの視点
4 先天奇形をもつ子の親に対する看護の基本的視点
1)生死の境をさまよって生きている子であることを忘れてはならない
2)親の心情や立場は分裂し混乱していることを知る
3)親の本当の思いに蓋をさせてはならない
4)親の過剰な負担は極力減らすべきである
5)親の言葉や行動の意味を独断で解釈してはならない
6)本人・親の会も含めた社会資源の紹介は必要,だが,安易にしないこと
7)フォローアップ―めぐりあいのメリットはどこにあるかわからない
5 今後の課題
事例 水頭症
3 染色体異常(横山寛子・松内佳子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)出生前あるいは出生直後に診断がついた場合
2)子どもの成長過程のなかで生じる問題
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)染色体異常児の受容過程への支援
3)疾病コントロールおよび療育支援への情報提供
4)相 談
5)倫理的配慮
5 今後の課題
1)平均生存年齢の延長と社会的支援体制の整備
2)育児サポート体制の不備
3)早期老化現象
事例 ダウン症候群
小児期
1 先天代謝異常(深川ゆかり)
1 対象となる疾患
2 患児や家族がおかれている状況
1)先天代謝異常の発症・障害
2)恐怖心をもっている
3)症状の特徴
4)医療・治療を継続して受ける必要がある
5)生活支援が必要である
6)生命保険加入
7)結婚,妊娠に関する心理的葛藤
8)子どもに遺伝性疾患であることを伝える時期
9)治療法
10)先天代謝異常の告知
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)障害の発症予防と治療食コントロールのための援助
3)相 談
4)倫理的配慮
5 今後の課題
1)マス・スクリーニングの拡大
2)治療法の開発
3)患者に対応する人材不足
4)親,患児からの希望・提案
事例 フェニルケトン尿症
2 血液疾患(土居泰子・矢崎真弓)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)生命への危機感が強い
2)苦痛が大きい
3)長期的,継続的,時に永久的治療を要する
4)成長・発育・社会性への影響
5)遺伝性の疾患であり偏見をもたれやすい
6)遺伝性疾患であることを家族や子どもにいつ告知するのか
7)親の心理的・社会的葛藤
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集
2)教 育
3)疾病コントロールのための援助
4)心理社会的援助
5)家族(親)への援助
6)包括医療
5 今後の課題
1)将来的な治療
2)生命保険・雇用における差別の問題
3)患児・家族サポートシステム
事例 血友病
3 神経・筋疾患(三矢早美)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)発症時および診断時の親の混乱が大きい
2)病気の事実を子どもに伝えるためのサポートが必要である
3)進行性の障害に対する継続支援が必要である
4)養育上の支援が必要となる
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)患児および家族の疾病理解の有無とその内容
4)患児の身体発育・精神発達状況
5)家族構成と生活状況
4 看護支援
1)情報収集段階
2)疾病理解のための支援
3)疾病コントロールのための援助
4)遺伝相談へのアプローチ
5)コーディネーターとしての看護職の役割
6)子育て支援および患児と家族の自立を促す試み
7)病気告知への支援
8)在宅介護時の緊急対応とシステムの調整
9)社会資源の利用とシステム開発
10)家族の情緒安定のための支援
11)親の会などの支援団体の紹介
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
事例 デュシェンヌ型筋ジストロフィー
成人期
1 癌(悪性腫瘍)(武田祐子・数間恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)患者や家族の認識(受け止め)や行動の特徴
2)医療の特徴
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)遺伝性腫瘍患者の発見
2)診断・治療に関する意思決定のための支援
3)遺伝性腫瘍に対する心理的反応の受容
4)家族内でのコミュニケーションの調整
5)癌の早期発見のための教育
6)治療後の社会生活適応のための支援
7)定期的検診を生涯継続していくための支援
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
1)社会的支援システムの構築
2)癌遺伝カウンセリング体制の整備
3)医療費の負担軽減に関する働きかけ
事例 家族性大腸腺腫症
2 遅発性遺伝疾患(柊中智恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)家族内において遺伝性疾患を伝えることの難しさ
2)発症前遺伝子診断に対する見解の多様性
3)多彩な症状や障害に対する医療・福祉サービスの支援不足
4)生命保険加入時や雇用時の差別問題
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)疾病コントロールのための援助
3)相 談
4)倫理的配慮
5 今後の課題
事例 家族性アミロイドポリニューロパチー
3 生活習慣病(箱石恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集
2)疾病コントロールのための援助
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
1)個人の条件に応じた生活習慣の確立に向けた指導
2)遺伝子治療
事例 2 型糖尿病
第III章 看護に必要な遺伝学の知識
1 染色体と DNA(飯野英親)
1 DNAの構造
2 遺伝子構造と発現
3 染色体の形態と分類
2 遺伝形式(辻野久美子)
1 ヒトのメンデル遺伝
1)常染色体優性遺伝
2)常染色体劣性遺伝
3)X連鎖優性遺伝
4)X連鎖劣性遺伝
5)Y連鎖遺伝
2 多因子遺伝
1)量的形質(連続形質)
2)閾形質
3 遺伝子病(飯野英親)
1 単一遺伝子(メンデル遺伝)病
2 多因子性疾患
4 染色体異常(村上京子)
1 染色体異常と発生機構
1)数的異常
2)構造異常
3)モザイク
2 染色体異常症
5 先天奇形(村上京子)
1 定義
2 先天奇形の原因・頻度
3 形態発生の異常による分類
1)変 形
2)破 壊
3)奇形症候群
4)シークエンス
5)連 合
4 胎児期の異常による奇形・疾患
6 遺伝子診断(溝口満子)
1 遺伝子診断とは
2 実施の現状
3 遺伝子診断と倫理問題
4 遺伝子診断の実際
1)検 体
2)直接 DNA診断
3)間接 DNA診断
7 リスクアセスメント(辻野久美子)
1 理論的危険率の推定
1)常染色体優性の場合
2)常染色体劣性の場合
3)X連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)の場合
2 経験的危険率の推定
3 近親婚の影響
8 最近の技術的進歩(飯野英親)
1 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
2 FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)法
3 CGH解析
4 SKY法
5 DNAマイクロアレイ法
9 家系図(村上京子)
1 家族歴聴取
2 記載方法
3 一般的な家系図と遺伝カウンセリングに用いられる家系図
10 インターネットを利用した遺伝看護に有用な情報検索(飯野英親)
1 ポータルサイト
2 遺伝専門職関連
3 遺伝性疾患情報全般
4 遺伝カウンセリング関連
5 先天異常領域
6 助産・新生児領域
7 癌看護領域
8 神経・筋疾患難病領域
9 遺伝倫理・生命倫理領域
1 遺伝医療の現状(塚原正人)
1 遺伝医療の対象
2 遺伝医療の実践
1)初 診
2)診 察
3)情報の収集
4)検 査
5)診 断
6)治 療
7)遺伝性の有無のチェック
8)遺伝カウンセリング
9)経過観察
3 ポストゲノム時代の遺伝医療
2 遺伝看護の現状と歴史的概観(安藤広子)
1 わが国における遺伝看護の歴史的概観
1)家族ケアとしての看護
2)地域遺伝相談としての看護
3)遺伝看護への志向
4)チーム医療としての看護
2 遺伝看護の現状
1)地域における遺伝看護
2)臨床における遺伝看護
3 「遺伝看護」教育・研究の実態
4 現状における「遺伝看護」への課題
1)医療チームメンバーとしての役割遂行
2)「遺伝看護」教育体制の整備
3)国際的視野に立った看護実践
4)「遺伝」に関連する社会政策(social policy)への参画
3 遺伝看護教育(溝口満子)
1 必要な教育
1)すべての看護職に求められる教育―看護基礎教育
2)看護基礎教育の現状
3)看護基礎教育の課題
4)継続教育に求められる教育
5)期待される卒後教育
2 教育的課題
4 遺伝医療サービスと看護倫理(安藤広子)
1 遺伝医療サービスの倫理的課題
1)病因の明確化に向けた研究場面における課題
2)遺伝子検査・スクリーニングの場面における課題
3)処置・治療場面における課題
2 臨床場面における倫理的考察
3 看護実践における倫理的意思決定
5 看護への役割期待(有森直子)
1 遺伝医療のなかでの看護の役割
1)対象の理解
2)遺伝看護の場とそのかかわり
2 遺伝カウンセリングと看護
3 これからのわが国における看護
6 諸外国の遺伝看護(溝口満子)
1 イギリス
1)看護職が支える遺伝サービスシステム
2)癌遺伝医療サービスの実際(ウェールズ地域)
3)遺伝カウンセラー・遺伝専門看護婦の役割
4)遺伝カウンセラーの教育と資格認定
2 アメリカ
1)遺伝専門看護職の働く場
2)遺伝専門看護婦の役割
3)遺伝専門看護婦の教育と資格認定
3 その他の国
4 将来展望
第II章 遺伝看護の実践
胎児・周産期
1 出生前診断(中込さと子)
1 出生前診断をどのようにとらえていくか
2 出生前に胎児の状態を予測するための諸検査
3 出生前診断によって胎児の異常がわかった妊婦や家族がおかれている状況
1)高齢出産や遺伝性疾患に関連した出生前診断の場合
2)妊婦健康診査のなかで異常が発見された場合
4 出生前診断に関する相談の際に考慮しなければならない視点
1)女性の視点
2)胎児の視点
3)検査を受けないという選択
4)胎児をあきらめるという選択
5)結果的に流産や死産といった妊娠喪失の体験をした女性について
5 今後の課題
2 先天奇形(中込さと子)
1 対象となる疾患
1)先天奇形の実態
2 先天奇形をもって生まれてくる子どもや親がおかれる状況
1)出生前に診断された場合の親の状況
2)出生直後に診断された場合の親の状況
3)先天奇形をもった子どもが育つ過程
3 先天奇形に関するアセスメントの視点
4 先天奇形をもつ子の親に対する看護の基本的視点
1)生死の境をさまよって生きている子であることを忘れてはならない
2)親の心情や立場は分裂し混乱していることを知る
3)親の本当の思いに蓋をさせてはならない
4)親の過剰な負担は極力減らすべきである
5)親の言葉や行動の意味を独断で解釈してはならない
6)本人・親の会も含めた社会資源の紹介は必要,だが,安易にしないこと
7)フォローアップ―めぐりあいのメリットはどこにあるかわからない
5 今後の課題
事例 水頭症
3 染色体異常(横山寛子・松内佳子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)出生前あるいは出生直後に診断がついた場合
2)子どもの成長過程のなかで生じる問題
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)染色体異常児の受容過程への支援
3)疾病コントロールおよび療育支援への情報提供
4)相 談
5)倫理的配慮
5 今後の課題
1)平均生存年齢の延長と社会的支援体制の整備
2)育児サポート体制の不備
3)早期老化現象
事例 ダウン症候群
小児期
1 先天代謝異常(深川ゆかり)
1 対象となる疾患
2 患児や家族がおかれている状況
1)先天代謝異常の発症・障害
2)恐怖心をもっている
3)症状の特徴
4)医療・治療を継続して受ける必要がある
5)生活支援が必要である
6)生命保険加入
7)結婚,妊娠に関する心理的葛藤
8)子どもに遺伝性疾患であることを伝える時期
9)治療法
10)先天代謝異常の告知
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)障害の発症予防と治療食コントロールのための援助
3)相 談
4)倫理的配慮
5 今後の課題
1)マス・スクリーニングの拡大
2)治療法の開発
3)患者に対応する人材不足
4)親,患児からの希望・提案
事例 フェニルケトン尿症
2 血液疾患(土居泰子・矢崎真弓)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)生命への危機感が強い
2)苦痛が大きい
3)長期的,継続的,時に永久的治療を要する
4)成長・発育・社会性への影響
5)遺伝性の疾患であり偏見をもたれやすい
6)遺伝性疾患であることを家族や子どもにいつ告知するのか
7)親の心理的・社会的葛藤
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集
2)教 育
3)疾病コントロールのための援助
4)心理社会的援助
5)家族(親)への援助
6)包括医療
5 今後の課題
1)将来的な治療
2)生命保険・雇用における差別の問題
3)患児・家族サポートシステム
事例 血友病
3 神経・筋疾患(三矢早美)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)発症時および診断時の親の混乱が大きい
2)病気の事実を子どもに伝えるためのサポートが必要である
3)進行性の障害に対する継続支援が必要である
4)養育上の支援が必要となる
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)患児および家族の疾病理解の有無とその内容
4)患児の身体発育・精神発達状況
5)家族構成と生活状況
4 看護支援
1)情報収集段階
2)疾病理解のための支援
3)疾病コントロールのための援助
4)遺伝相談へのアプローチ
5)コーディネーターとしての看護職の役割
6)子育て支援および患児と家族の自立を促す試み
7)病気告知への支援
8)在宅介護時の緊急対応とシステムの調整
9)社会資源の利用とシステム開発
10)家族の情緒安定のための支援
11)親の会などの支援団体の紹介
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
事例 デュシェンヌ型筋ジストロフィー
成人期
1 癌(悪性腫瘍)(武田祐子・数間恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)患者や家族の認識(受け止め)や行動の特徴
2)医療の特徴
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)遺伝性腫瘍患者の発見
2)診断・治療に関する意思決定のための支援
3)遺伝性腫瘍に対する心理的反応の受容
4)家族内でのコミュニケーションの調整
5)癌の早期発見のための教育
6)治療後の社会生活適応のための支援
7)定期的検診を生涯継続していくための支援
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
1)社会的支援システムの構築
2)癌遺伝カウンセリング体制の整備
3)医療費の負担軽減に関する働きかけ
事例 家族性大腸腺腫症
2 遅発性遺伝疾患(柊中智恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
1)家族内において遺伝性疾患を伝えることの難しさ
2)発症前遺伝子診断に対する見解の多様性
3)多彩な症状や障害に対する医療・福祉サービスの支援不足
4)生命保険加入時や雇用時の差別問題
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集段階
2)疾病コントロールのための援助
3)相 談
4)倫理的配慮
5 今後の課題
事例 家族性アミロイドポリニューロパチー
3 生活習慣病(箱石恵子)
1 対象となる疾患
2 患者や家族がおかれている状況
3 アセスメント
1)身体状況
2)遺伝状態
3)心理社会的状態
4 看護支援
1)情報収集
2)疾病コントロールのための援助
5 倫理的・法的・社会的問題への対応
6 今後の課題
1)個人の条件に応じた生活習慣の確立に向けた指導
2)遺伝子治療
事例 2 型糖尿病
第III章 看護に必要な遺伝学の知識
1 染色体と DNA(飯野英親)
1 DNAの構造
2 遺伝子構造と発現
3 染色体の形態と分類
2 遺伝形式(辻野久美子)
1 ヒトのメンデル遺伝
1)常染色体優性遺伝
2)常染色体劣性遺伝
3)X連鎖優性遺伝
4)X連鎖劣性遺伝
5)Y連鎖遺伝
2 多因子遺伝
1)量的形質(連続形質)
2)閾形質
3 遺伝子病(飯野英親)
1 単一遺伝子(メンデル遺伝)病
2 多因子性疾患
4 染色体異常(村上京子)
1 染色体異常と発生機構
1)数的異常
2)構造異常
3)モザイク
2 染色体異常症
5 先天奇形(村上京子)
1 定義
2 先天奇形の原因・頻度
3 形態発生の異常による分類
1)変 形
2)破 壊
3)奇形症候群
4)シークエンス
5)連 合
4 胎児期の異常による奇形・疾患
6 遺伝子診断(溝口満子)
1 遺伝子診断とは
2 実施の現状
3 遺伝子診断と倫理問題
4 遺伝子診断の実際
1)検 体
2)直接 DNA診断
3)間接 DNA診断
7 リスクアセスメント(辻野久美子)
1 理論的危険率の推定
1)常染色体優性の場合
2)常染色体劣性の場合
3)X連鎖劣性遺伝(伴性劣性遺伝)の場合
2 経験的危険率の推定
3 近親婚の影響
8 最近の技術的進歩(飯野英親)
1 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法
2 FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)法
3 CGH解析
4 SKY法
5 DNAマイクロアレイ法
9 家系図(村上京子)
1 家族歴聴取
2 記載方法
3 一般的な家系図と遺伝カウンセリングに用いられる家系図
10 インターネットを利用した遺伝看護に有用な情報検索(飯野英親)
1 ポータルサイト
2 遺伝専門職関連
3 遺伝性疾患情報全般
4 遺伝カウンセリング関連
5 先天異常領域
6 助産・新生児領域
7 癌看護領域
8 神経・筋疾患難病領域
9 遺伝倫理・生命倫理領域