序文
一般的なエコー検査は指導法が確立しているため,それにしたがって少しずつ知識や技術を得ることで確実にマスターできます.しかし,VAエコーにおいては体系だった教育法がありません.「どうにかしてそれを確立したい!」と思ったことが本書を作るきっかけでした.
そこで,多くの後輩を指導し,育てている人見泰正氏と八鍬恒芳氏に相談しました.そこでは,「臨床検査技師はある程度エコーの教育システムが完成しているけれど,透析室のスタッフはそのようなシステムがなく,また指導者もほとんどいない」ということが問題点として挙げられました.透析スタッフがVAエコーを行う場合,「今やっている方法は正しいのか?」「描出された病変をどのように評価したらよいのか?」など,さまざまな疑問に突き当たります.そんな時,目の前の疑問に答えてくれる指導者がいれば,どんなに心強いだろう.そのような思いから,「少しずつ技術を習得できるような,会話式のテキストを作ってみよう」という話になりました.読者として想定しているのは,これから透析室でVAエコーを始めてみたいけれど指導者がいない方や,すでに少しずつ行っているけれど躓いている方々です.
本書は技術編と知識編に分かれています.まずは会話で進める技術編からお読みください.最初は,ファントム(作り方もあります)や,自分自身の腕にプローブを当てて,基本走査を習得します.その時,できれば実際にプローブを手に取って,「なるほど,確かにそうだ!」という感覚を得てください.次は,実際に患者さんの腕にプローブを当てる段階です.さまざまな疑問にはメンターがていねいに答えてくれます.機能評価,形態評価など多くのことをマスターしなくてはなりませんが,最初からすべてできる必要はありません.点と点が少しずつつながり,細い線となってきたころに,全体像がおぼろげながらにみえるはずです.その線を太く,頑丈にするのは実践のみです.どんどんプローブを手に取って,新たな発見をしてください.
本書は,この分野の第一人者の先生方に執筆していただきました.とくに技術編では,会話式という通常とは違う原稿をお願いしましたが,それぞれの先生方が工夫を凝らしていただき,素晴らしい原稿に仕上げていただきました.無理な注文も多かったと思いますが,最後まで併走していただき,感謝の念に堪えません.
編者を務めていただいた,人見氏,八鍬氏には,それぞれの立場から貴重な意見をいただき,ときに議論を交わしながら,統一感のあるテキストに仕上げることができました.本書が完成したのは,両編者あってのことです.深く感謝いたします.
本書でVAエコーを習得された方は,次のメンターとなって,ぜひ後輩の育成をしてください.そして,それぞれの立場で,透析患者の命でもあるVAを長く使用できるよう,前進し続けましょう.
2023年5月
飯田橋春口クリニック
春口洋昭
一般的なエコー検査は指導法が確立しているため,それにしたがって少しずつ知識や技術を得ることで確実にマスターできます.しかし,VAエコーにおいては体系だった教育法がありません.「どうにかしてそれを確立したい!」と思ったことが本書を作るきっかけでした.
そこで,多くの後輩を指導し,育てている人見泰正氏と八鍬恒芳氏に相談しました.そこでは,「臨床検査技師はある程度エコーの教育システムが完成しているけれど,透析室のスタッフはそのようなシステムがなく,また指導者もほとんどいない」ということが問題点として挙げられました.透析スタッフがVAエコーを行う場合,「今やっている方法は正しいのか?」「描出された病変をどのように評価したらよいのか?」など,さまざまな疑問に突き当たります.そんな時,目の前の疑問に答えてくれる指導者がいれば,どんなに心強いだろう.そのような思いから,「少しずつ技術を習得できるような,会話式のテキストを作ってみよう」という話になりました.読者として想定しているのは,これから透析室でVAエコーを始めてみたいけれど指導者がいない方や,すでに少しずつ行っているけれど躓いている方々です.
本書は技術編と知識編に分かれています.まずは会話で進める技術編からお読みください.最初は,ファントム(作り方もあります)や,自分自身の腕にプローブを当てて,基本走査を習得します.その時,できれば実際にプローブを手に取って,「なるほど,確かにそうだ!」という感覚を得てください.次は,実際に患者さんの腕にプローブを当てる段階です.さまざまな疑問にはメンターがていねいに答えてくれます.機能評価,形態評価など多くのことをマスターしなくてはなりませんが,最初からすべてできる必要はありません.点と点が少しずつつながり,細い線となってきたころに,全体像がおぼろげながらにみえるはずです.その線を太く,頑丈にするのは実践のみです.どんどんプローブを手に取って,新たな発見をしてください.
本書は,この分野の第一人者の先生方に執筆していただきました.とくに技術編では,会話式という通常とは違う原稿をお願いしましたが,それぞれの先生方が工夫を凝らしていただき,素晴らしい原稿に仕上げていただきました.無理な注文も多かったと思いますが,最後まで併走していただき,感謝の念に堪えません.
編者を務めていただいた,人見氏,八鍬氏には,それぞれの立場から貴重な意見をいただき,ときに議論を交わしながら,統一感のあるテキストに仕上げることができました.本書が完成したのは,両編者あってのことです.深く感謝いたします.
本書でVAエコーを習得された方は,次のメンターとなって,ぜひ後輩の育成をしてください.そして,それぞれの立場で,透析患者の命でもあるVAを長く使用できるよう,前進し続けましょう.
2023年5月
飯田橋春口クリニック
春口洋昭
序文
I 技術編
1 まずはこれをマスターしよう
A プローブの走査と血管描出
1 ファントムで操作法を学ぶ
短軸から長軸へ
長軸での走査
2 ファントムで穿刺法を学ぶ
3 自分の血管を観察してみよう
上腕動脈から橈骨動脈を観察する
橈側皮静脈を前腕から肘部まで観察する
B 機能評価
1 上腕動脈血流量測定の基礎を学ぼう
上腕動脈の描出
パルスドプラ法による平均血流速度の測定
血管径の計測
C 形態評価
1 狭窄を観察してみよう
理学所見(視診と触診)
エコー検査
2 穿刺部をみてみよう
3 血管分岐はどのようにみえるのか
基本:分岐と合流
応用:実際の血管を描出
4 カラードプラで観察してみよう
D 透析室におけるエコーの活用
1 穿刺する前に血管を観察してみよう
穿刺前のBモードによるエコー評価
穿刺前のカラードプラによるエコー評価
2 透析中の機能評価法をマスターしよう
透析中のエコー評価の注意点
2 これができれば一人前
A ルーティン検査法
1 AVF
吻合部の描出にトライする
肘の静脈描出と血管走行
マッピングに挑戦してみよう
2 AVG
人工血管の種類と見え方の違いを知ろう
AVGの特徴とエコーのコツ
B エコーガイド下穿刺
1 エコーガイド下穿刺に必要な前準備と感染対策
エコーガイド下穿刺の概要
ブラインド穿刺の重要性
エコーガイド下穿刺の事前準備
感染対策
2 画質調整法とアーチファクトの理解
画質調整法
アーチファクトの理解
3 エコーガイド下穿刺の走査技術と注意点を知ろう
エコーガイド下穿刺の各手法
一人短軸sweep走査法
一人短軸swing走査法
二人長軸法
4 エコーガイド下による穿刺修正法と注意点を知ろう
穿刺修正
II 知識編
1 血管解剖および理学所見
A 上肢の血管・神経解剖
1 上肢の動脈の解剖
2 上肢の静脈の解剖
3 上肢のVA作製に関連する動静脈解剖
4 上肢の代表的な神経の解剖
1 皮神経の解剖
2 動脈と並走する神経
5 解剖学的位置関係を意識した上肢の血管・神経のエコー描出像
6 上肢の血管・神経の走行の実際―VA手術写真から―
B 理学的検査法
1 視診
1 上肢の全体の観察
2 血管の観察
2 触診
1 スリル
2 血管の硬さ
3 聴診
1 AVFの聴診
2 グラフトの聴診
4 上肢の挙上
5 血管圧迫
1 血管分岐の有無
2 瘤の性状
6 理学的所見のまとめ
2 エコーの知識
A 超音波装置の取り扱い
1 超音波とは
2 超音波装置の種類
3 超音波プローブの種類
4 装置の設定と超音波の基礎
1 視野深度の調節
2 ゲインの調節
3 STC(sensitivity time control)/TGC(time gain compensation)
4 ダイナミックレンジ
5 フォーカスの設定
6 空間分解能
B 各種モードの特徴と使い分け
1 Bモード断層像
1 Bモード断層像の概要
2 カラードプラ法
1 カラードプラ法の概要
2 カラードプラ法の調整
3 パルスドプラ法
1 パルスドプラ法の概要
2 パルスドプラ法の調整
索引
I 技術編
1 まずはこれをマスターしよう
A プローブの走査と血管描出
1 ファントムで操作法を学ぶ
短軸から長軸へ
長軸での走査
2 ファントムで穿刺法を学ぶ
3 自分の血管を観察してみよう
上腕動脈から橈骨動脈を観察する
橈側皮静脈を前腕から肘部まで観察する
B 機能評価
1 上腕動脈血流量測定の基礎を学ぼう
上腕動脈の描出
パルスドプラ法による平均血流速度の測定
血管径の計測
C 形態評価
1 狭窄を観察してみよう
理学所見(視診と触診)
エコー検査
2 穿刺部をみてみよう
3 血管分岐はどのようにみえるのか
基本:分岐と合流
応用:実際の血管を描出
4 カラードプラで観察してみよう
D 透析室におけるエコーの活用
1 穿刺する前に血管を観察してみよう
穿刺前のBモードによるエコー評価
穿刺前のカラードプラによるエコー評価
2 透析中の機能評価法をマスターしよう
透析中のエコー評価の注意点
2 これができれば一人前
A ルーティン検査法
1 AVF
吻合部の描出にトライする
肘の静脈描出と血管走行
マッピングに挑戦してみよう
2 AVG
人工血管の種類と見え方の違いを知ろう
AVGの特徴とエコーのコツ
B エコーガイド下穿刺
1 エコーガイド下穿刺に必要な前準備と感染対策
エコーガイド下穿刺の概要
ブラインド穿刺の重要性
エコーガイド下穿刺の事前準備
感染対策
2 画質調整法とアーチファクトの理解
画質調整法
アーチファクトの理解
3 エコーガイド下穿刺の走査技術と注意点を知ろう
エコーガイド下穿刺の各手法
一人短軸sweep走査法
一人短軸swing走査法
二人長軸法
4 エコーガイド下による穿刺修正法と注意点を知ろう
穿刺修正
II 知識編
1 血管解剖および理学所見
A 上肢の血管・神経解剖
1 上肢の動脈の解剖
2 上肢の静脈の解剖
3 上肢のVA作製に関連する動静脈解剖
4 上肢の代表的な神経の解剖
1 皮神経の解剖
2 動脈と並走する神経
5 解剖学的位置関係を意識した上肢の血管・神経のエコー描出像
6 上肢の血管・神経の走行の実際―VA手術写真から―
B 理学的検査法
1 視診
1 上肢の全体の観察
2 血管の観察
2 触診
1 スリル
2 血管の硬さ
3 聴診
1 AVFの聴診
2 グラフトの聴診
4 上肢の挙上
5 血管圧迫
1 血管分岐の有無
2 瘤の性状
6 理学的所見のまとめ
2 エコーの知識
A 超音波装置の取り扱い
1 超音波とは
2 超音波装置の種類
3 超音波プローブの種類
4 装置の設定と超音波の基礎
1 視野深度の調節
2 ゲインの調節
3 STC(sensitivity time control)/TGC(time gain compensation)
4 ダイナミックレンジ
5 フォーカスの設定
6 空間分解能
B 各種モードの特徴と使い分け
1 Bモード断層像
1 Bモード断層像の概要
2 カラードプラ法
1 カラードプラ法の概要
2 カラードプラ法の調整
3 パルスドプラ法
1 パルスドプラ法の概要
2 パルスドプラ法の調整
索引