やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 本書の前版『リハビリテーション介護福祉論』が出版され,はや4年が経過した.この間,多くの施策が展開され,われわれ関係者を取り巻く状況も大きく変化してきている.現在わが国は,急速に少子高齢社会へと進展しているが,それを支えるマンパワーは依然充足しているとは言い難い状況にある.
 国はこれらの課題に対して,老人保健法や老人福祉法の大幅な改正を行い,都道府県および市町村に「老人保健福祉計画」の策定を義務づけ,それを積み上げる形で「新ゴールドプラン」打ち出してきた.そして,老人保健福祉審議会から出された「新たな高齢者介護システムの確立について」を受け,2000年には介護保険制度が本格的に導入された.
 周知のとおり,介護保険制度は利用者本位のサービス提供を目指した制度であるが,市町村などが行う要介護認定において,要介護あるいは要支援と認定されなければ保険給付としてのサービスを受けることはできない.しかしながら,現在各種サービスを受けている方々のなかには認定から洩れる方々も少なからずおり,今後の課題となっている.
 本書は,このような状況も踏まえ,今後益々重要になってくるであろう「リハビリテーション」について,介護福祉士を目指している方々を対象に全面改訂してまとめたものである.
 今,社会サービスを必要とする人々や家族がわれわれに求めているものは,専門的な技術はもちろんのこと,自分たちがおかれた生活状況を自分のこととして受け止め,心身の両面にわたり支援してくれる豊かな人間性をもちあわせた「人」である.われわれがサービスを提供する利用者も同じ「人」であり,共に生活する「生活主体者」であることを十分認識しておかなければならない.このことを前提として,はじめてわれわれの専門的知識や技術が生きてくる.
 今後,人口の高齢化や少子化,女性の就業率の向上といった社会情勢,あるいは医学の進歩といったことによって,社会サービスを必要とする人は増加していくものと推察される.しかし,いかなる状況であっても,その人らしい生活をおくることができるようにするには,われわれに何ができるのか,あるいは何が求められているのか,同じ「人」として,「生活者」として,共に考えていきたいものである.本書がその一助となることを祈念してやまない.
 2000年6月 編者 山本和儀
はじめに…山本和儀

第1章 総論 山本和儀・森山雅志
I.リハビリテーションとは何か
 1.リハビリテーションの歴史
 2.リハビリテーションの考えかた
 3.リハビリテーションと介護福祉
II.ノーマライゼーションとは何か
 1.ノーマライゼーション思想とは
 2.ノーマライゼーション思想の展開
 3.自立生活(IL)運動とは
 4.障害者プランとは
 5.ノーマライゼーションのまちづくり・地域づくり
III.リハビリテーションにおけるQOL
 1.QOLとは
 2.要援護者と家族にとってのQOL
  1)要援護者のQOL
  2)家族にとってのQOL
 3.生活リハビリテーションとADL
IV.リハビリテーションと介護保険制度
 1.介護保険制度の概要
  1)被保険者と保険料徴収の仕組み
  2)要介護認定におけるリハビリテーションの視点
V.福祉用具と住宅改修
 1.福祉用具
  1)申請までの流れ
  2)導入の際の留意点
  3)保険給付としての福祉用具
  4)給付外の福祉用具
 2.住環境の整備
  1)環境整備上の留意点
  2)環境整備費用の制度的位置づけ

第2章 リハビリテーションと介護福祉
I.介護福祉とリハビリテーション…武原光志
 1.『生活』と正面から向き合う
 2.『生活を支援する』ということ
 3.リハビリテーションと介護の接点
 4.リハビリテーションケアの視点
 5.地域づくり
II.リハビリテーション介護とは何か…大橋美幸
 1.リハビリテーション介護とは
  1)“当たり前の生活”とは
  2)“その人らしい人生”とは
 2.リハビリテーション介護が提供するサービス
  1)“食堂で食事をする”ことの意味
  2)有意義な時を過ごすための工夫
 3.介護技術の諸相
  1)“食堂で食事をとる”意味
  2)“日中はパジャマを着替える”意味
  3)“できることは自分でする”意味
  4)“活動的な生活を援助する”意味
  5)もっと有意義な時を過ごすために
III.ケアマネジメントとケアプラン…武原光志
 1.介護保険とケアマネジメント
 2.ケアマネジメントの目的
 3.ケアパッケージとケアプラン
 4.ケアパッケージの作成
 5.カンファレンスでのサービス調整
 6.ケアプランの作成
 7.施設入所者のケアプラン
 8.ケアプランとチームケア
  1)施設内でのチームケア
  2)施設を超えたチームケア
IV.リハビリテーションチームにおける介護福祉士の役割…宮岡秀子
 1.リハビリテーションチームとは
  1)チームメンバー
  2)チームの成り立ち
 2.チームアプローチの重要性
  1)チームアプローチとは
  2)チームアプローチを行うために
 3.リハビリテーションチームにおける各職種の役割

第3章 リハビリテーション利用者の理解と介護援助の実際
I.障害と心理の理解…野村典子・坪山 孝
 1.障害をもつ人の心理
  1)人の心理は個々人で違う
  2)介護支援に向けて
  3)障害者とは
 2.高齢者の心理
  1)高齢者に対する社会のイメージ
  2)老性自覚
  3)身体と心の特徴
  4)高齢期は個人差の大きな時代
  5)高齢期は喪失の時代
  6)生きる目的の重要性
II.身体障害者(児)…伊藤晴人・野村典子
 1.身体障害とは
 2.援助の実際
  1)肢体不自由児
  2)肢体不自由者
III.視覚障害者(児)…乾 伊津子
 1.視覚障害とは
 2.視覚障害がもたらす制限
  1)概念形成など学習場面での制限
  2)行動能力の制限
  3)環境から情報を入手することの制限
  4)意思や情報の伝達上の制限
  5)職業的・経済的な制限
  6)人格形成に及ぼす制限
 3.リハビリテーションと援助
  1)移動能力の回復
  2)意思伝達方法の獲得
  3)日常生活の諸技術の獲得
  4)視覚に障害をもつ人への対応
IV.聴覚障害者(児)…吉岡善隆
 1.聴覚障害とは
 2.介護支援の実際
  1)聴覚障害者
  2)聴覚障害児
 3.今後の支援のありかた
V.言語障害者(児)…村田 泉
 1.言語障害の特徴─誤解されやすい障害
 2.言語活動の4つの側面と言語障害の種類
  1)話すことの障害─運動障害性構音障害
  2)失語症
 3.コニュニケーション方法の実際
  1)コミュニケーション上の配慮
  2)視力障害と聴力障害への配慮
  3)身体麻痺に対する配慮
  4)言語障害者になる前の生活を配慮
  5)運動障害性構音障害の場合
  6)失語症の場合
  7)言語障害者を援助するために
VI.内部障害者の理解と介護援助の実際…藤田雅章
 1.内部障害とは
  1)心臓障害
  2)呼吸器障害
  3)腎障害
  4)肝障害
  5)糖尿病
  6)人工肛門,胃瘻
VII.知的障害者(児)…林 伸q・山本純子
 1.知的障害とは
 2.援助の実際
  1)知的障害児
  2)知的障害者
VIII.重複障害者(児)…伊藤晴人・林 伸子
 1.重複障害とは
 2.援助の実際
  1)重複障害児
  2)重複障害者
IX.高齢者(寝たきり,虚弱,痴呆)…伊藤晴人・野村典子・林 伸子・山本純子
 1.高齢者とは
 2.寝たきり
  1)寝たきり老人とは
  2)介護援助の実際
 3.虚 弱
  1)虚弱老人とは
  2)介護援助の実際
 4.痴 呆
  1)痴呆性老人とは
  2)介護援助の実際
 5.高齢者の支援
X.精神障害者への理解とリハビリテーション…田川精二
 1.精神障害とは
 2.精神障害の分類
 3.精神分裂病についての理解
  1)原因
  2)症状と経過
  3)精神分裂病における“障害”とは
 4.治療とリハビリテーション
 5.リハビリテーションへの視点とかかわり
XI.難病…伊藤晴人・野村典子
 1.難病とは
 2.難病対策の現状
 3.介護支援の実際とそのありかた
  1)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  2)パーキンソン病
  3)脊髄小脳変性症(SCD)

第4章 社会的ハビリテーションと介護福祉
I.社会的リハビリテーション…武原光志
 1.医学的リハビリテーションの限界
 2.「障害分類」と社会的リハビリテーション
 3.社会的リハビリテーションの領域
 4.社会的リハビリテーションの役割
 5.社会的リハビリテーションと社会福祉
 6.社会的リハビリテーションの達成目標
 7.社会的リハビリテーションと地域リハビリテーション
 8.社会的リハビリテーションとノーマライゼーション
II.社会的リハビリテーションと社会資源…岩間伸之・原 順子
 1.社会資源の基本的理解
  1)社会資源のとらえかた
  2)社会資源の類型
  3)援助媒体としての社会資源
  4)社会資源の開発と計画的整備
 2.社会資源の概念的枠組み
  1)社会資源の分野別区分
  2)社会資源の質的区分
  3)社会資源の概念的枠組み
 3.社会的リハビリテーションにおける社会資源の活用
  1)社会的リハビリテーションと社会資源
  2)ケアマネジメントによる社会資源の活用
  3)社会資源の実際的活用
III.地域リハビリテーシ…山本和儀・森山雅志
 1.地域リハビリテーションの定義
 2.地域リハビリテーション活動
 3.地域リハビリテーションの実施機関(施設)
  1)行政機関
  2)医療機関
  3)その他
 4.地域リハビリテーション活動を支える人たち
IV.ボランティア活動…山本和儀・森山雅志
 1.ボランティアとは
 2.ボランティア活動の役割
 3.ボランティア活動のおもな内容
 4.ボランティアの育成と研修
 5.ボランティアに対する行政方針

第5章 リハビリテーション介護の基本技術 大東市保健医療福祉センターリハビリテーション課

第6章 介護福祉の具体的事例の展開
I.在宅における介護福祉の実際…森山雅志・大角順子
 1.地域における在宅介護の事例
  1)医療・保健・福祉サービスを利用しながら在宅生活を継続する(事例1)
  2)昼間独居の虚弱な高齢者で家庭介護力が弱い場合(事例2)
 2.在宅介護にかかわる職種・機関の連携
II.障害児(者)施設における介護福祉の実際…関 宏之・米崎二朗
 1.社会福祉施設の目的・機能
 2.社会福祉施設における介護の基本概念
 3.社会福祉施設別介護のありかた・特徴
  1)滞留型施設における介護
  2)利用・通過型施設における介護
 4.地域の社会福祉資源
III.老人施設における介護福祉の実際…坪山 孝・松田恵美子・武原光志・本橋みどり・森山雅志・相原道子
 1.特別養護老人ホーム
  1)痴呆性高齢者のもたらした課題
  2)現状と介護課題
  3)介護は引き受ける役割を求める
 2.老人保健施設
  1)施設紹介
  2)当施設でのリハビリテーションの考えかた
  3)リハビリテーションの実際
  4)ケアプランの実施
  5)ケースカンファレンスの進めかた
  6)事例紹介
  7)今後の課題
 3.老人病院(療養型病床群・介護力強化病院)
  1)老人医療の変化
  2)介護力強化病院での“ケア”
  3)高齢者ケアプラン
  4)事例紹介
 4.通所リハビリテーション(デイケア)
  1)通所リハビリテーションの内容
  2)通所リハビリテーションの実際の業務のなかから
 5.通所介護(デイサービス)
  1)現状と問題点
  2)今後もつべき視点
 6.在宅介護支援センター
  1)社会的介護の中核としての在宅介護支援センター
  2)在宅介護支援センターの機能
 7.保健センター
  1)寝たきりゼロへの取り組み
  2)訪問看護事業
  3)自立者への対策